2023冬アニメ 3月16日視聴分 | アニメ視聴日記

アニメ視聴日記

日々視聴しているアニメについてあれこれ

2023年冬アニメのうち、3月15日深夜に録画して3月16日に視聴した作品は以下の4タイトルでした。

 

 

もういっぽん!

第10話を観ました。

今回は金鷲旗大会の2回戦、山口県の錦山高校との試合が描かれました。前回もアツかったんですけど今回もまたアツかった。ただ前回の場合は青葉西では主に主人公の未知に焦点が当たったお話になっていて、それに何より博多南のドラマがアツかった。それに比べて今回は主役チームである青葉西のドラマがガッツリ描かれていて、それが激アツで、しかも全員にしっかり見せ場があって、総力戦で強豪相手に勝ちをもぎ取ったという素晴らしい展開で、これまでの青葉西のドラマの積み重ねの集大成といえる正真正銘の神回だったといえます。これまでにも個々の心情を掘り下げた素晴らしい神回といえるエピソードは何回もありましたが、今回は主には早苗と姫野のドラマではありましたが、全員のドラマが1つに繋がる間違いなくこの1クールのピークといえるエピソードだったと思います。

この作品は前回みたいにポッと出の博多南でいきなり感動させるという瞬発力もありながら、同時にやはり真骨頂は徐々に積み重ねた個々の描写が重なり合い繋がり合ってどんどん物語の深みを増していくところにあるわけで、それがこれまでで一番綺麗に決まったエピソードだったと思います。まるで最終話で決勝戦で勝ったみたいな盛り上がりのエピソードであり、この後さらに続きがあって盛り上がっていくというのがちょっと信じられないぐらいのテンションの高さでしたね。

今更ですけど、個々のキャラがしっかり立っていて役割分担が出来ていて、それが柔道の勝ち抜き形式の団体戦というフォーマットの中で見事に活かされていて、それぞれがそれぞれを支え合い、力を与え合っているという描き方がとても美しい。まさに総力戦で、出場している4人だけでなく、南雲や夏目先生も含めた6人全員でもぎ取った勝利でした。それも、今回の試合の中だけでなく、南雲の情報収集や永遠との信頼関係、未知と早苗の中学時代や、姫野先輩と夏目先生の2人きりの苦闘の日々など、それら全ての積み重ねの末の勝利でありました。

あと、やはりこれだけの多彩なドラマを1話にしっかり凝縮して見せる脚本と演出の構成力が素晴らしい。原作が無駄なセリフが無い素晴らしい作品なのでやりやすいのでしょうけど、要所ではその原作を膨らませているので、やはりアニメとしての構成力も優れているのは間違いない。回想の入れ方も上手だし、柔道シーンの作画もずっと素晴らしいし、終盤に来るにつれてむしろ全体的に作画が良くなってきてるしキャラも可愛くなってきてる。まぁキャラの可愛さはドラマの良さに引っ張られてそういう印象になってきてるだけかもしれませんが、少なくとも終盤に来て作画が崩れてきてる作品が多い中で一体どうしたんだというぐらい作画が全く悪くなっていない。制作のBAKKEN RECORDは要するにタツノコプロであって、意欲的に新作を作る会社ではないから昨今では目立たないが資金力は豊富だし制作体制もしっかりしてるから、そりゃ原作に恵まれればこれぐらいの良い作品を作るのは余裕なんでしょう。

それから、この作品は声優の演技がみんな良いんですよね。人気声優を使ってるというわけではないんですが、メインキャラはみんなしっかりキャラに合った声優を使ってます。実績があまり無かったり、普段やってる役と違うイメージの人が多めで、ちゃんと役に合う人をしっかり試してから選んでるんだなと逆に思えて好印象です。脇役陣の声優が意外に豪華で実力派というのも良い。キャラに合った演技が出来ているのは、キャラクターが等身大でリアルな感じでキャラ立ちしているから演じやすいというのもあるんでしょうね。キャラ売り、声優売りしていない作品だから人気は無いんですが、だからこそドラマの中で演技が馴染んでいて自然に観れる。つまり良い作品ほど人気は出ないという昨今の良くない傾向の典型みたいな作品なんですが。

