これ、凄く読みやすいと本気で思ってる。皆、意味不明と言うが
『恋愛論』と偉そうなタイトルを付けて書いたのに、自分の恋愛はわかっていないというところが素晴らしい。
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第31章 サルヴィアッチの日記の抜粋
恋の苦しさに耐えられず、生きているのが厭になった。何もする気にならない。
天気は悪く雨が降ってきた。寒さがまた迫ってきて、長い冬のあとでようやく春に向かって立ち上がろうとしていた自然を暗くしてしまった。
退職大臣スキアセッチが来て二時間いた。冷静な理知的な友人である。
「あの女を恋するのを止めるんだね。」
「どうしたら辞められるだろう。僕の戦争に対する情熱を返してくれ」
「君があの人を知ったのは不幸だったね。」
私はもう少しで賛成するところだった。それほど私は打ちのめされた気持ちで、勇気をなくしていた。それほど今日私は憂鬱だった。
我々は一緒に、何の得があって彼女の女友達は私のことを彼女に中傷するのか研究したが、結局次の古いナポリの諺に達しただけであった。
「恋と青春に見放された女はどんなことにも腹を立てる。」
とにかくあの残酷な女が私に対していきり立っているのは明らかである。これは彼女の友達の一人の言葉である。
ひどい仕打ちをしてやれないことはないが、彼女の憎悪を防ぐ手立てがまったくないのだ。
スクアセッチは帰った。私は雨の中を当てもなく出ていった。
私の部屋、彼女と知り合いになったはじめ頃、毎晩あっていたころからすんでいるこの部屋が私には耐えがたくなったのだ。
どの額、どの家具を見ても、かつてはそれを前に私が夢見、今は永久に失われてしまったあの幸福にたいして、後悔をそそられるばかりある。
天気は悪く雨が降ってきた。寒さがまた迫ってきて、長い冬のあとでようやく春に向かって立ち上がろうとしていた自然を暗くしてしまった。
退職大臣スキアセッチが来て二時間いた。冷静な理知的な友人である。
「あの女を恋するのを止めるんだね。」
「どうしたら辞められるだろう。僕の戦争に対する情熱を返してくれ」
「君があの人を知ったのは不幸だったね。」
私はもう少しで賛成するところだった。それほど私は打ちのめされた気持ちで、勇気をなくしていた。それほど今日私は憂鬱だった。
我々は一緒に、何の得があって彼女の女友達は私のことを彼女に中傷するのか研究したが、結局次の古いナポリの諺に達しただけであった。
「恋と青春に見放された女はどんなことにも腹を立てる。」
とにかくあの残酷な女が私に対していきり立っているのは明らかである。これは彼女の友達の一人の言葉である。
ひどい仕打ちをしてやれないことはないが、彼女の憎悪を防ぐ手立てがまったくないのだ。
スクアセッチは帰った。私は雨の中を当てもなく出ていった。
私の部屋、彼女と知り合いになったはじめ頃、毎晩あっていたころからすんでいるこの部屋が私には耐えがたくなったのだ。
どの額、どの家具を見ても、かつてはそれを前に私が夢見、今は永久に失われてしまったあの幸福にたいして、後悔をそそられるばかりある。
冷たい雨の中を、私は町をさ迷い歩いた。
偶然----もしそれが偶然と呼べるのなら----私は彼女の部屋の窓の下をとおった。あたりは暗くなりかけていた。
私は涙でいっぱいになった眼を窓から放さず歩きつづけた。
偶然、広場を見下ろすためというふうに、窓がちょっと開き、すぐ閉じた。、
私は心臓のそばに何か生理的な動きを感じ、たっていることができなかった。
私は隣の家の張り出しの下に逃れた。私の想いはせんぜんに乱れた。窓掛けの動いたのは偶然かもしれない。
しかし、もしそれを開けたのが彼女の手であったのなら!
