2023年夏アニメのうち、8月23日深夜に録画して8月24日に視聴した作品は以下の4タイトルでした。
Helck
第7話を観ました。
今回はヘルクやヴァミリオの出番は少なくて、ウルム城でのアズドラと翼の兵士との戦いの後に一旦状況を整理するようなエピソードでしたね。ゆっくり丁寧に物語を進めていっている印象です。焦って物語を動かすわけではなく、じっくり説明を挟んでくれて、更に適度にギャグも挟んでくれるので観やすい。そういう意味では好印象なのですが、これだけ丁寧に作れているのは2クール作品だからでしょう。そして、前半クールも折り返しが過ぎて、それでもこれだけゆっくりだと、おそらくここから前半クール終盤はそれなりに盛り上がってくるんでしょうけど、やはり本番は後半クールなんだろうなと思えてきます。
まず冒頭、前回のラストでアズドラが樹を生やして翼の兵士たちを捕らえた場面の続きとなります。アズドラのこの能力は「帝国の樹」というこの植物の生息する地限定で使える能力だそうで、自称「四天王最弱」というアズドラもこの能力を使える環境でならば四天王最強だとのこと。ヴァミリオがアズドラのことを最強と認めていたのはこの能力が前提だったわけですね。
そしてアズドラは翼の兵士たちに降伏を勧告しますが、聞き入れてもらえそうにない。なおこの場面、アズドラが翼の兵士のリーダー格の女性兵士の腰に差した剣の柄の部分を見て何かに気付いたようですが、その詳細は今回は描かれませんでした。そこに翼の兵士の新手がやってきて矢を放って攻撃してくるのですが、これが実は魔族のアズドラ達を狙った攻撃ではなくて、なんと味方である拘束された翼の兵士たちを狙った攻撃だったのです。そして拘束された翼の兵士たちを殺し尽くすと、新手の翼の兵士たちは姿を消しました。そして翼の兵士のリーダー格だった連中は息を引き取る前に「戦うことで際限なく強くなれる」「いつかは貴様らを超える強さを手に入れる」「勇者は何度でも甦る」と言っていました。どうやら新手の翼の兵士たちに自分たちを攻撃させて殺させたのは、拘束された際に捕虜にされないための保険だったようです。ただ、その口ぶりからすると、単なる「生きて虜囚の辱めを受けず」の覚悟の自殺というわけでもなさそうだとアズドラは気付きました。
確かに死んだ翼の兵士たちの死体は光となって天に昇って消えていき、普通に死んだのとは違う現象のようです。こうなると前々回にエディルが新手の翼の兵士に殺されたのも、どうやらエディルが敗北して拘束されそうだったので自ら望んで殺されたのだと考えた方が良さそうですね。実際、人間界の城に潜入したアスタは人間の王の前に翼の勇者たちが続々とまるで召喚されるように虚空から姿を現すのを目撃しており、その中にはさっき死んだ翼の兵士のリーダー達の姿やエディルの姿もありました。やはり翼の兵士は死んだ後も復活するみたいです。そしてさっきリーダー格の奴らが言っていたことが本当であるならば、戦いを経験するたびに強くなっていく。普通は戦って死んだら終わりですが、もし死んでも生き返るのならば際限なく戦闘の経験を積めるわけで、つまり際限なく強くなり、いずれはアズドラをも超える強さを手に入れるでしょう。
アスタからの報告を受けたアズドラ達は、翼の兵士たちが死んでも生き返ることは間違いないと確信する。その上でその場で現状の整理をするため作戦会議を開きます。そこでまず帝国の「東エリア」の問題点を解決の優先度の高い順番に「ヴァミリオの救出」「人間の脅威への対処」「魔物討伐」「魔王の選定」「ヘルクへの対処」とした。ヴァミリオ救出が最優先なのはアズドラのメンタルの安定のためにも不可欠というのもあるが戦力としても不可欠だからなのであり、ヘルクのことはアズドラは敵対的とは見なしていないので優先度は低い。
また、新魔王を選ぶのは大切なことなのでしょうけど現状では後回しでもいいのでしょう。そもそも魔王と四天王の力や地位の関係がよく分からないし、現状でヒュラとかケンロスがもし新魔王になったとしてもどう見てもアズドラやヴァミリオよりも弱そうだし、ちょっとそのあたり「魔王」というものの扱いが分からない。
