浪速の味『明治軒』。
月曜日。入院中の友だちのお見舞いに大阪へ。
1日に手術をすると聞いていたので、
その日は居ても立ってもおられず
心配しまくりだったけれど、
面会した友人は拍子抜けするほど元気だった。
ひとまず安堵。
ちょうど、友だちのオカンが見舞いに来ておられ、
さぞやお疲れでしょう、
そう声をかけるつもりでいたのに、
予想に反してオカンは明るかった！
まずはご自身の人生を楽しんでおられる様子、
これなら友だちも治療に専念できる。
きっと回復も早いと私は思うのだった。
病院を後に、心斎橋で画材を買い、
ちょっと珈琲でも飲んで
一服してから帰ろうと歩いていると
浪速の人気店『明治軒』の明かりが目に付いた。
どれどれと、“なつかしい味”が評判の
オムライスをいただく。
まずくはないけど、
大阪に対して、特に郷愁をもたないせいか、
私にとってはフツーのオムライス、しかも高い。
ただカウンターの向こうで黙々と調理に精を出す、
ふたりのおっちゃんの姿がやけになつかしかった。
『明治軒』を出ると、とっぷり夜。
雨が落ちてきたので、
鞄から折りたたみ傘を出し、
御堂筋を難波までゆるゆる歩く。
人も車も多く、なんだか息苦しさを覚え、
「ならまち」からほとんど出ない今の暮らしに
すっかり馴染んでいる自分を知る。
難波から奈良行きの近鉄電車に乗る。
仕事帰りのお父さんたちでいっぱい。
ふと『明治軒』のおっちゃんたちの姿が頭に浮かび、
続いて、入院中の友だちのオカンの顔が、
そして私の父の顔が浮かぶ。
先月末まで三週間ほど入院していた父。
でも今は退院し、順調に回復してる。
母も氷川きよし様パワーのせいか、
若々しく明るい。太陽のように元気だ。
私って恵まれてる、
そう思ったとき、ハラリ。泣けてきた。
通勤帰りの人で満員の車中で、なんたること…。
奈良へ越してから、
親御さんの介護を抱え、
たいへんご苦労をなさっている人が
私のまわりに ものすごく増えた。本当に多い。
「たいへんでしょう。でも がんばってくださいね」
などとは、とてもとても簡単に言えない。
なんせ私ときたら、介護の経験はおろか、
子育ての経験もない。
いつだって自分のリズムで生きている独り者。
かといって、貴族のように、
脳天気な暮らしではない。独りだからこそ、
とんでもない不安と孤独に悩まされることもある。
けれど、それは自由である証明でもあり…。
家族の事でご苦労なさっている人に対し、
私は気の利いた言葉のひとつもかけられない。
歯がゆいし、寂しい。
こんな私にできることはあるのだろうか…
奈良行きの電車の中で、
次に思ったのは こんなこと。
土曜、日曜、祝日。
ドアを開け、看板を出す。
「五想庵」の扉を開ける。
私にしか出来ないことを続ける。
「あなたにできないこと」を私がする、
「五想庵」が安らぎの場となるよう、
日々尽くしたい。
電車が奈良へ着き、家路についた時、
雨は本降りに変わってた。けれど、
胸の内は晴れ晴れ。友を見舞って、
自分を見舞った大阪帰りの呟きでありました。
明治軒HP
が、年始は1/30(土)からなのです。それまでは充電のための冬期休暇と決定しました。
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近鉄奈良駅から徒歩7分 JR奈良駅から徒歩13分
OPEN 11:00~18:00 土日祝のみオープン
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