2023夏アニメ 9月2日視聴分 | アニメ視聴日記

アニメ視聴日記

日々視聴しているアニメについてあれこれ

2023年夏アニメのうち、9月1日深夜に録画して9月2日に視聴した作品は以下の5タイトルでした。

 

 

七つの魔剣が支配する

第9話を観ました。

今回はまずピートのリバーシ化が進行して、このまま皆に秘密にし続けることは難しいということになり、既に秘密を知っているオリバー以外の仲間4人にも秘密を明かすことになった。皆は驚きはしたが否定的な反応はせず、ミシェーラは女性態の際の魔力の利用法など助言してくれたりする。

ちなみに前回のラストシーンで強そうな相手に遭遇していたロッシですが決闘に負けたようで、オリバーに負けたのに続き連敗となり早々に脱落棄権となった。だが言い出しっぺのロッシが降りても勝ち抜き戦は継続というわけで、オリバーを苦しめたロッシを一蹴した強敵がどうやら潜んでいるようです。

その後、ミシェーラの親戚のコーンウォリスとピートが剣の授業で試合をしてピートが負けてしまう場面があり、ピートは剣の修行を頑張ると誓う。その後、カティのもとにミリガン先輩から連絡があり、この前のお詫びとして迷宮内の工房を譲ってくれるという。オリバー達は時期尚早だと言って止めるが、カティは魔法生物を守るために研究者として地位を確立したいと言い、そのために工房を持ちたいと言い、自分1人では無理だから皆に手助けしてほしいと頼む。

その志を認めて皆はカティに協力することを決め、皆で迷宮に入りミリガンが使っていたという工房を目指す。そして色々な魔法生物に遭遇したり、変な先輩たちに遭遇したりしながら、遂に工房に到着して6人で食事会をする。そしてミシェーラがあまりに今の瞬間が楽しいのでこの6人の集まりに名前を付けて確かなものにしたいと提案し、それに応えてナナオがエイジアの習慣だと言って、6人全員の剣先を円陣を組んで重ねて花弁のような形を作り、それを「武人の絆を表す形」だと言い「剣花」という名だと言う。そしてナナオは武人は未来を語らないと言い、未来を誓うのではなく今を覚えておき、未来がどう変わろうともここに結んだ6人の絆は変わることはないという証に、この集まりの名前を「剣花団」と名付けようと提案する。これに他の5人も賛同して、6人の集まりは「剣花団」という名に決定する。

今回はまぁそういう内容で、最後はかなりアツかったですけど、まらちょっと全体的には色んな要素が散りばめられていて、どれも魅力的ではあるんですけど、ちょっと相変わらずとっ散らかっている印象でまとまりが無いです。もうこれで9話ですからね、そろそろこういう纏まりの無さには低評価を付けざるを得なくなってきますので、ちょっと下げることになりますね。ただ面白くなりそうな要素は相変わらずたくさんあるので期待はしています。

 

 

彼女、お借りします(第3期)

第32話を観ました。

今回は急展開となり次回に続くという話で、まぁ特に説明不要で、見れば分かるというガチな展開となります。大山場は次回ですが、今回もその前フリとか繋ぎとかそういうレベルではなくて、十分ガチの山場の連続となっています。

まず最初の方だけは気楽で平和な場面となっていて、まずはあの撮影旅行の際に和也たちを騙して以来姿を見せていなかった八重森が久々に登場します。どうやらあの後すぐに友人と旅行に出かけていたようで、和也たちが信州から帰ってきた時にはもうアパートに居なかったようです。それで和也も千鶴も騙されたことで八重森をとっちめる機会を逃していたのだが、八重森は旅行から帰ってくると和也の部屋に来て「童貞卒業記念パーティー」をやろうと言ってくる。

どうやら八重森は自分の画策が成功して和也と千鶴が斑尾のホテルで結ばれたと思い込んでいるようで、自分は和也に感謝されていると思っているようです。それで和也が何も無かったのだと説明すると八重森は驚き、相変わらず和也が童貞をこじらせてるとか、千鶴が慎み深すぎるとか言って途方に暮れ、それでも何か進展はあったはずと言うので、和也も否定はしなかった。といって実際大した進展があったわけではない。少なくとも八重森が期待するような肉体関係的な進展は無い。ただ、千鶴から初めて祖父の話を聞かされ、心から感謝していると言われたのは和也にとっては確かに良い思い出であり、2人の心の距離が縮まったようにも思えたので、進展といえば進展であった。

ただ、その後に瑠夏が信州まで来て叱られ、その後も瑠夏にフォローするため誕生日デートしたりとか、八重森のせいで色々と大変だったわけで、そのことについて和也が抗議すると、八重森も瑠夏にはあの日に直接ぶん殴られたそうなので既に罰は受けているようでした。そうして和也と八重森がアパートの部屋の外の廊下で会話していると千鶴も部屋から出て来て八重森にチクチクと嫌味を言って攻撃してくるので、八重森はすかさず話題を逸らして映画の話を始め、それに2人もつられて八重森は上手く誤魔化して逃げ切る。しかし和也もそうやって千鶴たちと映画の話をしていると「仲間」って感じがして楽しくなってくる。

ところが、そうしているとそこに瑠夏がやってきて、和也が女子2人と親し気に喋っているのを嫉妬の目で睨んでくる。これはまた瑠夏が嫉妬して大騒ぎになるんじゃないかと警戒する3人でしたが、意外なことに瑠夏は余裕の態度で以前のようにキレたりはしない。千鶴のことは「ただのレンタル彼女」であり、八重森のことは「ただのお隣さん」と呼び、そして自分は「彼女」だと強調して、和也のことを「和也」と何度も呼んで、自分は一歩リードしてるというアピールをする。誕生日デートの時に「和也」呼びをする許しを得て、すっかり瑠夏は調子に乗っているようです。

この瑠夏の「和也」呼びには千鶴も八重森もビックリして、瑠夏が「和也」と連呼しながら和也と2人で強引に部屋に戻っていくのを唖然として見送る。そして八重森は千鶴にももっとアピールして対抗するよう言いますが、そもそも自分と和也はそういう関係ではないと八重森に言っている千鶴はそれに応じるはずもなく、「呼び方なんて人それぞれ」「恋人なんだから呼び捨てなんて当たり前」とクールに言って部屋に戻っていく。しかし部屋に戻って1人で「和也」と呟いてみたりして、何をバカなことをやってるんだろうと自分で自分にツッコミを入れたりします。

そして自主制作映画の上映会の日が迫ってきて、和也と千鶴が上映会の会場の映画館の下見に行く日になりますが、そこに千鶴の祖母の小百合も一緒に行きたいと言い出し、病院から外出許可を貰って同行することになった。映画の方はまだ映研で編集中で完成していないが、まずは当日の段取りの打ち合わせをやっておくための下見で、小百合がどうしても映画館を見たいというので来てもらったが、当日は多忙が予想されるので主賓といえる小百合に前もって段取りを現地で確認できるのは和也にも有難い話であった。

そうして当日の段取りの打ち合わせなどをしていると「まだ観ていないのにもうスクリーンに千鶴が居るような気がして」と言って小百合が涙ぐむ。それを見て千鶴はちょうどお手洗いに行くタイミングであったので席を外すが、自分が映画に出る姿を見せるために頑張った結果、小百合が涙ぐむほど喜んでくれたことが心の底から嬉しくて、1人になって会心の笑みを浮かべる。

