【書評】加藤典洋『太宰と井伏―ふたつの戦後』 | うんちくコラムニストシリウスのブログ

うんちくコラムニストシリウスのブログ

ブログの説明を入力します。

文芸評論の大家が書いた著書ぴかぴか(新しい)

太宰の有名な遺書について、筆者は、あなたはずるい、「生き方上手だ」、「情熱」を浪費しない、絶対不敗だ、でも自分はもう誰もが忘れている、ものを書いた人間が戦争で死んだ若い人との間に結んだ「約束」を果たす。「大いなる文学のために、死」ぬのだと解釈する。

で、筆者は、太宰治と三島由紀夫という戦後でもっとも「純白」な心をもつ文学者が、その心を否定された「汚れた」戦後の生き方を模索した上で、死を選んだと恐らく言っていると思われる。


ちなみに、太宰論で有名な猪瀬直樹の「ピカレスト」は、太宰が死ぬ直前の井伏の対応を指摘して、井伏は太宰に対する被害感情を持っていたと指摘する。


さて、本書の感想をさらっと言うと、

①三島はともかく、太宰自殺の原因を「戦後」として、太宰が亡くなった後に井伏が出版した代表作、「黒い雨」と比較するのは論理の飛躍のきらいがある。

②そもそも結論に対する根拠付けが一体どの引用部分なのか、不明確



まー、要するに、「もったいぶらせもしない割に、やたら長い」文章というのが読後感(笑)


結論と根拠付け、論理構成を非常に重視する法学の論文に慣れ親しんできた者にとっては、大変評価できない文章でした(笑)