世の中には二つの不幸がある。情熱を拒まれた不幸と、死の空白。
恋をすると、私は二歩先に無限の幸福、私のあらゆる願いにもまさる幸福があるような気がする。
しかもそれはただひとつの言葉、一つの微小にかかっている。スキアセッチのように、情熱がなく悲しい日々には、私はどこにも幸福を見ない。
そんな者が私にとって存在するかどうかとまで疑う。私は憂鬱に陥る。そもそも強い情熱など持たず、ただ多少の好奇心か虚栄心を持つほうがいいのだ。
偶然----もしそれが偶然と呼べるのなら----私は彼女の部屋の窓の下をとおった。あたりは暗くなりかけていた。
私は涙でいっぱいになった眼を窓から放さず歩きつづけた。
偶然、広場を見下ろすためというふうに、窓がちょっと開き、すぐ閉じた。、
私は心臓のそばに何か生理的な動きを感じ、たっていることができなかった。
私は隣の家の張り出しの下に逃れた。私の想いはせんぜんに乱れた。窓掛けの動いたのは偶然かもしれない。
しかし、もしそれを開けたのが彼女の手であったのなら!
世の中には二つの不幸がある。情熱を拒まれた不幸と、死の空白。
恋をすると、私は二歩先に無限の幸福、私のあらゆる願いにもまさる幸福があるような気がする。
しかもそれはただひとつの言葉、一つの微小にかかっている。スキアセッチのように、情熱がなく悲しい日々には、私はどこにも幸福を見ない。
そんな者が私にとって存在するかどうかとまで疑う。私は憂鬱に陥る。そもそも強い情熱など持たず、ただ多少の好奇心か虚栄心を持つほうがいいのだ。
今は朝の2時だ。窓掛けが少し動くのを見たのは、夕方の六時だった。
私はかたがた訪問して回り、劇場に行った。しかしどこへ行っても黙って考え込んでいた。私はその晩、次の問題を検討することですごした。
「あんなにも怒った後で----何も怒る理由なんかない。
なぜって渡しは少しも彼女を怒らせるつもりはなかったんだから(そして世の中にその意図がわかれば許してもらえないことがあるだろうか?)----彼女はひとときでも私を愛してくれただろうか」
こんなことをペトラルカの欄外に書き付けたサルヴィアッチは、まもなく死んでしまった。
スキアセッチも私も彼の親友だった。我々は彼の思想をみな知っていたし、この試論の悲しい部分はすべて彼に負っている。
彼は軽率の権化だった。しかし彼があんなにきちがい沙汰を演じた当の女というのは、確かに私の会った女の中でも最も興味のある女だった。
私はかたがた訪問して回り、劇場に行った。しかしどこへ行っても黙って考え込んでいた。私はその晩、次の問題を検討することですごした。
「あんなにも怒った後で----何も怒る理由なんかない。
なぜって渡しは少しも彼女を怒らせるつもりはなかったんだから(そして世の中にその意図がわかれば許してもらえないことがあるだろうか?)----彼女はひとときでも私を愛してくれただろうか」
こんなことをペトラルカの欄外に書き付けたサルヴィアッチは、まもなく死んでしまった。
スキアセッチも私も彼の親友だった。我々は彼の思想をみな知っていたし、この試論の悲しい部分はすべて彼に負っている。
彼は軽率の権化だった。しかし彼があんなにきちがい沙汰を演じた当の女というのは、確かに私の会った女の中でも最も興味のある女だった。
スキアセッチは言った。
「しかしこの不幸な情熱が、サルヴィアッチに何の役にも立たなかったとでも思うのかい。
だいいち、彼はこの上もなくひどい金銭上の不幸に見舞われていた。
そのため彼はずいぶん貧乏になってしまったわけだが、若いころ派手にやっていただけにこれはつらかっただろう。
恋でもしなかったら憤懣のやり場がなかったのではないか。
ところが恋のおかげで、彼は2週間に一度くらいしかそのことを思い出さなかったんだからね。
「次に、これはああ言う種類の頭脳にとっては特に重要な点だが、この情熱は彼がはじめて学ぶ真の論理学の過程だったということだ。
こういうことは彼のように宮廷生活を送ったことがある人間として変に思わせれるかもしれないが、しかし彼の並外れた勇気を思えばうなずける。
「しかしこの不幸な情熱が、サルヴィアッチに何の役にも立たなかったとでも思うのかい。
だいいち、彼はこの上もなくひどい金銭上の不幸に見舞われていた。
そのため彼はずいぶん貧乏になってしまったわけだが、若いころ派手にやっていただけにこれはつらかっただろう。