一方、映画館の中で2人で残った和也と小百合であったが、小百合は和也に「貴方がいなければ私は千鶴の映画を観れなかった」と感謝の言葉を述べて「貴方に出会えて私と千鶴は本当に幸せ者ね」と言う。しかし和也はこの小百合の心の底からの感謝の言葉を聞いて、ずっと小百合に嘘をつき続けていることに罪悪感を覚える。小百合が単に千鶴の映画を観れて幸せと言っているわけではなく、自分が死んだ後も和也が彼氏として千鶴を支えて幸せにしてくれると信じて安心しているから幸せを感じているということは和也は分かっていた。しかし実際は和也は千鶴の彼氏ではなく、単なるレンタル彼女の客なのであり、この映画が完成して上映会を終えたらもう日常的な接点は無くなる。

小百合を悲しませたくないからといって小百合の話にずっと合わせていると和也も罪悪感で胸が痛んで耐えられなくなる。もうすぐ亡くなる人だと分かっているから、そんな人に嘘ばかり言うのはあまりにも罪深い気がして辛いのです。それで和也は小百合に不自然だと悟られない範囲でせめて自分の本心を話そうと考えた。そうしなければ心がもたないと思えてきたのです。それで和也は、自分は確かに千鶴の彼氏ではないが、千鶴のことを好きだということは嘘ではないと思い、その話をしようとする。

そうして和也は「俺にとって千鶴さんは今でも高嶺の花で、どうして俺なんかに付き合ってくれるのか、いつ愛想尽かされてもおかしくないって思えるんです」と言う。これを聞いて小百合は和也が謙遜していると感じたようですが、これは和也の本心でした。ずっと千鶴に迷惑ばかりかけてきた自分に、どうして千鶴が親切にしてくれたり、一緒に映画を作ろうという誘いに乗ってくれたのか、今でも和也は不思議に思っている。映画の件では斑尾で千鶴から話を受けた気持ちを聞き、感謝しているということも聞いたが、それでも和也はどうしても千鶴のような高嶺の花が自分みたいなつまらない男を信頼して感謝しているという状況が現実感を持って受け入れられていない。

ただ、和也の小百合に今この場で言いたかった「本心」というのはそのことではない。それは単なる前フリであり、和也は「でも、それでも良いと最近は思えるんです」と本心を言う。千鶴の夢を一緒に見る日々を送るうちに、自分自身がこんなに何かをやり遂げたいと初めて思えた。千鶴が幸せになれなきゃ嘘だと思えた。それは和也自身にとって初めて得た夢であり、かけがえのない人生の出来事でした。だから和也は「たとえ恋人でなくなっても千鶴を一生支えていきたい」と小百合に言う。千鶴を支えることは和也自身の夢なのであり、それは和也と千鶴が恋人関係であろうとなかろうと関係ない。千鶴が望まなかったとしても、それは和也の夢なのだから和也の勝手にしてもいいことなのです。和也は恋人だから千鶴を支えるのではなく、恋人でなくなった後も千鶴を支えていくつもりだということであり、これは小百合には永遠の愛の誓いであり、仮に2人が別れても千鶴の幸せは保証出来るという意味の言葉のように聞こえる。そう聞こえてくれれば小百合を安心させることが出来るので良いと和也は思っている。しかし実際は和也の本心は「たとえ恋人でなくなっても」ではなく「たとえ恋人でなくても千鶴を一生支えていきたい」なのです。もともと恋人ではないけど、それでも自分は千鶴の夢を一生支えていきたい。これが和也の偽らざる本心であり、この本心を言うことで和也は小百合に対する罪悪感から解放され、同時にちょっとだけ言い回しを変えることで恋人による永遠の愛の誓いのように錯覚させて小百合を安心させることも出来る。

和也にとっては苦肉の策であり、和也にしては上手い言い方であり、そしてこれは間違いなく和也の心からの言葉でした。ただ、小百合はその和也の言葉を聞いて、和也の想いとは別にあることを思い出したみたいで、和也と一緒に映画館の待合スペースに出て、そこで千鶴と合流して、今度は和也がトイレに行って席を外すと、小百合は千鶴に話しかけて、ある質問をする。それは「夢を見続けることに苦しんではいないのか?」という問いでした。自分や亡き夫との約束を守らなければいけないという義務感に縛られて無理をして苦しんでいるのではないかと、小百合は千鶴に問いかける。

確かに千鶴は「夢はきっと叶う」という祖父の最期の言葉に縛られて、それでも夢が叶わない現実に打ちのめされていた時期はあった。そのことを思い出して千鶴は一瞬表情を曇らせる。確かに思い当たるところはあるのです。その千鶴の表情を見て、小百合もやはり千鶴が本心では夢を見続けることに苦しんでいたのだと思う。だが千鶴は一瞬表情を曇らせたものの、すぐに平然とした顔に戻り、平気だと言う。それはいつもの強がりのようにも見えたが、それに続いて「そりゃ辛いこともたくさんあるけど、夢を見るのは好き、きっとこれからもずっと」と言う時の千鶴の真っすぐな目を見ると、それは本心から言っているのだということが小百合には理解できた。

それで、小百合は千鶴が夢を見続けることに苦しんでいた時に、誰かが千鶴の夢を支えてくれて、その結果、千鶴は夢を見ることが苦しみではなくて楽しみになったのだと理解できた。そして、その「誰か」というのは間違いなく和也なのだと小百合には思えた。さっきの和也の言葉を聞いた以上、それ以外ありえないと思えた。実際、千鶴が夢を見続ける苦しみに潰れそうになっていた時に映画の話を提案して千鶴を救ったのは和也なのだから、その小百合の想像は当たっていた。

では、どうして小百合は和也の言葉を聞いた後、急に千鶴にこんな質問をしたのでしょうか。それは和也が千鶴の夢を支えたいとあまりに強い気持ちで言うものだから、それが千鶴の重荷になっているのではないかと少し心配になったからです。実は昔、まだ千鶴の祖父が生きていた頃、小百合は夫が千鶴が女優になりたいという夢を「夢はきっと叶う」とあまりに強く応援するのを反対していたのです。女優はそんな簡単になれるものではないのだから無責任なことを言って千鶴が辛い思いをしたらどうするのかと小百合は夫を非難した。すると千鶴の祖父は「夢は叶うこともある」と言い「その僅かな希望が辛く厳しい現実を生き抜く灯台になる」と言う。

千鶴の家は貧しく、両親は不在で、将来に希望はあまり無い。千鶴がそんな環境で腐ってしまうことがないように祖父は、あえて実現困難でも高い目標を掲げさせて、現実を変えて生きていくエネルギーを千鶴に持たせようとしたのです。本当に女優になってほしいと思っていたわけではなく、本当に女優になれると思っていたわけでもない。ただどんな厳しい現実の中でも前を向いて生きるために「夢」というものが必要だと思ったから、千鶴が初めて抱いた「女優になりたい」という夢を否定せず肯定し、それはきっと叶うと言って後押ししただけだったのです。別に女優じゃなくて別の職業でも何でも良かった。ただ、ずっと夢を持とうともしていなかった千鶴が中学生になって初めて口にした「夢」を否定してしまったら、そこで千鶴がもう一生夢を持つことを諦めてしまうかもしれないから、それが怖くて「女優になりたい」という千鶴の夢を全肯定して後押ししたのです。

ただ祖父には気がかりもあったようで、それは自分の過剰なまでの応援がもしかして千鶴の重荷になっているのではないかというものでした。千鶴の生きる活力になればと思ってやったことだが、もしかしたらやり過ぎて千鶴にプレッシャーになっているのではないか、困難にぶち当たった時に逆に重荷になるのではないかと思えた。それで祖父は小百合に、自分が先に死んだら、千鶴に「夢を追うことが苦しみになっていないか?」と聞いてほしいと頼んでいました。

