次郎長三国志 第8部 東海一の暴れん坊 |  ◆ R I N G O * H A N

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歌うパステル画家5*SEASON鈴御はんの蒼いブログショー


『笑っていても泣いたような瞳』???



私だったら、
瀬戸内寂聴さんとか、描いてみたいなぁ。
神々しさに父性と母性を合わせた帝のような強さに
キリッと結ばれた唇、そこに、
憂いを感じる、
この人は泣いている、なんてね。

私は“女”を滅多に描かない、
描いたものは“女のような生き物”だ。
けど、生き物が尾びれをもつことが多いせいで、
人はそれを「人魚だ」といったりするけど、
描いた本人は「故郷」のようなものだと思っている。
といっても、描いた一枚を
人が どう受け止めようと自由であって、
正しい鑑賞法などを手解きするなんて、
まったくナンセンスだとアタシは思う。

で、『次郎長三国志』第8部に出てくる
濡れた瞳を持つ女。美人で気だてが良くて、
不幸な生い立ちを背負った女郎に
人のいい石松が入れ込んでいくという、
シリーズの中では独立した一本。
幸薄く、憂いを含んだ かよわい女というのは、
男にとって永遠なんだろう。守ってやりたい!
って、うん、わかるわかる!
わかるけど、女は強い女に憧れる。

てなわけで、
私が描くなら石松が惚れた女郎ではなく、
枯山水に似た帝のヒトー。



★★★★★☆☆ 7点満点で4点
『次郎長三国志 第7部 初祝い清水港』を観た翌日に鑑賞。
シリーズ最高傑作という評判なので、
前日に感じた時代劇への時間差を埋められるかもと、
淡い期待を抱いて出かけるも、
あかんかったー。
一度、萎えてしまったものは
なかなか再燃しないのね…。

思うに、オペラにはオペラ、
ミュージカルにはミュージカル、歌舞伎には歌舞伎の、
客が心得るべき お約束ごとがある、
オペラを楽しむためには、まず、
やはり歌唱と楽曲だけでつないでいく手段に
慣れなければ。ミュージカルも歌舞伎もそう。
独特の“間”と芸能がそこにはあるからして、
古き良き“時代劇映画”にしても同じだ、
客はまず人情芝居のお約束事に慣れなければ。

きっと、今の私は
物語よりも音楽を含む“音”や
画面の“色”、または“構図”が決まっていると、
もうそれだけで嬉しくて、居心地が良い。
一方、本作は“人情芝居”であるからして、
美的センスなんて、ない方が筋が通るわけで、
よって私は物足りなくなってしまう。ホント、
『次郎長三国志』へのテンションが高かった去年のうちに
シリーズをまとめて観られたらよかった。

しかし! 森繁久彌さんはスゴイ!
この頃は、著名人のお葬式でしか、
トンとお姿はみなくなったけれど、
ほっんっとっに、いい役者さん。
あの名演が観られただけでも有り難い
森繁さんの石松だけで、ごはん2杯はいけるって!

1954年公開作品
~2007.2.15 シネマヴェーラ渋谷にて鑑賞~


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