そして魔物の討伐も魔族として重要な務めであり欠かすことは出来ないことなのでしょうけど、それよりも人間の脅威への対処の方が優先されている。つまり翼の兵士への対処ということです。ヴァミリオ救出が最優先になっているのはアズドラの趣味が入っているので、実質的には翼の兵士への対処が最優先事項と言っていい。それがどうしてなのかを続いてアズドラが説明します。
帝国の東西南北エリアの脅威度をまとめると、まず北エリアでは「北の勢力」の脅威度がSSSだそうで、かなり深刻な脅威みたいであり、帝国の軍事力の大半は北の防衛線に張り付かせているのだそうです。そうなると四天王のうちのヴァミリオとアズドラ以外の2人というのは北の防衛線に居る可能性が高いでしょうね。しかし、この「北の勢力」というのも一体何なのか気になるところですが、今のところは全くの謎です。
そして西の勢力と南の勢力は脅威度はCだそうですから、北の勢力に比べて格段に弱いみたいです。魔界には帝国以外にも多数の魔族の種族の国が存在するらしいので、要するに北には何らかの強大な国家があって、西と南の国家は弱小国なのでしょう。なお帝国内に生息する魔物の脅威度はそれらとは別にまとめられていて、新世界生物が脅威度B~S、一般魔物がC~Aとなっていますから、あくまで北や西や南の脅威は魔物ではなく魔族の国家の脅威と考えればいいでしょう。もちろんそれら帝国版図外エリアにも魔物は存在していて、それも脅威ではあるのでしょうけれど。
そして魔界が人間界と接しているのは東側であり、帝国が他の種族を挟まずに直接人間界と接しているみたいですから、東側の脅威は人間界からの攻撃に限定される。そして、その脅威度はEだという。つまり人間は魔物や魔族に比べて格段に弱いということになる。アズドラ曰く、全ての種族の中で最弱だそうです。但し勇者だけは別であり警戒対象であったのだという。ただ、それはあくまでこれまではそうだったというだけの話です。
もし全ての人間が勇者に覚醒して翼の兵士になったと仮定した場合は、その脅威度はEからCに格上げされるとアズドラは言う。つあり西の勢力や南の勢力と同等ですから、弱小魔族国家並みの脅威といえる。人間全員が勇者になったとしてもそんな程度かと思われるかもしれないが、その見立てはさっきアズドラ自身が翼の兵士たちと戦ってみた感触に基づいたものであり、並の魔族クラスの強さでしかなかった翼の兵士に人間全員が進化したところで並の魔族国家程度の脅威にしかならないという判断は妥当だといえます。
但し、そこにはさっき判明した「翼の兵士は死んでも甦る」という情報は加味されていない。その情報を加味するとしたら脅威度はCから更に上がってAになるとアズドラは言う。それはつまり強力な魔物と同等の脅威ということです。魔族と魔物の根本的な違いが何なのかというと、魔族は人間同様に普通に生まれて成長していずれは死んでいくのに対して、魔物というのは魔界の毒によって際限なく生み出されてくるという点です。つまり個体としては死は存在するが、種としては不滅だといえる。殺しても殺しても減らない敵なのが魔物の最大の脅威だといえます。だから、死んでも生き返る翼の兵士は魔物と同等の脅威だということになるのです。ただ、帝国はこれまでもそうした魔物たちを討伐して抑え込んで平和を守ってきた。それだけの軍事力があるのです。だから脅威度Aに格上げしたといっても人間界からの脅威にも十分に対処は可能だとアズドラは言う。
しかし、それは翼の兵士の強さが今のまま変わらないという前提での話です。もし本当に翼の兵士が戦いを繰り返すことで強さを増していき、いずれは歴代勇者並みの強さ、つまりヘルクと同等の強さにまで覚醒したとしたら、そして全人類がそのレベルにまで達したとしたら、その脅威度はSSSを超えるだろうとアズドラは言う。つまり北の勢力を超える帝国にとって最大の脅威となるということであり、もしそうなったら、ただでさえ北の脅威に大部分の軍事力を割いている帝国にはそれに対抗する力は無く、帝国は滅びるだろうとアズドラは予想します。