その後、千鶴の祖父は交通事故で亡くなりましたが、小百合はその夫との約束はしばらく果たさずに千鶴が前にも増して夢を懸命に追っている姿を見守っていました。もし夫の言葉が重荷になっていたのならば夫が死んだ後に千鶴は夢を追うのを止めたはずであり、夫の死後も夢を追い続けているということは千鶴が自分の意思で夢を追っているのだと小百合には思えたのです。だが何年も女優になるという夢が叶わないまま頑張り続けている千鶴を見ていると、小百合は今の千鶴には以前の夫のように傍に居て夢を支えてくれる存在がいないことに気が付き、もしかしたら千鶴が自分たちとの約束を果たす義務感に縛られて苦しんでいるのではないかと心配になってきた。そんな中で今回、和也の言葉を聞いて、千鶴の夢を支えてくれる人が傍にいたということを知り嬉しく思う反面、それもまた千鶴の重荷になっているかもしれないとも心配になってきた。それで思い切って千鶴に夫の遺した質問を投げかけてみたところ、千鶴が和也の支えもあって、夢を苦しみではなく楽しむことが出来ている、そんな強い人間に育ったことを確信できた。そして、自分の心配は杞憂だったのであり、正しかったのは夫や和也だったのだと分かった。

そうして千鶴がコーヒーを持ってくると言って席を外すと、1人になった小百合は天国の夫に呼びかけ、千鶴が映画に出ること、多くの観客に見てもらえることを報告し、千鶴が辛い現実に負けずに強く育ったことを伝え、貴方がやったことは間違いじゃなかったということを伝えた。一方、千鶴はトイレを出てくる和也を待ち伏せして、小百合が喜んでいたことを伝え、和也に改めて感謝の言葉を伝え、そうして2人はコーヒーを買って一緒に小百合のもとに戻るが、もうその時には小百合は意識を失って倒れてしまっていたのでした。

和也と千鶴は驚愕して、慌てて救急車を呼んで病院に戻るが、医者の診立てでは病状が悪化して回復は難しく、今夜がヤマだという。千鶴は取り乱すわけでもなく病室の外の廊下に出て和也にそのことを伝え、和也はそれを聞いて呆然として言葉が出てこない。そんな和也に対して千鶴はせっかく映画を作ってもらったのに無駄になってしまったことを詫びる。でも最後まで小百合のために頑張るきっかけをくれたことを感謝するとも言う。だから後悔は無いとも言う。それから他には、クラファンは良い経験になったとか、映画作りは楽しかったとか、主演映画は今後の仕事に活かせるとか、そういうことを言って和也に感謝するが、最後は「神様は意地悪ね」と言って少し肩を落とす。

実際は千鶴が物凄く悲しくて寂しくて悔しいことは和也にも分かっている。後悔が無いわけもないことも分かっている。それなのに千鶴はあくまで強がっている。千鶴だって本当は和也に縋りついて泣き叫びたいところだが、本当の彼氏でもないのにそんなことが出来るはずがないと思って我慢して強がっている。一方で和也は自分が本当の彼氏ではなくて只の他人に過ぎないから千鶴は虚勢を張るしか出来ないのだと思っている。もし自分が本当の彼氏ならば心細さを必死で隠す千鶴を抱きしめて支えてあげることが出来るだろうに、不甲斐ない自分は千鶴のために何もしてやれず、ただ千鶴が無理をして強がりを言うのをいたたまれない気持ちで聞くしか出来ないのだと思い、涙がこみ上げてくる。

そうして、あくまで他人行儀を貫き通して千鶴が病室に戻っていくのをただ見送るしか出来ない和也であったが、せめて何か千鶴のために自分が出来ることはないかと模索して、病室に戻ろうとする千鶴を呼び止め、小百合が意識は無いが周囲の声は聞こえているらしいということを聞くと「自分達が本当の恋人同士ではないことを小百合に伝えよう」と提案する。

それは小百合を悲しませるだけだからやめておこうということは以前に決めたはずだと言って千鶴は反対するが、和也はこれは小百合のために提案したのではなく、千鶴のために提案したのでした。和也は「水原は引きずらないのか?」と問いかける。最期の最後まで小百合に嘘をつき続けた罪悪感は本当に残らないのかと和也は千鶴に問いかける。そして、もし千鶴に罪悪感が残って、これからの人生ずっとその罪悪感に苦しむことがあるならば、そんなことは小百合も望まないはずだとも言う。小百合を悲しませないために嘘をつくことが千鶴の苦しみになるのならば、せめて自分はその千鶴の苦しみを取り除きたい。映画を小百合に見せることが出来なかった自分にはもうそれぐらいしか千鶴のために出来ることは無いという和也の決意でした。そして、そうして千鶴の苦しみを取り除くことはきっと小百合だって望んでくれるはずだと和也は確信していた。

だが千鶴はあくまで小百合に真実を告げることを躊躇う。そして和也に「祖母は貴方を恨んで死ぬかも」と脅すようなことも言う。だが和也はそれでも構わないと言う。千鶴の苦しみを減らすことが出来るならば自分は悪者になっても恨まれても何だって構わないと和也は思っていた。それでも千鶴は「私は悲しい真実なんて嫌いよ」と言って和也の提案を拒み病室に入っていってしまう。だが和也はそこまでして千鶴が真実を告げるのを拒むこと自体が、千鶴が深い罪悪感を抱いていることを証拠だと思った。千鶴だってたとえ真実を知っても小百合が恨んだりしないことは分かっているはずだ。だから真実を告げることを怖がる理由は千鶴本人の中にあり、それはもともとずっと嘘をついていたことに罪悪感を感じ続けてきたからだ。

そんな罪悪感を解消しないまま小百合を逝かせてしまって、二度と真実を告げる機会の無いままずっと千鶴に消えない罪悪感で苦しむ人生を送ってほしくないと和也は思ったが、もう自分にはどうすることも出来ないとも思った。自分は病室に入れないし、千鶴に提案を拒まれてしまった以上はもう自分には千鶴のためにしてやれることはいよいよ何も無くなった。千鶴を一生支えたいとか昼間に言っておいて、何というザマだろうかと落ち込む和也であったが、そこに映研の田臥からのメールが入り、和也は「まだ出来ることがある」と駆け出していくのであった。今回はここまでで次回に続きます。

 

 

スプリガン

第9話を観ました。

今回は5つ目のエピソード「水晶髑髏」の章の前編となります。今回も前編ですので「起承転結」の「起承」部分にあたり、ストーリーの肝心の部分は描かれないというのはこれまでの4章と同じですが、今回の場合は前編にしては割とテンポが良くて色んな場面が描かれます。これまでの4章の前編が導入部分までしか描かれていなかった印象であったのに比べ、今回は「水晶髑髏」の章のストーリーの折り返しぐらいまで描かれた印象です。ただ、それはあくまで展開が早いのでそういう印象というだけの話であって、物語の肝心の部分は描かれていないという点はこれまでの4章の前編と大差は無い。ただ前フリとなる要素は多くありますので、また今回もそういうのを拾いながら比較的簡潔にまとめていきます。

まず今回特徴的なのは、章のタイトルとなっている「水晶髑髏」の出番が多いことです。これがそもそもこれまでの4つの章に比べて展開が早く感じる原因でもある。すなわち今回は「水晶髑髏」というオーパーツが登場する話なのですが、これまでの章に登場したオーパーツである炎蛇や方舟や神酒や狂戦士が前編の段階ではほとんど詳細にその正体について触れられることはなく登場していないものすらあったのに対して、今回の水晶髑髏については前編の段階で頻繁に登場していて、その正体についても大部分が説明されていて、その威力の実験までもが行われている。

