幸せってなんだっけ?

60年代後半から70年代前半にかけて、日本は高度経済成長の真っ只中、戦後75年の歴史のなかで、いちばん幸せだった。今と比べると、日本は元気だった。活気があったと山田洋次監督は言います。そんな右肩上がりの時代に「男はつらいよ」「寅さん」が生まれました。






寅さんは、ある意味、アンチテーゼだったんですね。




みんなが夢中になって働いた、一生懸命、残業してお金を稼いだ。そういう時代に、一文無しの、物質的欲望がまるでない、寅さんは自分の身近な人が、恋をした素敵な女性が(あるいは通りすがりの人でさえも)、幸せになればいいと思っている。そのことがいちばんの生きがいみたいな変な男です。



でも、当時の日本人はそれがわかっていた。みんな、ほんとは気付いていたんですね。いま、欲望の塊になって稼いでいるけど、これが本当の人間の幸せではないと…。



ほんとうは心の豊かさを求めていたんですね。だから、「男はつらいよ」「寅さん」を見て、大いに笑い、自分の人生を顧みたりしたんじゃないのかなあ?