2024年夏アニメのうち、9月24日深夜に録画して9月25日に視聴した作品は以下の2タイトルでした。
かつて魔法少女と悪は敵対していた。
最終話、第12話を観ました。
今回で物語は完結となりました。本当は原作者の急逝で9年前に「未完」で終わってしまった作品なのですが、アニメ版は「続編が決して作られない」という意味ではこれで終わりなのであり今回で「完結」です。ただ内容的には完結していないので、やっぱり「未完」ということになる。実際、ラストカットにも最初は「END」という文字が出た後、そこに「LESS」という文字が浮かんできてくっついて「ENDLESS」となりました。それは「未完」という意味でもありますが「終わらず続いていく」という意味も込められており、突然に終わってしまった贋作漫画とは違い、このアニメ版は最後はちょっとアニオリで「魔法少女と悪の参謀のこうした日常はまだまだ続いていく」という終り方にしてある。それは唐突に終わってしまった原作漫画とは異なり、よりマイルドな着地点のように見えるし、そう見せたいという制作側の意図が反映されたものです。
ただ、やっぱりそうはいっても話の途中で終わっている感は否めない。最後だけマイルドにまとめても、物語全体が何の節目も無く唐突に終わったのは事実です。それはたとえ4コマ漫画が基本となっているこの作品でも同じことです。例えば下記の「異世界失格」も物語途中で終わったが、原作漫画の中でちゃんと物語の転換点として設定されているエピソードまで1クールでやりきっており、そこに至るまで徐々に盛り上がっていく一種のクライマックス感は1クールの終盤ではちゃんと描かれていた。「異世界失格」はそういう傾向は弱めではあったが、先日最終話となった「SHY2期」などは物語途中でありながら終盤のクライマックス感は特に顕著でした。
これら通常の作品は原作漫画の段階で物語の節目が描かれているから、アニメでも物語途中でもちゃんと終盤の盛り上がりっぽいものを作れているのであり、この作品の場合は原作者の急逝によってそうした節目というものがもともと存在していないまま終わってしまっている。だから基本的にはムチャクチャ面白いのだが、1クールの間で起伏というものがなく、最初から最後までずっと同じ調子で終わってしまった感がある。日常もので4コマなのだからそれでもいいという意見もあるでしょう。まぁ実際「良い」と思うから決して低評価はしていないんですが、さすがにこういう感じのまま終わってしまうとSランク評価は厳しい。序盤から中盤は全く気にならなかったが、やはりクール終盤に他のSランク作品がクライマックスの盛り上がりとなっていく中ではちょっと単調に見えてしまった。
同じように日常系でも「ゆるキャン」や「ヤマノススメ」なんかはもっとちゃんと節目感はありました。Sランク評価しているのはそういう作品ということになります。ただ、それはこの作品が劣っているというわけではなく、原作者が急逝してしまったためにそうなってしまっているのであり、仕方ないことだといえます。コメディとしてのセンスは日常系の中でも突出している作品であり、同時に珠玉のラブストーリーですから、そうした欠陥はあっても結局全く退屈などせず、ずっと魅了されっぱなしでした。Sランクに準ずるほどに高評価は出来る作品といえます。このレベルでSランクから零れるということから、我ながらやっぱりSランク基準が厳しいなとは思います。そういうわけで実質的にはA+ランク最上位でのフィニッシュということになりますが、15分アニメなので1ランク分補正して順位を下げて、A-ランク最上位でのフィニッシュということになりますね。
今回の内容としては、最初は「SIDE-B」と「SIDE-M」という対比で、同じデートを白夜視点とミラ視点でそれぞれ描き、そこで互いの気持ちのちょっとしたすれ違い感を表現しています。ただすれ違いはあまり大きいわけではなく、全体的にホンワカしていますね。ミラはいつも自分から声をかけているので今回は黙って無視してみて白夜から声をかけさせようとして、それを見て白夜はミラが気付いてないと思って後ろから目隠しをしようとしますが手が届かなくってそれでミラが萌えてしまったり、その後、白夜は先日決まった「決めゼリフ」をミラの前で披露する。例の「ハピハピハピネス」とかいうやつです。