だが、それを阻止する作戦はあるともアズドラは言う。それは翼の兵士が復活出来ないようにするという作戦でした。復活出来なければ死んだらそこで終わりなので戦いの経験値を積み重ねることは出来ず翼の兵士が際限なく強くなるということはなくなり、帝国にとって大きな脅威ではなくなる。では、どうやって復活出来ないようにするのかというと、翼の兵士を復活させる術の行使者である「人間の王」を殺してしまえばいいのだという。
アズドラは過去に一度「復活する勇者」と戦ったことがあり、その際には勇者を復活させていたのは「人間の王」の術によるものだったのだという。今回もおそらくそれと同じで、翼の兵士は人間の王と契約することで王のもとでの復活の能力を得て、その代償に王への絶対服従の義務を負うのだという。ヘルクが「翼の兵士は王の命令に従うだけの生物兵器」と言っていたのはこの契約のことを指しているのでしょう。
それにしても無数の翼の兵士を復活させる術というのはトンデモない術のパワーといえます。そんな術をどうして人間が使えるのか不思議ですが、アズドラの見立てでは、おそらくその人間の王も勇者と同じく一種の覚醒者なのだというが、そもそもどうしてこんな一度に多くの覚醒者が人間界に生まれているのかは大きな謎といえます。まぁそれはひとまず置いておいて、とにかく術者である人間の王を殺せば翼の兵士は復活しなくなり帝国は滅亡を免れることが出来る。まずは再び襲来してくる翼の兵士たちをこのウルム城で撃退して、更に進撃して人間界への最前線にあるトール城を奪還し、その後に精鋭部隊を人間界に送り込んで人間の王を倒すというのがアズドラの立てた作戦となりました。果たして覚醒者である人間の王に勝てるのかというのは問題ですが、とにかく頑張るしかないということになりました。
そしてアズドラも出来るだけのことはやっておこうということで、ウルム城の地下にあった転移装置の残骸に行き、そこにヴァミリオの飛ばされた先に通じる小さなゲートを渾身の力を振り絞って作り出す。そして、そのゲートを通じてヴァミリオの飛ばされた先の孤島に3つのアイテムを送り込むことに成功した。1つは帝国の位置を示すアイテム、1つはヴァミリオへの連絡事項を書いた手紙、もう1つはヴァミリオの好物のミカンでした。そうして一刻も早くヴァミリオに帝国に帰還してもらい戦力になってもらいたいという意図でアズドラはフラフラになりながら3つのアイテムを送り出したのですが、しかし孤島でそれを発見したピウイがミカンを食べてしまい、残り2つのアイテムも何なのか知らずにピウイはヴァミリオが料理をしてる火にくべて燃やしてしまったのでした。こうしてアズドラの懸命の努力は無駄に終わってしまい、ヴァミリオは帝国の差し迫った危機をまだ知らず孤島でヘルクと共に魔女が山を下りてくるのを待つ日々を過ごすのであった。
自動販売機に生まれ変わった俺は迷宮を彷徨う
第8話を観ました。
今回は迷路階層でその階層の主である炎巨骨魔を討伐するという話。前回はハッコンの捜索のために迷路階層にやってきた愚者の奇行団であったが、そのついでに階層主を倒したいのだという。目的は階層主を倒すと手に入るという特別なコインであり、それを持って最下層まで到達すれば何でも願いが1つ叶うのだという。愚者の奇行団はみんな叶えたい願いを持った連中たちであり、そのためにこの迷宮で冒険しているのです。そして団長はハッコンにもその協力をしてほしいのだという。
ハッコンも清流階層の主を倒してその特別なコインを手に入れており、このまま愚者の奇行団と一緒に最下層まで行けば願いを叶えることが出来る。そうなればハッコンが人間として復活することも可能だと聞いたラッミスも乗り気になり、ハッコンとラッミスは愚者の奇行団に協力することを決める。ついでにヒュールミも付き合ってくれるとのこと。しかしハッコンは人間に戻ってラッミスと喋ったり一緒に歩いたりしたいと思いつつも、自分は自動販売機だから皆の役に立てているのだというジレンマに悩んだりします。
