2023年春アニメのうち、4月16日深夜に録画して4月17日に視聴した作品は以下の6タイトルでした。
青のオーケストラ
第2話を観ました。
今回は青野が再びバイオリンを弾けるようになるまでが描かれ、これで中学生時代を描いたプロローグが終わり、次回から高校入学から始まる本編に入っていくのだと思われます。バイオリンを辞めていた主人公の青野が再びバイオリンを弾くようになるというのが物語の最初の山場なのであり、それが本作のヒロインである秋音律子との出会いに絡めて上手く描かれていて、良い物語のスタートになったと思います。
前回、保健室で1人でバイオリンの練習をしていた女生徒の秋音にバイオリンを教えてやってほしいと武田先生に頼まれた青野だったが、今回の冒頭でそれを断ってしまいます。武田先生はそれでも青野のバイオリンをもう一度聴きたいとも言う。中学1年の時の青野がコンクールで弾いているのを見に行った時、普段は大人しい青野が激しく動いて弾いていたのが強い印象として残っているのだという。だが青野は自分はもうバイオリンを辞めたのだと言って拒否する。辞めたということはバイオリンを嫌いになったからだと自分に言い聞かせる。それにもう1つ、秋音に教えるのが嫌なのは、秋音のバイオリンの音を聞くと妙にイラつくからだった。それは秋音のバイオリンがあまりに下手すぎるからだと青野は思った。
だが、秋音の方はバイオリンの絃が切れたのを直してもらおうと武田先生に頼んだところ、青野に直してもらうように言われ、青野のことをあまりに武田先生が褒めるもので、思い切って青野に弦の張替えを頼んできて、青野は仕方なく秋音を自宅のレッスン室に連れていき弦を張り替えてやることにする。すると秋音は武田先生があまりに青野が上手いと言っていたものだから、青野にバイオリンを弾いてほしいとせがんでくるのだが青野は断る。久しぶりに入った自宅のレッスン室で、青野はバイオリンを弾くことで自分が父親のバイオリンの音を思い出すことを恐れていることに気付いたのです。
青野のバイオリンはこの自宅のレッスン室で父親に教えられたものであり、ここでバイオリンを弾くと自分が手本にしていた父親のバイオリンの音も思い出す。そうすると家族を裏切って家を出て行った父親のことをどうしても思い出してしまう。父親に捨てられて悲しい想いをした自分や母親の辛い過去を思い出してしまう。それが嫌なので青野はバイオリンを辞めたのです。
だが秋音は青野がバイオリンを弾かないのを納得せず、どうしてバイオリンを辞めたのかしつこく聞いてくる。父親絡みの辛い過去の話をしたくない青野は理由を言うことを拒み、それでもしつこく聞いてくる秋音にイラついて「そんなことしてると友達無くすよ」と嫌味を返す。それを聞いて秋音は少しショックを受けたようで質問をやめて、ならば自分が弾くと言い出して、バイオリンを弾き始める。
それで仕方なく青野が秋音の奏でる音を聞いてみると、秋音のバイオリンの音が先日よりマシになっていることに気付く。それは先日の青野の指摘に応えて爪を切ってきていたからだった。それによって青野は秋音が弾いていたのは「パッヘルベルのカノン」だということに気付く。先日は音が酷すぎてそのことに気付かなかったのです。すると秋音はこの曲が大好きで、この曲を弾けるようになるのが目標なのだという。ただ、それはやはり稚拙な演奏であったが、青野は自分もバイオリンを習いたての頃はこの曲を一生懸命に練習していたことを思い出す。そうして秋音の音を聞いていると、それは楽しい音に思えた。同時に、かつての自分もそうした楽しい音を奏でていたことも青野は思い出した。すると父親のバイオリンの音の記憶は秋音の奏でる音にかき消されていき、青野は少し楽な気持ちになり、秋音にバイオリンの弾き方をアドバイスすることが出来た。
なお「パッヘルベルのカノン」というのはもともとは17世紀に由来する非常に有名なバイオリンの曲であり、日本では山下達郎の名曲「クリスマス・イブ」の間奏にそのメロディーが使われていることで一般にもよく知られています。それを聞いても分かるように祝祭の場にマッチする明るく楽しい曲であり、青野が秋音の奏でるその曲を聞いて「楽しい音」と評するのも納得の選曲となっています。秋音がこの曲が好きで、この曲を弾くことを目標としているということは、秋音が楽しい音を志向していることも分かる。また、バイオリンを習いたての頃の青野もこの曲を好んでいたということは、かつての青野も現在の秋音同様に楽しい音を志向していたということも分かります。武田先生が見て魅了されたというのも、そういう頃の青野だったのでしょう。だが父親の事件があって、青野はかつての自分の楽しい音を忘れてしまい、嫌な過去と共に父親の音によって上書きされてしまっていた。それが秋音の音を聞いたことによって父親の音が薄らぎ、自分の本来の楽しい音が少し記憶に甦ったのでした。
それで帰り道、青野は秋音に自分がバイオリンを弾かなくなった理由を打ち明ける。父親がプロのバイオリニストで離婚して出て行った。だから自分はバイオリンを辞めたのだと言う青野に対して、秋音はその事情とバイオリンは関係ないんじゃないかと指摘して帰っていく。確かに、青野がバイオリンを辞めたのは父親の音を思い出したくないからであり、バイオリンそのものが嫌いになったわけではなかった。父親への嫌悪感でバイオリンに八つ当たりしているだけであった。それで武田先生にも秋音にも八つ当たりしていたことに青野は恥ずかしさを覚える。それで青野は1年ぶりに自分のバイオリンのケースの蓋を開けてみるが、それでもまだ弾く気にはなれなかった。父親の過去の忌まわしい記憶は未だ残っていて、それに囚われたままの自分ではかつてのように楽しい音を奏でることが出来るとはまだ思えなかったからです。
そうして翌日学校に行くと、秋音がクラスメイトと揉めている現場を目にして、秋音は武田先生から秋音の抱えている事情について教えられる。秋音のクラスの友達がイジメに遭って学校を辞めてしまい、それに反抗したら秋音もイジメの対象にされてしまい、更に秋音がその友達をイジメて学校を辞めさせたという噂まで流されてしまい秋音はクラスに行けなくなってしまい、だから秋音は武田先生に相談して保健室登校していたのです。
