少女ジヤーン |  ◆ R I N G O * H A N

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歌うパステル画家5*SEASON鈴御はんの蒼いブログショー

花畑


花畑の遠くに たったひとつ、
周りと違った花がポツリ。どこか、
クルドの村に生きる少女ジヤーン似てる。
え~~~と、
くれぐれも「少女じゃん!」ではあらへん、
ジヤーンはクルド語で「命」という意味、
映画では少女の名前に使われている。


舞台はイラクのクルド人が住む小さな村。
映画は爆撃の回想から始まり、
建築家の視線を通して物語は動く。
ある日のこと、この村に ひとりのクルド人建築家が
イラク軍の爆撃で親を失った子どもたちのために
孤児院を建てるべく、はるばるアメリカからやってくる。

いやしかし、なんですな。インドア派といわれる
創作を職業としている人種は どこか 青っちろく、
ヒョロヒョロしてて、弱々しいもんです、けど、
良くいえば感受性が強くて、心が繊細で。
だから映画に登場する建築家も例にもれず
繊細かつ優しい心の持ち主。彼は、
クルドの村の悲惨な状況に戸惑い、苦しみ、沈黙する。
そうして、ついには病院に出向いた折、
放射能で肌が焼けただれた患者の人数に現実を垣間見、
バタン! と倒れてしまう。その時、村人は言う
「ここでは繊細な者は暮らしていけない」
胸にズシンと響く重みのある言葉。

それでも、建築家は立派に孤児院を完成させたし、
ひとりの親友とも出逢った。
建築家が村へ来て最初に出逢った少女、それがジヤーン。
幼い頃、ジャーンはイラク軍の爆撃で
不幸にも家族を失ってしまった。自らの頬も焼けただれ、
そのせいで心を閉ざしていたジヤーンだったが、
建築家の先生と いつしか心を通わせ、
だんだんと笑顔が もどっていく。

映画の中で最も印象深く残っている場面、それは、
ジヤーンが建築家の先生からもらった、
花畑の写真が載っている雑誌を、
来る日も来る日も ウットリと眺めていたところ。
その時のジヤーンの嬉しそうな顔ときたら、
とろけそうなほどで、おそらく
物質的に恵まれた日本の子どもでは、たかが写真一枚と、
なかなかお目にかかれない場面だろう。
きっと、ジヤーンの瞳には花畑だけでなく、
遠い異国の様子や、何編もの物語やクルドの村の未来や
将来の自分の姿を想像していたに違いない。などと、
今度はあたしが妄想してしまうのだった。

クルドの村には、爆撃から何年か経った今も
花はひとつも咲かないという。
「昔は花だらけの土地だったのに‥‥」
ジヤーンの盲目のおばあちゃんがポツリと
当時を語る姿が痛々しい。これと同じような想いが
映画では、クルドの村が抱えている心痛として、
そこかしこに、けれど控え目に組まれていて、
それらが観光客的ともいえる建築家の
第三者の視線を通して語られるから、
いつしか映画を観ている自分の心に重なっていく。
つまり建築家がクルドで得た感動や仕草や眼差しは、
イコール観客の驚きであり、陰鬱であり、
時には喜びでもあり、
それらは観る者の心に くっきりと届く。
一方で、問題を提示するだけでなく、
貧しくとも歌や踊りを愛してやまない、
純朴で豊かなクルドの生活も
きちんと描かれていて見所になっている。

不思議なことに‥‥いつもいつも、
お金がなく苦しんでいる人たちに教えられる、
経済が繁栄すると、心から消えるものが多いのは何故?

とはいえ、
現在はアメリカの侵略にさらされているイラクが、
(現状のイラク情勢を あたしは侵略だと捉えている)
フセイン統治下の時代には、クルド人を迫害し、
クルドの村へ化学兵器を投下した。その結果、
憎しみが生まれ、それは数珠つなぎで、断ち切れない。
渾沌としたアラブの情勢は物語る、
被害者と加害者は光と影、二者は裏腹でありながら、
同一の物に必ず存在する、と。

映画の冒頭でクルドの村人が語る。
「私たちは広島や長崎がうらやましい。
 なぜなら、進んだ文明が被爆地を復興させる。
 けれどクルドには文明はなく、なす術がない。」


日本人はクルド人のように、
広島や長崎を語ることは少ないし、
クルド難民を始めとするアラブの国々に、
関心を寄せることも極稀で、
およそ日常会話に のぼるなんてことはない。
ふーーーー。いったいぜんたい クルドと日本、
どちらが真に豊かなのか、
両の想いを量ってみてはどうでしょう。

★★★★★☆☆ 7点満点で5点
アメリカ資本のイラク映画。
現在のイラクで映画を作ることは困難な状況です。
監督はイラク北部のクルドの村で生まれ、
アメリカへ亡命したクルド人監督。本作は
エジプト映画の流れを組む詩情豊かな映像が魅力。

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相方へ語るコーナー
ふっ。携帯を持たず、テレビも持たない あたしを、
もはや時代遅れと呼ぶなかれ、一歩先行く進んだヤツ、
「最先端のオンナ」どすえ~。
って、携帯もテレビも めんどくさいだけやねんけどな。

●意外にもバラードにウットリするという
乙女チックな性格が気持悪い相方・でこのブログ