その後、迷路階層内にある巨大な落とし穴に炎巨骨魔を落としてから攻撃して倒すという作戦を実行することになり、そのために炎巨骨魔の身体をまとう炎を消さねばいけないということで落とし穴の中を水で満たしておこうということになり、ハッコンが高圧放水の自販機にフォームチェンジして穴の中に水を注ぐのだが、水はけが良いのであまり水が溜まらない。そこで穴の底がとても低温だというので今度は氷自販機になって氷で満たそうということになるが、ここでハッコンが機転を利かせて氷デハナクテドライアイスを穴の底に大量に放出しておいた。
すると穴の底には二酸化炭素が充満して酸素不足となっていて、炎巨骨魔を落とした時に身体にまとった炎を消すことが出来た。そうして防御力の無くなった炎巨骨魔を穴の上から攻撃して弱体化させるがなかなかしぶとくてトドメを刺せず逃げられそうになる。それでラッミス達が穴の底に行って戦おうとするのだが、そんなことをしたらラッミス達が酸欠で死んでしまう。だがそれを伝えられないハッコンは、わざとエロ本の自販機になって驚いたラッミスに突き飛ばされてワザと穴の底に落ちて体当たりして炎巨骨魔を倒す。こんな感じで、今回はハッコンの戦いのアイディアがなかなか理にかなっていて良かったです。
わたしの幸せな結婚
第8話を観ました。
今回はクール後半の新展開の状況説明がメインの繋ぎ回という印象でしたね。前回新たな展開が立ち上がったものの謎めいた要素が多くて、それらに関して今回説明が加えられて話が分かりやすくなりました。それに並行して美世の淑女としての稽古の場面が描かれ、こちらは平和な感じなんですがちょっと不穏な要素も覗かせたりして、清霞の任務の方も危険なムードが高まっていき、前回登場した新キャラのメガネは怪しさを増していき、それらが次回あたりに大きな事件に繋がっていきそうではありますが、今回はまだ前フリという感じでしたね。
確かに面白いし、ここから更に盛り上がるのも間違いない。ただこの後の残り4話でどこまで盛り上げることが出来て、どう上手く畳めるのかは注目ですね。話の流れとしては1話からの流れが前回の後日談部分で綺麗に締められて、ここから別の新たな話が描かれるというところなんですが、おそらく前回まで6話ちょっとかけて描かれた内容よりも更にもっと大きな物語が始まるみたいに見えます。それを残り4話で全て描き切ることは難しいと思われ、中途半端なところで終わるんじゃないかと少し心配です。この1クールの第1期はあくまで第6話の斉森家炎上事件をピークと設定して描かれていて、第7話以降の内容は第2期に繋がるものと考えられているのかもしれませんね。
まぁ、仮にそうだったとしても「だからダメだ」などと言う気は毛頭無いです。そういう原作の流れになっているのでしょうし、ここまで十分に面白かったし、ここからの方が更に面白くなっていくのだろうとも思う。ただ、やはりクールの終盤に明確にクライマックス的に盛り上げてくる作品と比べると、どうしても終盤の物語の厚みが足りない印象にはなるでしょう。エンタメとしては面白いとは思いますが、唯一無二の印象はちょっと無いかもしれませんね。なんか「普通に面白い話」になりそうで、ちょっと薄いかなとは思います。他の作品もそんな感じだったら別にいいんですけど、おそらく終盤に畳みかけてくる作品が幾つかあると思います。それらの作品に対して、クール前半の貯金でどこまで優位に立ち続けることが出来るかがこの作品の最終順位を決める際に重要になるでしょうね。
まず冒頭は前回よく分からなかった墓荒らしに関する説明から始まります。暴かれた墓というのは「禁域」の奥深くにある「奥付」と呼ばれる「異能者の墓」だそうです。しかもこれは只の墓ではなくて「死してなお負の情念によって怨霊と化した異形たちを永久に封じておくための場所」なのだそうです。ここで不思議に感じるのは、異能者の墓なのに「異形を封じる」という目的になっていることです。異能者というのは異形と戦う存在であり、異形とは対極に位置する者なのだと思っていたので、これはどうも妙です。