それを聞いて青野は「友達無くすよ」などと事情も知らずに秋音に酷いことを言ってしまったと反省し、秋音の家にバイオリンを届けに行った時に、一緒に河川敷に行って話をして、酷いことを言ったことを謝る。しかし秋音は気にしていないと言う。青野に言われたこともだが、イジメに遭っていることも気にしていないのだという。それは嫌なことより楽しいことを考えることにしたからであり、だから秋音はバイオリンをやりたいのだと言う。つまり秋音はイジメのせいで保健室登校になった時、武田先生に薦められたバイオリンに出会い、バイオリンを弾くことで嫌な過去を吹っ切って未来に向かうことが出来たのです。だから秋音はパッヘルベルのカノンの楽しい音に魅せられているのです。それは明るい未来へ向かおうとする音であったのです。
そうして河川敷で秋音がパッヘルベルのカノンを奏で始めると、青野は自分が秋音の音を聞いてイラついていたのは、それが未来に向かおうとする音だったからだと気付く。自分もかつては秋音と同じように、ただ明るい未来を見つめてバイオリンを弾いていた。だが父親の事件の後、それが出来ずに嫌な過去にとらわれたままになってしまった。そんな自分が未来に向かおうとする秋音の音を聞いて羨ましいと思っていたからイラついていたのだ。つまり、本当は自分も秋音みたいに嫌な過去を吹っ切って未来に向かいたいのだと気付いた青野は、そのために秋音がそうしたように、自分もバイオリンを弾くことで未来に向かいたいのだと本当は思っていることに気付いた。そうして秋音からバイオリンを手渡された青野は、頭の中から父親の音を完全に消し去り、パッヘルベルのカノンを楽しく美しく演奏する。こうしてプロローグが終わり、次回から本編の高校生編が始動するみたいです。まぁいきなり高校入学じゃなくて受験とかも描かれるのかもしれませんが、とにかく楽しみですね。
機動戦士ガンダム 水星の魔女 Season2
第14話を観ました。
今回はオープンキャンパスのバトルロワイヤル模擬戦が行われたのですが、そこでソフィとノレアがテロリストの正体を現して殺戮を始めてムチャクチャになります。遂に学園でも殺し合いが始まってしまったわけで事態は一変し、次回以降一体どうなるのか目が離せなくなりましたね。まぁそういう意味では一気に面白くなってはきましたが、まだまだ色々と分からないことが多くて、まだちょっと纏まりがついていない感じです。
バトルの方はシャディクが黒幕で限定解除が行われて全員がフルパワーで戦える状態なのか、それともソフィとノレアだけがフルパワーで戦えるアンフェアな状態なのか分かりませんが、もし後者ならただの卑怯なテロリストということです。まぁ卑怯なテロリストを自認してるわけだから本人たちはそれで上等なんでしょうけど、最後にはスレッタがソフィを殺せたわけですから全員がその気になればフルパワーで戦うことは出来たということなんでしょうかね。その場合、どっちにしてもガンダム以外には勝機は無いわけで、ガンダムの中でもノーリスクでフルパワーを出せるスレッタが圧倒的有利なわけですから、そう考えるとソフィとノレアは勝ち目の無い闘いに挑んだことになります。ガンダムというものを知っているソフィとノレアだからこそ、なんでそんな無謀なことをしたのかちょっと理解に苦しみます。自分の命を捨ててまでしてスレッタに殺人をさせたかったんでしょうかね。まぁテロ自体の目的はサリウスを拉致することであったみたいですからシャディクにはそれとは別にちゃんとした計画があるんでしょうけど、ソフィを捨て駒にしたのは謎ですね。それともソフィ程度で本気でスレッタに勝てると勘違いしてたんでしょうか。
今回は「クアイエット・ゼロ」というデリングの計画も明らかとなりましたが、それは「ガンダムで世界を平和にすること」であったようです。それは結局はガンダムの軍事利用ということで、ミオリネの構想するものとは違うわけですが、プロスペラはミオリネにその計画を引き継がせようとします。
順調に進んでいたというその計画が頓挫しそうになっているのはデリング襲撃事件のせいですから、デリングを襲撃した地球のテロ組織はクアイエット・ゼロ計画に反対してるということなんでしょうかね。エアリアルのような完璧なガンダムによってスペーシアン主導で宇宙が制されてしまうことでアーシアンの立場の改善が見込めなくなることを嫌っているのかもしれません。それにシャディクが手を貸しているというのも謎ですが、シャディクはそうした混乱につけ込んでベネリットグループを乗っ取ろうとしているのか、それともシャディク自身が実はアーシアンでテロ集団の仲間なのか、まだよく分かりません。
ただ、デリングの計画に賛同しているとか言っていたプロスペラが実は別の思惑があって、プロスペラはそのクアイエット・ゼロ計画に不可欠のエアリアルを開発すること自体が目的だったみたいですね。そしてエアリアルの正体はプロスペラの実の娘でありスレッタの姉であるエリクト・サマヤであった。人間をモビルスーツに進化させることがプロスペラの真の目的であったようです。そして、その動機は娘であるエリクトを幸せにするためだという。それが何を意味するのか、まだハッキリとは分かりません。このように色々な陣営の思惑がまだバラバラで曖昧な感じで、物語が明確な方向性を示すのにもうあと数話は必要な印象なんですよね。まぁとりあえず今回は派手な戦闘も楽しめましたし、色々と明確になった部分もあったので良かったと思います。話も盛り上がってきましたし、今後も非常に楽しみになってきました。
鬼滅の刃 刀鍛冶の里編
第2話を観ました。
