空卓……誰もお客が付いていなくとも空気に向かって卓を打つこと。
実演販売士的な呼び込みのこと。
空卓打った方が売れるが、精神的なスタミナが必要である。
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さて、
山形に来ている。
東北は紅葉の始まりのようで
寒いのは苦手だが、四季がある事のありがたさを感じる時期だ。
んで、
商売の方は……
今回は!
ホメーテ渋谷という後輩と同じ現場。
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積極的に空卓を打たなくなって久しいナックル。
空卓打つよりも、人が広がりそうなお客様を待って、一気に大卓エンペラータイムを狙うスタイル。
だがっ!
空卓打ちまくり、コツコツ売るホメーテ渋谷!
現場でしのいでいる販売士らしい、
売るんだ!という強い意志を感じる。
当然、感銘を受ける。
よし、俺も空卓、打つか…
『あ〜小腹〜、エバラ、さらば〜!いや、今からオムライス!オムライス!小腹減ったらオムライス!小腹った人〜小腹〜!』
と30秒くらい訴えたが、意味わからないのと、通りすぎる声の為、電気屋さんに
うるせーなぁとボヤかれる。
もちろん、この後、ガッツリ陣をつけて、青天井の繁盛ブリブリである。
仕事終わり、
飯をともに食べ、アルコールでハートを癒し、ホメーテ渋谷の空卓を褒めよう!
素晴らしいガッツだ!
メシ、どうする?
とホメーテに声かけると…
『あ〜、昨日までの現場の金沢で喉やっちゃいました。もう喋りたくないし、飯も蕎麦かうどん啜って、酒も飲みたくないっすね。』
と言ってタクシーの中でネックウォーマーを鼻まで引き上げ、ホメーテは俯いた。
『………そっか。帰りの新幹線のチケット取る?』
『あ〜。明日でいっすわ……』
タクシーを降りたホメーテはネックウォーマーを再び目の下まで上げ歩み出し、
『コンビニ寄りますわ……』
と言って消えた。
ホメーテの判断は正しく、別に群れたりする必要の無いのが実演販売士。
喉を休めるのも冷静な判断だ。
ナックルは
あっ…
誰か…
メシでも…どうっすか…
と心の中で叫んだが、空卓は口に出さないと届かねぇなぁとナックルは思った。
孤独な空卓に涙ちょちょぎれ……