2024年夏アニメのうち、9月10日深夜に録画して9月11日に視聴した作品は以下の2タイトルでした。
かつて魔法少女と悪は敵対していた。
第10話を観ました。
今回を含めて残り3話となりましたが、今回は大晦日のお話で、白夜とミラの日常が描写されたエピソーソでした。白夜とミラが一度も出会わない珍しいエピソードでもありました。2人が会わなくてもサブキャラ陣が良いので相変わらず面白かったですが、やっぱりこのまま中途半端な感じで1クール終わるんでしょうかね。作者の急逝でそもそも原作漫画が中途半端に終わってしまっているのでそうなっても仕方ないところではあるんですが、アニメオリジナルエンドで綺麗に物語を締めてくれたら尚うれしいところです。まぁ作風的に「奇妙な日常はつづく」みたいな感じで終わっても全然アリだとは思いますけどね。
まず冒頭は白夜と猫の御使いとの同居生活の日常が描かれますが、まぁ日常といっても大晦日なので普通の日とはちょっと違うはずなんですが、思いっきりいつも通りって感じというのがまた侘しくて可笑しい。鉢植えで育ててるネギをハサミで切って味噌汁に入れて2人分の朝食を仕上げて、布団で寝てる御使いを起こそうとして「性的な意味で寝ようぜ」なんて言われてセクハラされる白夜。なんかセーラー服を着てるんですが、一応は高校生ぐらいの年齢だから学校に通ってるんですかね。それともやっぱり中卒で中学の制服を普段着にしてるのかもしれない。あれだけバイトに明け暮れてて高校に通ってるとは到底思えないし、高校に行ってる場面なんか一度たりとも無かったですからね。それにしても御使いはもう完全に同居ヒモ男ですね。
そして朝食後、御使いが作戦会議をしようと言い出し、議題が「白夜の魔法少女らしさ強化作戦」だそうです。一体何なのかと思ったら、登場シーンの決め台詞を授けるとのこと。それで御使いが手本を実演してみせるんですが「ハピハピハピネェス!薄幸パワーで最底辺に道連れよぉ!」というヒドい決め台詞を変な振り付けで見せてくる。ふざけすぎで大爆笑した。しかも声優が普段は渋い三木眞一郎さんなのでインパクト絶大。この作品は2015年にドラマCDが発売されていて、そのキャスト陣がそのまま続投しているので、出演者がみんな当時は若手だったのが今となってはベテラン声優ばかりの超豪華布陣となっていて、ベテラン声優さん達のトンチキな演技が楽しめる作品ともなっています。
それでまぁ白夜もその決め台詞をやらされて御使いは自分でやらせておいて大笑いし、白夜にはこれから必ずこれをやるようにと命令。続いてコスチュームのマイナーチェンジ案を示す。確かに魔法少女は話が進むにつれて新しい力に目覚めたりするとコスチュームがどんどん盛られていって豪華になっていったりする。ところが御使いの出したマイナーチェンジ案はどんどんコスチュームの布面積が減っていくというサイテーなやつで、遂には全裸になってしまうというものだった。いや、見てみたいけど、これはヒドすぎて大爆笑。嫌がる白夜に御使いは「衣装チェンジしたらパーツが増えるなんて誰が決めたんだよ」と開き直り、またも白夜にセクハラする。白夜は思わずミラに助けを求めるが、御使いはミラは「おっぱい星人」だと諭し、ミラは白夜のオッパイが目当てなだけだと中傷します。そうして作戦会議は意味も無く終わる。
一方、悪の組織でも大晦日だというのに緊急会議が開催されていて、議題は「忘年会」についてだった。こいつらも負けず劣らずアホですね。会議に参加してるのはいつもの幹部連中で、異常に忘年会を恐れている。どうやら悪の王を楽しませるための余興大会への強制参加を余儀なくされるのがよほど嫌みたいです。しょうもないところでブラック企業みたいなんだな。特にアルキオネとスピカとサダルスウドが忘年会を嫌がっており、去年はかなり酷い目に遭ったらしい。ちなみにミラは「私は幹事なので」とか言って要領よくキツい役回りからは逃げるつもりらしい。こいつ最低ですね。