「異形」というのは以前に作中でチラッと説明されていたが、古来から存在する鬼とか天狗のような妖怪変化の類だと思っていました。そういう妖怪が人間に危害を加えないように討伐する術者のようなものが「異能者」だという印象だったんですが、ここでの説明を見た感じでは、人間が死んで負の感情で怨霊となったものも「異形」と呼ぶようですね。あるいは鬼のような妖怪変化というものの多くはもともと人間だったものが怨霊化した成れの果てなのかもしれません。
しかもこの墓は「異能者の墓」だというのですから、死んで怨霊化したのは異能者だということになる。本来は異形を狩る立場の異能者でも怨霊化して異形に堕ちることもあるんですね。ただ、それは「たまたまそういう者もいた」という話でもなさそうです。わざわざ「禁域」や「奥付」という名が与えられてそういう「異形に堕ちた異能者」が封じられているという一種の「制度化」がなされているということは、そういうことは「割とよくあるケース」なのでしょう。
「死してなお負の情念によって怨霊と化した」というふうに「なお」と言われているところを見ると、生きているうちから異能者は「負の情念」に晒されているのではないかとも思える。それは「負の情念」を持つ異形と戦っているせいなのか、あるいは異形に対抗するための「異能」そのものが何らかの「負のパワー」なのか正確なところは分かりません。いわゆる「魔の力に呑まれた」という状態なのかもしれないですね。何にせよ、異能者というのは危うい仕事であり、異能というのは取り扱いが難しい力なのだと思われます。
ともかくそうした異形となった異能者の墓というのは異形を封じる役目を担っているみたいで、それが暴かれたということは、そこに封じられていた異形、つまり怨霊が出て来て暴れ出す可能性があるということです。しかもその怨霊はもともと異能者だったので強大な力を持っている。普通の怨霊や異形とは桁違いに危険な存在といえます。そんなものが暴れ出せば「帝都にとって未曽有の危機」だと清霞は言う。かなりヤバい事態みたいで、それで清霞が呼び出されたわけです。
問題は誰がそんな危険な封印を解いたのかなのですが、それは現在は不明のようです。ただ、これから清霞を呼び出した大海渡閣下は清霞を伴って「堯人」という人物に謁見に行くのだが、それは堯人に「天啓」が降りたからだそうです。何か話の繋がりが分かりにくいですけど、堯人に天啓が降りるということは、この奥付の封印が破られたことときっと無関係ではないはずだと大海渡も清霞も思っており、堯人に天啓の話を聞くことは事件の解決にきっと役に立つと思っているみたいです。
ただ、これに関しては結果的には堯人からはあまり具体的な情報を得られませんでした。堯人本人の言うには「まだ帝位を継いでいないので力が不安定」だとのことです。つまり帝位を継げばよりハッキリとした天啓を得られるということなのでしょうか。そもそも「天啓」とは何なのかよく分かりませんが、何か「お告げ」的なものなのでしょうか。帝位ということは、国家の統治者である「帝」なのでしょうけど、帝が天からのお告げを受けて政治を行うという政治体制なのでしょうかね。まぁどう見ても近代国家なので何から何までそんな古代国家みたいなことをやっているわけではないのでしょうけど、これはおそらく「異形」とか「異能」が絡む話に限定のことなのでしょう。
それは言い換えれば、この国家においては帝室が異能と深く関わり合っているということを意味します。今回のような異能絡みの変事が起きれば帝室に何らかの天啓が降りて、その変事に関して何らかの示唆があるということなのでしょう。それはおそらく帝室も一種の特別な異能者の家系ということであり、異能に関する天啓を受ける特別な家柄ゆえに異能者の家系全てを束ねて国家を統治してきたということなのでしょう。