それがあまりに可笑しいのでミラは笑ってしまい、その笑顔を見て白夜は幸せな気持ちになるが、ミラは可愛いし面白いので何度もやらせる。それで白夜が恥ずかしくなって意地悪だと抗議するので、ミラは悪の参謀だから冷酷無比なのは当たり前だと言い返す。だが白夜はそれは嘘だと言い、ミラのことを「本当は優しいのに恥ずかしいことをいっぱいさせます」と涙目で拗ねて言う。それがまた可愛いのでミラは悶えてしまう。
その後、白夜の魔法を見てみたいとミラが言い出し、白夜が薄幸魔法少女の魔法である「ハピネスコンバージョン」という名の「不幸を幸福に変換する魔法」というのを披露することになるが、そのためにはまず白夜が不幸な目に遭わなければならず、例えばミラが白夜を叩いたりすればいいんですが、ミラはそんなことは出来ない。それで軽くつねってみたり、くすぐってみたりするが、白夜はそれを不幸だとは感じることが出来ず、ミラは理性が崩壊しそうになったので、結局は魔法を披露することなく中止となってしまう。そして別れ際、白夜はミラに「あの魔法、参謀さんにお見せするのは無理です」「参謀さんの大きい手に触れられるのは好きなので不幸になれないです」と謝罪し、そんなことを言われてミラは「勘違いしてしまうじゃないか」と思って悶えてしまう。
そうして「また明日」と約束して別れ、ミラは「私は冷酷無比な悪の参謀だというのに」、白夜は「私は薄幸魔法少女だというのに」と心の中でそれぞれ呟きながら「この日々にどうしようもなく幸福を感じている」という2人のモノローグからエンディングテーマに移行していく。その後はオープニングテーマを流しながらのCパートで各キャラの日常を短く描いてミラと白夜のデートの待ち合わせ場面で物語は終幕となり「ENDLESS」という文字が出て終わる。実に面白くて美しいお話でした。
異世界失格
最終話、第12話を観ました。
今回で1期が終わりました。まぁ2期の告知は無かったので、1期も2期も無くこれでアニメ版は終わりかもしれないんですが、どう見ても続きがありそうな終わり方をしたので2期を作る気はあるのだろうと思います。作る気はあっても実際に作るには色々と売り上げの問題とかもあるのでしょうから結局作れないのかもしれませんが、是非2期は作ってほしいですね。制作陣は2期を作る気はあると思いますので、一応は2期がある前提で今回もレビューします。全く最終話らしくない最終話だったので、そういう前提じゃないとレビュー出来ません。ただまぁしかし最終話もしっかり面白かったですね。2期に向けての繋ぎ回のような内容だったので前回みたいにあんまり深いドラマは無かったですけど、この作品らしい独特なギャグ要素がたくさん盛り込んであって最後に大笑いさせていただきました。最初はこんな感じで単にシュールギャグで笑うだけの作品だと思ってたんですよね。それが2話ぐらいからどんどん深みのあるドラマでも唸らせてくれる作品に化けていったんですが、1期の最後はまた最初のシュールな感じに戻って大笑いさせてくれて、その上で様々な考察要素も提供してくれて2期への伏線もふんだんに盛り込んで、一旦中締めして2期に繋げてくれました。
まず冒頭はゲルプ城での攻防戦で城側が勝利して攻撃側の堕天使の軍が撤退していく場面が描かれる。ゲルプ城に派遣されていたのはタキシード男曰く「女性陣」とのことだったので、前回のエピソードでドリッテン聖堂にてセンセーによって元の世界に戻された「強欲の堕天使」のユリコともう1人は「さっちゃん」だったはず。てっきり「さっちゃん」が攻城戦の指揮を執っているのかと思っていたのですが、そういうわけではなかったようです。攻城軍はユリコもさっちゃんも指揮しておらず烏合の衆であったようで、結局ドラン王の率いる守備側が勝利してしまった。これは堕天使側はあまり良い作戦とはいえません。