その忘年会の内容は去年と同じく「笑ってはいけない悪の組織」であると聞き、サダルスウド達は絶望する。2015年当時大晦日の夜の恒例番組であったアレのパクリです。サダルスウドもスピカもアルキオネも去年はさんざんケツを棒でシバかれたようです。いや、スピカのやつとはは見てみたい。しかも笑ってるかどうかのジャッジはミラがやっていたらしく、悪の王を喜ばせるためにアルキオネなどは笑ってもいないのにシバかれていたらしい。あの番組あるあるですね。
フォーマルハウトは去年は楽しかったとか言ってるが、彼は仕掛け人の側であったらしいのでケツはシバかれておらず、そりゃ楽しいだろう。しかしフォーマルハウトが何をやってサダルスウド達を笑わせたのか興味津々です。まぁ普通に喋らせてるだけで失笑してしまうような天然キャラではあるのだが。またベラトリックスは去年はケツをシバかれまくった側のはずなのだが本人はドMなので楽しかったようです。しかもそれがミラの命令で行われていたと思うと、ミラが自分の劣情をぶつけてきたのだと妄想してしまい興奮する。ベラトリックスはミラにそうした異常な愛情を覚えており、表向き厳格なイメージを保つためにそんな妄想を否定し、ミラに対して「この鬼畜メガネ!」と罵倒するが、周囲は全く意味が分からない。そして他に案があれば聞くというミラの言葉に応えて、それまで沈黙を守っていたベテルギウスが「ぬるぬる相撲」という、また何ともアナクロな企画を提案をしたところで会議シーンは終わります。昔「オールスター感謝祭」でやってたローション塗りたくって相撲するやつですね。結局採用になったのかどうか分からないけど、彼らが「ぬるぬる相撲」をする姿を見てみたい気もします。
そして場面は白夜のアパートに戻り、白夜は部屋でゴロゴロしてる御使いを置いて道路工事のバイトに出かけて、夕方にバイトが終わると晩御飯の買い物を済ませて、日が落ちてから帰宅し、寝たままの御使いに布団をかけてあげて、大晦日なので晩御飯の前に部屋の大掃除をします。本当はバイトに行く前に大掃除する予定だったんですが御使いが意味の無い作戦会議をしたせいで大掃除が夜にズレ込んでしまったのです。そうして大掃除が終わった頃に御使いが起きてきて一緒に銭湯に行く。
白夜が銭湯の外で待っていると家族連れが銭湯から出てくるのが見えて、家族の温もりを知らない白夜は家族というものに憧れる。そうしていると男湯から御使いが出てきますが、なんとイケメン人間態で出てきたのでビックリ。まぁ白夜は別にビックリしてないので人間態のことも知ってるみたいです。やっぱり猫は着ぐるみみたいです。じゃあ、あの鳥は何なんだとも思えてくるがもう細かいことはツッコミ入れるのはやめよう。
御使いは白夜にヤクルトをくれたりしてちょっと優しい。布団をかけてもらったお礼なのかもしれません。2人で帰宅して年越し蕎麦を食べますが、御使いは男と2人暮らしして一体どう思ってるのかと聞いてくる。それで白夜は「家族ってこんな感じなのかなと」と答えますが、御使いは「それは違う」と否定する。だが、御使いたちは天使なので食事をしなくても生きていけるのだそうで、それでも猫の御使いはいつも律儀に白夜の質素な食事に付き合ってくれる。そういうところがなんだか家族っぽくしてくれているように白夜は感じているのでした。そう考えると、なんだかこの猫の御使いはヒモ男というよりは、出来の悪い兄貴みたいにも見えてきますね。そういう感じで大晦日の夜も終わり、除夜の鐘が鳴って年が明けて「今年もよろしくお願いします」と白夜が御使いに言い、御使いも「おお」と応えたところで今回は終わり、これで残りは2話となります。
異世界失格
第10話を観ました。