今回はまぁギャグ回でしたね。しかし鬼滅のギャグはあんまり面白くない。まぁ善逸と伊之助が絡むと割と面白いんですが今回はいませんからね。だから普通にイマイチでした。修行回でもあるんですが、人形相手の修行ということであんまり緊迫感も無くてイマイチでしたね。300年以上前の剣士がモデルになった人形ということで、あの前回の炭治郎の夢の中に出てきた情景は300年以上前の出来事で、あの炭治郎そっくりの人物はやはり炭治郎のご先祖だったということも分かりました。つまり炭治郎のご先祖が親交のあった剣士がおそらく日の呼吸の使い手で、何故か上弦の壱の鬼の黒死牟とそっくりの外見ということになります。意外だったのは無一郎が日の呼吸の剣士の子孫だということです。ということは無一郎は自分の先祖を模した人形と稽古をしていたことになりますが、無一郎自身はそのことには気付いてなさそうですね。
お話の流れとしては、人形のカギを渡す渡さないで無一郎と炭治郎でモメて、炭治郎が人形で特訓するという話でした。鬼は登場しませんしバトルシーンも無い。無限列車編や遊郭編が割と怒涛の展開で、すぐバトル開始という感じだったので、こういうのを見ると退屈に感じてしまうが、よく考えたら1期の頃はこういうバトル無しのエピソードも結構あったので、今回はまぁそういうエピソードだったのでしょう。次回もまだ日常回っぽいですが、次回のラストぐらいには鬼の動きなんかも出てくるんじゃないかと期待はしておきます。この3期はこれで正味3話分ぐらい終わったわけですが、基本的にはのんびりした話でありながら随所で300年前の剣士の話で考察要素も入れてきますし、全くダメというわけでもない。これからに期待しています。
マイホームヒーロー
第3話を観ました。
前回のラストで哲雄と妻の歌仙がいきなり半グレ集団に拉致されてしまいましたが、今回の冒頭ではどうしてそういうことになったのかの経緯がまず描かれます。盗聴器を逆利用して延人を殺したのはストーカーだったと半グレ達に思い込ませようとした哲雄だったのですが、半グレ達もそれを簡単に鵜呑みにはしなかったようです。まず哲雄は零花の部屋に残った延人の死臭を処理するために仕事帰りに零花の部屋に立ち寄って1時間ほど作業する必要がどうしてもあった。1週間経てば零花がその部屋にまた戻ってしまうからです。だから毎日、誰もいない零花の部屋に哲雄は1人で立ち寄ることになった。半グレ達はそれを尾行していたので哲雄の行動の不自然さに気付き、やはり哲雄には何か裏があると見破った。また半グレ達は零花の大学にも潜入して本当に零花につきまとうストーカーがいるのか探りも入れた。零花本人にも接触して探りを入れたようです。その結果、ストーカーなど存在しないと半グレ達は判断し、それなのにストーカーがいるかのように盗聴器の前で話した哲雄と歌仙はやはり怪しいと判断した。わざと嘘の情報を言うということは隠したい真実があるからだとしか思えなかったのです。
だが、半グレ達の性急な調査では気付かないストーカーが実際は存在している可能性もあるし、ストーカーがいなかったとしても哲雄と歌仙が本当に零花につきまとうストーカーが存在すると勘違いしている可能性もある。それらの場合は哲雄と歌仙は何も隠すような裏の事情は無く、延人の行方について何も知らない可能性もある。また、哲雄が零花の部屋に立ち寄っているのも単に掃除をしているだけなのかもしれない。だから半グレの実行部隊のリーダーである恭一は哲雄と歌仙を拉致して脅しをかけて反応を見るべきだと考えた。どうして恭一がそんなに焦っているのかというと、延人の父親の麻取義辰が延人が居なくなったことで自暴自棄になり組織から離れることで組織が損害を受けることを防ぎたいと思っていたからであるが、端的に言えば、延人を発見出来ないことでそのことの責任を自分だけが取らされることになるのではないかと恐れていたからでした。
つまり、かなり恭一の自己保身のための独断専行だといえる。それでやることは一般人である哲雄と歌仙の拉致監禁なのだから、れっきとした犯罪行為です。犯罪行為が半グレ達の仕事ではありますが、それでも普段は上手く逃げ道を用意してやっている。しかし今回の件は逃げ道など無くて、露見すればあっという間に警察に追われて逮捕されかねない。非常にハイリスクです。恭一はこのまま何も手を打たなければ自分はどちらにしても進退窮まると思って焦ってハイリスクな作戦に出ようとしているが、恭一の部下たちは延人を見つけられなくても責任を取らされる立場ではない。むしろ恭一が責任を取らされて降格となれば自分の出世に繋がるぐらいです。だから恭一の保身のために自分達がハイリスクな作戦に付き合わされることには内心ウンザリしている者も割と居る。もちろんひたすら恭一に忠実な者もいるが、半グレ達は決して一枚岩ではない。
そういう状態で拉致は実行され、恭一は縛り上げて頭にマスクを被せた哲雄に向かって、自分達が何者かは名乗らず、ストーカーの件について知っていることを話すよう要求し、同時に自分達はストーカーは存在しないということを知っているのだと伝え、マスクの上から哲雄の顔を殴り続ける。こうすれば恐怖のあまり、もし哲雄が何か隠し事をしているのなら本当のことを話すのではないかというカマかけです。だが哲雄はあくまで自分と妻が零花にストーカーが存在しているということに気付いて探偵を雇って調べてもらっていたという架空の事実について説明する。そして、その探偵というのが「何でも屋の鈴木」という人物だと言う。それを聞いて恭一は、それが自分が零花の部屋に侵入した際に出会った「お掃除代行サービス」と名乗った鈴木という男のことだと連想して、その事実との照合によって哲雄の言うことが真実なのではないかと思ってしまう。
だが実際は、あの時の鈴木は哲雄の変装であり、実際は存在していない。哲雄はあの時に半グレの一員と思しき男に自分が変装して鈴木という偽名を名乗っていたという事実を利用して、自分が鈴木という探偵に依頼して零花の身辺調査をやらせていたという架空のストーリーに信憑性をもたせ、そこにストーカーの嘘話をくっつけることで、ストーカーの話の信憑性も高めようとしたのです。そして、こんな仕掛けを瞬時に出来るはずもないということは、哲雄が半グレが強行手段に出て自分に直接事実を問い質そうとしてきた時にどのように対応すべきか、あらかじめ考えて準備していたことが分かる。
