「ねじれ国会」や「国会の機能不全」等の問題を受けて、昨年話題になった新書。
以下は参考になると思ったところだけ記載。
●現在の国会審議手続
○委員会中心主義の国会
法案提出→所管の常任委員会に付託(国会法)
*緊急を要する議案については議院の議決に基づいて委員会審査を省略可
委員会審査の結果、本会議で審議する必要はないと委員会が判断した法案は、7日以内に議員20人以上が本会議での審議を要求した場合を除いて、廃案になる。
○本会議中心主義への部分的回帰
・本会議におけるあらかじめの法案趣旨説明
→趣旨説明が終わるまで法案を委員会に付託できないため、逆に審議引き延ばしの手段として用いられる。
・委員会審査に時間がかかっている場合にいきなり本会議で審議するのではなく、まず委員会から中間報告を求め、中間報告後、法案に緊急性があると考えられる時には委員会審査に期限をつける(事実上の委員会審査打ち切り手続)。
○国会の審議手続
・委員会審査
→提案者(発議者)による提案理由の説明→提案者に対する一問一答形式の質疑→採決→報告書を作成し、議長に報告
・本会議審査
→委員会審査終了議案が議事日程記載→採決
・内閣が、各議院の会議又は委員会において議題となった議案を修正し、又は撤回するには、その院の承諾を要する。また上記の議院で議決した後は、修正し、又は撤回することはできない(国会法59条)
→内閣提出法案の修正権の制約(なお修正例自体は少ない)
○国会審議の空洞化、形骸化
・衆議院本会議の年間開会時間
1947-1954:134時間→1975-85:55時間
○諸外国の制度
・あらかじめ審議割当時間を決定しておき、時間を超過した場合には審議を打ち切る「ギロチン」制度(イギリス)
●著者の改革案
・請願処理の見直し
→現在の慣行:請願の処理は会期末に一括して行う
→請願の内容が明らかになった時点で関連法案の審議はすでに終了していることが多い
→請願のすべてを詳細検討するのは不可能であるとしても、審理手続を工夫すべし
→私見:どう工夫するのか大いに疑問、また請願が国会審議の改革に与える直接的効果は乏しいと考える。
・会期不継続原則(会期中に議決に至らなかった案件は後会に継続しない=国会法68条)の見直し
→「同一議員の任期中」の解釈緩和(例:衆議院議員の任期4年なら、4年以内は継続)
→私見:趣旨自体は賛成だが、衆議院と参議院で任期が違う問題をどう法的にクリアするか少し疑問。
・会期制度(延長は常会1回、特別会・臨時会は2回まで)の見直し
→通年国会へ→私見:賛成