しかし「さっちゃん」はゲルプ城は無視して砂漠の真ん中に立ち、遠くで光が天に昇っていくのを見て笑みを浮かべている。この光はセンセーがユリコとその妹のヒカリを元の世界に転移させた時の光であり、つまりどうやら「さっちゃん」がこの地に来た目的はゲルプ城を落とすことではなく、センセーの能力を確かめることであったようです。おそらくタキシード男の思惑も同じであり、少なくとも「女性陣」をこの地に差し向けた目的はゲルプ城を落とすためだったのではなく、ヴォルフを狙っているユリコを先に行かせてセンセーと激突するように仕向けて、その顛末を「さっちゃん」に確認させることにあったのでしょう。まぁ仮にユリコがセンセーに勝利すれば、そのままユリコがゲルプ城を落とすことになったのでしょうけど、ユリコが元の世界に戻されたため攻城戦は中止となったようです。
つまりタキシード男も「さっちゃん」も既にセンセーの存在やその能力については把握済みだったということになる。おそらくグリューンでカイバラが敗れたことでセンセーの存在を知ることになったのでしょう。それで今回はユリコをセンセーにぶつけてみて、その能力を「さっちゃん」が確認したのでしょう。つまりタキシード男たちはゲルプ城攻略よりもセンセーのことを重大視しているようです。それだけセンセーの「転移者を元の世界に戻す能力」を危険視しているということなのでしょう。
そして同じようにセンセーはユリコを元の世界に送り返したことはヘルゼーエン側でも確認していたようで、その報告を受けた教皇は「素晴らしい」と喜び「彼こそ私が待ち望んだこの世界の救世主だ」と言います。どうもこの物言いだと、教皇はセンセーのような能力を持つ者の出現を待望、あるいは予期していたようにも聞こえる。それとも単にこの世界を救ってくれる存在として歓迎しているという意味なのか、まだ詳細は不明です。とにかく、どうやら堕天使側もヘルゼーエン側もセンセーという存在をそれぞれ重要視しつつあることが分かる。
一方、ドリッテン聖堂ではユリコとヒカリが元の世界へと去っていった後、そこに突然に「憂鬱の堕天使」のセンゴクが現われます。センゴクはカイバラやユリコを倒したセンセー達を狙ってきたようです。今回センゴクはタキシード男から待機を指示されていたはずですが、どうやら独自の判断で勝手に動き回っているようですね。それでまずはヴォルフが魔法で攻撃しますが、センゴクの鎧は魔法を防御するみたいで、全く攻撃は効果が無かった。そこで次はトオルが転移者のチートスキルを使った攻撃を試みたが、これも通用しなかった。更にタマの獣神拳もセンゴクの掌で防がれてしまった。これは単にセンゴクが強いということなのか、あるいはチートスキルも獣神拳も一種の魔法だから鎧を纏ったセンゴクには効かないということなのか、詳細はよく分からない。ただとにかくタマは絶体絶命となってしまい、センゴクの生成した不気味な剣で殺されそうになってしまう。
ところがタマの危機に思わず割って入ったニアが抜いた背中の剣がセンゴクの振り下ろした剣を受け止めると、センゴクの剣の刀身は粉々に砕け散ってしまった。これにはセンゴクだけでなくニア自身も驚きます。ニアは先日サイトウの攻撃を受け止めた時以前は一度も剣を抜いたことが無かったので、その剣の強度だけ知らなかったからです。まさかここまで強い剣とは予想していなかったのです。しかし、よく考えれば転移者であるサイトウの変身した巨大な狼の爪を受け止めて全く破損していなかったのですから、この剣は普通ではないのです。
そうしてニアが驚いていると、センゴクはニヤリと笑って「腕を磨いておけ、少年」と言い残して去っていってしまう。センゴクがその気になればニアを倒すことも出来たであろうし、この場に居る全員を殺すことも出来たはずなんですが、センゴクはあえてそうはせずにニアを見逃した。それはニアがもっと強くなってその剣を自在に使いこなすようになってから再戦したいと望んでいるからであるように見える。こうした言動を見るに、おそらくセンゴクという男は強者との戦いを欲しているようです。そして彼が「憂鬱の堕天使」と呼ばれるほど常に憂鬱であるのは「戦いたいと思えるほどの強者に巡り合えないから」であるからではないかと想像できる。そういうところから推測すると、センゴクがこの世界に転移してきた理由は、元の世界で「強者との戦いに恵まれなかった」あるいは「強者と戦いたいがそれに見合うほどの強さに恵まれなかった」という意味で不幸だったのではないかと想像出来ます。それゆえ「強者と戦うための強大な戦闘力」をギフテッドとして与えられたのではないかと思われる。