それは、おそらくこの章の主題が水晶髑髏だからなのでしょう。そう言うと他の章の場合は違うのかというと、確かにその通りであり、炎蛇にしても方舟にしても神酒にしても狂戦士にしても、それらは各章のテーマそのものではなかった。炎蛇の章は大自然の脅威と人間の無力がテーマであり、方舟の章は正義という欺瞞、帰らずの森の章は命の使い方、狂戦士の章は科学の暴走がそれぞれテーマであり、炎蛇や方舟や神酒や狂戦士のようなオーパーツはそのテーマを引き出す舞台装置のようなものでしかなかった。しかし、この水晶髑髏はこれ自体がこの章のテーマです。正確に言えば、水晶髑髏というオーパーツの持つ歴史的ロマンの魔性がテーマといえるでしょう。

そういうテーマを描く章だからこそ、ここで登場するオーパーツは水晶髑髏が適切なのであり、炎蛇や方舟や神酒や狂戦士では適切ではなかったのだといえます。そもそも炎蛇や方舟や神酒や狂戦士は世間的に言うところの正確な意味での「オーパーツ」ではない。「オーパーツ」というのは「発見された場所や時代に全くそぐわない出土品や加工品」を表す言葉であり、特にこの作品で扱うようなオカルト分野では「当時の技術や知識では作ることは不可能であったはずの古代遺物」を指します。それゆえに、それは現在の歴史的常識を超えた未知の古代の超文明によって作られたに違いないというロマンチックな想像を掻き立ててくれます。ただ、そうしたロマンチックな想像が生じるには、まずそうしたロマンを生み出す動かぬ証拠としての「オーパーツ」が発見されなければ始まりません。そもそも発見されない限り、それが当時の技術や知識の水準では生みだせなかったかどうかの検証のしようもありません。だから「オーパーツ」というものは現物が発見されていることが大前提といえます。

そういう意味では、炎蛇や方舟や神酒や狂戦士ではそうした「オーパーツ」の条件には当てはまりません。これらは現実世界ではもちろんのことだが、この作品世界においても一般には「オーパーツ」とは認識されていない。それはアーカムが劇中で発見する以前は技術的な検証が可能な近代以降は誰にも発見されていなかったからです。確かにノアの方舟や神酒に関しては伝説の世界では有名でしたが、現物が発見されていない限り、所詮は空想の産物としか見なされておらず、大して歴史的なロマンを掻き立てるような代物ではなかった。

それに比べて、水晶髑髏はれっきとした「オーパーツ」であり、最も有名な「オーパーツ」の1つでもあります。今回のストーリーの中でも言及されていますが、水晶髑髏は現実世界においてもこれまでに十数個が発見されている。水晶で作られた人間の頭蓋骨模型であり、発見されるのは主に中南米の古代遺跡です。とても精緻な作りなので当時の技術水準では作成困難と見なされていて、古代にあり得ないような高度な文明が存在していたのではないかとロマンチックな想像を掻き立ててくれています。実際は当時の技術でも作れたという説もあり、十数個のうちの幾つかは現代文明の力で作られた偽物の可能性もあると言われていますが、ここで重要なのは水晶髑髏が本当に古代の高度文明によって生み出されたものか否かではなく、そうした歴史的ロマンを掻き立ててくれるものであるという点です。実際のところこれらの「オーパーツ」と見なされる古代遺物から判明する情報は極めて乏しくて、それらの存在によって歴史が書き換えられたことはほとんど無い。だから「オーパーツ」という存在の本質は「歴史的ロマンを掻き立ててくれるもの」と考えていいでしょう。

「歴史的ロマン」というものはノアの方舟や神酒のような曖昧な伝説によって生み出される想像などよりも遥かに確固としたものです。水晶髑髏のようなオーパーツは歴史の中に現実に確固として存在していたのですから、そこから生み出される想像は現実と地続きであり、現在の自分達とも繋がりのあるものとして意識され、そのロマンチックな思考は現在の自分たちの行動を縛ることもあり得ます。所詮は想像は想像ですから捻じ曲がった妄想となってしまうことも多々あるのですが、根拠としているオーパーツがなまじ実在しているだけに、変な妄想でもそれが現実だと錯覚してしまうというケースも多々あり、実はこれは結構厄介なのです。これは「オーパーツ」に限った話ではなく「実在性が妄想を現実に錯覚させる」という問題点では、実在する歴史そのものが解釈次第で妄想を生み出して、その妄想に多くの人が縛られてしまうというケースもよく見られる。むしろ私はこのエピソードにおける「オーパーツ」というものはそうした歴史的ロマンの持つ危険性を象徴するものとして扱われているように思える。

水晶髑髏そのものは現代文明で製作可能であるし、水晶髑髏そのものに強大なパワーが秘められているわけでもない。ただ単に超古代文明の存在を想像させてくれる技術水準の代物というだけに過ぎない。だから別に大して問題視するようなものではないということは今回の作中でも言及はされています。それに対して、今回のエピソードの中で登場する「水晶髑髏」というものはそうした現実世界にも存在する既存の水晶髑髏とは全く別物であり、そもそも水晶ではない未知の物質で作られており、原爆数個分の強大なパワーを発するということが言及されています。

しかし、そうした「超古代の未知の物質で作られた危険な物体」を描きたかっただけならば、作者はそれを「水晶髑髏」という形で描く必要は無かったはずです。ここであえて「水晶髑髏」という最も有名なオーパーツの一種としてこの危機を描いているということは、作者はこのエピソードにおいて「歴史的ロマンの持つ危険性」を描きたかったのだと思います。だからこそ、この水晶髑髏を手に入れて悪用しようとする組織として今回のエピソードでは歴史的ロマンに基づく狂った妄想に囚われナチスドイツ復活を画策するテロ組織が登場して、そうした思想の危険性を更に分かりやすく描いているのだといえます。

まず今回の冒頭では、エジプトのアレクサンドリアでアーカムの遺跡発掘を指揮していたアーカムの協力者の考古学者の川原教授が現地アレクサンドリアで何者かに惨殺されたという報告をアーカム日本支部でスプリガン御神苗優が受けます。アーカムはアレクサンドリアで何かを発掘していたようであり、教授を殺した犯人はそれを奪うために教授を殺したようです。その「何か」というのはこの冒頭のシーンでは明確に言及はされていませんが、優が持っているタブレットに人間の頭蓋骨の形をした物体がその「何か」として映っていますので、教授がアレクサンドリアで発掘していたのは「水晶髑髏」なのだろうということがここで分かります。そして、それが悪用される前に奪還するというのが今回の優の任務ということになります。ただ、水晶髑髏そのものは既存の有名なオーパーツだが悪用されるようなものではないし、S級エージェントである優が急いで奪還しなければいけないぐらい危険な代物というわけではない。だから、この「水晶髑髏」は普通の水晶髑髏ではないということが分かります。

ただ優もただ単に奪還任務のためだけにアレクサンドリアに行くという気持ちではないようです。どうやら優は川原教授とも面識はあったようで、今回の川原教授の殺され方があまりに惨いので、優もかなり憤っているようです。犯人は水晶髑髏を奪うだけならば教授を殺す必要も無かったはずであるし、殺すとしても効率重視で考えたらもっと苦痛の少ない殺し方の方が良かったはうzです。しかし犯人は人が苦しんで死ぬのを楽しんでいるかのように、教授を生きたまま五体をバラバラにするような殺し方をしていた。その残忍さに対して優も憤っているようだったが、同席していた日本支部長の山本も憤っていたようで、その惨い殺され方について口にして怒りを表していたところ、山本はハッと気づいたように言葉を止めて「スマン優、お前の前で話すことではなかったな」と優に謝る。