ただ、よく分からないのは、堯人という人物は「まだ帝位を継いでいない」ということは皇太子的な立場なのでしょうけど、現在の帝位に就いている帝よりは天啓の能力は劣るのでしょう。それなら帝に降りた天啓を聞きに行った方が良さそうなものですが、どうして大海渡や清霞は帝ではなく堯人の方に天啓を聞きに行くのでしょうか。いや、そもそも今回の件では帝には天啓は降りておらず堯人にだけ天啓が降りているのかもしれないが、それならそれで、どうしてそうなっているのかも不思議です。
帝というのはおそらく前々回の終わりの方に出てきた「陛下」と呼ばれていた人物でしょうけど、明らかに久堂家や清霞のことを敵視していた。しかし、その皇太子である堯人は清霞と近い立場のようです。そう考えると、どうもこれは帝と堯人は不仲で、帝室のお家騒動が絡んでいるようにも思えてくる。あるいはこの奥付の事件もそれに関係しているのかもしれない。とにかく大海渡や清霞が真っ先に堯人の天啓の内容を聞きに行くということは、清霞たちは堯人派のようなものなのでしょう。ただ、別にこの事件で帝の関与を疑っているというわけではないでしょう。本当に事件の犯人に見当もついていないみたいです。堯人の方は一体どこまで見通しているのかはよく分からない。
なお、堯人への謁見には大海渡と清霞に加えて辰石一志も同行しています。先代当主の実の起こした事件の結果、久堂家の麾下に入ったというのに今回もこうして普通に堯人に直接謁見を許されているのですから、もともと辰石家というのはかなりの力があったということが分かります。おそらく久堂家に次ぐ力を持っていたのでしょう。だから実も久堂家を追い落とそうと躍起になっていたのでしょう。一志も清霞には軽口を叩いてあまり従順には振舞っていないのに対し、堯人に対してはずいぶん遜っており、堯人も辰石家を赦すと言っており、あくまで一志が従っているのは帝室なのであり久堂家ではないことが分かる。帝室の皇太子である堯人から「久堂家の麾下に入れ」と言われたので従っているという形なのでしょう。
それで結局、堯人の受けた天啓というのは「戦いになるから気をつけろ」という程度のものでした。死人が出るほどの厳しい戦いになるとのことでもありました。そして「また何か見えたら伝えよう」と言って謁見は終わった。あんまり大した内容ではなかったですね。ただ最後に退席しようとする清霞を呼び止めた堯人は、清霞の婚約者、つまり美世であるが、美世について「これから大変であろうが、お主なら大丈夫であろう」と言った。これはつまりこの奥付の事件に絡んで美世の身にも何かが起きるということなのだろうかと思った清霞は「それも天啓ですか?」と堯人に問うが、堯人は特に返事をしなかった。つまり、そういう天啓を受けたと解釈することも出来るが、もしかしたら堯人は天啓ではなく別の情報源で美世に関わる何らかの動きを察知していたのかもしれない。そのあたりは曖昧です。
ともかく清霞としては堯人にそんなことを言われて美世のことが心配になってしまう。屋敷でも美世は頻繁に悪夢にうなされており、結界が破られた様子も無いのでもともと清霞は心配していたからです。そして、その件について清霞は薄刃家の関与の可能性を疑い始めていた。薄刃家は異能の家系の中でも飛び抜けて異質とされ危険視されてきた一族だそうで、人の心を読み、記憶を覗き、夢の中に入り込める者までいるという噂であった。もし夢に入り込める異能者がいるのならば美世の悪夢に何か関係があるようにも思えたのです。
ただ、それらは単なる噂に過ぎなかった。何せ薄刃家の人間の存在は厳重に隠匿されており、これまで実在を確認できた者はいなかった。隠れてひっそり暮らしているわけではないだろうから、別の姓を名乗って身分を偽装して社会に紛れ込んでいるのだろう。だが、そんな中で初めて「薄刃」を名乗って実在が確認されたのが美世の母親の「薄刃澄美」だったのです。清霞は澄美を手掛かりにして薄刃家の正体を暴いてやろうと思い立ち、情報屋を使って帝都にいた「澄美」という女性を片っ端から調べさせることにしたのでした。