とにかく今回はこれまでで最高の出来で、「不滅のあなたへ」の最終話が素晴らしかったので、まさかアレは超えないだろうと思っていたんですが、ここまでの出来を見せられては悩んでしまいます。何にしてもこの1クールの総合評価ではやはりこの作品の方が上になりそうですね。

そういうわけで今回の内容ですが、金鷲旗大会の青葉西の2回戦の相手は山口県の錦山高校です。前々回に描かれたトーナメント表を見返すと、錦山高校は2回戦からの登場であり、青葉西との試合が初戦です。青葉西は1回戦からの登場でしたから錦山は一応シード校のような扱いですね。ただ、出場校全体の中で青葉西みたいに1回戦がある学校の方がむしろ少数派で、おそらく青葉西とか博多南みたいな、近年の出場実績が無かったり、出場人数が少ないような学校が1回戦で篩にかけられるようになっていて、普通に実力がある学校は2回戦からの登場なのでしょう。ちなみに霞ヶ丘も金鷲旗大会は出場実績に乏しいので1回戦からの登場ということになっています。

そういう1回戦から勝ち上がってきた青葉西というのは、錦山高校から見れば格下扱いということになります。南雲の調査によると、錦山高校は山口県では柔道の強豪校で、選手も青葉西のように4人ではなく、ちゃんと5人揃っていて、3年生が3人で2年生が2人という布陣となっており、選手層も厚そうで試合経験も豊富そうです。実際に青葉西より格上の学校であり、青葉西が1回戦で対戦した博多南とは違って真の強敵といえます。

更に錦山高校はこれが初戦ですから、まだどういうオーダーで試合に臨むのか不明です。南雲の調査では実はポイントゲッターが3年生エースの堂本と2年生エースの小出の2人いて、小出の方が格上であるということは判明していたのですが、前回のラストシーンで青葉西の皆に錦山の情報を伝える際に南雲はわざと小出の話題には触れませんでした。この小出の強さについては今回の大将戦の時まで視聴者にも伏せてあったので観ていて驚きだったのですが、南雲としては相手校に2人も強豪選手がいるという情報を与えて青葉西の皆の意識が散漫になるのを防ぎたいという想いがあって、あえて小出のことは伝えなかったようです。

それは、おそらく錦山がより強い小出を大将に回して、最後の切り札として温存してくるだろうと予想していたからでしょう。だから小出がいきなり先鋒で登場して未知や早苗と対戦するようなことはないだろうと思い、それなら堂本に加えて小出の情報まで与えて相手の格上感を強調してわざわざプレッシャーをかける意味は無いという南雲の判断だったのでしょう。もし小出まで引きずり出すとしたら、それは青葉西が優勢な状況でのことだと予想され、そこで小出に何人か負かされたとしても、青葉西にも最後に切り札として永遠が控えており、何人かと対戦して疲弊した小出になら永遠は勝てる、いや対等な勝負でも永遠なら小出に勝てるだろうと読んで、南雲はあえて永遠も含む全員に小出のことは伝えなかった。

どうして錦山が小出を温存すると南雲が思ったのかというと、それはおそらくこの青葉西と錦山の勝者の次の相手がおそらく優勝候補の立川学園だからです。当然、錦山の意識は4人しか選手がいない弱小校の青葉西ではなく、次の立川学園の方に向いている。立川学園は錦山としても持てる力の全てを引き出さないとなかなか勝てる相手ではないから、最強の切り札である小出が万全の状態で立川学園戦に臨めるようにしたいところです。だから小出が戦わなくても勝てそうな弱小の青葉西との試合では小出が出ないうちに試合を終わらせることが出来るように小出を5人目の大将に置く可能性が高い。

金鷲旗大会は3回戦までオーダー変更が出来ないから、そうなると小出は次の立川学園戦でも大将ということになるが、格上の立川学園相手に小出といえども何人も抜くのは難しいので、錦山は総力戦で臨むオーダーとなる。だから立川学園戦でも小出が大将という布陣で良いのです。そうなると、やはり青葉西戦でも小出は大将ということになる。だから錦山は小出を大将に温存して弱小の青葉西には最小戦力で楽に勝とうとするはず。