その後、恭一は哲雄を高所から突き落とすかのように偽装して更に脅しをエスカレートさせながら、今度は「延人という男を探している」と告げて、何か知っていることは無いかと質問してくる。「何も知らない」と答えるのが一番無難なのだが、もし半グレが零花に接触していたとしたら、零花の口から「哲雄が延人と部屋で会っていた」という嘘の話が伝わっている可能性もある。そうだとすると「部屋で会いましたけど、その後のことは知りません」と答えておく方が無難ということになるが、そこから色々と疑われるのも得策ではない。だから「何も知らない」と答えるべきなのか「部屋で会ったけどその後は知らない」と答えるべきなのか哲雄は迷います。ただ、ずっと迷っていると余計に怪しまれる。
だが、このせっかくの半グレ達にとっての好機は、半グレの1人が苛立って「延人が暴れて部屋を出て行ったことは娘が知ってるんだよ」と口にしてしまったことで台無しになる。その半グレとしては自分達が得た情報で哲雄を追い込んだつもりだったのでしょう。自分達が情報戦で優位に立っていることをつい誇示してマウントを取りたくなってしまったのでしょうけど、これは失策でした。まぁ失策というより、そもそも恭一の保身のために自分達に何の得も無いことに付き合わされていてモチベーションが上がっておらず、いちいちやることが雑になっているのです。
これによって哲雄は半グレ達が零花と接触したことを知り、逆にそうして半グレ達が掴んだ情報を利用してやろうと考えて「延人と部屋で接触したのは探偵の鈴木だ」と嘘の情報を伝える。しかし哲雄の変装した鈴木と実際に部屋で会っている恭一にはそれが真実であるかのように聞こえてしまう。それでも恭一はあくまで慎重に、哲雄のスマホを確認して鈴木の連絡先を確認しようとしたが、それも哲雄はあらかじめ巧妙に準備をしていて上手く切り抜け、更に自宅で拉致した歌仙にもストーカーの件で質問して哲雄の話と照合するかも確かめようとするが、これもあらかじめ哲雄が想定問答を歌仙と共有していたので切り抜ける。
ただ延人の行方についての質問は想定問答に無かったので歌仙もどう答えるべきか迷うが、半グレ達が苛立っている様子を見て、どうやら半グレ達が一枚岩ではなく、長時間こうして自分を拘束することを嫌がっていることに気付いた歌仙はわざとドン臭い主婦を装い時間稼ぎをする。すると半グレ達は歌仙を問い詰めても意味が無いと思ってウンザリしてしまい恭一と揉め始めて、勝手に撤収していってしまう。
半グレ達がここまでやる気を無くしてしまったのには恭一の更なる失策も大きな原因になっている。それは哲雄が命乞いをした時に半ば脅し目的で「ここまでリスクを負った以上は本当のことを話しても死んでもらう」と言ったことです。恭一としてはそこまで脅せば哲雄が正直に話すだろうという目算もあったが、実際ここまでのことをして哲雄を家に帰してしまって警察に通報されたら面倒なので、いっそここまでやったら殺してしまった方がいいというのも事実だった。だが恭一以外の半グレにとっては、恭一の保身に巻き込まれて危ない橋を渡っているのであって、もし警察に捕まった場合の自分の罪状が拉致暴行の従犯であるのと殺人の従犯であるのとでは大違いであるし、どうせ恭一は出頭せずに自分達のうちの誰かが主犯として出頭させられるのは目に見えている。そんなものにバカバカしくて付き合えないと彼らが思うのは当然です。だから殺人にまで事態が至らないうちにウダウダして解散という方向にもっていってしまったわけです。
そうして結局、恭一は哲雄から真実を聞き出せないままお開きになってしまい、上司の窪からは独断専行の責任を問われて実行部隊のリーダーから外されてしまう。それでも何とか生き残ろうと足掻く恭一は「哲雄が延人を殺したと白状したので殺しました」と嘘の報告をすることで事件を終わらせて自分の保身を図ろうとして、2人きりになって哲雄を殺そうとする。だが哲雄はここで恭一に取引を持ち掛ける。自分には零花と探偵の鈴木から得た延人に関する情報がある。だから自分と一緒に延人を探し出そうと。もし延人を見つけることが出来れば恭一の大手柄であり恭一は復権できる。だからその代わりに延人を見つけることが出来たら自分のことは殺さないで見逃してほしい。そのように哲雄は恭一に嘆願する。
だが、これは全部が嘘です。延人は死んでいてその肉片はもう植木鉢の中で土に還っているので絶対に見つかることはない。探偵の鈴木も実在しないので有意義な情報も存在しない。つまり哲雄が恭一と一緒に延人を探しても、そのゴールに恭一の復権も無いし、哲雄の命が助かる道も無い。それなのに哲雄がそんな申し出をしてくるのは別の意図があるからです。
先ほど、恭一が「本当のことを話しても死んでもらう」と言った時、哲雄は自分がどのように上手く誤魔化しても相手は自分を殺そうとしてくるのだと悟った。つまり、自分が助かるための嘘をつき続けているだけでは半グレ相手には生き残ることは出来なかったのだと気付いたのです。だから、それでもどうしても生き残りたいのならば、自分が助かるための嘘ではなく、自分を殺そうとする相手を嵌めて殺すための嘘をつくしかないという真理に哲雄は気付いてしまった。つまり、哲雄が恭一に取引を持ち掛けたのは、自分が助かるためではなく、恭一を殺すためなのです。それしか哲雄や家族が生き残る方法が無いからです。そして、それはそこまで哲雄を追い詰めてしまった恭一の最大の失策なのでした。
転生貴族の異世界冒険録 ~自重を知らない神々の使徒~
第3話を観ました。
今回は前回のラスト、家庭教師の2人と別れてから2年後、10歳になったカインがお披露目会のために王都に行く途中、魔物に襲われている馬車を救ったところ、その馬車には王女様や公爵令嬢が乗っていて、2人ともカインに惚れてしまうという話でした。もう呆気にとられるほどのテンプレ展開で、ここまでくるともはや狂気を感じます。
テレス王女も公爵令嬢のシルクも初対面でいきなりカインにメロメロで、むちゃくちゃ身体をくっつけて迫ってきます。そして強引にカインを自分たちの馬車に乗せて一緒に王都に行き、王都では3人で一緒の部屋で寝ます。しかもベッドをくっつけてきて同衾状態。こんなの男女逆の立場だったら犯罪です。そして王様や公爵も何だかノリノリで、カインを男爵にしてしまい、王都に屋敷や領地を与えて、テレスとシルクの婚約者にしてしまう。ドッキリだと言われても驚かない展開です。