まぁセンゴクについてはこの後、魔王城に戻ってニアの剣によって粉々にされた自分の剣の柄を見て楽しそうにしているところをタキシード男に「いつもは憂鬱そうな君がずいぶん楽しそうじゃないか」と揶揄される場面が描かれるだけであり、これ以上の詳細なことはこの1期では不明ですので置いておいて、とにかくセンゴクが去っていってセンセー達は危機を脱してゲルプ城に戻ります。
そうしてドラン王やドワーフ兵たちと共に戦勝の宴となりますが、そうした宴の席でイーシャはユリコとヒカリの姉妹のことを思い出し、ヴォルフに向かって「あの2人も幸せな結末を迎えられて良かったじゃないか」と声をかける。しかしヴォルフは「果たしてそうだろうか?」と懐疑的です。ヴェルフはユリコとヒカリの選んだ結末が不幸だったと言いたいわけではない。ただ、自分たちがそんなふうに「幸せになれて良かったね」なんて能天気に言える資格があるのだろうかと疑問を呈しているのです。「元いた世界で不幸せだった2人は、この世界に来て幸せになったか?」とヴォルフはイーシャに問いかける。
ヴォルフはユリコとヒカリの過去の話を聞いて、この世界の転移システムの真実に気付いたのです。すなわち、転移者はこのザウバーベルグを救うために転移してくるわけではなく、元いた世界において行き過ぎた欲望を抱いてしまったために元の世界に居られなくなって転移してきているに過ぎないのだ。そして、その欲望を実現するためのギフテッドを与えられている。そのギフテッドは転移者本人にとってもユリコの例でも明らかなように危険なものなのです。
ところが、ヘルゼーエンでは「転移者はギフテッドの力を使って魔王と戦う使命がある」「その使命を果たすことでこの世界では幸福になれる」と転移者たちに教え込んできた。しかし実際はヘルゼーエンは彼ら転移者のギフテッドを魔王との戦争の道具として利用しようとしていただけであり、そのために本来はもっとデリケートに取り扱うべきであるそれぞれの転移者のギフテッドと関連した「欲望」を助長していたのではないかとヴォルフは疑念を抱いたのです。その結果、ユリコは欲望を暴走させてしまい妹のヒカリを殺そうとしたり堕天使に堕ちてしまったりした。それは自分のせいなのだと感じたからこそヴォルフはヘルゼーエンの転移者育成事業から手を引いていたのであり、そうした自分の抱いていた違和感が今回の一件で確信に変わったのでした。
「あの2人は俺たちの都合で召喚されて、この世界でも不幸を重ねただけじゃないのか?」というヴォルフの問いかけを受けて、イーシャも目を伏せる。イーシャにも転移者のスズキが転落して不幸になっていったのは自分の責任だったのではないかという罪悪感があり、それがヴォルフのユリコ達に対して抱く罪悪感と同じだということに気付いたのです。「俺たちヘルゼーエンのやり方は果たして正しかったのだろうか?」というヴォルフの問いかけにイーシャも何も応えられなかった。
一方、戦勝の宴を抜け出したセンセーはメロスが雌メロスに愛の告白をしてフラれてしまうのを見守り、「どれだけ愛する者を追いかけても決して報われない者もいるものだ」などとメロスを慰めてるのか突き放してるのかよく分からない対応をしたりしていたが、そうして城内の廊下を歩いていると、城に侵入してきていた「さっちゃん」とすれ違う。センセーはさっちゃんが7人の堕天使の1人だなどとは知らないし、仮に知っていたとしてもそんなことは全く気にしないのであろう。探し求めていた愛する人であるさっちゃんと遂に巡り合えたのだと喜び、さっそく心中しようと言い出す。
センセーは全くブレないなと笑う場面なのですが、しかし、さっちゃんは「しばらくお会いしないうちにずいぶんお変わりになられたようですね」と言い、「生き生きとしていて私の知るセンセーではないみたい」と指摘してセンセーとの心中を拒む。それに対してセンセーは慌てて「僕は何も変わっちゃいない」と言い返すのだが、そこにメロスに呼ばれたアネット達がやってきて、それを見たさっちゃんはセンセーに「死ぬより素敵なことをこの世界で見つけられたのですね」と言い、そのまま「今のセンセーとはもう一緒には居られません」と言って立ち去っていってしまう。
