ミュンヘン |  ◆ R I N G O * H A N

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歌うパステル画家5*SEASON鈴御はんの蒼いブログショー

ミュンヘン

"Munich"


1972年のミュンヘンオリンピックのとき、
テロという惨劇があったことは
おぼろげながらも私の記憶にも残っている。
まだ子どもだったけど、子どもなりに
あってはならないことが起こったのだと、
テレビが流す情報に こわくなった。
いえ、子どもだったからこそ、
スポーツの場で簡単に人が殺められたことで
世の中に はびこっている無気味な対立を
肌で感じることができたのかもしれない。

スピルバ-グ監督による『ミュンヘン』は、
私の記憶の片隅に残る1972年の事件を題材にした物語。
映画は事件そのものに焦点をあて、
真実に迫るといったものではなく、
人間の良心とは、愛国心とは、そして
「やられたらやりかえす」という
報復の虚しさを描いているのだと受け取った。
だから、ユダヤ系のスピルバーグ監督が
ユダヤ人の報復劇を擁護しているとかしないとか、
パレスチナ側の描き方が希薄だとかどうだとか、
ミュンヘン事件の犯人グループが
“どのような手段で殺人を行ったか云々”などは
まったく どうだっていいと思ってるし
『ミュンヘン』を観た後にそれらを語るなんて、
ナンセンス以外の何ものでもないと考えている。

私にとっての『ミュンヘン』。
物足りなかったし、少々たいくつだった。
「ぶたれたら殴り返すことの阿呆らしさ」なんて、
私は某大国の大統領の再選決定に落胆したとき
イヤというほど味わったし噛みしめたし、
ハラワタがちどれるほど殺し合うことの虚しさを考えた。
だから『ミュンヘン』は、私には ゆるかった。

確かに、殺人や作戦の描写は
ひとつひとつに鬼才ぶりが発揮されてたし
観ていて背筋が冷たくなった。
画づくりにしても「流石スピリバーグ」だ、
けど、もうそんなこと今さらやってくれるな、
あんたに言われなくても もう充分、
こっちは 解ってるわぃっ!!!!
といった講釈を延々見せられたという後味で、
今は腹立たしくもある。
だいたいが痛みをみせるのはもう結構、
希望をみせてほしい。
いったいスピルバーグは、
誰のために『ミュンヘン』を作ったのか。

ちょっとちょっと、懲りない人。
映画のラストで映るニューヨークのビル群が
観る側に訴えていることをどうぞ、受けとめて。
必要なのは、子どもの感覚ではないか。


★★★★☆☆☆ 7点満点で4点
おそらく作品自体は素晴らしいのだろう、
ただ私には「今さら」だった。
スピルバ-グ監督にリクエスト。
料理のシーンがあんなに美味しそうに撮れるなんて
すごい! ぜひ「料理人」の映画を作って。

ヴァンサン・カッセルの盟友
マチュー・カソビッツが出ていたのが嬉しかった。
彼、監督より俳優の方が合ってると思う。




●『ミュンヘン』サイト