
本日は大荒れになるという予報通り、
急に空が唸り出したかと思うと大粒の雨が当たり始め、まるで嵐のような天気。
せっかく蕾も色づいて、中にはほころんだ桜もチラホラ見られるというのに、
その枝先は風で大きく揺れている。
美しい花には大雨や風は大敵。
この予報を聞いて、いつもの友が、雨の前に切ったからと たくさん花を抱えてやってきてくれた。
豪華なクリスマスローズやかわいいチューリップ、終わりを惜しむ水仙も。
我が家が一気に華やいだ。
その中に他の花とは一線を画す楚々とした花が。

「ばいも」という花だそうだ。
「貝母」という漢字を充てるとか。
別名を「あみがさゆり」、花言葉は謙虚な心。
うっかりすると葉の中に紛れ込んでしまいそうな花弁の色、
華奢な葉や茎、
うつむいて咲く姿、
どれをとっても花言葉そのまま。
でも、薬草としての効能もあり、
派手さはないが、
いつも家族を思ってあれこれ心配ばかりしているその友の姿と重なって、
これだけは別に活けたいと、渋めの徳利を用意した。
「母」。
乳首を付けた女性を描いた象形文字で、子を産み育てる意味を含みます。
その友は、娘の同級生のお母さん。
しっかり者の長女のMちゃんと元気のよい末っ子のわが娘が仲良くなった。
兄たちと同じものを持っていく娘の豪快なお弁当の話を、いつもMちゃんは家でしていたそうだ。
まずその友が私に話しかけてくれた時も、お弁当の話題だったと記憶している。
それを端緒に母親同士も親しくなって、
いつの頃からか、庭で育ててみえる季節の花を抱えて我が家に来てくださるようになり、
グチを言い合ったり、心配ごとを相談し合ったり。
今回Mちゃんは就職されて、先月末から横浜の新人研修センターに入り、
1カ月の研修を受けるそうだ。
慣れない都会で一人で生活している娘が心配で心配で仕方ないのだろう。
そのMちゃん、ちょっと難しい病気を持っているから その心配はあまりある。
卒業式への出席も危ぶまれるほどだったから。
下のお嬢さんは今年から大学生になったし、少し歳の離れたご主人の体調も思わしくなく、
実家の母親の認知症も進んできたというし、
ただ婚家のご両親が元気なのが幸いだと笑っておっしゃる逞しさは、見習うべき姿勢。
母になったり奥さんになったり娘になったり嫁になったり、
大変な中で何役もこなしている姿は、友としても尊敬する。
本日たくさんの花の中から この花だけを抜き取って「これ知っとる?」と教えてくれた花、
それがこの貝母。
彼女の好きな花。
私は今日初めて知って、これからはずっと気になる存在になることだろうと思う。