からっ風野郎 |  ◆ R I N G O * H A N

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歌うパステル画家5*SEASON鈴御はんの蒼いブログショー

Yukio

Mishima Yukkie's love

ユッキーは顔がデカイ。声もデカイ。
それにユッキーは馬鹿だ。でも、
「オレって頭 悪いからよぉ」なんて言っちゃってるけど
実は東大を出てる秀才だ。
ユッキーは映画の中でバカなふりをしてるだけで、
“美しい小説”をたくさん書いているし、
ノーベル賞候補になったことだってある。
ユッキーは つまり、ガリ勉タイプではない。
そんなユッキーはズータイもデカイ。
ボディービルで しっかり鍛えたんだけど、
寂しいことにユッキーの下半身は貧弱だ、しょうがない
元々ユッキーはインドア派なんだもん。それでね、
ユッキーったら カワイイのっ♪ ・・・
・・・ここまで、ほとんど私のひとりごとだけど、
びっくりした~。あの三島由紀夫先生のことを
近頃は ユッキーと呼んでいるらしいのは本当、
少なくとも「キネカ大森」のロビーで
楽しげに私の横を通り過ぎた OL風のふたりは。

アイドル・三島ユッキーかぁ。
もしも三島先生を仰ぎ見ている硬派の人がきいたら、
即 卒倒か、鼻血ブーーーーッ* だろうか。
けど、ユッキ-本人が生きていたら、
案外よろこんでくださったかも。だって、
映画『からっ風野郎』のヤクザ役のユッキーは
なんとも憎めない可愛い男だから。

【映画について】ヤクザの二代目親分に扮した三島由紀夫唯一の主演映画。“ヤクザもの”はもっともやりたい役柄だったというが、演じているのはヤクザはヤクザでも気が弱く、ケンカもダメなキャラクター。そんな三島に対して、増村保造監督は手加減なしの厳しい演技指導を行った。三島自身もその演出の巧みさ、ダイナミックな手腕にはホトホト感心したと率直に述べている。~『三島由紀夫映画祭2006』パンフレットより抜粋 1960年 カラー 96分。

これはユッキーも頑張ったけど、
監督の増村保造の頭脳勝ちというか、
巨匠の おそろしいほどの手腕にかかれば、
素人・ユッキーもキラ星のごとくスクリーンで輝く。
いやー増村保造はスゴイ。
めちゃくちゃ頭がいい、この人。

増村保造の映画を観たのはこれが2本目で、
前回観た『音楽』のときはユッキー原作の麗系小説が、
あまりにも“ブッ飛んだ映画”に変身していたこともあって、
脚本が踊っているのは天然とB級のミックスなのか、
それとも旨味なのか判断つかず、
「初めての増村 (映画館の)」に面喰らってしまった。
『音楽』では赤を基調にしたサイケな映像にしても
下手ウマなのか、狙ってるのか、
それともまったく下手なのか分からなかったが、
この『からっ風野郎』を観て確信。
映像センスがいい。
『音楽』で抱いた疑問は皆、見事に吹っ飛んだ。
本日より増村先生と呼ばせていただきます!

偉そうに増村先生のことを「頭がいい」などと、
マヌケな私がぬかしてしまったけど、
ここでいう「頭の良さ」とは
高学歴だとか、知識が豊富だとか、ではなく、
「人が読める」ということ。
カンがいいというのでもなく、
形がないもの、目に見えないものが読める人。
表面上だけではなく、たとえば、
どんなに癖の強い人間とも うまく付き合えたり、
二股三股の恋愛なんて お手のものだという人は
ズバ抜けて頭がいい。つまり空気をあやつれる人は
一流シェフか、芸術家か、詐欺師で名をあげる。
増村先生は詐欺師の映画監督だ~。
とにかく日本人のセンスではないと、目を見張った。
だいたいユッキーなる素人を あそこまで活かせる人物は、
口は悪くとも精神面が詐欺師でないとダメ。
大人ね♪ 増村先生たら♪

ユッキーはプロの俳優じゃない、
プロじゃなく素人だということは
子ども相手に仕事をするということで、
子どもなんてものは自然そのもの、動物と同じだ、
こちらが思う通りに自然は動いてくれない、
その難題を操れる人は、よほどの自信家で頭が良くないと。
しかもユッキーは知識が豊富な文化人ときた、
が、増村先生はユッキーのフェロモンを
愛らしさに変えられましたー、
見事に映像世界へ移行された作品に感嘆っ!!!
体力がないと無理ね⋯。

良家のご子息で秀才のユッキー。
ユッキーがチャカを持ち、
ユッキーがレコに惚れ
ユッキーがタイマンをはる。
こんなヤクザな三島ユッキーが観られるのだ、
ユッキーファンはたまらないだろう
あたしゃ ファンではないが増村先生のファンになりそう、
すんばらしいラテン系マフィアの世界。
“からっ風”なる ダサ系のヤクザを演じられるのは、
ユッキー以外に考えられない。今や、
あんな東大出の文化人なんていないしねぇ。
ユッキー少年と元帥・増村先生にチャオ♪


キネカ大森「三島由紀夫 映画祭 2006」にて観賞~
映画祭の上映作品中、本作だけが三島由紀夫原作・脚本ではない。

★★★★★★☆ 7点満点で6点
増村先生の映像感覚は日本人じゃない、
イタリアか、スペインか。映画館からの帰り、
先生の映像は誰かに似てるなぁと必死で考える。
家に帰って本棚を見てハッと気付いた。
デ・キリコの形而上絵画に似てる! ああ すっきり。
だから台詞の間合いの取り方も独特なんだ。
脚本は菊島隆三、まったく文句なし。面白い。

ユッキーは顔がデカイ、だから、
広いスクリーンにアップで映ったときゃコワイ、
いえ⋯ものすんごい迫力!
でもピントは後ろで小さく映ってる若尾文子さんや
船越英二さんに合ってたりするからシュール。笑える。

ユッキー以外の脇を芸達者な人で固めたのも成功。
志村喬やもん!!!あと 若尾文子さんはもちろん、
船越英二、川崎敬三、神山繁、
みながユッキーの独特感を引き立てる。
それがオーラというものかな? いや、
そこまで神聖じゃないのが増村先生の頭の良さ故。

オツムの弱いユッキーが可愛く見えるか否かは、
観る方の母性愛または父性愛が 強いか どうか。
出来の悪い子ほど気になって ナントカ⋯ですからね。
ユッキーと若尾文子さんの「公園デート騎乗編」は大ウケ。
パッコ パッコ パッコ~ッて笑わせるためじゃなくて、
そういう人なんやね、愛すべき大馬鹿野郎だ、
ユッキーが演ずる二代目は。

最初と最後の ふたつの銃殺シーンは
あまりに突然でインパクトが強く、
この映画がコメディーではないことを主張する。
特に最後のエスカレーターで踊らされるユッキーは
意味深く こころに残りそう。
『木枯らし野郎』でも『竜巻き野郎』でもない、
『からっ風野郎』の下でしか成立しない映画。
増村先生、お慕いしております、
先生の映画、もっと観たい~。







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