ルート181 |  ◆ R I N G O * H A N

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歌うパステル画家5*SEASON鈴御はんの蒼いブログショー

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紛争の前でARTはどんな意味をもつのだろう。
『ルート181』の南部編に登場する
パレスチナ人のギャラリーが記憶に残る。
隣人のイスラエル人へのアピールだろう。


タイトルになっている『ルート181』は、
現在も続く、パレスチナ紛争の元凶で、
人間の手で無理矢理ひかれたボーダーラインのこと。
このボーダーラインによる土地の区分は、
遡ること1947年11月、
国連が『パレスチナ分割決議』を採択したことによる。
それは、パレスチナという土地をユダヤ人とアラブ人で、
くっきり住みわけるというもので、人口比率でいうと
少数派のユダヤ人56%の土地を、
多数派のアラブ人(パレスチナ人)には43%の土地を、
そして世界三大宗教の聖地エルサレムは
国際的な管理下におく、というもの。この国連の採択は、
永らく続いてきたパレスチナという土地における、
民族間での争いを修復するための妥結案だったが、
43%の土地に多数派のアラブ人が満足するわけもなく、
そうして、中東戦争が勃発し、パレスチナ難民が流出、
結果、ユダヤ人によるイスラエル国家が建国、
以降問題は山積のまんま現在に至る‥‥。

この『ルート181』は、
紛争のボーダーラインであるルート181を
ふたりの監督が南から北へと旅をする、というもので、
監督は、本来なら敵対する立場の、
イスラエル出身とパレスチナ出身の、
二人の監督の手による大長編ドキュメントであり、
壮大なロードムービー。
作品には、このコンビならではの、
カメラ目線と問題定義と切り口が広がり、
パレスチナで暮らす人々の表情なり風景を
あくまでも自然に、映像でスケッチする。
強引さは まったくない。
さらに行く先々で出逢った人達から、
胸の奥底で眠る「本当の想い」を救いあげ、
三部構成からなる大長編は、まさに圧巻の270分。
そこには「ユダヤ VS アラブ」という
対極的な争いだけではなく、
遊牧民としてのパレスチナの誇りや、
移民のユダヤの隣家で暮らすアラブ人の苦悩、
イスラエル国籍を持つパレスチナ人の心情、
イスラエル兵士としての名誉や、
開拓者としての生きざま、等々
実に多くの営みと、未来への希望が描かれている。

正直いうと、あたしは南部・中部・北部という三部のうち、
中部でコックリコックリ~~と居眠りしてしまった。
やっぱ4時間半は長丁場、体力がついていかなんだ、
それでも、最後の北部に突入すると、
ついに カメラはグイグイと疾走し、目は釘付け、
そうして、レバノン国境で長かった旅は終わりを告げる。

世界における、いわゆるパレスチナ問題の論調は
ユダヤ人の侵略として認知することが多いはず、
けれど、ユダヤ人にはユダヤ人の、
ホロコーストを始めとする哀しい歴史があり、
イスラエル国は その果てに、ようやく見つけた安住の地。
ユダヤ人の そこへ寄せる想いが、いかほどのものか、
理解することは実に容易いと『ルート181』は訴える。
そもそも、先祖から授かった土地を
イスラエルに奪われてしまったと嘆くパレスチナ人の老婆と、
戦争は苦手だが、航空戦争写真を
カフェの壁に飾ることで精神的に落ち着く、
というユダヤ人の老婆は どちらも同じ人間で、
共に憎しみがもたらす苦痛も、愛が与える蜜の味も
十分に知っていることをカメラは写していた。

パレスチナは日本から遠いし複雑だし、ややこしい。
けど、忘却へ葬って済む事ではない、だいいち、
イスラエルは日本と深く関わりがある国家、
最も恐ろしいことは無関心ではないか。

★★★★★☆☆ 7点満点で5点
あたしが中東の知識にもっと明るかったなら、
もっともっと深い感動を得ただろうに、
自分の無知さにビビってしまう。
『ルート181』は、東京でいうと、
BOX東中野なんかで上映してくれそうな感じ。
機会があれば、ぜひ! ただし体力をつけて、
全編しっかり 観てほしい。あたしも体力つけよ。

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相方・でこへ 訴え
こぶちゃん、ちらな~い、そんなブッサイク!
中野浩一とコイを足して
ついでに サップを掛けたみたいな おばちゃんやな。
でも、なんか見たことがあると思ったら
『あたしんち』っちゅう 漫画のお母さんや、その人。

●もしかして自画像? 吹っ切れたように
描きなぐっている相方・でこのブログ