そして肝心の奥付事件の方ですが、大海渡や清霞は堯人に天啓が降りたので話を伺いに行っただけであり、実は奥付事件について正式に対処の依頼を受けていたわけではないので、何も手出しは出来なかった。異形絡みの事件を専門で担当する清霞の部隊が異形が出現している事件に手出し出来ないというのも奇妙な話だが、政府内の管轄が違うのです。
奥付というのは帝室の管理している禁域の中にあり、そこを管理しているのは帝室に直属している宮内省であり、清霞が所属している陸軍とは全くの別組織なのです。だからこれまで奥付事件は宮内省が対処に当たってきており、もともと秘密主義の組織なので、事件の捜査内容なども清霞のもとには情報が来ていなかった。それで清霞は何度も宮内省に情報を回すよう要請し続けてきており、ようやく宮内省からの使いが清霞のもとにやって来ることになったのでした。
そうして宮内省からやって来た男は「鶴木新」と名乗りましたが、このメガネをかけた爽やかイケメンは、前々回に陛下と共に密談して薄刃の異能を久堂家から奪おうとか何とか言っていた男であり、前回もなんか爽やかに美世の名を呼び「迎えに行くよ」とか言っていた怪しいヤツです。もちろん清霞はそんなことは知らず、鶴木から奥付事件の現状について聞きます。
鶴木の言うには、事件の後で現場で倒れていた男たちを確保しており、おそらくその男たちが封印を解いた犯人であろうとのこと、しかし全員死亡しているか意識不明で事件の詳細は不明、そして逃げ出した異形たちについては回収が追いつかず近隣に犠牲者も出ており、もう宮内省だけでは対処困難となったので清霞の部隊に対処を依頼したいとのことでした。そして鶴木自身は宮内省の人間ではなく、宮内省とは関係のある交渉人のような立場であり、普段は貿易商を営んでいるという。つまりは怪しげなブローカーのような立場みたいです。なんか清霞のことも調べたとか言って清霞に婚約者がいることも知っているとか余計な話もする。清霞はこの胡散臭い男に不信感を抱きながらも、ようやく正式に自分の部隊に対処依頼を受けたことで本格的に奥付事件の捜査に乗り出していきます。
一方、美世の方ですが、9月のパーティーを目標に葉月の指導のもと淑女としての稽古に励んでいました。洋服での所作やテーブルマナーなど、最初は不慣れだったが懸命に努力して徐々に上達していった。そんな美世を葉月は妹のように可愛がり、家族として接してくれるのであったが、美世の方は実家で家族扱いされずに育ったために「家族」というものがよく分からず悩んだりします。また、夜な夜な悪夢にうなされる日々が続き体力も削られていきました。
そんな中、遂に清霞たちは禁域への立ち入りを許可されて奥付破壊跡の実地調査を行う。その前線基地では現場で倒れてい犯人と思しき意識不明の男の調査を一志が行います。一志は呪いの解除を得意としており、もし犯人の男が意識不明である原因が何らかの呪いであるならば、それを解除すれば事件の全容が解明出来るかもしれない。だが一志が施術を開始したところ、強力な力に跳ね返され、この呪いはあまりに強力なので一志では対処不可能という。そして清霞たち現場の部隊にも奥付から脱走したと思われる異形たちが襲い掛かってきて、なんとか清霞の力で撃破するものの、これほどの力を持つ異形がもし帝都に侵入すれば大変なことになると清霞は危機感を募らせる。
ここで不思議なことに、ちょうど清霞たちが奥付で異業たちに襲われているのと同時刻、美世の悪夢の中にも同じ異形たちが現れて美世を何処かに引きずり込もうとしていた。そして清霞が異形を撃破すると同時に美世は悪夢から目覚めたのでした。また、鶴木が自分の屋敷と思われる場所の庭の桜の木を触りながら「もうすぐですよ、ようやく」と言い、そこに老人が現れて「目覚めは近いぞ」と言い、それに応えて鶴木が「俺が守ります」「それが俺の役目ですから」と言う謎のシーンも描かれる。美世のことを言っているように思えるシーンです。そして今回の最後は美世が葉月とゆり江と一緒に町に出ていた時に急に気分が悪くなって倒れてしまい、そこに鶴木が現れて美世を助けるという展開となり、次回に続きます。