まぁしかし、何だかみんな楽しそうで、勢いに押し切られて観ていてバカ笑いして楽しめてしまいました。カインもあくまで謙虚で、周りの異常な行動にひたすら振り回されてキリキリ舞いしている様子は何だか可愛くて嫌な感じはしません。ここまで持ち上げtられまくっても全くイキリ要素が無いというのは、もはやリアリティ皆無なんですが、やっぱり好感度は高いんですよね。作品自体の好感度は低いんですが、主人公の好感度は決して低くないのがこの作品の特徴ですね。
BIRDIE WING -Golf Girls'Story- Season2
第15話を観ました。
今回は高校ダブルス選手権の決勝戦が描かれましたが、またもや最後に驚愕の真実が明かされるということになりました。相変わらず毎回見せ場を作ってくれます。それにゴルフの試合も毎回アツいんですよね。人間ドラマも毎回しっかり絡めてきますし、やっぱり全体的に作りが上手い。基本的にふざけてるので順位を下げたいんですが、パワフルで外連味溢れていてカッコよくって、なかなか下げられない作品です。
今回まず冒頭のアバンは前回のラストシーンの続きです。準決勝の香蘭戦、18番ホールの第3打、イブが「確信のオレンジ・バレット」を打って旗包みでカップインし勝利を決めた場面なんですが、ショットを打つ直前、イブは激しい頭痛に襲われて父と母の姿の記憶を思い出しました。だが今回の冒頭ではイブはそのまま呆然としていて、一時的に記憶を失っている状態のようで、第3打を打った記憶も失っているようでした。駆け寄ってきたイチナに教えられて勝ったことを知り、自分がオレンジバレットを打って頭痛に襲われて意識が朦朧としていたことも自覚しますが、父母のことを思い出したことは忘れてしまったようです。だから結局、イブの父母の正体は分からず仕舞いでした。
一方、敗れた香蘭ペアは九葉は自分が僅かに外してカップイン出来なかったことが敗因だと悔し泣きしますが、飯島はチームで実力以上を出せたことを良しとして満足して去っていきました。そして勝った雷凰ペアの方は葵が意識を失ってしまう。18番ホールの第2打を打った後に倒れ込んだ葵を見て安室監督はもう葵が継続してプレイ出来ないと判断してイブに1打で決めるよう指示したが、実際に葵はもうプレイ出来る状態ではなかったようです。しかし、どうして安室監督が葵の状態を的確に把握出来ていたのかは謎のままです。
そしてOPの後、本編が始まると昏倒した葵が見ている夢の情景が描かれる。それは今は亡き父の天鷲一彦にゴルフを教わっていた子供の頃の記憶でした。その中で一彦はゴルフを自分自身と向き合う競技だと言い、ミスショットは心の弱さが露呈したものだと言う。それで幼き葵がどうしたら心が強くなれるのかと質問すると、一彦は2つの方法を示す。1つは「どうしても自分の願いを叶えたいという信念を持ち続けること」であり、もう1つは「勝敗に関係なくゴルフを心底楽しむこと」だという。そして一彦は葵には後者の方「広い心でゴルフを楽しむといい」と勧めた。何故なら、信念で研ぎ澄ませた心は時に儚く折れてしまうからだという。
夢の内容は以上であったが、現在にいたるまでの葵のゴルフは、まさに一彦の指し示した方向性そのものと言っていい。少なくともイブと初めて会った時点では葵はひたすら純粋な心でゴルフを楽しんでおり、勝敗に過度に執着するようなところは無かった。そして一方でイブは敗北の許されないアンダーグラウンドの状況に慣れていたというのもあって、常に目の前の敵を完膚無きまでねじ伏せるという強烈な信念でゴルフをしており、勝負に勝つことで何かの願いを叶えるという強い信念を持ち続けてここまでやってきた。まさに一彦の挙げた1つ目のタイプの心の強いゴルファーだといえる。まさに葵とイブは対照的な心の強さを持つ2人であったといえます。
そして準決勝の後、葵は病院で精密検査を受けたが身体には異常は見られなかった。だが、その報せを受けた葵の母の天鷲世良は何か思い当たるところがあるようで深刻な表情を浮かべます。「早すぎる」と世良は呟き「あの人は20歳過ぎてからだったのに」と言う。「あの人」というのはおそらく亡き夫の天鷲一彦のことのようにも思える。そういえば一彦がどうして早くして亡くなったのか理由はこれまで描かれてきていませんでしたが、このセリフを聞く限り、20歳を越えてから発病した何かの病気だったみたいです。ただ、一彦は葵の記憶や世良の記憶などを見る限りでは30歳代ぐらいまでは生きていたようですから、発病してすぐに死ぬ病気でもないように思える。ただ葵のように頭痛に悩まされるのだとしたらゴルフのプレイには支障をきたすでしょうから発病したことを憂うのは当然といえます。葵は現在まだ15歳ですから、20歳を越えてから発病するはずの病気が発病したのなら、それは確かに予想外に早く、世良が憂うのも当然といえます。
ただ、世良は葵を世界に向けて売り出そうとしていたはずですから、この病気のことを予期していたのかどうかはちょっと気になるところではあります。この世良の口ぶりでは一種の遺伝病のように思えますから、発病の可能性は高いと見ていたことになる。20歳を越えたら発病すると思っていたので予想を超えて早かったようではありますが、いずれは発病する可能性が高いと思っていたのなら、葵の世界デビューに絡めて何か大きな計画を進めようとしていたというのは一体どういうことなのか、ちょっとよく分からなくなってきます。そもそも世良とその父の剛三が進めていた計画の実態はここまで全くの謎なので、どうもそのあたりも気になるところです。