これはちょっと奇妙な話で、優は川原教授が惨い殺され方をしたことは知っているし、その画像も目にしている。そもそも優は仕事が仕事ですから惨殺死体など見慣れているはずです。だから山本は優が気持ち悪がるだろうと思って気遣ったというわけではないだろう。では山本は何を気遣ったのかというと、単に優には「生きたまま手足を斬り落とされるような殺され方」の話題はあまり聞かせたくないという気遣いがあったということになる。優自身は大して拒絶反応も示していなかったが、黙り込んで虚無感のある表情をしており、確かに優にとって面白い話ではないようです。何か優の過去に関わることなのだろうとは想像はつきますが、この場面では詳細は分かりません。

そうしてアレキサンドリアに飛んだ優は川原教授の遺体が見つかった場所に行くと、そこは献花台になっていて、優も花を供えて教授を供養しますが、そこに教授の娘の鈴子が花を供えにやってきて優とたまたま出会います。この鈴子が今回のエピソードにおける優と並ぶもう1人の主人公ということになります。しかし初対面時、鈴子は優がアーカムの人間だと知ると急に冷淡な態度となる。鈴子は普段は日本で高校教師をしており、今回エジプトにやって来たのもアーカムの手配によるものであり、宿舎も優と同じホテルだったのだが、鈴子は父である川原教授と親交があったアーカムに対しては良い感情は抱いていないようだった。

その理由は、父親が昔は家族を大事にする真っ当な考古学者だったのにアーカムと関わるようになってからオーパーツがどうのこうのとオカルト紛いの話ばかりするようになり、家族を蔑ろにして発掘ばかりに夢中になってしまったからだそうです。そして母親が心労で亡くなった時も父親は発掘が忙しくて帰って来ず、遂には父親も発掘旅行先で殺される羽目になった。だから鈴子から見ればアーカムが両親を殺したもののように思える。鈴子がアーカムを嫌う理由はそんなところです。

彼女は生真面目な性格のようで、優が高校生だと知ると、高校生にオーパーツの収集の仕事などをやらせているなんてアーカムは酷い団体だと非難する。優は鈴子が親を失ってアーカムを恨む気持ちは理解出来るし、自分も学校をサボってエジプトに来ているのは確かなので彼女に言われるままになっていたが、さすがに彼女が父親がやっていたオーパーツ収集の仕事のことを悪し様に言うのを聞いて川原教授が気の毒に思えて、父親のやっていたことを信じられないのかと尋ねる。すると鈴子は「私は父と違って現実的なの」「オーパーツなんて出鱈目、信じられるわけがない」と川原教授を侮辱したようなことを言う。

これには優もカチンときて、川原教授は別に子供じみた「男のロマン」みたいな妄想に駆られてアーカムに協力していたわけではないと反論する。そして優は、教授は世のため人のために危険な遺跡の発掘に身体を張ってくれた現実的で立派な人物だったのだと主張するが、鈴子は「ネットの見過ぎね。もっと世の中の常識を学んだ方がいいわ」と優をバカにしてまともに取り合ってくれない。鈴子は優がアーカムみたいな団体で仕事をしているせいでオカルト好きなオタク思想に毒されているだけだと思っているようだが、確かに川原教授が具体的に何をやっていたのか示さずに優が「世のため人のため」とか「危険な遺跡が」とか強弁すればするほど優が単にイタいオタクにしか見えなくなるのは仕方ないことでした。

しかし優としてもアーカムの機密情報を部外者の鈴子に簡単に教えるわけにはいかないので、どうしてもこんなイタい物言いになってしまう。それはおそらく川原教授も同じだったのだろう。アーカムの利益のためでもあったが家族の安全のためにも、アーカムの機密をたとえ家族にでも漏らすわけにはいかなかった。だからアーカムの発掘に協力するようになってからは川原教授は妻にも娘にも自分が具体的にどういう仕事をしているのか詳しくは話すことが出来なかった。おそらくオーパーツの発掘をしているということぐらいしか言えなかったのでしょう。そのうえ教授はアーカムの発掘が多忙で家庭を顧みる余裕が無くなり家族を犠牲にするようになってしまったため、鈴子は父親を怨み、父親が変な歴史的ロマンの虜になって妄想に憑りつかれてしまったと幻滅するようになったのでしょう。そして、父をそんな風にしてしまったアーカムに対しても当然悪い印象を持っている。

実際は川原教授は変な歴史的な妄想に憑りつかれていたわけではなく、超古代遺産が悪用されて人々が犠牲になるという現実的な危機を防ぐために自発的にアーカムに協力してくれていた現実主義者だったのだが、そのために教授の家族が犠牲を強いられていたのは事実です。娘である鈴子にすれば、突然よく分からないまま父親に蔑ろにされたわけで、それまでは良き父親だった教授の豹変に困惑したことでしょう。だが教授は守秘義務で事情を説明出来ないから、愛する父親から急に自分たち家族が何の理由もなく蔑ろにされるなど納得したくなかった鈴子は「父は頭がおかしくなった」という理屈をつけるしかなかったのでしょう。もともとオーパーツなんて世間ではインチキとされているものですから、そんなものに急に夢中になった父親は変な妄想に憑りつかれたのだと思い込むようになり、父親をそんな妄想に引き込んだアーカムという団体も変な団体に違いないと鈴子は偏見の目で視るようになったのでしょう。そして父親をおかしくした「オーパーツ」というものに対しても以前にも増して悪い印象を持つようになり、完全なるインチキとしてバカにするようになったようです。

つまり鈴子の父親やアーカムやオーパーツに対する偏見の根本にあるものは、父親に蔑ろにされたという恨みなのです。そして川原教授がたとえ立派な目的のためであったとしても家族を犠牲にしていたのは事実なのだから、鈴子の恨みは正当なものなのです。教授がいかに人々のために役に立つことをやっていたのかについて鈴子に説明出来れば、鈴子も自分たち家族の犠牲に多少の意義を見出すことが出来て、鈴子の父親への恨みも軽減され、アーカムやオーパーツに関する偏見もいくらか和らぐでしょう。しかし、それは鈴子にアーカムの機密を漏らすということだから、優にはそれは出来ない。

つまり優は鈴子の父親やアーカムへの偏見を解消することなど出来ないのです。それならば放っておけばいいのです。所詮は初対面の赤の他人だし、今回の優の任務に関して鈴子は部外者に過ぎない。鈴子が父やアーカムのことをどれだけ悪し様に言っても、笑って聞き流しておけばいい。深入りする必要など全く無いのです。鈴子など放っておいて優は任務に集中しておけばいいはずです。優の任務はあくまで水晶髑髏の奪還であり、川原教授の殺人事件の捜査ではない。おそらく水晶髑髏を探し出せば必然的に川原教授を殺した犯人に突き当たるはずだが、犯人を逮捕したり殺したりすることが優の任務なのではなく、とにかく水晶髑髏さえ奪還出来れば良いのです。ましてや川原教授の遺族のケアなど全くする必要の無いことです。それなのに優は鈴子が自分の父親のやっていたことを否定するのを聞くと、何故か腹が立って突っかかってしまう。

ところがそうやって優と鈴子が街中で言い合いをしていると数人の男たちが拳銃を持って襲撃してきた。どうやら優を狙っているみたいで、おそらく水晶髑髏を奪った組織がアーカムの動きを察知して、現地に乗り込んできたエージェントである優を先手を打って始末しようとして襲ってきたようです。しかし優はこれを返り討ちにして、倒した男のスマホを奪ってそこから情報を引き出し、襲撃者の男たちはドイツ人で「国家社会主義愛国者党」という組織の一員であることが分かった。「党」と名乗ってはいるがマトモな政党などではなく、札付きの極右テロ組織です。この極右テロ組織が川原教授を殺して水晶髑髏を奪ったと見て間違いなかった。