今回も含めて残り3話となりますが、今回は完全にフリ回という感じで、次回からのラスト2話が盛り上がるところであり、今回はその前フリでした。今回は敵である7人の堕天使のうち「強欲の堕天使」という敵が登場しました。この強欲の堕天使との戦いがおそらくラスト2話で描かれるのであろうと思われます。今回は他にも「憂鬱の堕天使」という別の7人の堕天使のうちの1人も登場し、さらに以前も登場したタキシードの男と「さっちゃん」と思われる和服の女性も登場しており、グリューンで倒されたカイバラも含めると5人の堕天使がここまでで登場したことになります。ただ、おそらく憂鬱の堕天使はラスト2話で倒されたりはしなさそうですし、決着がつくのは強欲の堕天使のみでしょう。そうなると最終話終了時点でまだ5人の堕天使は残されたままであり、センセー達の旅もまだザウバーベルグの5つの地方のうち2つの地方にはまだ足を踏み入れていないうちに最終話が終わってしまいます。こうなると、やはり2期があることを期待したくなります。
今回に関しては、まず冒頭は魔王城の場面から始まります。「さっちゃん」と思しき7人の堕天使のうちの1人、和装の女性が「シャボン玉」の鼻歌を唄っている。センセーは太宰治であり、彼が玉川上水に入水自殺したのは昭和23年であり、「シャボン玉」という童謡が世に出たのは大正12年である。昭和23年に太宰と共に入水心中したのは史実では「山崎富栄」という女性だが、「太宰治」が「センセー」となっているこの「異世界失格」という作品において「山崎富栄」が「さっちゃん」となっていると考えれば、史実の富栄は大正8年生まれであり死亡時は30歳ということになり、大正8年生まれならば子供の頃から「シャボン玉」の童謡に慣れ親しんでいたであろうと思われ、この描写に矛盾は無い。
この魔王城には7人の堕天使のうち、この「さっちゃん」とリーダーらしきタキシードの男の2人が留守番をしており、残る5人がザウバーベルグの5つの地方をそれぞれ攻撃する手筈となっている。しかし、そのうちドンナスターク地方のグリューン城を落とすために出向いた「暴食の堕天使」カイバラはセンセー達と遭遇して倒された。その報告はこの魔王城にも届いたようです。そして、ザムスターク地方を攻めている「憂鬱の堕天使」センゴクという男もドワーフの王国であるゲルプ王国の抵抗が激しく、城を落とすことが出来ず苦戦しているという報告も魔王城に入ってきている。
ここでそのゲルプ王国の王城を巡る攻防戦の場面に移る。グリューン王国を奪いに来たカイバラは単独でやって来てほぼ1日ぐらいで倒されたので、大きな被害は出ましたけど戦いそのものはあっという間に終わりました。しかしゲルプ王国を攻撃している「憂鬱の堕天使」と呼ばれるセンゴクという黒い西洋甲冑で身を包んだ男の場合はおそらく元は憤怒の魔王の配下であったと思われるリザードマンの軍勢を率いてきており、普通に砂漠の中にある王城を落とすべく大軍勢で力押しする攻城戦をしています。センゴクもカイバラ同様に何らかの強大なチートスキルの持ち主であるはずなのですが、センゴクはカイバラとは違って自分のチートスキルを使って城を落とそうとはしていないのは特徴的といえます。
それでゲルプ王国の方でも猛将であるドラン国王率いるドワーフ軍は精強で、世界教団ヘルゼーエンの神官でザムスターク地方を管轄するドリッテン聖堂の司教を務めるヴォルフも軍師として助っ人に来ていて魔法を使って大活躍を見せ、この連携が上手くいってリザードマンの軍勢を撃破し、城を守り抜いていた。隣のザムスターク地方からは同じくヘルゼーエンの司教のイーシャも助太刀しに来ており、どうやらカイバラのグリューン襲撃があまりに短期間で終わったのでイーシャは自分の管轄地域で起きた危機のことを把握していないようですね。それよりもセンゴクの率いるリザードマンの軍勢によるゲルプ王国への攻撃の方があまりに大々的だったのでそっちに気を取られていたのかもしれない。
もしかしたらセンゴクがあえて自分のチートスキルを使わずに大軍勢での攻勢をかけたのはタキシード男あたりの考えた一種の陽動であったのかもしれないですが、せっかく秘かにグリューンを落とそうとしたカイバラのグリューン攻撃は失敗に終わり、力攻めでも何とかなると見ていたセンゴクのゲルプ攻城戦も苦戦することになり、タキシード男の戦略もちょっと躓いているようですね。まぁカイバラの失敗についてはセンセー達と出会ったことが原因だったのだが、それについてはタキシード男は把握はしていない模様。一方でゲルプ王国での苦戦の原因は神官ヴォルフの実力を甘く見たことにあると判断しているようです。