恋でもしなかったら憤懣のやり場がなかったのではないか。
ところが恋のおかげで、彼は2週間に一度くらいしかそのことを思い出さなかったんだからね。
「次に、これはああ言う種類の頭脳にとっては特に重要な点だが、この情熱は彼がはじめて学ぶ真の論理学の過程だったということだ。
こういうことは彼のように宮廷生活を送ったことがある人間として変に思わせれるかもしれないが、しかし彼の並外れた勇気を思えばうなずける。
たとえば彼は自分を虚無に投げ込んだ***の日を眉毛一つ動かさずに過ごした。
ロシアへ行ったときと同じく、別に変わったことを感じないのには、自分でも驚いていた。
実際彼は、2日間も気にかかるほどの恐怖を感じたことはなかったんだ。
ところがこの2年というもの、あんなにものに動ぜぬ男が終止勇気を出そうと一生懸命になっていた。
それまでは危険を感じたことがなかったのに。」
軽率と善意に解釈に対する過信の結果、彼が愛する女につきに2度しか会えなくなって以来、我々は彼が歓喜に酔って夜遅くまで彼女と話し込んでいるのを見た。
なぜなら彼は前から彼女のうちに嘆称していたあの気高い無邪気さで彼女から迎えられたからだ。
彼には***夫人と自分とはこの世の何者にも比べられない魂を持っていて、ひとつの視線で了解しあえると思い込んでいた。
彼を罪人にしか寝ないつまらないブルジョア的な評判に、彼女が少しでも耳を傾けようとは彼には考えられないことだった。
彼の敵に取り囲まれた一人の女に対するこの美しい信頼の結果、彼は彼女から出入り禁止を申し渡された。
ロシアへ行ったときと同じく、別に変わったことを感じないのには、自分でも驚いていた。
実際彼は、2日間も気にかかるほどの恐怖を感じたことはなかったんだ。
ところがこの2年というもの、あんなにものに動ぜぬ男が終止勇気を出そうと一生懸命になっていた。
それまでは危険を感じたことがなかったのに。」
軽率と善意に解釈に対する過信の結果、彼が愛する女につきに2度しか会えなくなって以来、我々は彼が歓喜に酔って夜遅くまで彼女と話し込んでいるのを見た。
なぜなら彼は前から彼女のうちに嘆称していたあの気高い無邪気さで彼女から迎えられたからだ。
彼には***夫人と自分とはこの世の何者にも比べられない魂を持っていて、ひとつの視線で了解しあえると思い込んでいた。
彼を罪人にしか寝ないつまらないブルジョア的な評判に、彼女が少しでも耳を傾けようとは彼には考えられないことだった。
彼の敵に取り囲まれた一人の女に対するこの美しい信頼の結果、彼は彼女から出入り禁止を申し渡された。
私は彼に言った。
「***夫人については君はいつもの格言を忘れているようだ。
つましり魂の偉大さはその極端に高められた場合しか信用しては行けないということを」
「あの人の心に僕の心ほど良く合う心かあるとでも思ってるのか」
と、彼は答えた。
「もっとも僕のこの情熱に任せるという行き方は、
ポリニーの岩が地平に描く線が怒ったレオノールのすがたに見えてくるまでにない策略をめぐらすことなんかできないし、
そのときそのときの印象の力に動かされて、つい軽率なことをしでかしてしまう」。
彼の狂気のニュアンスは大体こんなものであった。
サルヴィアッチにとって、生活は二週間分の周期に分かたれ、おのおのその前許された訪問によって彩られていた。
しかし、幾分冷たくないと思われたもてなしが彼に与える幸福も、つれないもてなしが与える不幸より大きくはないということを、
私はしばしば認めた。また***夫人は彼に対して率直でないことがあった。これらが彼に反駁したいと思った二つの点であるが、
私ははどうしてもこれを彼に言う気がしなかった。彼の苦悩がまったく彼一個の内心的なものであって、
彼はそれを彼のもっとも親しい友達、嫉妬など感じそうにない友達にさえ、打ち明けないように気を付けていた。
彼はまた、レオノールのつれないもてなしが、率直で高邁な魂に対する散文的で策略的な魂の勝利だと思っていた。
当時、彼は徳、特に光栄について絶望していた。彼は友達にはその情熱の結果である暗い観念しか語らなかったが、
しかしそれは哲学の見地からは、多少興味のあるものであった。
私はこの奇妙な魂を観察することに興味を覚えた。