白聖女と黒牧師
第7話を観ました。
今回はまずローレンスが何も言わずに毎日町に出かけていくので何か隠し事をしているのではないかと不安になったセシリアがヘーゼリッタに相談したところ、アベルの発案で3人でローレンスを尾行することになる。そうしているとセシリアがはぐれてしまい、アベルとヘーゼリッタが慌てているとローレンスに見つかってしまう。それで実はローレンスは洋服屋さんの息子のエリックの家庭教師を短期間頼まれていたのだということをアベルたちは知りますが、とにかくまずはセシリアを探そうということになり、町に詳しくないアベルとヘーゼリッタは洋服屋で待機で、ローレンスが占い師さんと手分けしてセシリアを探しに町中を走り回ります。
一方セシリアは迷子になっていたところをエリックに出会い、ローレンスに家庭教師をしてもらっていることを聞き、一緒に洋服屋に向かいます。仕事の都合で学校に行っていないエリックにローレンスが勉強を教えているのだと聞いたセシリアは、自分も学校に行っていないので共感を覚えます。また、不安でローレンスを尾行していたという話をすると、エリックはローレンスは誠実な人だと言ってくれて、それでセシリアは嬉しくなります。
そして洋服屋に着くとそこでローレンスも戻ってきて鉢合わせして、セシリアは一緒に洋服屋に入って改めてローレンスにエリックを紹介されます。そして、なんとローレンスがエリックの家庭教師をするという話は既にセシリアには報告済みであったことが判明。単にセシリアが寝ぼけていて聞いた話を忘れていただけだったのであり、とんだ人騒がせでした。
ローレンスが何か隠し事をしているのではないかと心配になったのだと言い訳するセシリアにローレンスは自分はセシリアを傷つけるような隠し事はしないと言い、隠し事を全くしないわけではないとも言う。それは自分が恥ずかしいことに限ると言ったローレンスであったが、内心では自分がセシリアに隠し事をする理由はセシリアに嫌われたくない場合だということに気付くが、それは照れ臭くてセシリアには言えなかったのでした。
後半パートはアベルとローレンスが牧師の会議に出席することになり、セシリアもついていくことになり、その会議の場所がヘーゼリッタの実家のある町であることが分かり、もともと実家の兄から心配して手紙がずっと来ていたヘーゼリッタも一緒に行って実家に顔を出すことになる。更に仕事でこの町に来ることになったエリックも同行して、5人での旅となり、セシリアは初めて都会という場所に行くことになったのでした。
都会に着いてからローレンスはセシリアが聖女であることを隠すために、ここではいつものように「聖女様」と呼べないことに気付いて困ってしまうが、とりあえず会議の場所に行く。そうして神学校時代の旧友たちと再会して喜び合う。また会議の後で神学校時代の恩師のヒューゴ先生に呼び止められたローレンスは「君の教会に聖女がいるという噂を聞いた」と言われ、咎められるのかと思ったら、ローレンスなら聖女の扱いを祖父から教えられて分かっているはずだと信頼を示してもらえる。ただ、この町はかつて聖女の悲劇を生みだした町だからとの理由で、セシリアが聖女であることを秘密にしておこうという話になります。
その後、会議の場所にセシリア達がやって来て、ローレンスと話しているところに旧友たちがやって来てセシリアに興味を示すが、ローレンスはセシリアが聖女とは言えないので適当に誤魔化し、旧友の女子たちはセシリアがローレンスの彼女だと思って連れ出して質問攻めにしようとするが、そこに謎の紳士が現れる。旧友女子たちが用事で居なくなった後、その紳士はセシリアが聖女だと知っているようなことを言い、そこに駆けつけたローレンスがセシリアを奪い返して何者なのかと糺すと、その紳士はなんとヘーゼリッタの兄のギーゼルベルトであったのでした。そういうわけで次回に続きます。