入念に熟成させて準備をする者の大口はハッタリではなく、言霊に近い。
口から出る決意を現実に昇華する。
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初めて会ったのは五月の天神。
和食出身の料理人がいるダイニングバーだ。
ゴクゴク酒を飲むナックルの横で、豆腐を使ったオリジナルの夜食をオーダーしていた。
妹の友達の彼氏
それが直也君。
『ボク、夏に行われる西日本予選で入賞して東京本戦に出る予定なんですよね。』
彼はパーソナルトレーナー。
ま、平たく言えば筋トレの先生。
見てくれこのカラダ
こいつを作るのに8年かかったらしい。
8年だぜ?
8年っつたらナックルがまだ高校生の時からずっと節制していたことになる。
初めて会った時に宣言していた通り、先月末、西日本予選を突破して12月の東京本戦を勝ち取った。
まだ夏真っ盛りだが、彼はもう、今年のフィニッシュを日本一って最高の締めくくりの為に準備している。
努力した者が勝つとは限らないが、勝つ者はすべからず努力をしている。
昨夜、彼から
『12月、優勝して金メダルをナックルの兄貴のクビにかけます!』とメールをもらった。
初めて会った時と同じである。
大口・ハッタリ。
ただ、彼の口から出る決意は大口はでもハッタリでもない。
決意を現実にする言霊だ。
きっと、12月、日本一になるのは
『博多のオーガ 武本直也』で決まりだろう。