海 | 心から

心から

その日その時に感じたままを、筆に託して表現してみます。
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本日は「海の日」とか。

照りつける太陽、頬に当たる風、海辺にぴったりのシチュエーション。

子供の頃の水浴び、テトラポットに飛び乗っての鬼ごっこ、そう、釣りもしたっけ。

かつての漁師町で生活する私には、馴染みも深い。

でもコンビナートが建ち並び、汚れと共に近くの海は遊び場としての姿を失い、

生活環境も変わったことと相まって、

私の街の海は、もう子供の遊び場ではない。

が、今でも東風の日には汽笛も聞こえ、赤潮の日にはタモを持って魚を獲りに行く人もいるし、

海側に作られた公園は格好の散歩コースとなっているし、

姿は変わっても、海との関わりは消えることはない。


「海」。

「氵:水」+「毎:暗い」で、暗い色の海のこと。

「晦:旧暦三十日の月の出ない暗い日のこと」と同義。

かつて北方の漢人たちの知っていた海は、玄海、渤海などの暗い色の海だけで、

また、中華思想において漢民族の住む地だけが唯一文明の光の当たる地であり、

その周りの地(四海)は未開で中国文明の光の射さない暗い土地だと考えられていたことから。

『千字文を読み解く』より
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「海」という字には「母」があるから、

そこから何もかもが生まれ、私たちは憧憬の念を抱く。

そんな風に聴いたことがあった「海」の字なのに、

暗いイメージを持ったこの字の来歴に、いささか戸惑ってしまう。

が、海を見たことのない漢人ではなく

海に囲まれた島国に育ち、海に親しんだ私にとっては、

やはり「海」は「母」を持つ字。

海の幸は毎日の食卓に欠かせないし、その恩恵を忘れることはない。

魚介や塩を与えてくれ、エネルギーの源として、

又、遠く離れた六つの大陸を繋ぐ存在として、

そして何より その波音は時に様々な気持ちを湧き上がらせてくれ、

海が、いかに深く私の中に入り込んでいるかをを改めて感じる。

その深くて碧い海の色は、空と共に気持を鎮めてくれる色でもある。


海の日の本日、私は遥か遠い言葉の海で漂っている。

難しい事柄も多くて理解できない個所も多いが、

かつて胎児であった頃、きっとこんな風に羊水の中を漂っていたのかと思いながら、

灯りを求めて その暗い漢字の海の中で彷徨ってる。

海が暗いという意味、もしかしたら これが糸口かも知れない。