ただ、優は居合わせていた鈴子には襲ってきた連中が何者なのか分からないとはぐらかした。部外者の鈴子を危ないことに深入りさせるわけにいかないので当然の措置だったが、鈴子はさっき襲ってきた連中が父親を殺した者の仲間なのだということを察してしまい、優が自分に隠し事をしていることに逆に気付いてしまう。それで「私は真実が知りたいだけなの」としつこく食い下がってくるので、優も真実を鈴子に教えて、それで満足させて大人しく日本に帰ってもらうことにしたのでした。

それで優は鈴子と一緒にホテルに戻ると、鈴子に川原教授がアレクサンドリアで発掘していたものが水晶髑髏であり、さっきの極右テロ組織が水晶髑髏を奪うために教授を殺したのだという事実を説明した。高校で歴史教師をしているという鈴子はもともと水晶髑髏というオーパーツのことは知っており、そんなものはこれまで十数個発見されているが人殺ししてまで奪い合うような価値のあるものではないと言って優の話をすぐには信じようとはしなかった。だが優は、この水晶髑髏は世間で知られている水晶髑髏とは違い、水晶ではない未知の物質で作られていて原爆数個分に相当するエネルギーを発する超古代文明の遺産であり、既にアーカムが同種のものを以前に1つ発掘して分析し封印済みなのだが、その際に情報が洩れて世界中の諜報機関やテロ組織が血眼になって第二の水晶髑髏を探しているということ、そしていちはやく第二の水晶髑髏を発掘して封印するために川原教授が懸命に働いてくれて遂にアレキサンドリアで発見して発掘した矢先に教授が殺されて髑髏が奪われたということを説明すると、鈴子もその説明には納得したようであった。

しかし優はここまで詳細に鈴子に機密情報を明かす必要は無かったはずです。別にその気になればアーカムの手配で強引に日本に送り返すことも出来た。鈴子の安全確保だけが目的ならそれで十分だったはずです。だが、あえて川原教授の仕事の真実を説明したのは、納得して大人しく日本に帰ってほしかったというのもあるが、優自身がやはり鈴子に父親である川原教授のことを理解してもらいたいという想いに囚われていたからなのでしょう。娘である鈴子が父親の川原教授のやっていたことの意義を知らないまま、父親を嫌ったままでいてほしくないという想いが優を動かしていたと思われます。

そういうわけで優は本来はルール違反ではあるが鈴子に真実を打ち明けて、これで良かったと思った。これで鈴子は納得して日本に帰ってくれるであろうし、父の川原教授のことも見直してくれるだろうと思った。それで優は鈴子に日本に早く帰って教授に線香でも上げてやってほしいと言うのだが、鈴子は優の予想に反して「このままでは帰れない」と駄々をこねだす。まさか復讐でもするつもりなのかと優は驚くが、鈴子は復讐などではなく犯人を逮捕して裁判にかけて髑髏を取り返すのだと言う。

それを聞いて優は呆れた。ついさっき世界中の諜報機関やテロ組織が血眼になって探していると説明したばかりです。これはもう警察や裁判所などでどうこう出来る話ではないのです。国家の命運、いや人類の命運がかかった裏の世界の大きな話なのであり、だからこそアーカムが動いていて、そのS級エージェントである自分が派遣されてきているのだ。そんなところに鈴子の個人的な感情など持ち込まれても困る。犯人に正当な裁きなど受けさせることは出来ず全ては闇から闇に葬られて処理されていき、髑髏だってアーカムの大金庫に封印されるのであり川原教授や鈴子の所有物ではないのだ。鈴子の個人的な想いなど通らないし、通すような話ではない。これ以上、鈴子の個人的な感情に任務の邪魔をされるわけにはいかないと思い、優は鈴子に対して声を荒げて、足手まといだから殺されたくなければさっさと日本に帰るようにと怒鳴りつける。

しかし鈴子は「お父さんは私たち家族よりもアーカムを選んだ」と言い、「それがどんなに下らないものでも取り返さないと悔しくてたまらない」と言う。つまり、あれほど優が川原教授の仕事が人類の平和と安全のために有意義なものであったと説明しても、それでも鈴子にとってそれは「下らないもの」だったのです。鈴子から見れば、やはりオーパーツも、それを血眼になって奪い合う世界中の国家も組織も下らないのです。原爆数個分の高エネルギー体だからといって何だと言うのか。そんなものが無くても人間は暮らしていけるし、悪用すれば世界を滅ぼすかもしれないとか、なんて下らないものだろうと思う。そんなものを殺し合って奪い合う国家や組織もアーカムも実に下らない。確かに水晶髑髏は実際に危険なものなのかもしれないが、それを封印して人類の未来を守るとか、一見すると立派なことにように思えるが、鈴子から見れば実に下らないことだった。一体誰が作ったものか知らないが、そんな危ない物など最初から作らなければ良かったのであり、作った者がアホとしか言いようがない。それをわざわざ探し出して悪用しようとする者もアホだし、それを阻止するためにアクセク走り回っているアーカムも滑稽な連中にしか見えない。単に愚者の尻ぬぐいをしているだけの団体に過ぎない。

だから鈴子から見れば、そんな自分がやる必要も無い尻ぬぐいを選んで父親が大切な家族である自分や母を捨てたことは悔しい。しかしこんなに悔しいということは自分が父親を愛していたからだ。その愛する父親が大切な家族を捨ててまで手に入れようとした大切な物を取り戻すのは家族である自分の責務だと思って鈴子はアレキサンドリアにやって来たのです。優から髑髏の話を聞く前から鈴子はそうした決意でアレクサンドリアに来ていたのであり、単に花を供えにだけ来たわけではないのです。だから優から髑髏の話を聞き、それが人類の命運を左右する裏世界の話だと聞かされても鈴子の決意は変わらない。人類の命運などという下らない話よりも、「父が命を賭けた物を娘が取り戻したい」という個人的感情をあくまで優先させるのです。そして、そんな自分の想いは、人類の命運などというもののために家族が命を捨てた悲しみや虚しさを知る自分のような人間にしか理解は出来ないのであり、アーカムのエージェントである優のような人間にはどうせ理解は出来ないだろうと鈴子は思っていた。

しかし優は鈴子の想いを聞かされると黙り込んで立ち尽くしてしまう。そして「こんな気持ち、あんた達には分かんないでしょうね」と言って鈴子が出ていくのを黙って見送りながら頭を掻く。優は鈴子の言葉に心を動かされたように見える。そして「人類の命運を賭けた任務」を振りかざして鈴子の個人的な感情を見下して否定しようとしたことを恥じているようだった。優自身がもともとはそうした鈴子のような個人的感情の大切さを理解していたはずなのに、いつの間にかそうした気持ちを忘れて「国家の命運」だの「人類の命運」だのというご立派な理屈を得意げに喋る輩になってしまっていた。それでは「人類のため」「平和のため」「正義のため」という理屈をつけて超古代遺産を奪い合って非道なことをやりまくっている世界中の愚かな国家や組織の連中と何も変わらない。自分が間違っていたと優は反省しました。

その後、優はアレキサンドリアにある国家社会主義愛国者党のアジトを探し出すと、そこに乗り込んでリーダーのケルトハイマーの持つ水晶髑髏を発見すると、それを返すよう要求するが、そこにナイフ使いのハンスという組織の構成員が現れ、ハンスが川原教授を殺して水晶髑髏を奪った実行犯だと知ると、髑髏の奪還の前にまずハンスを殴って落とし前を付けさせようとする。本来の任務はあくまで髑髏の奪還優先であるが、鈴子の個人的感情を聞いて、自分がいつの間にか個人的感情よりも冷たい組織の論理に動かされていたことを恥じていた優は、ここで個人的感情を優先することにしたのです。