いや実際は青葉西は決して弱小校ではなくて、人数は4人とはいえ永遠という絶対的エースを擁する学校なのですが、何せ1回戦は未知が3人抜きで決めてしまったので未知以外はどういう選手なのか錦山は分かっていない。永遠だってまだ高校柔道ではほとんど目立った実績は無くて、先だってのインターハイ個人戦で埼玉3位ではあったが、まだ1年生であり中学でも目立った実績も無く、遠い山口県の錦山にとっては情報不足だったのでしょう。3人抜きの未知だって相手は3人しかいない博多南だったし、たまたま相手が弱くて3人抜き出来ただけと見えたのでしょう。実際は博多南戦で未知が戦った1人目の相手の湊は福岡の70㎏級3位の強豪選手だったのだが、錦山は対戦相手でもない湊のこともあまりちゃんと調べていなかったと思われる。そもそも青葉西は4人しかいない1年生主体のチームで、錦山はどうしても次の立川学園の方に意識が向いて青葉西は眼中に無かったのだと思われます。

そういう青葉西を格下と見た状態で錦山がどういうオーダーで戦おうとしてくるかと考えて、南雲は堂本で一気に4人抜きで勝負をかけてくる可能性があると思い、とりあえず堂本1人を警戒する意識を青葉西の皆に持たせるのが良いと考えて、それで前回のラストシーンでは堂本を要警戒選手として挙げていたのです。堂本は3年生で、インターハイ山口県大会では2年連続78㎏超級の2位という強豪選手です。78㎏超級というのは最重量級の無差別級であり、1回戦で未知が戦った70㎏級の湊も大柄な選手だったが、それとは全く次元が違う大きさの選手であり、しかもただ大きいだけではなくて実力も十分なのですから、いくら柔道が「柔よく剛を制す」とはいっても、同じ大柄でも1年生の湊とは違い経験も豊富ですから、小柄な選手との戦い方も熟知しているであろうし、かなりの難敵といえます。

おそらく南雲はこの堂本を先鋒に立てて一気に4人抜きを仕掛けてこられるのを最悪のシナリオとして想定していたのだと思います。ところが意外にも錦山は青葉西との試合で堂本を中堅に、そして小出は予想通り大将に置いて臨んできたのです。これはおそらく錦山は青葉西をとことん格下に見て、次の立川学園戦により万全の態勢で臨むために小出だけでなく堂本も温存したいと思ったからでしょう。堂本を先鋒に置いてしまうと堂本が最大4試合もすることになり、堂本の疲労が蓄積してしまい、夕方に行われる立川学園との試合に万全の状態で臨めなくなってしまう。堂本と小出の二枚看板が万全であってこそ立川学園との試合で勝機が生まれるのですから錦山としては青葉西戦では出来るだけ堂本の試合数を減らしたい。それに次の立川学園との試合用に組んだオーダーで青葉西戦も戦うということになりますから、そうなるとやはり先手必勝オーダーでは無くて総力戦オーダーであり堂本は中堅あたりが適切ということになる。

青葉西の先鋒は1回戦で3人抜きを決めた未知なのですが、錦山は弱小校同士の対戦でのたまたまの3人抜きであったと判断して、ポイントゲッターではない先鋒の手塚と次鋒の蒼井の2人でも十分に対処可能と見ていたようです。実際、2人とも強豪校のレギュラーであり学年も未知より上で経験も豊富、階級だって蒼井は未知より上でしたし、負けるとは思っていなかったのでしょう。それは青葉西の仲間たちも同じで、強豪校相手に未知がそう簡単に勝てるとは思っていなかった。

実際、博多南との試合のように簡単に一本勝ちというわけにはいかなかったのだが、それでも未知はなんと優勢勝ちで2人抜きを決めてしまう。オーダー面では油断はあったであろうが、錦山の2人も試合中は決して未知のことを舐めてはいなかったはずだが、それでも判定で勝ち切ってしまった未知の実力は本物といえます。子供の頃から続けてきた一本を狙う思い切りのよい柔道が青葉西に入って磨きがかかり、そうして蓄積されていた実力が、博多南戦での高校公式戦初勝利からの3人連続の一本勝ち、それもずっと夢に見ていた気持ちの良い一本を決められたことで一気に解放され、実力が覚醒したのだといえます。

