毎日見てる奈良の空。
窓から見える私の空は小さい。
でも果てしない。
空が広すぎて怖い。
とは、友人の二人の子どもの話。
といっても、奈良の空が恐いんじゃなく、
初めて見た東北の、小さな町の空を見て。
友人の二人の子どもは、
東京生まれの東京育ち。
建物がのっぽな東京では視界が狭い。
だから目に映る空も小さい。
けれど空は宇宙、空は広く、無限のもの。
限りある東京の空がすべて。
そんな子たちが
果てしない空、終わりの見えない空を
初めて目にしたのだから、
それはそれは不安で、恐かっただろうと思う。
友だち一家は今年の春になると、
東京から東北へ引っ越すという。
引っ越す前の下見に、
初めて訪れた東北の小さな町。
子どもたちはそこで空の広さを知り、驚き、
そして少し不安になった…。
私がこの話を友人から聞いたのは、
一緒に奈良を歩きながらのこと。
仕事で奈良を訪れた友人と、
奈良の広～い空を見ながらのことで、
私が奈良へ引っ越して来た理由を
ぽそっと語ったのが空を語るきっかけだった。
奈良で暮らしてみたら面白いかも、
私がそう思ったのは、この空を見た時。
三条通りの商店街の空。
アーケードのない開放感に、
「いいな！ここ！」と思わず口にした。
でも、本当に奈良へ引っ越すとは、
あのときは思ってもみなかったけど。
確かに、私も東京で暮らしてる時、
空が狭い、小さいと感じてた。
でも、空の高さは感じてた。
それは満ち欠けする月や、
ビルの遥か上で輝く太陽や、
手を伸ばしても届かない雲を追いかけて。
友人の子どもたちも、
空の高さには、気付いてたんじゃないかな。
ただ忘れてただけ。
きっと、東北の横に広がる空を見た時、
「東京の空の高さ」も思い出したはず。
だから、怖くなった、
空は横にも縦にも広がること、
とんでもなく広い宇宙に住んでいることを実感して。
空の広さは怖い。
ゴールが見えないマラソンと同じだもん。
未知なる空に放り出されたら、そりゃ怖い。
私だって奈良へ引っ越したばかりの頃、
ちょっびっと不安になったっけ。
いつか子どもたちに奈良にも来てほしいな。
東北の空も奈良の空も、同じ空の下。
東京だって、同じ空が広がってる。
空はひとつ。みんな同じ空の下。
ただ、吹く風が違うだけ。
一家は東北の、海に近い町に暮らすという。
その広い空に、どんな風が吹き渡るのか
いつの日か教えてほしい。
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