この場面、一見するとさっちゃんはセンセーの図星を突いているようにも見えます。センセーは確かにこの世界に来てからアネット達との旅を楽しんだり、創作意欲が湧いてきて幾つかの傑作に近い物語を書いていたりしており、確かに心中未遂を起こしてこの世界に転移してきた時とは変わっている部分はある。ただ同時にセンセーは今でも常に死にたがっており、そういう点では何も変わってなどいない。だから、この場面はさっちゃんがセンセーとの心中を拒否するためにイチャモンをつけているだけみたいにも見えます。実際、センセーはさっちゃんにこんなふうに言われて「確かに自分は変わったのかもしれない」などと自省する様子は全く無く、ただただ愛する相手であるさっちゃんに理解してもらえず拒絶されてしまったことでひたすら落ち込んでいる。そしてヤケになって自殺しようとまでしており、全くセンセーはブレていない。これでもセンセーは聡明な男なので、さっちゃんの言うことに少しでも理があれば自省して自分の落ち度や変化を認めるはずです。ところがそういう様子が全く無いところを見ると、さっちゃんの言っていたことはかなり見当違いなのだと思える。ただ、さっちゃんもかなり聡明そうな女性なので、全く勘違いして見当違いなことを言っているとも思えない。どうもワザとセンセーと距離を置いたフシがある。それは「今や敵同士だから」という意味で距離を置いたというようにも見える。
とにかく翌日、センセー達はゲルプ城下の鍛冶ギルドに行き、アネット達は皆の装備品やセンセーの棺桶車を作ってくれた頭領のロドスにお礼を言う。ただセンセーはさっちゃんに誤解された件で酷く落ち込みお礼どころではないようで、錯乱してカルモチンをがぶ飲みしたりする。そんなバカなことをしている中、ニアは自分の剣をロドスに鑑定してもらう。センゴクの剣を粉々に砕いた件で、どうもこの父親の形見の剣が普通の剣ではないようだと気付いたようで、ロドスならば何か分かるかもしれないと思って見てもらうことにしたのです。
すると、剣を見たロドスは一瞬驚いた様子となり「この剣はお前には過ぎた代物だ」とニアに言う。それを聞いて、ニアはやはり自分のような弱い奴が持つべき剣ではないのかと思い、少し落胆します。しかしロドスは剣をニアに返して「だが、いつかこの剣に見合う戦士になればいい」と言ってくれる。それを聞いてニアはこの剣の正体を知る必要など無いのだと思い直す。この剣の正体が何であれ、自分にとってはこの剣は父親の形見であり、自分が前を向いて進むための拠り所なのだ。だから自分はこの剣を手離すことはなく、この剣に見合うぐらいに自分が強くなればそれでいいのだと思うことが出来た。そうして、センセーが自殺するために棺桶車を暴走させて出ていってしまったので、アネット達もそれを追いかけてそのまま再び旅立つことになってしまい、ニアもロドスやトオル達と別れを告げてセンセーを追いかけていきます。
ここで場面は魔王城に移り、タキシード男がセンゴクを「いつになく上機嫌」とからかっていると、そこにさっちゃんが戻ってきて、こちらも上機嫌な様子。ここでタキシード男がどうやら「怠惰の堕天使」であるということが判明する。気取った態度で仕切っていたので、てっきり「傲慢の堕天使」あたりかと思っていたのですがちょっと意外でした。それはともかくタキシード男がさっちゃんにセンセーの様子はどうだったかと質問すると、さっちゃんは「やはりあの方はこの世界を変える力を持っていました」「相も変わらず素敵な方」「それでこそ、この私に相応しいというもの」と答える。
これを聞く限り、さっちゃんはセンセーのことを嫌っていない。それならば、やはりあのゲルプ城でも冷たい態度は嘘だったと思われる。ただ一緒に死ぬことを拒んだのは本気だったとも思える。どうやらさっちゃんは今はもうセンセーと一緒に死ぬことよりも、センセーと一緒に「この世界を変える」ということを重視しているみたいだからです。さっちゃんは「世界を変える」ためのパートナーとしてセンセーを見ており、だからセンセーと一緒に死んでいる場合ではないようです。そしてセンセーの「世界を変える力」というのは、あの「執筆」のギフテッドのことを指すようです。どうやらあの能力は単に転移者を元の世界に送り返したり、対象者を本来あるべき姿に変えるというだけの能力ではなく、もっと大きな「世界の改変」も可能とするような能力なのかもしれませんね。
