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1 フォロー講義
憲法は、国家権力に一定の権限を授けると同時に、国家権力を制限することによって
国民の 権利・自由を保障する「特質」を有しています。
授権規範と制限規範☆
このように、憲法は、国家権力を制限して、国民の権利・自由を保障するために、国
家権力を、立法権・行政権・司法権に分立し、互いに抑制・均衡をさせています。
過去の歴史を眺めると、いつの世でも、人権侵害の最たるものは、不当な逮捕・監禁・
刑罰権の行使や高額な課税など、行政権による人権侵害です。
そこで、統治システムにおいては、国民の権利・自由を保障するため、行政権に対す
る民主的コントロールという「視点」が重要になってきます。
行政権に対する民主的コントロールという「視点」で最も重要な原理・原則は、行政
権の行使を、我々国民の代表者である国会の制定する「法律」に基づかせることです。
法律による行政の原理☆
憲法は、国民の権利・自由を保障するための仕組みとして、立法権・行政権・司法権
という統治手段を規定しています。
人権保障(目的)→統治機構(手段)
一方、行政法は、上記憲法の定める基本的価値を具体化するために、特に、行政権に
対する民主的コントロールという「視点」に焦点を当てています。
行政法で使用する櫻井・橋本「行政法」は、行政法を、憲法の定める基本的価値を具
体化する法の体系と位置付けていますので、憲法との「つながり」を意識することが
できます。
余裕のある方は、憲法を学習していく中で、櫻井・橋本「行政法」の関連部分も、同
時並行的に見ておいてもいいかもしれません・・・
このように、憲法と行政法は、国民の権利・自由を保障するための「手段」について
考えていくという点で「共通」しています。
この際、重要なのは、役割分担(権限分配)という「視点」
です。
基本書フレームワーク講座では、
憲法と行政法を全く異なる科目としてバラバラにお話しするのではなく、「公法」
という一つの「体系」として、大きな「視点」からお話していきます。
知識と知識の「つながり」☆
受講生の皆さんも、憲法と行政法を全く別の科目としてとらえるのではなく、目的は
同じであるという意識で講義を聞いてほしいと思います。
なお、憲法と行政法では、同じ判例を「視点」を変えて学習していることが多々あり
ます。
例えば、 ①マクリーン事件は、
憲法なら外国人の「憲法上の権利」、
行政法なら行政裁量
②猿払事件は、
憲法なら公務員の政治活動の自由、
行政法なら委任命令
③津地鎮祭事件は、
憲法なら政教分離、
行政法なら客観訴訟(民衆訴訟)
そして、 平成29年度の行政法の記述式で出題された宝塚市パチンコ 条例事件は、
憲法なら司法権の定義 行政法なら、行政上の義務履行確保(司法的執行)という
具体です。
平成29年度の行政法の記述式で、「法律上の争訟」というキーワードについては、
ほとんどの受験生書けていませんでしたが、実は、憲法で学習する司法権の意味が
よくわかっていなかったのが原因かもしれません。
「公法」という名の新世界☆
憲法と行政法をより良く「理解」するために大切な「視点」なのかもしれません。
2 復習のポイント
① 「憲法上の権利」の限界
まずは、パワーポイント(第4章人権総論⑭)を参考にしながら、総整理ノートp22
以下の各判例を、法律の留保の「視点」から、整理しておいてください。
次に、パワーポイント(第4章人権総論⑮⑯)で、平成20年度に出題されたパターナ
リステックな制約についても、他者加害と自己加害という「視点」から、よく理解し
てみてください。
他者加害と自己加害という「視点」は、公共の福祉の意味を考える上でも、そして、
他の見解(考え方)と「異なるもの」シリーズの問題の視点としても重要になってき
ます。
詳しくは、次回、自己決定権のところで見ていきます。
最後に、憲法学読本p79以下、総整理ノートp29以下で、公共の福祉の学説について、
それぞれの帰結批判をざっくりとアタマの中に入れておいてください。
「憲法上の権利」の規制根拠である「公共の福祉」については、本試験でも頻出して
いるテーマですので、要注意テーマです。
② 三段階審査のフレームワーク
まずは、憲法学読本p83以下、パワーポイント(第4章人権総論⑱~⑳)で、「三段
階審査」の「フレームワーク」を理解しておいてください。
日本の最高裁判所は、
有力説の唱えてきた二重の基準論は採用しなかったため、それに変わる「フレーム
ワーク」として、元試験委員の石川教授を中心にして、三段階審査の本格的導入が
試みられています。
実は、元試験委員の石川教授が、この三段階審査導入の急先鋒ですので、行政書士
試験でも、この判例「フレームワーク」と関連する問題が出題されています。
現在では、この「三段階審査」の「フレームワーク」が、判例を分析するためのツ
ールとして普及していますので、講義の中でも、この「三段階審査」の「フレーム
ーク」を使って、判例を分析していきます。
フレームワーク思考!