情熱恋愛は普通ドイツ風の多少愚かな人間に見られるものであるが、サルヴィアッチはそれに反し、わたしの知る限り最も決断力のある、最も機知溌剌たる人物であった。
「***夫人については君はいつもの格言を忘れているようだ。
つましり魂の偉大さはその極端に高められた場合しか信用しては行けないということを」
「あの人の心に僕の心ほど良く合う心かあるとでも思ってるのか」
と、彼は答えた。
「もっとも僕のこの情熱に任せるという行き方は、
ポリニーの岩が地平に描く線が怒ったレオノールのすがたに見えてくるまでにない策略をめぐらすことなんかできないし、
そのときそのときの印象の力に動かされて、つい軽率なことをしでかしてしまう」。
彼の狂気のニュアンスは大体こんなものであった。
サルヴィアッチにとって、生活は二週間分の周期に分かたれ、おのおのその前許された訪問によって彩られていた。
しかし、幾分冷たくないと思われたもてなしが彼に与える幸福も、つれないもてなしが与える不幸より大きくはないということを、
私はしばしば認めた。また***夫人は彼に対して率直でないことがあった。これらが彼に反駁したいと思った二つの点であるが、
私ははどうしてもこれを彼に言う気がしなかった。彼の苦悩がまったく彼一個の内心的なものであって、
彼はそれを彼のもっとも親しい友達、嫉妬など感じそうにない友達にさえ、打ち明けないように気を付けていた。
彼はまた、レオノールのつれないもてなしが、率直で高邁な魂に対する散文的で策略的な魂の勝利だと思っていた。
当時、彼は徳、特に光栄について絶望していた。彼は友達にはその情熱の結果である暗い観念しか語らなかったが、
しかしそれは哲学の見地からは、多少興味のあるものであった。
私はこの奇妙な魂を観察することに興味を覚えた。
情熱恋愛は普通ドイツ風の多少愚かな人間に見られるものであるが、サルヴィアッチはそれに反し、わたしの知る限り最も決断力のある、最も機知溌剌たる人物であった。
つれないもてなしを受けて返ったあと、彼はレオノールのつれなさをもっともだと思うまでは落ち着かないように見えた。
彼にひどい仕打ちをしたのは、彼女が間違っているとしか思えない限り、彼は不幸だった。
(彼を見なければ)私は恋がこれほど虚栄心を捨てさせることができようとは思わなかっただろう。
彼は我々に、つねに恋愛を賛美していた。
「ある超自然の力が僕に命じて、この時計のガラスを壊せ、そうすればレオノールはおまえに対して三年前のような関係、つまり普通の友達に戻るだろう、といったとしても、それを壊す勇気はでないと思う」
こんな考えを述べる彼は、正真正銘のきちがいとしか思えなかったから、私は、前に述べた反駁を彼に加える勇気が出なかったのである。
彼は付け加えた。
「中世末におけるルターの宗教改革は、社会を根底から揺るがして、それを合理的な根拠の上に更新し再建した。
同様に、高邁な性格は恋愛によって更新され鍛えられる。
「このとき初めて、人はすべての人生の児戯に類する事柄から抜け出す。
この革命なしには、彼はなお何かしらの物々しさと芝居気から抜け出せないものだ。
恋をして僕ははじめて性格の偉大さを持つことを知った。それほど僕たちの士官学校の教育はばかげたものだった。
彼にひどい仕打ちをしたのは、彼女が間違っているとしか思えない限り、彼は不幸だった。
(彼を見なければ)私は恋がこれほど虚栄心を捨てさせることができようとは思わなかっただろう。
彼は我々に、つねに恋愛を賛美していた。
「ある超自然の力が僕に命じて、この時計のガラスを壊せ、そうすればレオノールはおまえに対して三年前のような関係、つまり普通の友達に戻るだろう、といったとしても、それを壊す勇気はでないと思う」
こんな考えを述べる彼は、正真正銘のきちがいとしか思えなかったから、私は、前に述べた反駁を彼に加える勇気が出なかったのである。
彼は付け加えた。
「中世末におけるルターの宗教改革は、社会を根底から揺るがして、それを合理的な根拠の上に更新し再建した。
同様に、高邁な性格は恋愛によって更新され鍛えられる。
「このとき初めて、人はすべての人生の児戯に類する事柄から抜け出す。
この革命なしには、彼はなお何かしらの物々しさと芝居気から抜け出せないものだ。
恋をして僕ははじめて性格の偉大さを持つことを知った。それほど僕たちの士官学校の教育はばかげたものだった。