そのヴォルフですが、第3話冒頭のヘルゼーエンの司教会議の場面以来の登場となります。あの時は飲んだくれの不真面目な司教という印象でした。しかし今回の戦場におけるヴォルフは魔法を駆使して大活躍であり、実はザウバーベルグでも屈指の優秀な魔導士であるらしい。また、今回はドワーフの戦士たちとも信頼関係を築いている様子も垣間見えており、第3話でドワーフの悪口を差別的な感じで言っていたことを考えるとちょっと意外な印象でした。今回の話でのヴォルフとドワーフ達との信頼関係は本物のように見えたし、ヴォルフがドワーフ達を見下しているようには全く見えなかったことから、どうやら第3話でのヴォルフのドワーフ差別発言は冗談のようなものだったのだと思われる。ただ冗談とはいってもかなり悪趣味な冗談であり、あの時の飲んだくれた態度も今回の真面目に戦う彼の様子と比べると、あれもワザとそういうだらしない姿を見せていたように思われ、どうもヴォルフには「ワザと自分を貶めて見せようとする傾向」があるように思える。
今回のエピソード内でイーシャが明かしているヴォルフの過去の出来事として、かつてヴォルフは異世界からの転移者の育成に最も熱心な司教だったのだが、ある時を境に転移者の育成に全くやる気を無くして飲んだくれるようになってしまったのだそうです。第3話の司教会議の場面でもヴォルフは転移者を嫌っていましたが、つまり以前の彼は転移者を深く信頼していたみたいなのです。おそらく「ある時」を境に、真面目で優秀な魔導士で転移者とも信頼関係を築いていたヴォルフが、突然に不真面目で転移者嫌いな司教に変わってしまい、ヤケになったように自分を貶めるような言動が目立つようになったのでしょう。その「ある時」にヴォルフを絶望させるようなよほどの事件が起きたのであり、そして、それはおそらく転移者が絡んだ事件だったのだろうと想像出来ます。
まぁそんなヴォルフでも、さすがに世界の危機ですから今回は真面目に戦っているわけであり、タキシード男は普段のヴォルフの評判が芳しくないことから多少甘く見ていたようで苦戦を強いられているわけです。ただ、一旦魔王城に引き上げてきたセンゴクは次は自分が前線に出るので問題ないと言う。つまり次は自分のチートスキルを使って城を落としてみせる自信があるということです。だがタキシード男は、センゴクをあまり信頼していないのか、あるいはもっと確実な手段を思いついたのか、どっちなのかは分からないが、とにかくここで担当替えをして、ゲルプ王国の攻城戦には「女性陣に行ってもらう」と言い出す。そこで「さっちゃん」の手首の赤い紐が意味ありげに光ったりしているので、さっちゃんもゲルプ王国に派遣されるっぽいんですが「女性陣」と言っていることから「さっちゃん」単独というわけではなく、別にもう1人「強欲の堕天使」と名乗るセーラー服の女学生の女性キャラが登場し、彼女もゲルプ王国に派遣されるようです。それで、むしろタキシード男の作戦では攻城戦で主な役割を果たすのはこの「強欲の堕天使」の方であり、その理由は彼女がヴォルフのことをよく知る人物であるからみたいです。
さて一方、センセー達の一行はどうしていたのかというと、前回の孤児院での一件の後、再び大砂漠を旅してドリッテン聖堂を目指したのですが迷ってしまい、攻城戦が起きているなど知らないまま戦場近くに迷い込んでしまったところ、ヴォルフがリザードマンの軍勢を吹き飛ばすために魔法で発生させた竜巻にセンセーの入った棺桶が巻き込まれてしまいセンセーが怪我してしまう。それでセンセーは王城に収容され、追いかけてきたアネット達も城に入り、ここで一行はイーシャと再会することになります。またアネットは旧知のヴォルフとも再会し、センセー達はヴォルフとは初対面ということになる。
