気持ちを伝える上でジェスチャーを使う動物は多い。
尻尾を降ったり、牙を向いたり、ダンスをしたり………
人間においてはそれこそ喋らずとも多様な伝達動作がある。
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その日
メガホン片手にナックルはガナリまくっていた。
『いらっしゃいませ』
『ご覧下さい』
等の常套句を全く使わない呼び込みと圧倒的に出来る人垣に競合の店舗スタッフは驚きを隠せない様子だった。
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『ナックルさん、ウチしか売れてないですよ!いや~、もっと売りましょう!』
バリバリ。
んで、
エレベーターで競合の責任者と一緒になる。
競合『どうです?売れてます?売れてますよね。あんなにお客様が来るんですから。』
面倒くさ。
どう答えるか。
プッ
ププっ!
ナックル 『あっ………』
競合 『ッ!!! 今!屁をコイたでしょ!』
ナックルは恥ずかしさのあまり満面の笑みを用いてゴマかした。
でも……
プッ
ププププー!
止められないっ!
緊張を失った肛門メガホンから速射砲が放たれるっ!
競合 『ホラっ!やっぱり!屁、コイてるでしょう!』
鬼の首を取ったように詰めてくる競合!
最早、売り上げよりも屁の方に関心が向いている!
と、止められないっ!
プッ
ププププププー!
ナックル 『………ふん。コイたのによく気がつきましたね。これが質問の答えと思って下さい。』
競合 『えっ!自由自在に屁が出るんですか!?すごいなぁ。芸だなぁ~』
ナックルはもう一度満面の笑み差し出す。
プッ
ププっ!
まだかっ!
こんなに だめ押ししなくていいのに!
エレベーターの奥にナックルと競合が位置しており、二人の前には四人程いた。
エレベーターが休憩室のある七階に着く。
ドアが空いた瞬間っ!
ナックルを除く五人が足早にエレベーターから出て行った。
いや、悪気はない。
オレは、普通の人より屁が出やすい体質なのだよ。
許してくれたまえ。
そして、
またあの店に行く事になった場合。
『あの人、口からだけじゃなくてケツの穴からもようしゃべりまっせー!』
と裏でからかわれるのを覚悟しなければならない。