波 | 心から

心から

その日その時に感じたままを、筆に託して表現してみます。
よろしかったら、画像をクリック、拡大して、筆勢などをご覧下さい。

$心から

「波」は「氵」+「皮」で、

その「皮」は、頭の付いた動物の皮 + 手からなり、獣皮を手ではがしている形。

そこに「氵」が加わり、うねうねと続くものや、水面が斜めにかぶさる波を表します。


また、書を習う人は、必ず「永字八法」を学びますが、

その第八法は右払いのことで、「磔(たく)」or「波磔」といいます。

筆をひいて、波勢をなすわけですね。

本日は、荒々しいものではなく、穏やかで心地よい波を表現してみたいと、

終画は、筆の勢いだけでサラッと書いてみました。


穏やかな海で波の音を聞いていると、

それも永い時間聞いていると、

いつの間にか、海のうねりが自分の呼吸と重なった覚えがあります。

寄せては返し、ひいては寄せる波。

太古から、何度それが繰り返されたのでしょう。

時に荒ぶれ、牙をむき出して打ちつけた波も、

いつかまた、穏やかなリズムを刻む波となる。

誰かが悲しみにひしがれているときも、それは繰り返され、

喜びで駆けあがるときも、知らんぷりして繰り返し波打つ。

潮が満ち、潮が引き、それでも変わりはない。

何があっても、それは続く。

そのうねりと重なる自分の、何と小さなことか。

人生の数十年は、海と比べて何と短いことか。


自分の置かれた境遇に逆らっても歯が立たない。

ならば、そのうねりの中に身を委ねよう。

波の合間に身を浮かべ、彷徨っていれば、いつかたどり着く。

たどり着くべきところにたどり着く。

もしかしたら、また出会えるかもしれない。

その日のために、見送ろう。