最高裁の判例を理解するには、①保護範囲の第一段階と、②制約の第二段階が、特
に重要になってきます。
また、①保護範囲のうち、要保護性の高低と、②制約の強弱が、③正当化における
審査密度、つまり、合憲か違憲かとも関連してきます。
この点を、あらかじめ理解しておくと、違憲判決の理由付けもよく理解できるので
はないかと思いますので、まずは、判例を分析するためのツールである、三段階審
査のフレームワークをアタマに入れておいてください。
次章以降、
この「三段階審査」の「フレームワーク」を使い、試験委員である大学教授の問題
意識も掴みながら、憲法の判例をロジカルに整理していきます。
最近の本試験問題は、
判例のロジックや理由付けまで問う問題が多くなっていますので、三段階審査のフ
レームワークを使って、試験委員である大学教授の視点から、判例をきちんと理解
しておいてほしいと思います。
③ 包括的基本権(1)
まずは、憲法学読本p88~で、憲法13条後段が「新しい人権」を生み出していく母
胎的な役割をしている意味を、「公共の福祉」に関する学説とともに理解してみて
ください。
次に、パワーポイント(第5章包括的基本権⑥)で、プライバシー権の二つの側面
について理解した上で、自己情報コントロール権の意義について理解しておいてく
ださい。
過去問をグルーピングしてみると、
住基ネット訴訟に関する判例の知識を問う問題が、自己情報コントロール権という
「視点」から繰り返し出題されていることがわかるはずです。
自己情報コントロール権
なお、平成23年度のプライバシー権に関する問題の出題の「視点」は、憲法学読本
p86(4)(a)①及びp95(3)の保護範囲の箇所に、平成28年度の自己情報コントロ
ール権については、憲法学読本p96に書かれています。
憲法学読本には、
本試験問題の出題の「視点」が至るところに書かれていますので、受講生の皆さんは、
講義中に指摘したものは、是非、出題予想のマークを入れておいてください。
憲法学読本p96の「趣旨」「精神」という「保護範囲」に関する部分も、平成16年
度・18年度・25年度、令和4年に出題された問題の「視点」です。
この後、本試験でも頻出している表現の自由の保障の根拠のところで、レペタ訴訟
と博多駅事件の2つの判例を比較しながら、詳しくみていきます。
本試験で問題を作問している大学教授と、憲法学読本の著者とは、同じ問題意識を
持っていますので、憲法学読本に書かれていることがそのまま本試験に出題されや
すい訳です。
憲法は、
見た目は全く違う問題ですが、聞いている「視点」は同じという問題が、かなり出
題されていますので、過去問で出題された「視点」は「アタマ」の中に入れておい
てください。
問題作成者(試験委員)との「対話」☆
次回、
住基ネット訴訟の補足と、最新判例である、マイナンバー利用差止等請求事件につい
て、両者の比較の視点から詳しくみていきます。
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