センセーは竜巻で吹き飛ばされた時にこれで上手く死ねると期待したらしいのですが棺桶に入っていたおかげで怪我だけで済み、大事な棺桶だけが壊れてしまいヴォルフに対して半ギレしていたりして相変わらずワケの分からん人ですが、アネット達はこの地にも7人の堕天使の攻撃によって戦争が起きていると知ってビックリします。それでイーシャ達に自分たちが既にグリューンで7人の堕天使のうちの1人をやっつけてきたのだと教えると逆にイーシャ達がビックリします。ただヴォルフはセンセー達のような変な連中が堕天使を倒したとはにわかに信じられないようで、とにかくこの地では自分がいる限り堕天使が相手でも負けることはないと自信満々で、センセーには余計なことはせずに大人しくしているようにと言う。
ヴォルフは今回はしっかり真面目に戦ってはいるのですが、元来がちょっと自信過剰でナルシストなところはあるようですね。まぁそれに見合った実力はしっかりあるわけなんですが、センセーはそうしたヴォルフにちょっと興味は持ったようですが、創作意欲を刺激されるというほどではないようです。それよりも使い魔のメロスがヴォルフの雌の使い魔に一目ぼれしてしまったらしく、センセーは「片恋こそ恋の最高の姿」などと言ってメロスに1人で悶々とするようにと突き放してはみたものの、よく考えれば自分も「さっちゃん」という1人の女性の行方を探す片恋に生きる愚か者の同類だと気付き、メロスの片恋の成就のために一肌脱いでやることにした。
そうしてメロスと共にヴォルフの使い魔を探して夜の城下の町を歩くと、ヴォルフと共にいる雌の使い魔を発見する。見るとヴォルフは町娘たちにモテモテで、さすがヴォルフのような自信たっぷりの色男は自分やメロスのような片恋に焦がれる愚か者とは大違いだとセンセーは思う。ただ町娘たちの誘いを断ってヴォルフが何処かに去っていき、雌の使い魔もそれについていくので、センセーはメロスのためにヴォルフたちを尾行します。するとヴォルフは裏町の外れにある寂れた小屋の前に着くと、その中に居る誰かに小声で呼びかけて、どうやら中に入れてもらいたくて懇願している様子。しかし小屋の中から応答は無く、それを見てセンセーはヴォルフのような色男が実は自分やメロスと同類であったということに驚く。すなわち、ヴォルフもまた片恋に焦がれ、ア愛する者を追いかけて振り向いてもらえず苦しんでいた。あの自信満々そうなヴォルフの立ち居振る舞いからは想像できなかった彼の実像にセンセーは驚き、俄然興味は湧いてきたが、ヴォルフが応答の無いドアの向こう側に向かって「この戦争が終わったら俺は今度こそ君を」などと言いだしたのを見て、さすがにこれを盗み聞きすることは同じ片恋に生きる身としては下衆の勘繰りが過ぎると思い、センセーもそそくさと退散することとした。
そうして翌日、再び王城にリザードマンの軍勢が押し寄せてきて防衛戦が開始される。ヴォルフも見張り台の上に登っていつものように地上の部隊に指示を送りつつ魔法で援護を行っており、イーシャも付き添っていた。すると彼方から何かが飛んできて、よく見るとそれは巨大なドラゴンであった。それは憤怒の魔王が使役していたという伝説のドラゴンであり、何か魔力の枷のようなものを身体に施されている様子であった。今はおそらく7人の堕天使の手駒に去れてしまっているのであろうと思われるそのドラゴンの攻撃によってドワーフ軍は大損害を受けてしまう。ヴォルフは憂鬱の堕天使がドラゴンを攻撃の切り札として繰り出してきたのだと思い、おそらくあのドラゴンに憂鬱の堕天使が乗っているのだと考え、魔法でドラゴンを撃墜しようとします。そしてドラゴンがヴォルフのいる見張り台に突っ込んできたので撃ち落とそうとしたところ、ヴォルフはドラゴンに乗っているのが憂鬱の堕天使ではなことに気付く。