そのことをどうしてさっちゃんが知っているのかも謎ですが、それ以上に謎なのは、どうしてさっちゃんがセンセーを突き放したのかです。あのセンセーの様子であれば、上手く丸め込めばさっちゃんのその目的のためのパートナーにもなってくれたはずです。それなのに突き放したのはどうしてなのか理由は不明です。ただ「今のセンセーとはもう一緒には居られません」というのは案外本心なのかもしれない。今のセンセーではさっちゃんのパートナーとなるにはまだ足りない部分があり、それをセンセーが手に入れるためには今は突き放して距離を置いておいた方が良いのかもしれません。
ただ、最もよく分からないのは、どうしてさっちゃんが「世界を変えたい」などと思うようになったのかという点です。これも具体的にはよく分からない。ただ、この場面でタキシード男がさっちゃんのことを「さすがは傲慢なる我らの女王様だ」と言っていることから、さっちゃんが「傲慢の堕天使」であり、しかも7人の堕天使のリーダーであるということが判明する。てっきりタキシード男がリーダーなのかと思っていたのですが、本当はさっちゃんこそがリーダーだったのですね。
つまり「傲慢」だから「世界を変革したい」などと大それたことを望んだのであり、「傲慢の堕天使」であるさっちゃんがリーダーであるから7人の堕天使の全体の目標が「この世界の変革」ということになったのでしょう。ただ、一番疑問なのは、どうしてさっちゃんは「傲慢の堕天使」になったのかという問題です。言い換えれば、どうしてさっちゃんはこの世界に転移した時に「傲慢」のギフテッドを与えられたのかという問題です。それはつまり、さっちゃんはセンセーと心中未遂をした時に「傲慢でありたい」と欲していたということを意味する。そして、それは元の世界ではさっちゃんは「もっと傲慢になれば良かった」と後悔するぐらいに謙虚過ぎるぐらいの人生を送っており、それを不満に思っていたということになる。それはおそらくセンセーが知らないさっちゃんの隠された真実なのでしょう。
そのあたりは2期があるなら2期以降に持ち越しになる問題なのだと思います。ここでは再びセンセー達の方に場面は戻り、ヘルトという村でセンセーを見失ってしまったアネット達は、村人からセンセーが棺桶車を暴走させて「オランジェ」という地へと繋がる祠の中に入っていったと教えてもらう。ちなみにこのヘルトという村はかつて勇者が魔王城に戦いに行く前に立ち寄った村なのだそうで、魔物と戦う勇者の像が設置してある。センセーはその勇者像にぶつかって暴走していったのだというのでアネット達は恐縮します。ところでこの勇者像ですが、石像の勇者が持っている剣が何となくニアの持っている剣と似ているように思えますが、まぁよくあるタイプの剣なのかもしれないし、石像なのでよくは分からない。
ここで問題は「オランジェ」の方だが、これは島であるザムスターク地方の横にあるもう1つの小さい島のことみたいです。ザウバーベルグ全体の世界地図を見た時、てっきりザムスターク地方は2つの島で成り立っているのかと思っていたのですが、どうやらそうではないようです。ザムスターク地方は現在アネット達が居る島だけで構成されており、ザムスターク地方とミットヴォッホ地方の間を隔てる海の真ん中に浮かぶ島が「オランジェ」という地であり、ここはザウバーベルグの5つの地方のどこにも属していない「禁足地」つまり立ち入り禁止の島らしい。どうして立ち入り禁止なのかというと、そこは妖精王の住む地だからだそうです。
そこに行くための唯一の道が、このヘルトの村にある祠なのだそうだ。この祠はオランジェに至る通路になっていて、妖精王の加護を求めて様々な者がこの祠に入っていったが途中で3つの試練に阻まれて、これまでオランジェに辿り着けて妖精王の加護を貰えたのは例の石像の勇者だけなのだという。つまり勇者は魔王との戦いの前にこのヘルトに立ち寄り祠を通ってオランジェへ行き妖精王の加護を得て、それから魔王城に向かったわけですね。