だが優がハンスに殴りかかったところ、ケルトハイマーの護衛のボーという強化人間が割って入り、優と戦闘を開始する。ボーの人間離れしたスピードに優は劣勢を強いられるが、謎の声が聞こえてボーの位置を捕捉した優は形勢を逆転させてボーを捕獲し、まずハンスをぶん殴ってから髑髏を奪還しようとしてハンスに近づこうとしたところ、突然現れたミラージュという中国拳法を使う用心棒に攻撃されて大きなダメージを受けてしまう。

優はこのミラージュのことを知っており「裏の世界でコイツを知らなきゃモグリだぜ」と言っているところを見ると、各国の諜報機関などでは有名な用心棒のようです。そのミラージュを知らずに雇っている国家社会主義愛国者党というのは要するに裏世界では二流のテロ組織ということになります。それにしても発頚のような技でアーマードマッスルスーツを貫いて優にダメージを与えたミラージュの強さは凄まじく、優は絶体絶命の窮地となってしまうが、なんとか隙を突いて脱出には成功する。

そうして脱出後に鈴子に拾われてホテルに戻った優であったが、優のスマホに何者かから連絡が入り、優は鈴子と共にある場所に行く。そこは砂漠地帯で、ケルトハイマー率いる国家社会主義愛国者党の連中が水晶髑髏を使って高エネルギー光線の発射実験を行っていた。何者かがその情報をリークして優に報せたようです。そして、水晶髑髏から発射された光線が砂漠に命中して原爆のような巨大なキノコ雲を現出させるのを物陰から隠れて見た優と鈴子は、川原教授が命を賭けて守ろうとした水晶髑髏の危険性を実感したのでした。

そして、この発射実験の際にケルトハイマーの回想シーンが描かれ、彼の回想も語られた。どうやら彼は1945年のナチス第三帝国の崩壊時にベルリンに居た少年だったらしく、実験の前に目を閉じて座っていて「今、総統と話をしていた」と言ったりしており、どうもヒトラーと今でも妄想の中で会話をしているような、ちょっと妄想癖のある頭のおかしな男みたいです。そして1945年ベルリン陥落時の火災で負ったと思われる顔の側面の大きな火傷跡を撫でながら、あの時の光は敗北の光だったが、この水晶髑髏の発した光は長年夢見た勝利の光だとか、総統から受け継いだ新生ドイツ帝国が世界の帝王として反旗を翻すとか言っており、どうやらナイスドイツ帝国の復活しての世界征服を画策しているみたいです。どうもマトモなじゃないみたいですが、この組織が一体何なのかも含めて、続きは後編ということになります。

 

 

AIの遺電子

第8話を観ました。

今回はとても良かったと思います。相変わらず縦軸のストーリーは始まらずオムニバスの寓話的なエピソードなんですが、毎回その出来が良すぎるので、これはこれで1クール貫けば高評価せざるを得ません。どうせ前フリはしてあるわけですから終盤には須堂絡みで母親やMITIに関する大きなエピソードはやるのでしょうし、なんか「ハコヅメ」に近い構成の作品のように思います。「ハコヅメ」をSランクにした私としてはこの作品を低評価するのはバランスを欠く。まぁまだ終盤の展開が分からないので保留ですがSランクも視野に入れて、今回の良回も承けて高評価しておくべきでしょう。少なくともクオリティの高さだけ際立っていて話があまり進んでいない「無職転生」よりは高評価しておくのが私の評価基準としては正解と思います。世間的な評価とは真逆とは思いますけど。どうしてみんなそんなに作画クオリティにそこまで簡単に屈するんでしょうね。1年も経てば更新されるものに過ぎないのに。何十年も色褪せないのはストーリーの強さなのにね。

今回はズバリ「恋愛」をテーマにした話です。まず前半パートはバレンタインデーということでリサが片想い相手である須堂に手作りチョコを贈るという話から始まる。これが味がイマイチだったのですが、須堂は「美味い不味いで言えば何でもロボットに作らせれば間違いはない」と前置きして「リサが一生懸命作ったというストーリーはロボットには作れない。そういう色んなものをまとめて食べるのが人間の暮らしなんだと思う」と言う。要するにチョコの不味さを上手くフォローしたセリフのように聞こえますが、須堂はなかなか良いことを言ってます。

この後、1ヶ月経って須堂もホワイトデーにリサにお返しのチーズケーキを贈りますが、須堂は最初はケーキ屋に買いに行ったのですが急に思い立って手作りのチーズケーキを作ってリサに贈ることにしました。リサがわざわざ手作りのチョコを贈ってくれたことを思い出し、実はその時に須堂が言っていた言葉は上手いフォローの言葉ではなくて本心からリサが一生懸命に作ってくれたことに感謝していた言葉だったのです。その自分の感謝の気持ちを思い出して、須堂は自分も同じように真心を込めた手作りのチーズケーキでリサの心に応えたいと思った。そう考えると、やはり須堂もリサに対してそれなりに特別な感情は抱いているみたいなんですが、完璧主義者の須堂は完璧なチーズケーキを手作り出来てしまい、それを食べたリサはそれを何処か有名な店で買ったチーズケーキだと思い込んでしまう。

そのリサの様子を見て須堂は自分がリサの不味いチョコを食べた時のような感動をリサに与えることが出来なかったことを痛感して反省する。自分自身が言ったことであるのに、むしろ不細工で無器用なものにこそ人間的な愛情というものは宿るのだということに気付くことが出来なかった自分は未熟であったと反省し、須堂はあえて手作りをアピールせずにどこかの店で買ったチーズケーキだと言ってお茶を濁すのでした。

後半パートはその後しばらくしてリサの女友達のヒューマノイドの三好レオンが須堂の病院に来院する話です。このレオンはリサには「サバちゃん」という綽名で呼ばれていて、第4話の性欲関連の連作の中でも登場していたキャラで、実はリサのことを同性でありながら好きだという隠れレズキャラです。リサはレオンのそうした自分への想いは知らず良き友達だと思って接していて、レオンは自分の想いを秘めていました。今回の前半パートのバレンタインデーのシーンでも、須堂に手作りチョコを不味いと言われて落ち込むリサを慰めてレオンはカフェでチョコケーキを奢ってあげていましたが、あれもレオンなりのリサへの愛情の証だったわけですが当然リサには伝わっておらず、そもそもレオン自身がリサに自分の想いがストレートに伝わらないような伝え方しかしていない。リサはレオンに須堂への恋心の恋愛相談をしているぐらいですから、レオンは自分の恋心が報われるはずがないことはとっくに分かっている。だからちゃんとリサに想いを伝える気など無いのです。それならスッパリと諦めればいいものを、リサに遠回しにチョコをあげたりしているのですから、なかなか重くてメンドくさい女です。

レオン自身もそういうメンドくささに耐えがたくなったのか、須堂の病院にやって来て「恋愛感情を消してほしい」と頼んでくる。人間ならそんなことは不可能ですが、ヒューマノイドならば電脳の回路を弄ることでそういうことは可能なのです。もちろんリサは患者の関係者ということで診察からは外されているのでそんなことをレオンが望んでいることは知らないし、レオンも須堂にどうして恋愛感情を消したいのかと質問されてもリサへの恋愛感情で苦しんでいるという話はせず、ヒューマノイドには恋愛感情は不要ではないかと漠然とした話をするだけでした。