ドラゴンに乗っていたのはヴォルフがよく知る女性でした。それでヴォルフが驚いて攻撃の手を止めると、その女性はドラゴンを見張り台の手前で止めて、見張り台に降りてくる。そして「お久しぶりです、我がマスター」とヴォルフに呼びかける。その女性は先ほどの魔王城の場面でタキシード男が「強欲の堕天使」と呼びかけたセーラー服の女学生のように見えた女性でした。つまりタキシード男から憂鬱の堕天使に代わってゲルプ王国の城攻めを任された「強欲の堕天使」がドラゴンに乗って襲来してきたのです。だがヴォルフは彼女の顔を見て、ただ驚愕して「なぜ君が?」と言っており、どうやら彼女が今や「強欲の堕天使」となっているということをヴォルフは知らなかったみたいです。彼女がヴォルフを「我がマスター」と呼んでいるところを見ると、2人が旧知の仲であるのは間違いない。マスターなんていうぐらいだから親密な関係であろうとも思えるのですが、ヴォルフは彼女を見てちょっと怯えたような表情も浮かべているので、あまり良い関係ではないようにも思える。
何故かヴォルフは彼女の顔を見ると戦意を喪失してしまい、そこを狙って彼女は足元から紫色の魔力の腕のようなものを出してヴォルフの身体を掴んで持ち上げてしまう。イーシャは慌てて応戦しようとするが、強欲の堕天使はイーシャにも細長い腕のようなものを絡めて攻撃してきて、するとイーシャの身体から力が抜けていってしまい、イーシャはその場に倒れこんで動けなくなってしまいます。どうやらこれは強欲の堕天使のチートスキルみたいです。「強欲」というぐらいですから、「他人のものを何でも奪い取ってしまう能力」のようなものなんじゃないかと推測できる。それでイーシャはパワーを奪われて動けなくなってしまったのでしょう。
そうして倒れたイーシャに向かって強欲の堕天使は「貴方たちも後でちゃんと死んでもらう」と言いつつ、「今はこの人に用があるだけ」と言ってヴォルフだけを連れ去ってドラゴンで飛び去ってしまう。このまま一気に城を落とすことも出来たであろうと思えた。タキシード男にもそうするよう指示されて来たはずであるが、それでもあえてまずはヴォルフだけを連れ去っていったのは、おそらく彼女の個人的感情によるものなのでしょう。彼女はヴォルフと何か因縁があり、ヴォルフに何かをしようとしているようだとイーシャは察した。それでドラン国王に頼んで一旦城の中に撤退して籠城するということにして、夜になって王国の幹部たちやアネット達と善後策を協議することとなりました。
ドラゴンが飛び去っていった方角が南西方向であったので、ヴォルフが管轄するドリッテン聖堂に向かったと思われる。そしてヴォルフを連れ去ったあの女がヴォルフを「マスター」と呼んでいたことから考えて、もしかしたらあの女はかつてヴォルフがドリッテン聖堂で育成していた転移者であり、ヴォルフの教え子であった者なのかもしれないとイーシャは考えた。その女が今や7人の堕天使のうちの1人となっているのかもしれない。あるいはヴォルフがある日突然に転移者の育成を止めて酒に溺れるようになった原因にあの女が関わっているのかもしれないとも思えたが、詳しいことは分からない。
とにかくまずはドリッテン聖堂に兵を派遣してヴォルフを奪還すべきだとイーシャはドラン国王に進言するが、ドラゴンに与えられた損害が大きく、今は残った兵力で必死で防戦して落城を食い止めるのに精一杯な状況なので、ヴォルフ救出に割ける兵力が無いとのこと。そこでアネット達が自分たちがヴォルフ救出に行くと言い出す。ところがよく見るとセンセーの姿が見えず、一体どこへ行ったのかと狼狽えていると、センセーが戻ってきて皆は安堵するが、なんとセンセーが見知らぬ老婆を抱きかかえて戻ってきたので皆は驚く。
実はセンセーはヴォルフが連れ去られた経緯を聞いて、どうやらヴォルフの過去には何か複雑な事情があるようだと察して、あのヴォルフが訪ねていっていた小屋に住むヴォルフが想いを寄せる娘ならばヴォルフの過去について何か知っているのではないかと思い、あの小屋を訪ねていたのです。ところが小屋から出てきたのは娘ではなく老婆であった。それでセンセーはますます興味が湧いてきて、老婆に自分と一緒に来てほしいと頼み、老婆もヴォルフが連れ去られたという事情を聞くとセンセーの申し出を嫌がる様子も無かったので、脚が弱って歩くのが難儀そうな老婆を抱きかかえてセンセーは城に戻ってきたのです。だが、不思議なことに老婆はずっと黙ったままで何も喋らない。
