三島由紀夫 映画祭 2006 |  ◆ R I N G O * H A N

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歌うパステル画家5*SEASON鈴御はんの蒼いブログショー

MISHIMA

Mishima 2006

映画祭に通うなんて何年ぶりだろう、
5年ぐらい前の『雷様特集』以来じゃなかろうか。
しかし雷様に通ったのは、
眠狂四郎が気になるお年頃だったからで、
自分でも納得するが、ユッキーは どうよ?
特別に好きでも嫌いでもない⋯
いや、気になる人ではあった、
代表作『金閣寺』を読んだはいいが、
あまりに麗しい文体に目がゆるむのか、
いつも3ページほど読むと睡魔に教われ、
ZZZZZZZ.... という結果に。結局、読了せず。
あれって高校生だったろうか、三島体験は
中途半端に終わってしまった。もともと
画数の多い漢字が苦手だし、読書も大嫌いなので、
耽美で硬派な三島文学とは
単に相性が悪かったのでしょうが、
一方で こんな物を書く人はどんな人なのかと、
どこかで気にかけている人となった。

小説がダメなら、映像で三島を。
こんな心掛けで通った『三島特集2006』。
いや、理由はそれだけでなく、
最近 私の身近にいる男子の中に
三島由紀夫のファンで「彼こそ日本男子の見本」だ
と豪語する人が何人もいることが疑問でならない。
いやいや、三島は男の中の女だろう、
と私は考えていたので実体を確かめるべく、
興味本意で映画祭へ レッツ La ゴー♪
あっ、三島文学から私が読んだ貴重な作品に、
『潮騒』がありました~私が中学の時でした
『モモカズ&トモエ版・潮騒』が公開され
話題になってましたから、それと知らず。
『潮騒』を読んだ印象は「激しい」で、
数年後に読んだ「途中までの『金閣寺』」は
「たいくつ」・・・。

特集では全部で15本の三島映画が かかった。
私が観たのは『憂国』をスタートに計8本。
おおっ 過半数を超えている!
よく観たなぁ。えらい!! そのなかで
もっとも印象に残っているのは なんといっても
増村先生メガホン・ユッキー主演の『からっ風野郎』
そして岸田今日子さんの『肉体の学校』。
観なきゃよかったというハズレは一本もなし。
50年~60年代の映画は力があるという証拠やね。

ああ好きだなァとか、大きなインパクトをもって
こちらに響いてきた作品となると、
私の場合はどうしても映像というのが大きい。
絵描きですから~職業病かもしれない、
でも単にキレイキレイだけじゃなくて、
そこに美学なりスタイルなりを見出せれば喜々となる。

肝心の三島先生については、
特異なジェンダーに苦しみ、もがいたナルシスト。
男でありたい、男らしくあれ! と
頑張るだけ頑張った儚い人。ゲイ。私 嫌いじゃない。
小説だけにとどまらず、
広範囲に活動したユッキー・三島由紀夫は
美空ひばりと同じく「時代を駆け抜けた人」で、
彼が残した作品を多角的に見ることで、
数々の「日本の宿題」が見えてくる。
そのひとつに憲法第九条の件。
私は現行の九条をまだまだ愛してる、
世界に向けて打ち立てた「理想」を誇りに思う、
おそらくこれからも。

割腹自殺の前、三島は「オレはまだ美しいか」と
同胞にたずねて同意を得たのち、
テレビ映像にも残る 齢の自衛隊決起の演説を行った。
あの日のことは私も記憶の端にも ぼんやり残っている、
ひどい野次のために演説は早々に打ち切られた。
さぞ、傷心だったろう、三島は。あの事件が
映画『剣』に出て来たストイックな主将を彷佛させ、
その後の割腹決行となると、
三島芸術到達点の『憂国』が
すべてを手引きしたかのようで背筋が凍る。

キネカ大森の100席ほどの劇場は
スクリーンがフラットで目に易しく とてもいい。
客層はシニアクラスの人が目立ったが、
それでも20代、30代の層も意外に多く、
女性客も少なくなかった。
私が観た8本の中で大入り満員となったのは2本、
美輪明宏さん主演の『黒蜥蜴』と
最終日の『炎上』。小さな劇場とはいえ、
立ち見客と補助椅子が出るという熱気の中、
空気が薄らぎ モチベーションもあがった。
特に『炎上』は映画祭の最終日に観たので、
三島文学と共に私もボワーンと燃え上がり、
三島文学の思う壷のフィナーレとなった。

ひとりの作家が形にしたものを複数のクリエーターが
オリジナリティーとアイデアを屈指し、
新しい形とする。それらを傍観しながら、
5*SEASONならこう作る という
新しいものが強くハッキリ見えた。
『三島映画祭2006』に礼!

キネカ大森「三島由紀夫 映画祭 2006」にて観賞~

●憂国
●不道徳教育講座
●肉体の学校
●音楽
●黒蜥蜴
●剣
●からっ風野郎
●炎上