コンコンコン、ノックです。
訪問ヘルパーさんが、事業所から預かってきたとゆっさんに印刷物を手渡した。
それは、発熱外来がある医療機関の案内だった。
ずっしりと、重い。
ゆっさんが人に感染する病気だったら、
ヘルパーさんも、ヘルパーさんが受け持っている利用者さんにも大変なことになるので、
この咳がどうして出るのかが、ハッキリするまで、
訪問ヘルパーさんに、お休みしてもらっている最中のことだった。
医療機関につながらなくてと、ケアマネージャーさんに伝えると。
こちらでも受診できそうな病院を探してみますという、返事があった。
そうして届いた、129件の発熱外来の案内は確かに重いはずだ。
「私は、自分の命をこれほど重く捉えたことがあったかな」
ゆっさんは起ち上がり、パソコンを開いた。
129件が、128件になっている。
鉛筆を片手に、電話がつながらなかったり、お断りがあったところにチェックを入れてゆく。
声帯麻痺のために、疲れてくると声が擦れて言葉にならず、伝える難しさを改めて知り。
畳みかける咳に戦いたのか、つながっているはずの電話が途端に切れてしまうときもあり。
だけど、ダメだとは思わない。
咳で体力を消耗させ続ける方が、ずっとダメだと思うから。
一人ではないと感じる力が、ゆっさんを頑張らせている。
自立することと、一人や孤立することは違うっていうことが。
ぼくにも、よく分かるよ。