とにかく精密検査の結果どこにも異常は無く、実際に葵も元気を回復したので雷凰ゴルフ部陣営では明後日の決勝戦で灘南ペアに勝利して優勝するために全力を尽くすのみということになった。ただ、厳密にはまだ決勝の相手は灘南と決まったわけではなく、翌日の準決勝で灘南が勝って決勝に進出すればの話でした。それで翌日、葵はホテルで休ませておいてイブたちは灘南の準決勝を観戦した。結果は灘南の圧勝で、結局のところ灘南ペアの姫川と及川はこの大会で全て13ホール以内で決着をつけていて強豪校相手にも全くよせつけない強さを示していた。準々決勝も準決勝も18ホールをフルで戦う羽目になった雷凰ペアとは大違いです。だが、雷凰のキャディーである雨音とイチナは、むしろ14番ホール以降を一度もプレイしていない灘南ペアよりも経験値の面で雷凰ペアの方が14番ホール以降では有利なのではないかと考え、14番ホール以降で灘南ペアに差をつける作戦を考え、ポイントは15番ホールと18番ホールと考えて作戦を立てます。
一方、灘南陣営では決勝の相手の雷凰ペアの片割れである葵が準決勝で倒れたことで全力の勝負にならないのではないかと及川は危惧し、楽勝だろうと甘く見るが、姫川の方は葵は警戒すべきと言う。それはむしろ葵に期待しているという意味合いが強く、天鷲一彦にゴルフを教わった姫川は、自分と同じく一彦にゴルフを教わった一彦の実の娘である葵との勝負を心待ちにしていたようです。そしてその一方で姫川はイブのことも妙に気になっていた。何故なら、準決勝のイブの最後の一打、あのオレンジバレットが実は姫川も観たことがある師匠の天鷲一彦の全英オープンでのアルバトロスを取った時のショットとそっくりだったからです。その一彦のショットはイブの打ったような旗包みではないようなので、つまりそっくりだというのは「打ち方」のことなのでしょう。つまり一彦も「オレンジ」を打てたということになる。イブも指摘していたように香蘭の飯島も「オレンジ」を打っており、飯島の「オレンジ」はアプローチでもパターでも使っていた。つまりは「超集中」が「オレンジ」の本質なのであり、イブも一彦も飯島も、そしておそらくイブにそれを教えたレオも、そういう「超集中」を駆使出来るのでしょう。飯島も使えるのだからイブが使えても不自然ではないわけで、それなら姫川がそこまで気にする必要は無いはずです。しかし姫川がイブの旗包みショットと一彦の全英オープン時のショットの類似性をそこまで気にするということは、単に「オレンジ」であるという点の共通項だけでなく、それ以上にイブのショットと一彦のショットには共通項が多かったのだといえます。それはおそらく一彦の弟子であった姫川しか気付かないほどの細かい類似点だったのでしょう。そういうわけで姫川は葵との勝負を楽しみにすると同時に、イブとの勝負も楽しみにしていた。
一方、ホテルで留守番して退屈していた葵のもとに安室監督がやって来て、葵を練習場に連れていき「魔法をかけてあげようと思ってね」と言って、アイアンのクラブを握って3度スイングしてボールを飛ばします。それが、一度目のスイングは葵の母である天鷲世良の現役時のスイングそっくりであり、二度目のスイングは葵の父である天鷲一彦の現役時のスイングそっくりだった。そして驚いて見つめる葵の目の前で安室が見せた三度目のスイングはこれまでに葵が見たことのない未知の形のスイングであった。だが葵がはそのスイングに何故か魅了され、誰のスイングなのか尋ねると安室は「君のスイングだ」と答える。しかし、それは葵のスイングとは全く違っていたので葵は戸惑う。すると安室は「このスイングは君の中に確実にある」と言い「天鷲葵のゴルフはまだ完成していない」と伝えると、自分の持っていたクラブを渡して50球ほど打つよう指示して立ち去っていきます。そのクラブを受け取って葵は、それが自分が普段使っているのと同じ仕様のクラブだと気付き、そのままスイングしてみると、どういうわけか身体が勝手にさっきの安室の三度目のスイングの動きをトレースしていた。本当に自分の中にあのスイングがあったのかもしれないと思って打ってみたところ、これまでにない精度でショットを正確にコントロール出来たのでした。そして、葵はこのショットを昔から知っていたように思えてくるのだった。
さて、これは一体どういうことなのか。葵の病気のことを世良以外に知っていたのは安室だけであったようであるし、葵の中に眠っていたこの未知のショットの存在を知っていたりと、どうもやはり安室は葵の過去に深く関わっているようです。前回、葵が倒れた時に「天鷲」ではなく思わず「葵」と叫んで駆けだしていったことからも、安室は葵と深い関係にあり葵の秘密を何か知っている。そして今回は普通に「天鷲」呼びに戻っていることからも、そうした自分と葵との関係を周囲にはずっと隠してきたようです。そもそも安室が葵の両親とかつて親交があったことは知られている話なので、別にそんなに必死に隠す必要は無い、葵ともフランクに接しても良いはずです。それなのに必要以上に他人行儀な態度をとっていたというのは、何か隠したい事情があったからでしょう。それが決勝戦前のこのタイミングで自分と葵の深い関係がバレかねないような行動に出たという心境の変化の理由も気になるところです。それほど決勝戦に勝ちたいという強い意思の表れなのだとも思えますが、むしろ今回の場合は葵の発病と関係していると考える方が自然でしょう。葵の発病が予想以上に早かったので、葵にこの隠されたショットを伝授するのを急いだとも解釈できます。
そういえば発病といえば、葵にこのショットを伝授した後、葵の練習を見ることもせず早々に立ち去ったのがどうも不自然だと思ったら、安室は練習場から去った後、体調を崩して座り込んでしまっていました。「3本打っただけでこれか」と嘆いているところを見ると、安室はゴルフのスイングを出来ないぐらい身体の具合が悪いようです。そういえば1期でも自分は病気だとか言っている場面もありましたし、実際に安室がゴルフをしている場面はこれまで無かった。前回もイブとレオの話をした際に、レオとの勝負に負けた後、他にも色々あって現役を引退したとか言っていたが、それは病気が原因だったようですね。
そして翌日、決勝戦当日となります。雨音とイチカの立てた作戦はなんとか灘南に互角に食らいついていって15番ホールと18番ホールで勝負をかけるというもの。そのためにイチカはイブに2度「オレンジ」を打ってほしいと言う。「オレンジ」を打つと頭に不調をきたすということはイブは誰にも伝えていない。だから本当は「オレンジ」を一試合に2回も打つというのは怖いのだが、灘南に勝つにはそれしかないと言われてイブは2度「オレンジ」を打つことを了承します。
