【私見】ここがおかしい!?、刑法学説 | うんちくコラムニストシリウスのブログ

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【問題となる事例】
A社で、企業秘密に属する情報が書かれた資料を管理する立場にあった甲が、ライバル会社に勤務する乙に、上資料の漏洩を依頼されて了承し、上資料を社外に持ち出し、近くのコンビニでコピーをとった後(2時間後に元の保管場所へ戻した)、上コピーを乙に500万円で売却し、引渡しを完了した際の乙の罪責
→乙の罪責
→業務上横領罪の教唆犯(61条)が成立するか→業務上横領罪の身分を有しない者に身分犯の教唆犯が成立するか→65条の解釈が問題→1項―真正身分犯、2項不真正身分犯説(通説・判例)
→業務上横領罪は真正身分犯でも不真正身分犯でもある性質を持った犯罪である→65条2項により単純横領罪の共犯が成立する(ここまでは有名論点だから飛ばす)

【問題となる論点】
乙に盗品有償譲受罪(256条2項)が成立するか。
→判例なし
→学説
→大谷實:会社の機密資料を一事持ち出し、これをコピーした後に元に戻しておく行為は、窃盗や横領にはなっても、そのコピーは財産罪によって取得された物ではないから「盗品等」には当たらない(『刑法講義各論(新版第2版)』326頁)
→西田典之:機密資料を持ち出してコピーし、原本は返却したうえコピーのみを第三者に売却した場合、持ち出し行為が窃盗にあたる場合でも、コピーは「領得された物」にはあたらないから、盗品といえない(『刑法各論(第5版)』266頁)
→結論:しない

【Bが負う罪の量刑】
単純横領罪のみ:5年以下の懲役
単純横領罪と盗品有償譲受罪(10年以下の懲役及び50万円以下の罰金)の併合罪の場合
→併合罪のうちの2個以上の罪について有期懲役・有期禁錮に処するときは、その最も重い罪の刑について定めた刑の長期(刑期の上限)にその2分の1を加えた(重い強盗罪の刑の長期に1.5倍の加重)ものを長期とする(刑法47条)
→15年以下の懲役及び50万円以下の罰金

【最大に納得行かない点】
→「財物としての価値は、主として媒体に化体された情報の価値に負う」、「複製されて同様のものが他に存在すれば、返還後も権利者の排他的利用は永続して阻害される」と解する判例と学説の乖離が著しい点
→つまり、「情報」の財物の概念や情報媒体についての不法領得の意思を消極的に解してきた今までの刑法学説は、現代的な情報の経済的価値の重要性や、グローバル経済下での情報漏洩の結果の影響について軽視しすぎではないのか。
→懲役15年というのは大げさかもしれないが、ある程度の厳罰化(もしくは厳罰化できるんだぞという解釈を法律上展開すること)は必要ではと思った。


なお、現在は平成15年不正競争防止法改正に伴う営業秘密侵害罪の規定が新設され、罰則が拡充されたので、この問題はある程度解決されたのかもしれませんニコニコ