なお、この未知の2連勝を観客席から博多南の3人が観ていて、午前中に未知と熱戦を繰り広げた梅原が拳を握りしめて熱くなっているのは良い場面でした。自分達に勝った未知が2回戦であっさり負けたりしたら博多南の3人にとっては自分達が凄く弱いみたいで嫌ですから、未知が強豪校の選手に勝ってくれて少し安堵して誇らしく思う部分もある。また梅原にとっては自分が目指そうと決めたのと同じような柔道をする未知が勝っている姿を見て心強く思う部分もあるし、その一方で、もし青葉西に勝っていればこの舞台に立っていたのは自分達だったのかもしれないという悔しさもある。そういう色んな感情がない交ぜになって、博多南の3人も次の戦いに向かっていいくのだと思うと、観ていて微笑ましくあります。

さて、この未知の覚醒は青葉西の仲間も、そして未知自身にも予想外のことでしたので、相手の錦山には完全に想定外となり、錦山は手痛い2連敗を喫してしまい、温存したかった堂本を相手が4人全員残った状態で投入する羽目となります。だが堂本はあっという間に未知に一本勝ちし、まずは1人を抜き返します。これはもちろん堂本が本物の強豪選手であるからなのですが、未知もさすがに午前中の博多南戦での3連戦に加えて、この2試合も時間いっぱいを使った優勢勝ちでしたので、さすがに疲労の蓄積がピークだったのでしょう。また、最軽量級の未知と最重量級の堂本との対戦で、一本狙いで真っ向勝負で立ち技で向かっていく未知の柔道は相性も悪かったといえます。1回戦の湊との試合はそれで上手くいったのですが、堂本は湊よりはるかに巨漢で、疲弊した未知ではさすがに荷が重い相手でした。しかし披露困憊で一本負けした後でも未知は堂本を見上げて「カッコいい」と言って笑っており、こういう相手を投げ飛ばして一本勝ちしたらさぞ気持ちいいんだろうなと闘志を燃やします。

これで青葉西はこの金鷲旗大会で初めて次鋒の早苗の登場となります。青葉西は2勝で錦山は1勝ですが、青葉西の方が1人少ないので、これで両チームとも残りは3人で同数です。2試合目となる堂本を早苗が破ればまた青葉西がリードする展開となります。だが疲労していたとはいえ未知を瞬殺した堂本の強さを目の当たりにして早苗はビビってしまう。それでも未知から「後は任せた」とタッチを交わしながら言われると、前日、風呂場でオーダーを決めた時「未知が負けたらその後を自分がフォローする」と約束していたことを想い出し早苗は拳を握って気合を入れ直します。

そして、未知が1回戦で自分よりも大きくて強い湊を投げ飛ばした姿を思い出し、自分だって巨漢の堂本相手に勝つことが出来るはずだと思って恐怖心を跳ね返そうとします。そして未知が3人抜きしたのを見て自分だって5人抜きして敢闘賞を欲しいと言っていたことも思い出し、自分だって未知に負けていられないと心を奮い立たせます。

早苗はインターハイ予選の時に高校柔道で初めての勝利を挙げ、一方で未知はインターハイ予選では結局1勝も出来ず高校柔道で未だ勝ち星が無い状態で金鷲旗大会に臨んだ。もともと未知に誘われて中学で柔道を始めた早苗は、ずっと未知を追いかける形で柔道をやっていたのだが、高校に入って自分が先に1勝を挙げたことで少し未知を追い抜いた気分になっていた。だが金鷲旗大会が始まり1回戦で未知が高校初勝利を挙げた後に一気に3人抜きをした姿を見て、早苗は再び未知に抜き返された気分になった。そして、このままではやはり自分は未知には追いつくことは出来ず置いて行かれるようにも思えた。それは嫌だと思い、早苗は奮起して、だから未知が3人抜きするなら自分も5人抜きをしたいと思った。未知が頑張っているのなら自分ももっと頑張りたい、未知が勝つのなら自分ももっと勝ちたいと思ったのです。未知に後を託されて、自分の中に新たに芽生えたその気持ちを早苗は思い出します。そして、未知が負けた相手に自分が勝ちたいと強く思った。それが金鷲旗大会のルールである勝ち抜き戦の醍醐味なのです。味方を負かした相手にリベンジしたいという想いも掻き立てられますが、最も身近なライバルである仲間に勝った相手に勝つことで仲間を乗り越えることも出来るのが面白いのです。

