怪談 |  ◆ R I N G O * H A N

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歌うパステル画家5*SEASON鈴御はんの蒼いブログショー

髪

Wave


オープニング・クレジットの、
インクが水に流れていく様が、
一番の美しい場面だと想った。
最初にあのようなアートを観てしまったら、
本編の美術がいくら豪華でも どこか陳腐に思え
落胆は隠せず、たいくつしてしまった。

『切腹』の小林正樹監督が
自身の美学の集大成として創作された『怪談』。
これも『武満徹展』の特設シアターにて。

【あらすじ】1964年作品。 日本に帰化したイギリス出身の文学者・小泉八雲ことラフカディオ・ハーン原作による怪談から、『黒髪』『雪女』『耳無芳一の話』『茶碗の中』の4篇を映画化したオムニバス作品。岸恵子、仲代達矢を始め、豪華キャストたちが物語を彩る。~Amazon.co.jp より

↑上のイラストは、細かく砕いたパステルを
手のひらでササーッと紙に なで付けたもの。
墨流しと似たような手法で「自然に委ねた結果」だ。
この映画『怪談』も それと同じく
人の手には追えない自然と
現代が失いかけている霊的なものを描いてる。

これは私だけにいえることかもしれないけれど、
「豪華スター共演」は 肩透かしが多い。
『怪談』はオムニバスだから、
スター同士が噛み合う場面は少ないけれど、
どうも スタッフ側のスターの皆様への
遠慮なり気遣いなりを多分に感じ、
あちらこちらに必要じゃないモノが組まれているような、
そんなニュアンスを受けてしかたがない。

3話目の『耳無芳一の話』は、
私にとって思い入れの強い物語で、
オムニバスの一話として作られては困る。
確固たる ひとつの作品として
ドッシリと作ってほしい。こちとら、
『耳無芳一の話』を子どもの頃に読み、
あまりの不気味さ、得体の知れない恐怖を感じ、
それ以来、暗くなってから
一人でトイレに行けなくなってしまったほど。
いえ、今は行けるけど⋯。
それに芳一役の俳優さんは、
私の思い描いている“芳一像”とは、
ブラジルと日本ほどの距離があった、
もっと、ストイックな人であってほしい。
しかし、芳一が琵琶で
平家の『壇の浦』を詠う場面は流石、
荘厳な美術セットと共に見応えがあった。

4話のうち よかったのは、最初の『黒髪』。
新玉三千代さんの清純さと
三國連太郎さんのずるさ。この対極が
最後にやってくる肉体の風化を
より恐ろしい魔の瞬間にする。

2話目の『雪女』はウトウト、居眠り⋯。
最後の4話に『茶碗の中』をもってきたのは、
私には不自然というか、
大作の『~芳一の話』の後だけに茶番に思えた。


★★★★☆☆☆ 7点満点で4点
161分は長過ぎ。
120分ぐらいがいいような。





●オペラシティー アートギャラリー『武満徹 展』


 東宝 DVD『怪談』


 小泉 八雲, 平川 祐弘 原作 『怪談・奇談』