剣 |  ◆ R I N G O * H A N

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歌うパステル画家5*SEASON鈴御はんの蒼いブログショー

ken
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ニート ニートと よく耳に挟むが、
ニートなんて昔からいるし、この私も、
ニートに片足を突っ込んでいるヤクザな家業、
私は声を大にして訴えよう、
「ニートなくして世に潤いなし!」

だいたい、ニートなんてカタカナで呼んだりして
なんだか世間は新種の人類のように
「外へ出て働く気力のない人たち」を非難するけど、
昔からそういう行き過ぎた理想家や夢見る夢子ちゃんは
町内に ひとりやふたりは しっかり きっちりいたわけで、
今現在“ニートを考える”なんて深刻ぶってるのは、
ようするにストレスが たまった大人たちが
その捌け口にしていることが多い。
社会に適応する能力がないのなら、
通勤しなくても働けるようにするか、
家庭内で なんとかなるよう対策するほかないだろう、
ひきこもってお金を稼ぐ職業なんていくらでもある。
繰り返すとイラストレーターなんて、
ひきこもりの最たるもの。ニートにぴったんこ。

先日 観た映画、三隅研次監督の映画『剣』に出てくる
恐ろしく生真面目な国分君も
大学を卒業したら間違いなくニートになるだろう。

【映画について】名匠・三隅研次監督が手掛けた数少ない現代劇のひとつ。『斬る』『剣鬼』とともに“剣三部作”とよばれる。ストイックなまでに剣の道を追い求める剣道部のキャプテンを演じる市川雷蔵の素晴らしさはもちろんのこと、雷蔵と対立する同級生を演じる川津祐介、ヒロインの藤由紀子の屈折した愛情、主人公を偶像視する新入生など助演陣も適役、近年ますます評価があがる傑作。~『三島由紀夫映画祭2006』パンフレットより抜粋 95分 モノクロ 1964年作品。

麻雀は興味なし、女に冷たい(ゲイなのか⋯?)、
酒はたしなむ程度、正座が得意で、
悪を憎み、無駄を嫌い、常に規律ただしく、衿も正す。
こんなにも禁欲的に剣道にとりくむ男なんて、
今どきいるわけない、いたとしたら
昭和の置き土産として保護動物に指定しなければ!
が、意外にも今から40年前の1960年頃にも、
すでにそのような堅物は
天然記念物に指定されていたらしく、
映画の主人公は一見は英雄視されつつも、
実は「ついて行けない」と呆れられている。

こんなふうに理想を 突き詰めるタイプの人は
指導者にはむかない。まかり間違って
リーダーにでもなったりしたら、
完璧主義ゆえ、ヒットラーが生まれる危険が高くなる。
映画の主人公はいわば「大人になりたくない」という
困ったちゃん。お金のために剣道をやったり、
生活のために自分の理想を曲げるなんてこと、
絶対にあってはならない、常に白か、黒か、
ふたつにひとつ、グレーなんて まったくもって許せない、
もし 本意ではない道を行かねばならないのなら
生きている意味はない、やがて自分を追い詰めていく。

私は冷血なところがあって、
そういうタイプは放っておくしかないと考えている。
『検』の禁欲的な国分くんが最後に選んだ決断にしても、
「その性格なら そうするしかないね」と
かなり冷めて観てしまった。悲劇をまねいた原因は、
そういうニート予備軍の凛とした姿に、
「一匹狼」などと崇めたこと、そこに
分別のある大人がひとりもいなかったことだろう。
剣道部顧問の教師も勘違いの保守派だし。

張り詰めた糸は、張り詰めるだけ張り詰めて、
あとは切れるしかない。
あ~あ、あの剣道部は廃部になったんだろうな。
アホな主将のバカな行動のために。悔いが残る~。


キネカ大森「三島由紀夫 映画祭 2006」にて観賞~

★★★★☆☆☆ 7点満点で5点
厳しい“男映像”を作る三隅研次監督と
三島由紀夫の「ストイック系小説」は
もっとも相性がいいように思える。
ただし、シャープな映像世界ゆえ、
三島の“美しい文脈”は掻き消されるけれども、
硬骨な世界への憧れを抱かせる強さが出る。

市川雷蔵の剣道部キャプテンはバッチリOK。
意外に良かったのが、川津祐介さん。
『黒蜥蜴』の時の“黒ヒゲ危機一発”みたいな、
“コント君”ではなく、健康でカッコイイ。
しかも男子部員のほとんどが裸になる場面で発覚し、
川津祐介は日本男子に相応しいフンドシ・スタイル!
軟派な役どころだっただけに目を見張った。
そうして数年後に彼を待つものは『食いしん坊バンザイ!』
だなんてことは このとき微塵も想像できない。





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