ミリオンダラー・ベイビー その4 |  ◆ R I N G O * H A N

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歌うパステル画家5*SEASON鈴御はんの蒼いブログショー

力石

うう〜ん! なんという描き易さ!
『あしたのジョー』の力石徹。
ヘップらバーンとは なんと対照的! てことは
不細工ってことやなぁ。だいたい、この人って髪の毛が変。
思うに‥‥まったくテレビを観てないので
これは想像ですが、今マスコミで騒がれている
オバチャンパーマの貴乃花が痩せたら、
オバチャンパーマ元祖の力石になる?

〜昨日のつづき〜


スポーツに一度だけ打ち込んだことがある。
エアロビクスにハマってしまい、
いつのまにやら地方レベルとはいえ、大会にまで出場した。
わずか4年程度だったが、汗を流す爽快さを満喫し、
思うままに筋肉をつけ、ウェイトをコントロールした。
理想の肉体が徐々に作られていく過程、
これが実に快感で、そうなってくると、
食事をはじめとする生活全般が禁欲的になった。
日々の暮らしで、自分の肉体や精神をどんどん絞り込み、
レッスンでは滝のような汗を流して心身を躍動させる。
音楽に乗って、自分の内面に溜め込んだエネルギーを
身体を通して爆発させると、もう くたくたになって、
果ては床に倒れ込んだ。が、酷使の後の疲労が心地よく、
何かに憑かれたかのように、踊ってた。

そんな日々の中、あたしはエアロビクス上達の目的で、
ボクシングの真似事を1ヶ月ほどやったことがあり、
一度だけ、スパーリングという形で、
たった2ラウンドだったが、
リングでグラブを交えたことがあった。
やってみて、3分間が
あんなに長く思えるスポーツは他にないだろうし、
あんなにも肉体がヘロヘロになる3分もないと思った。
2ラウンド終了のゴングを聞いたとき、
まるっきり あたしはイッてしまった。
眼は白目を剥き、全身の毛穴という毛穴から
水分が吹き出しているのがわかった。
そうして、パンチが確実に相手にヒットしたときの、
あの感触を思い出し、口元が勝手に笑うのだ。
殴ったとき、自分のコブシと他人の肌が摩擦をおこし、
メリッと音を立てる、これを知ったとき、
ボクシングに憑かれた男の気持ちが
わかったような気がした。ただ殴り合う、
自分の拳だけで勝負することの魔力。
そうして自分もパンチをもらったことで、
軽く頭がしびれ、身体全体も だるいのだが、
「パンチに酔う」という感覚をも体得したのだった。

ボクシングをやっていた1ヶ月間、
感化されやすい単純な あたしは さらなる禁欲生活を送った。
物欲は押さえられ、食欲もなくなり、性欲もなくなる。
ストイックな精神の中で、
欲という欲は どんどん消え去り、最後に残ったものは、
情熱を飛び越えた 闘志だけだった。
「勝ちたい」というより「負けない」という強い意思で、
厳しい鍛練を支えてくれたのは激しい感情だった。
といっても、あたしの場合は短期間の入門だったので、
真に迫る減量といものはなく、水は飲めた。
それゆえ、水さえも飲めない減量というのが、
いかに辛く、どれほどの地獄なのかは容易に想像できた。
プロのボクサーにとって、
試合に向けた減量は壮絶そのもの。まさに死闘。
ちょうど『あしたのジョー』の力石徹のように。

力石徹は 今になって思えば、
実に人間らしくなく、最初っから死相が出てた。
ジョーのためだけに 何処からかやってきて、
身元不明のまま消えて行く。そんな力石に
『ミリオンダラー〜』のイーストウッドが重なる。
映画のイーストウッドは人間味というものは捨て去り、
それらは相方のモーガン・フリーマンに
譲ったような気がしてならない。だから昨日まで あたしは
イーストウッドをヒーローとよんだけど、
正しくは亡霊といった方が適切かもしれない。

さらに、ボクシングという闘技はセックスレスだ、
なので御大イーストウッドに似つかわしい。
お色気ムンムンと御大イーストウッドほど、
かけ離れたものはいないだろう。
ふと思えば、イーストウッドの過去の出演作品に、
溢れんばかりのお色気作品があったっけなぁ。
確か70年代の作品で、題名は忘れたけど、
女優さんが乳首をボーンと出してて、
イーストウッドも40代ぐらいでツヤツヤしてた。
あの艶かしさは、時代がそうさせたのか、
それともイーストウッドの お色気時代だったのか。
いずれにしろ、『ミリオンダラー〜』に色気は無用、
プラトニックでなければ‥‥。それは
『マディソン郡の橋』に代表されるように、
“御大シリーズ”に共通するテーマのようなもので
あたしにすると少しだけ 淋しくもある。


方や、ヒラリー・スワンクが演じる女性ボクサーは、
幼い頃から貧しい生活を強いられてきた。
そのせいで胃が小さいのか、それとも食欲不振なのか、
減量の苦しみを知ることなくスター街道を駆け抜けて行く。
(そのわりにガタイがよく、ウェイトに苦しみそうな体系だ)
物語は彼女と師匠のイーストウッドとの
心の ふれあいが本筋なので、
ボクシング選手の過剰な苦悩や挫折は必要ないだろうが、
あたしは“遅咲きの青春物語”としても受け取ったので、
ボクシングに打ち込む人間ならではの厳しさと孤独感、
時には挫折感をも匂わす逸話が
あってもよかったのでは、と思う。
それでなくとも、30歳を過ぎた女性ボクサーが
瞬く間に成功するなんて異例中の異例、おとぎ話なのだ。

ひとついえるのは、
『あしたのジョー』も『ミリオンダラー〜』も
間違いなく“スポーツ根性物”ではなく、
“青春ドラマ”であるということで、
それは巨匠イーストウッドには二度と戻れない一瞬の輝き。
だからこそ、イーストウッドは亡霊のようでもあり、
ヒーローになりきろうとしたのかもしれない。

物語の最後でイーストウッドが名付けた
リングネームの意味が明かされる。
モ・クシュラという
ゲール語に込められた真心を知ったとき、
あたしの涙腺は一挙に ぶっこわれた。
ヒラリー・スワンクの演技は素晴らしく、
体当たりで挑む女優がいる、この事実が感動なのだ。
亡霊やヒーローよりも、
あたしは人間が とんでもなく好きだ。

改めて書くと ★★★★★☆☆ 7点満点で5点
良く出来た映画ではあるが、好きではない。
好きではないけど 色んなことを確認できた1本。

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今日の代官山キネマ情報〜



『代官山キネマ展』の参加者の名前を書いたポスター。
暑い中、お出かけくださる方々が続々。感謝感謝。
企画展は来週の月曜日7 /4 まで開催中ですので、
会場の麦茶を飲みに(?) 代官山へ
ちょっと遊びに行ってみてください。

●代官山キネマ詳細はこちら
会場のアートラッシュはこっち

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相方へのつっこみ本日分

ええなぁ、きみ。好きな人に肉眼で会えて!
あたしの研究対象のヴァンヴァンやーい!
どこいったぁ?

ひつこくチョ・ジェヒョンがまだ好きらしい。いいかげん飽きろ!
コマ犬の相方・でこのブログ