そして試合前、安室監督は葵に「新しいゴルフを楽しめ」と伝え、イブには「迷いの無いスイングには、その軌道に虹がかかる」と伝える。葵には前日に伝授されたあの新しいスイングのことであるという意味は伝わったが、イブは安室が何を言っているのか意味が分からず、どういうことか問い返す。すると安室は「僕の親友の言葉だ」と言う。それを聞いてイブは何となくその言葉を聞いたことがあるような気がしたが、結局よく分からなかった。
そうして決勝戦が始まるが予想外な展開となります。灘南有利と見られていた試合でしたが、葵が新しいスイングでスーパーショットを連発して雷凰がリードする展開となったのです。これは同じ天鷲一彦の弟子同士の同門対決を楽しみにしていた灘南の姫川にとってはいっそう意外な展開といえます。世界に通用した日本最高のゴルファーであった天鷲一彦のゴルフを捨てて別のゴルフを選ぶという葵の選択も予想外でしたが、それで天鷲一彦の一番弟子であり高校女子最強ゴルファーである自分を圧倒するというのが更に姫川にとっては考えられないことであったのです。
しかし地元に帰ってテレビでそれを観戦していた香蘭の監督の伊達はそれは当然のことだと言う。伊達は天鷲一彦や安室、そして世良とも若い頃は競い合った関係であったのだが、その伊達が「天鷲一彦がずっとライバル視していたのが安室なのだから」と言う。そして会場に遅れてやってきた葵の母の世良も葵のスイングを見て、それを安室のスイングだと言う。つまり、安室が決勝戦の前日に葵に見せた三番目のスイングは実は安室自身のスイングだったのです。天鷲一彦と互角のライバルであった安室のスイングを伝授された葵なのだから、天鷲一彦のゴルフを引き継いだ姫川と互角以上の勝負をしても当然だと、そういうことを伊達は言ったのでしょう。
ただ、よく考えるとそれはおかしい。もともと葵は一彦のゴルフをやっていた。そして同じく一彦のゴルフをやっていた姫川に勝つことは出来ていなかった。つまりゴルファーとしての地力は姫川の方が葵よりも上なのです。そういう状態で、たとえ安室が一彦と互角のゴルファーだったとしても、一彦のゴルフをする姫川と、安室のゴルフをする葵が勝負したとしても、やはり姫川に軍配が上がるはずです。それなのに葵の方が現実には勝っているということは、「一彦のゴルフをする葵」よりも「安室のゴルフをする葵」の方が強いということになる。それはつまり葵にとっては一彦のゴルフよりも安室のゴルフの方が親和性が高いということになる。そうなると、葵と実の父の一彦との関係よりも、葵と安室の関係の方が深いということになる。安室も自分のスイングを葵に見せた時、それを「君のスイングだ」と言った。また、世良も葵が安室のスイングをしているのを見た時「私の愛したゴルフがまた見られるなんて」と涙ぐんで喜んでいる。
そして葵もスイングをしながら子供の頃の記憶が甦ってきて、今回の本編冒頭の子供の頃の記憶の場面で、子供の頃の葵に「広い心でゴルフを楽しむといい」とアドバイスしてくれたのは実は安室だったことを思い出した。実は子供の頃の葵にゴルフを教えてくれたのは一彦と安室の2人だったのです。だから葵の中に安室のスイングが眠っていたのだということが分かるが、このスイングが父の一彦から教わったスイングよりも葵にジャストフィットしていることを考えると、安室と葵の関係は単なる師弟関係を超えたものに思えてならない。世良の態度もまるで安室を愛しているかのようにも見えるし、こうなると安室と葵に血縁関係があるのではないかとも考えてしまう。
そう考えると、葵が発病したと報告を受けた時の世良の「あの人は20歳過ぎてからだったのに」という言葉の「あの人」というのは一彦ではなく安室なのではないかという気もしてくる。安室も病気を発病しており、一彦にライバル視されるほどの選手だったにもかかわらず世間的に無名なのは20歳過ぎで何らかの病気を発病して早くして現役を引退したからであると考えると自然であろう。少なくとも30歳過ぎぐらいまで現役で活躍していたと思われる一彦が20歳過ぎで葵の症状のようなゴルフが出来なくなるような病気を発病していたと考えるよりは、よほど安室が「あの人」を指すと考えた方が自然だと思う。そうなると、やはり安室が葵の実の父親であり、葵の病気は安室と同じものだということになる。
ただ、その親子関係の真偽はともかくとして、安室が葵にこの本来のゴルフスタイルを引き出させるのは実は時期尚早であったらしい。本来はもう少し後、日本女子オープンゴルフ選手権までは解禁しない予定だったのだという。どうやらその大会で何かを仕掛けるのが世良や剛三たち天鷲家の計画であり、安室もそれに一枚噛んでいたようです。しかし解禁を急いだのは天鷲家のためではなく葵のためだったのだと安室は言う。それがどういう意味なのかはよく分からないが、伊達はこの解禁は葵にはまだ早いのだと警告する。まだ身体も出来上がっていないので無茶すぎるのだと言うのです。
そうして試合は進み、14番ホールを終わって雷凰ペアが3アップという状況となる。この大会は勝ったホールの数で競う18番ホールの勝負だから、14番終了時点で雷凰が3ホール分リードしているということは、残り4ホールのうち雷凰が1ホールでも取れば勝利が確定します。つまり15番ホールで雷凰が勝てばその時点で雷凰の優勝となる。もし15番を引き分けても灘南はその後は3ホール全部を勝たねば延長戦には進めない。圧倒的に雷凰有利な状況での終盤戦突入となる。そして15番ホールは例のイブがオレンジを打つ準備をしていた2つのホールのうちの1つであるが、もうこういう状況になったらそれすら必要な状況には思えない。実際、この決勝戦はほとんど葵の力で有利に試合を進めてきているようなもので、イブの活躍の機会すらあまり無く、イブはすっかり葵に圧倒され、負けてはいられない、葵とまた勝負をしたいと強く思っているような状態だった。