しかし本当にヒューマノイドに恋愛感情は不要なのか。レオンは恋愛によって生殖行為を行う人間に比べて生殖行為を行わないヒューマノイドには恋愛感情は不要ではないかと言う。しかし人間だって生殖行為のためだけに恋愛をするわけではない。不妊のカップルだって恋愛するし性交だってする。同性愛のカップルだって存在する。生殖行為可能なカップルだって生殖行為のために恋愛をしたわけではない。恋愛の結果、生殖行為をしたカップルの方が多数派でしょう。それならば人間の恋愛とヒューマノイドの恋愛に大きな違いは無いはずです。だから須堂はレオンの言っていることは誤魔化しであって、恋愛感情を消そうとしているのはレオンの何らかの個人的な事情に起因するのだろうと思い、それをレオンが隠したまま処置をすることは長い目で見てリスクが高いと判断して、すぐにはレオンの依頼には応じないことにした。

一方リサはレオンのことを心配して、レオンを誘って食事に行き相談に乗ろうとする。マリという共通の女友達のヒューマノイドも誘って食事に行き、そこでレオンが面倒臭いからという理由で恋愛感情を消そうとしているという話を聞く。それに対してマリは「恋愛というのは面倒くささも含めたもの」と言い「もし何の面倒くささも無かったら真剣に相手のことを好きか分からなくなる」と諭し、だから面倒くさいからという理由で恋愛感情を消すというのはおかしいと指摘します。だがレオンはのらりくらりと躱すだけで具体的に何がそんなに面倒くさいのか説明もしないので、リサもマリも助言のしようがない。

しかしここでマリが言っていることは真理であり、恋愛感情というものは面倒くさくて不格好で不器用、不細工なものなのです。まさに前半パートでリサの作った不格好で不味いチョコには恋愛感情が宿っていたのに対して須堂の作った完璧な形で美味しいチーズケーキには恋愛感情が感じられなかったことに示唆されている通りです。そんなことはレオンだって解っている。しかしチョコやチーズケーキならば不細工で面倒くさくても笑い話で済むが、剥き出しの恋愛感情の場合は相手があることですから、あまりに面倒臭ければ相手に迷惑をかけてしまう。レオンが恐れているのはそこなのです。リサに迷惑をかけたくないから自分の恋愛感情を消そうとしているのです。

だが食事会の帰り道、酔っぱらったリサが2人きりになった後もしつこくレオンに絡んで事情を聞き出そうとするので、ついレオンはリサに自分のリサへの想いを伝えてしまう。それを聞いたリサは困惑してしまい、それを見たレオンは傷ついて泣いて立ち去ってしまいます。その後、リサは自分がこれまでレオンの気持ちを知らずにずいぶん酷いことを言ってレオンを傷つけていたのだということに気付き、深く反省します。そしてリサは思い悩むようになり、その後もレオンは何度も須堂の病院に来院してきましたがリサはレオンと話をすることはなく、連絡をとることも外で会うこともなくなった。

そうしているうちに結局はレオンの要望通りに恋愛感情を消す施術をすることが決まり、その施術日がやって来ますが、須堂はリサに「どうしてレオンはわざわざうちの病院に来たんだろうな?」と問いかけます。それ確かにその通りで、最初から別の病院に行って恋愛感情を消す施術を依頼していればレオンはリサと揉めることなど無く、リサの知らないうちにリサへの恋愛感情を消してリサに一切の迷惑もかけずに済んだはずなのです。それなのにわざわざリサの居る病院に来たためにリサに絡まれて告白してリサを悩ませてしまっている。レオンがリサに迷惑をかけたくないから恋愛感情を消そうとしていたという目的と実際の行動は矛盾してしまっているのです。これはつまり、リサに迷惑をかけたくないというレオンの気持ちとは裏腹に、レオンの本音はリサに構ってもらってリサに自分の想いを知ってもらいたかったということになる。そういうレオンの心理を見透かして、須堂はリサに向かってレオンは面倒くさくて女々しい迷惑な人間だと揶揄するように言う。

それに対してリサは「やめてください!」と須堂に対して怒りを露わにして須堂のことを見損なったと言って非難する。それを聞いて須堂は微笑んで「その意気で彼女にも言ってやれよ」と言い、「傷ついたり傷つけたり面倒だけどさ、怖がって何も言わないのは勿体ないと思うぜ」とリサに諭す。つまり須堂はワザとリサを挑発してリサの本心を引き出したのです。リサの本心はレオンの恋愛感情の面倒臭さをとっくに肯定していたのです。だからレオンの面倒臭さを否定した須堂に対して怒りが沸き起こったのです。しかしリサはレオンの恋心を拒んでしまった自分にレオンの恋愛感情を肯定する資格があるとは思えずずっと逡巡していたのですが、そんな逡巡自体がリサがレオンを傷つける面倒臭さを恐れる心なのであり、本当の友人ならばそういう面倒くささを恐れること自体が不要だと須堂は諭したのです。

それでリサは施術前のレオンを呼び止め、自分もレオンのことが好きだと伝える。それはレオンのような恋愛感情ではないけれども、それでもリサは今の「恋するレオン」が好きなのだと言う。恋愛感情に囚われて面倒臭いことをするレオン、そういう人間臭いレオンの方が好きなのだと言う。リサはもちろんレオンの想いに応えてレオンのものになることはない。しかし恋愛感情というものは決して生殖行為のためだけに在るものではない以上、恋人同士になれなかったとしても恋愛感情というものの存在意義は有る。レオンとしては恋するリサを自分のものに出来ない苦しみやずっと消えないであろうけれども、それでもその大切なリサからこうして自分の恋愛感情を肯定された以上、恋愛感情を消すという選択肢は無くなる。そうしてレオンは施術直前に須堂に施術の中止を申し入れ、この先ずっと面倒臭くも人間臭い恋愛感情と付き合って生きていくことを決意するのでした。

 

 

デキる猫は今日も憂鬱

第9話を観ました。

今回はまず会社の飲み会で酔っぱらって帰ってきた幸来を諭吉がケアしまくる話から始まる。どこの老舗旅館かエステサロンかと思うぐらいの至れり尽くせりのサービスに笑った。会社の皆の前ではシャキッとしている幸来が家に入った途端にグダグダになって諭吉に世話されて翌朝には完全復活して、出社して再びシャキッとして完璧人間だと誤解される。

それから、幸来が諭吉の毛皮の匂いを嗅いで作った料理や1日の行動を言い当てて諭吉に気持ち悪がられたり、諭吉が公園の清掃ボランティアの手伝いに行って老人ボランティアに混じって大活躍した挙句ゲートボールチームにも入ったりする。

続いて、諭吉が前回に夢芽ちゃんと一緒に拾った子猫のダイちゃんと再会する話。隣のお婆さんが知り合いの飼い主を探してくれてそっちで飼われていたんですが旅行に行くとかでお婆さんが一時的に預かっていて、それで諭吉とも再会した。それで諭吉がダイちゃんに懐かれてしまい、ダイちゃんと一緒にお婆さんの家で留守番することになり、ダイちゃんの遊びに付き合わされてクタクタになる。それで諭吉が甘えられ癖がついて、幸来が抱きついてきてもいつものように鬱陶しそうにせず頭を撫でたりするようになるとか、ダイちゃんの方は諭吉を見習って二足歩行をしようとしたりする。

次は会社での幸来の後輩のユリちゃんが幸来の昔の話を知りたがる話で、幸来が中途入社した頃はオドオドしてダメな感じだったと知る。実はその頃は諭吉と出会う前だったのだが、その後急にしっかりしてきたというのは諭吉効果に違いないのだが、会社の人達は知る由は無い。そしてユリちゃんが就活中から幸来のことを知っていたという話で、電車でユリちゃんが痴漢に遭った時に幸来が助けてくれたのだそうで、その時に連絡先を聞いて勤め先を聞き出して同じ会社に入社したのだという。そういうふうに会社では完璧超人と思われている幸来だが、その実態を会社の皆はまだ知らないというお話。