そして翌朝、ドワーフ達に新たに作ってもらっていた装備品を身に着けてアネットとタマとニアがドリッテン聖堂に向けて出発することになり、センセーも一緒に行くことになったがセンセーはまだ何も喋らない老婆を抱いたままです。さらにセンセーは何やらドワーフ達に自分用の何かを作るよう依頼していたらしいのだが、特殊すぎて職人たちが混乱していてまだ出来ていないとのこと。これっておそらく元の昭和の世界の何かの道具を発注したんでしょうね。まぁどうせセンセーが欲しがるものだからロクなものじゃないんでしょうけど。
とにかくドリッテン聖堂に向かって出発することになるが、砂漠を突っ切って行かねばならず大変な行程になりそうです。すると、そこに突然に砂の中から前回登場したカーリマンの初代総長のトオルが現われる。どうやらトオルは前回の話でニアに危機を救ってもらったのを契機に改心して暴走族から足を洗い、今は昼間は砂漠でバス会社をやって、夜はあの孤児院の警備をやってくれているらしい。
それで、そのバス会社というのはどういうものかというと、実はトオルのチートスキルは彼の触れた生き物を何でも乗り物にしてしまうという能力らしい。まぁ前回サソリをバイクにしていた時点で大体想像はついていた能力だったんですが、ここでトオルはその場に居た虎みたいな魔物をチートスキルでバスに変えてしまう。いや、これって「となりのトトロ」の猫バスそのまんま過ぎて爆笑した。
そして皆で猫バスに乗ってドリッテン聖堂に向かうことになるが、トオルは前回センセーの毒で自分のバイクにしていたサソリを殺された恨みを忘れておらず、それに前回センセーには特に何も助けてもらった恩も無いので、センセーだけ乗車拒否して他の皆を乗せてバスで走り去ってしまいます。それでセンセーも砂漠を突っ切って行くほどヴォルフに執着しているわけでもないので行く気を失ってしまうのですが、すると突然に今まで何も喋らなかった老婆がセンセーに縋りついて「どうか私もヴォルフ様のもとへ連れて行ってください」と哀願してくる。
センセーはいきなり老婆が喋ったので驚くが、老婆は「私が行かなければいけないのです!」と必死に言う。どうやら老婆はセンセーにヴォルフの過去の話をするつもりは無かったようだが、それでもヴォルフが謎の転移者と思われる女に連れ去られたと聞いて、ヴォルフの居る場所に行かねばならないと思ったようです。それでとにかくセンセーと一緒に行動していればヴォルフの居場所に連れていってもらえると計算して、それでずっと黙ったままセンセーにくっついていたのですが、センセーが急にヴォルフに会いに行く気を失くしてしまったので焦って言葉を発したようです。
そうした老婆の心理はだいたい察したセンセーであったが、そこまで必死になってヴォルフに会おうとする老婆の事情はセンセーにはよく分からなかった。ただ、とにかく老婆が必死であることは伝わり、その強い想いは、まさに「片恋」のそれであるとセンセーは直感した。そして、それは「美しい物語」のタネになると感じた。つまりセンセーは老婆の物語に創作意欲を感じたのです。それでセンセーは老婆と共にドリッテン聖堂に行きヴォルフに会おうと決意し、老婆に手を差し出し「では行こうか、お嬢さん」と声をかける。そうして今回は終わり次回に続くのですが、ここでセンセーが老婆を「お嬢さん」と呼んでいることが気になります。単に「片恋」にその身を燃やす者はたとえ外見が老婆であっても「お嬢さん」だという意味なのか、それとも何か老婆の特殊な事情にセンセーが気が付いたのか、いずれなのか次回で明らかとなるでしょう。そういうわけで次回が楽しみであり、ラスト2話の盛り上がりに期待しましょう。