その試練を簡単には突破出来るはずがないのでセンセーもすぐに戻されてくるだろうという話なのでアネット達はヘルトの村で待つことにしましたが、センセーは死ぬ覚悟で棺桶車を暴走させているので3つの試練を強引に突破出来てしまい、いつの間にか不思議空間を通ってオランジェに到達してしまった。そこでセンセーは妖精王オヴェーリスと配下の妖精エルルとソルルに出会います。オヴェーリスはてっきりセンセーが自分の加護を求めてやって来た勇者だと思い、この世界の平穏を実現するために自分の加護の力を使うようにと命じる。但し、その前に1つ質問をすると言い、世界を救済するのに必要なものは「人を信じる心」と「絶対的な力」のどちらと思うかとセンセーに問いかけます。
しかしセンセーは「信じてた人が僕のもとを去ったので今度こそ絶対死にたい」と全く関係ない答えを言い、世界平和などどうでもいいとか、自分には関係ないとか、ミもフタもないことを言いだしてオヴェーリス達を呆れさせる。しかしオヴェーリスはセンセーがあの世界樹の精であるエッシェの加護を受けていることに気付き、極めて誠実で真面目なエッシェがどうしてこんないい加減な男に加護を与えたのだろうかと考える。
エッシェがセンセーに加護を与えた理由は、センセーがエッシェの苦悩に寄り添うことが出来たからであった。そのエッシェの苦悩とは「善行だけではこの世界は救えない」ということであった。それを理解出来るセンセーだからこそエッシェはセンセーを信じて加護を与えたのです。加護の内容はカルチモンを無限に飲めるというどうでもいいものであったが、加護の内容はこの際どうでもいい。要は妖精エッシェの加護が「正しいことだけでは世界を救うことは出来ない」と考える者であるセンセーに与えられたということがここでは重要なのです。
センセーとの問答でエッシェのそうした想いを察したオヴェーリスは、かつてこのオランジェに到達した唯一の人間である勇者のことを思い出す。ちなみにこのオヴェーリスの回想に登場する勇者は背中にニアの剣を背負っていて、どうやらニアの父親がその有名な勇者だったようですね。まぁそれはともかく、その勇者はまさに正義の人であり、オヴェーリスはその勇者に加護を与えた。しかし、その勇者でもこの世界に平穏をもたらすことは出来ず、その後、世界には世界教団「ヘルゼーエン」を名乗り各地を監視する北のエルフの集団が現われたり、龍族の長を討伐した7人の荒くれものが現われたりして、更に無数の転移者も勝手なことをやり始めて、世界はますます混沌としてしまったのだとオヴェーリスは言う。
ここで注目すべきは、この世界の真の管理者であるらしきオヴェーリスの目から見れば、ヘルゼーエンも憤怒の魔王も7人の堕天使もそう大差は無い存在であるということです。そのいずれも絶対正義などではなく、善や悪の教会も曖昧な存在であるようです。そのような存在が跋扈する現在のザウバーベルグは「もはや正しき心で正しき選択をするだけの者に手の負える世界ではないのだ」と言う。それはまさにエッシェの苦悩していたことそのものです。その苦悩を深く理解して寄り添い得た者はセンセーだけでした。ゆえにオヴェーリスはセンセーを指して「この男がここに辿り着いたのは、今の世界がこの男をここに導いたのだと思う」と述べ、センセーに加護を与えようと決めた。
そしてオヴェーリスはセンセーに「旅を続ければその果てに再び運命の女性に会えるだろう」と伝えて、世界を救わなくてもいいから、しばらく旅を続けるようにと勧める。それを聞いてセンセーは再びさっちゃんに会えることに心動かされる。会ったところでもう自分はさっちゃんに拒絶されており、もう仕方がないとも思えたが、それでもやはりまた会いたいと思えて、少し元気が出た。それでセンセーはオヴェーリスが自分を元気付けようとしてくれているのだと思い礼を言う。そうしてオヴェーリスはセンセーに困った時に吹けば妖精の力を借りることが出来る笛を授けて元の世界に送り返す。
そうしてセンセーは棺桶車に乗ってヘルトの村に戻ってきてアネット達と再会するが、石像に激突して倒してしまう。そこでさっそく笛を吹くとソルルが召喚されて、ソルルはいきなり肉体労働させられて石像を直す作業をする羽目となるのでした。こうして新たにセミレギュラーメンバーとしてソルルも増えて、センセー達の旅は再び始まる。そして、世界がセンセーに求めているものは平穏なのか、それとも混沌なのか、それは分からないが、とにかく世界の行く末はセンセー達に託されたというところでこの1期の物語は終幕となり、2期に続いていくといいなぁと思います。