読書嫌い② | 好文舎日乗

好文舎日乗

本と学び、そして人をこよなく愛する好文舎主人が「心にうつりゆくよしなしごとをそこはかとなく書きつ」けた徒然日録。

「先生、本って読んだ方がいいですかね?」

生徒からよく訊かれる。そんな時、僕は決まってこう答える。

「それは、〝これからトイレに行って手を洗った方がいいですか?〟っていうのと同じレベルの質問だよ」


「汚いなあ! 手洗うに決まってるでしょ!」

「それがそうでもないらしい。ネットで検索してみると、手を洗わないという人が3割はいる。洗わなくても別に死なないし…」

「でも、そんなこと続けてたら、体にいいことないですよ」

「そう。読書も同じだよ。本を読まなくても死なない。生きて行くには何も困らない。でも、読んでる人とそうでない人の差って、やっぱりあるんだよ。その差は小論文を書かせてみるとすぐにわかる。〝世界観〟を問われる小論文では、誤魔化すことはできないんだ」


ある時、A高校の司書であるBさんに、この話をしたら、数ヶ月後、Bさんから見せられた「図書館だより」に、「司書のつぶやき」と題して、次のような文章が載せられていた。


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「本を読んでも、困らへんし。←なんて言うけど、後で困るんだな、これが。」


そうなんですよね、本を読んでいないからと言って、即、あなたの生活に困るかと言われれば、そんなことはないんですよね…。ちょっと考えてみて下さい。朝起きて、学校に来て、勉強して、(クラブして、塾に行って、)ご飯食べて、お風呂に入って、寝る。…特に困ることなんてここからは見当たらないですよね。

 ところが、しかーし。

 毎年秋になると3年生が「小論文の本ありませんか」と図書館に来ます。もはや年中行事化しています。しかも、毎年少しずつ迷える受験生が増殖している気が…。

 まずは担任の先生や教科担当の先生に相談に行く人が多いと思うので、いったいトータルしてどれだけの人が困っているのか???

 自分の意見を書かねばならない小論文は、「書くための技術」の他に「知識」が必要になってきます。

 技術に関しては、いろいろな本が揃っているので(図書館にもいい本があるよ)すぐに勉強できるからいいけれど、やっかいなのは、基礎になる知識が不足している場合です。

 いざ文章を書こうにも、ネタになる知識がなければ、どうしようもないと思いませんか?

 知識なんて、出せと言われて、ハイそうですか、と出るもんじゃないし。

本を読まなくても、すぐには困らない。けれど読まなかったツケは、後からジワジワ~っとボディブローのように効いてくる。

A高生は、入学してから2回、読書感想文の洗礼を受けますが、小論文や志望理由書を書くことは感想文以上にシビアだよ。

小説を読むのは好き、という人は多いみたいだけれど、それ以外の本ももっと読んでおくべきだと思いませんか?

読書の秋です。いろんなジャンルの本に挑戦しようよ!


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「先生の話をパクってしまいました!ごめんなさい」とBさん。

いや、素晴らしい。僕の下品な話を実に美しくまとめている。さすがBさん。感謝。感謝。