
『千字文』の書き出しに「天地玄黄・・・」とあるように、
『易』を拠り所に生まれたこの文言は、
天の神秘性と大地の永遠性を称えた言葉であるということです。
日本人には、黄色が大地を意味するということに、少なかれ異論を感じはしますが、
『千字文を読み解く』によると、
中国黄土地帯の人々にとっては、大地は黄色以外の何物でもないといい、
また、五行思想においては、
青は東、赤は南、白は西、黒は北を表し、黄が中央の色となり、
これは、古代中国の人々にとって、
大地が世界の中央に、普遍不動のものとして永遠に存在し続けるという思想からのもので、
中でもこの黄は、5色の内で最も尊い色であるということです。
このような、大地を表し、尊い輝きを放つ黄色を、昨日は堪能しました。
早起きして出かけた先で、思いがけずイチョウ並木に出会いました。
真っ直ぐ伸びた通り沿いに、ずっとイチョウの木が並び、
薄日を浴びた葉が光り輝き、
ハラハラと風になびいて落ちるその姿も、艶やかで、
思わず息を止めて見入りました。
木々の下には、イチョウのじゅうたん。
履き集めても履き集めても、次から次へと落ちてくる葉っぱ。
豪華なじゅうたんは厚みを増して広がっていました。
近所の方は、きっと毎日毎日その葉をかき集めるのに大変でしょう。
そんな現実的なことも考えてしまうのが主婦の哀しさ。
でも、ひと時を、光輝く葉っぱに中に置いて、艶やかさとハッとする美しさに触れ、
華やぐ気持ちを抑えられませんでした。
この「黄」は、先に火をつけて飛ばす矢の形から生まれた象形文字です。
上部は炗(光)の略体、下部は中央にふくらみのある矢の形で、
油を染み込ませ、火をつけて飛ばす火矢のこと。
そして、火矢の黄色い光を表します。
また、中国だけでなく、日本でもこの色は馴染みのある色として、
様々な植物の名前にこの字が使われたり、
この字を用いて様々な微妙な色が名付けられているようです。
イチョウの葉も、様々な黄色が混じりあい、
その葉々の厚みが、大地に溶け合っているようでした。