蕗の薹(ふきのとう)。
春を知らせに顔を出す。
春の息吹をもたらすが、口に含むとほろ苦い。
待ち焦がれている春なのに、
そんなに急(せ)かすなとと諌められ、
じらされてるよな、かすかな苦み。
「薹」。
「艸:草」+「臺=台:高い台座」。
蕗などの野菜類の花のつく茎が伸び出たもので、花の台座のこと。
一雨ごとに春の気配が近寄るはずなのに、
今日の雨は冷たい。
雨は地上のすべてを濡らし、生命を育てる。
私の中の女も濡らし、
蝋燭の炎のように揺らし、
でも冷たく冷やす。
蕗の薹のほろ苦さが、まどろんだ脳を目覚めさせるように。
子供のころ苦手だった蕗の薹の苦み。
この苦みに魅かれるようになってきた。
