民宿『実家』 |  ◆ R I N G O * H A N

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歌うパステル画家5*SEASON鈴御はんの蒼いブログショー

実家の2階。
わずか8畳程度の和室に、
敷き布団を5枚、ギシギシに敷き詰めシーツをかければ、
あっという間に「雑魚寝の大部屋」へ早変わり。
「わ~い♪ シーツの海や~」
子どもたちは“海”に飛び込んで、
ゴロゴロゴロ~と転がり至福の布団の海を転がる。
キャハハハハハ~~ッ!
黄色い声!
こらーっ! 誰や?
 お家で ほたえるのはっ!
下から おばあちゃんの怒鳴り声。
「はーい。ごめんなさーい。
 そやけど一番 ほたえてるのは一番大きい…」
子どもたちの冷ややかな視線。
「はーい。もうしません…」
反省したのは他でもない一番大きい人、私。
いの一番に“海"に転がってしまった。
おばあちゃん、いや私にとってはお母さん、ごめんちゃい。

実家に帰るといつも、こう。
今はもう両親しか住んでいない家に、
私と妹一家が還るのは当然として、
しょっちゅう誰かしらの友だちが遊びに来てくれるから、
狭い実家の2階は雑魚寝の大部屋へと早変わり。
さながら民宿『実家』。

近くに海や山やキャンプ地があるわけじゃない、
目玉は「玄関開けて1秒」で行ける向かいの市営プールと
両親の「ユルイ もてなし」。
お昼は素麺だけ、と 大雑把なところが気楽で良いらしく、
みんな自分の田舎のように民宿『実家』にやってきて、
ひたすらダラ~ンと過ごしていく。

この夏に私が帰郷したときは、
妹が一番下の小6の娘と一緒に、
妹のご近所の主婦が二人、
それぞれに子どもを連れて遊びに来てくれた。
主婦二人は私も顔なじみ。だから夜はお決まりの雑魚寝、
シーツの海に転がった雑魚は 10人!
さすがに両親は別の部屋に寝るけれど、
小学生から中年まで、他人も身内も一緒くた、
男女を問わずに入り乱れて寝入る図は
東京での私の生活とはまったく違う、180度違う。
実家にいながらに大陸でテント暮しをしてるみたい、
っていうのは、ちょいと美化し過ぎか、 なんというか、
懐かしの修学旅行の夜みたいな
まぁ、だから民宿『実家』が適当なわけで。

東京生活にはないシーツの“海”を転げ回って親に叱られた後、
狭い寝床に自分の場所を確保し、枕を置く。
が、子どもたちの興奮は覚めやらず、
なかなか寝かせてはもらえない。これは毎度のことだけど、
今年は子どもたちに変化があった。
小6の男子2名はテレビのプロレスで盛り上がり、
小4と小6の女の子は「恋バナ=恋愛話」に夢中。
チーム男子とチーム女子に分かれてた。
ふと、いつか雑魚寝を嫌がる時期がくるのかな、と
やや寂しい気もしたけれど、
子どもの成長過程をみられるのは面白い。

しかし、弱ったなぁ。

男子よ、私にプロレスの技をかけるのは止めなさい。
体の節々がマジで痛かったやないか。次の日もっ…!
女子よ、「恋バナ」を私に振るのも止めなさい。
ファーストキスはいつ? なんて、応えられるか! 恥ずかしいっ!
まんま修学旅行の夜がやってくる民宿『実家』。
私の東京の友人が泊まったら、どんな夜になるだろう。

東京は間違いなく、大人の都合で造られている。
東京での私の知人は“個"の人が多く、ひとり暮らしか、
既婚者でも子どもがいない、という人がほとんど。
私を含めて「自分が、自分は」と
自己表現に切磋琢磨、親の立場にはなく、
子どものまんまだと私は思う。
子どもに接するチャンスも少なく、だから、
表現ではなく、本能で接してくる本物の子どもと過ごしたら、
刺激的な夜になるのは間違いなし。

最近では中学生の甥が同級生を連れて泊まったそうで、
両親は育ち盛りの彼等のために
いつも以上の素麺を大量に茹でて歓迎したという。
もしも時を同じく、私が民宿『実家』に泊まっていたら、
中学生男子と雑魚寝することになっていた?
うーん。刺激的! いや~劇薬か?

こんな民宿『実家』、どうでしょう?


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