一方、対戦相手の灘南のエース姫川は惨めなものだった。せっかく天鷲一彦のゴルフ同士の対決で雌雄を決したかったのに、何処の誰のものともよく分からないゴルフに天鷲一彦のゴルフを受け継いだ自分が負けようとしている。それというのも自分が真に天鷲一彦のゴルフを引き継げていないからなのではないかと姫川は苦悩する。
そうして姫川は初めて天鷲一彦にゴルフを指導してもらった時のことを思い出す。その時に魅了された一彦のスイングを結局のところ姫川はまだ完璧にトレース出来ていなかった。そのことを思うと、姫川は「もし、あのスイングを完璧に再現出来たのなら自分はもうそれで満足だ。勝敗などどうでもいい」とさえ思った。その姫川の脳裏に今でも焼き付いているそのスイングは七色の軌道を描いているように見えたという。そして、姫川に向かってその時天鷲一彦はこう言ったのです。「迷いの無いスイングには、その軌道に虹がかかる」と。
つまり、安室が試合前にイブに伝えた言葉は安室の親友でありライバルでもあった一彦の言葉だったのです。だが、どうして安室がイブにその言葉を伝えたのかは謎といえる。確かにイブは「七色の弾丸」を売りにしているゴルファーであるが、それはイブが七種類のショットを操るゴルファーという意味であって、この一彦の言葉の意味とはちょっと違う。だから安室が試合前に突然イブとは無関係の一彦の言葉を伝える意味が分からない。いや、安室がイブと一彦が関係があるのではないかと考える要素はただ1つ存在する。それは前回のラストシーン、準決勝のラストショットでイブが「オレンジ」を打った時に安室が「あれは一彦の?」と驚いたことです。あの時点で安室はイブと一彦に何らかの関係があると疑ったのかもしれない。実際、一彦がイブと似たオレンジを打ったというのは姫川も言及しており、実際にイブと一彦もまた無関係とはいえないのです。
ともかく、あと1ホール取れば優勝という状況で迎えた15番ホール、雷凰の2打目は葵が打つのだが、ここでやはり伊達が危惧したように無理が祟ったのか、それともまた病気の発病なのか、葵はフラついてしまい、2打目はグリーンに届かずに落ちてしまう。一方、灘南の2打目を打った及川は意地の2オンでグリーンに乗せてきて、しかもベタピンに寄せてイーグル確実となります。そうなると雷凰は次の3打目のイブがカップインさせてもイーグルでこのホールはイーブンとなり、勝負は16番ホール以降に持ち越しになる。ただ、それでも葵の体調が再び怪しくなってきたこの状況では、この後の3ホールはこれまでのように優勢とも限らない。だからこの15番ホールは絶対に落とすわけにはいかない。最低でもイーブンにはしないといけない。だが、もしイブが3打目でカップイン出来なければ、灘南は3打目は確実に決めるのでこの15番ホールは灘南が取ってしまう。だからイブはこの3打目は絶対に決めなければいけない。そこでイブは準決勝の時と同じように、ここで「オレンジ」を使って旗包みでカップインを狙います。
そうしてオレンジを放ったイブは準決勝時と同じく、また頭痛に襲われる。そして両親の記憶を思い出すのだが、今回は打ち終わった後もその記憶は消えなかった。そしてイブが旗を狙ったはずのショットは旗を大きく外れてカップを大きくオーバーしてしまう。いや、そもそもそのショットは「オレンジ」ではなかった。激しい頭痛に襲われる中イブが繰り出した「オレンジ」とは全く違うスイングは虹色の軌道を描いていたのです。それを見て姫川は驚愕する。自分がかつて師匠である天鷲一彦がそのスイングをするのを見て魅了され、ずっと追い求めながら一度も完璧に再現することが出来なかった「レインボーショット」が、目の前で天鷲一彦と何の関係も無いはずのイブによって繰り出されたからです。
ただ、その虹色の軌道で打ち出されたボールは大きくカップを飛び越えていき、どう見てもミスショットに思えた。しかし姫川にはそれがミスショットでないことは分かっていた。そのボールはグリーンを捉えると、そこから猛烈なバックスピンで戻っていきそのままカップインしたのです。このショットを見て、姫川と同時に世良も伊達もそれが一彦のショットであることを知り驚愕し、そしてまた遠く異国の地でレオもその映像を凝視し「ついに過去を取り戻したか」と呟き、傍らにいるアイシャという少女に向かって「お前はこの女といずれ戦うことになる」と語り掛けるのでした。
このアイシャという謎の少女については謎のままとして、どうやらレオだけはイブの過去を知っていたようです。そしておそらく安室も準決勝の最後のショットを見た時にそのことには気付いていたのでしょう。イブが頭痛と共に見た父母の記憶、その父親は天鷲一彦、いや旧姓の穂高一彦でした。そして母親はエリノワ・バートという。そしてイブの記憶の中で、一彦はイブの父だと名乗って訪ねてきてイブにゴルフを教えていた。その時、一彦がイブに伝えた言葉が「迷いの無いスイングには、その軌道に虹がかかる」でした。さっき安室にその言葉を言われた時に昔聞いたことがあると思ったのはこれだったのだとイブは理解した。
思えば、イブが「オレンジ」を打つたびに頭痛に襲われていたのは超集中の副作用なのではなく、何らかの理由で両親の記憶にプロテクトがかかっていた状況で、父から教わったショットである「オレンジ」を打つことによって記憶が甦ってきて、それがプロテクトとぶつかって頭痛を引き起こしていたのでしょう。そして遂に無理にオレンジを打ち続けた結果、記憶のプロテクトが破壊されて記憶が完全に甦り、その結果、第七のショットである父直伝の「レインボーショット」を打てるようになったのだと思われます。
そうして記憶を復活させたイブは、見事なイーグルに喜んで駆け寄ってくる葵に向かって、自分の母はエリノワ・バートという名であり、父親は穂高一彦という名だと告げ、そして自分の本当の名前はイヴァンジェリン・バートというのだと告げるのでした。そういうところで今回は終わり、怒涛の展開で次回に続きます。イブと一彦と関係、葵と安室の関係も気になるところですが、決勝戦の方もこれで16番ホール以降の勝負に突入してきますが、葵の体調不良やイブの記憶覚醒の影響がどう出るのか大注目となります。こんなクライマックス感が満々でまだ今期、次が3話目とか、テンション高すぎでしょ。