だが実際に堂本との試合が始まってみると、早苗は早々に技ありを取られて劣勢となってしまいます。そもそも実力も体格もかなり違いますから仕方ない。堂本の方は既に未知に2人抜きされた状態を挽回して、出来るだけ後の選手の体力を温存した状態で立川学園との試合に進みたいので全力で向かってきますから、そのパワフルな厳しい攻めに早苗は翻弄されるばかりで、堂本の技を凌ぐのに精一杯で自分の技を出す余裕も無い。そうしているうちに早苗は指導を貰ってしまう。技を出さないと消極的と見なされて指導を貰う羽目となり、指導が3つ貯まると反則負けになってしまいます。このまま堂本が一方的に攻め続ける状態が続けば、技が決まらなくてもすぐに早苗の指導が3つとなって反則負けで試合終了となります。堂本のようなパワーのある選手は一本勝ちなどしなくてもそういう勝ち方も出来るのです。かといって早苗が指導を貰わないようにと無理に攻めても体格も実力も勝る堂本に技をかけられて技ありでも取られたら早苗は合わせ技一本で負けてしまいますから、もう絶体絶命といえます。

ここで早苗は無理な体勢からの巴投げにいくと見せかけて寝技勝負に持ち込みます。だが身体の大きな相手に寝技勝負を挑むのはかなりリスクが高いので堂本も早苗の行動に驚きますが、早苗の立ち技が稚拙であるのに比べて寝技が上手であるのを見て、早苗が寝技を得意とする選手だということに気付きます。そして、寝技ならば指導を貰うことはないまま戦うことが出来るので、早苗が得意な寝技勝負なら自分の攻撃を凌いで制限時間いっぱい戦えると踏んでいるのだろうと堂本は想像する。どうして堂本がそう思ったのかというと、それは早苗が狙っているのは自分の体力を削ることだと判断したからです。

それと同じことに南雲も気付きます。早苗がこの劣勢な状態から逆転勝利することは難しい。時間いっぱい粘っても既に技ありを取られているから判定負けとなる。だが、この大会は勝ち抜き戦方式だから、負けてもそれで終わりではない。時間いっぱい粘って戦うことで相手の体力を削れば味方の次の選手が有利になる。だから同じ負けでも制限時間いっぱい粘ると粘らないでは大きな違いがある。早苗と堂本の立ち技での技量差ではこのまま立ち技で戦い続ければ早苗は投げられて負けるか、あるいは指導が3つになって反則負けで、いずれにせよ制限時間いっぱいまでもたせることは出来ないでしょう。しかし早苗が得意な寝技勝負ならば指導を貰うこともなく、堂本の攻撃を凌ぎ切って制限時間いっぱい戦って堂本を消耗させることが出来る。そもそも立ち技で戦うよりずっと寝技で戦う方が消耗は激しいので、早苗の作戦が上手くいけば堂本は次の姫野との対戦は万全の状態では戦えなくなるだろう。つまり早苗はもう自分は勝てないと判断して潰れ役に徹して次の試合に繋ぎ、中堅の姫野の戦いを少しでも有利にしようとしてくれているのだと南雲は思った。

だが堂本も早苗の思惑がそういうことだと読んだ上であえて寝技勝負に応じる。もちろん堂本も寝技も得意であり、寝技が体力を消耗することは分かっている。だからこそ、重量級の自分の寝技を受けることで先に早苗の体力の方が尽きて、そこを押さえ込んで制限時間前に逆に自分が一本勝ちしてやろうと堂本は思ったのでした。そうして寝技勝負でも堂本が猛攻を続けることになり、早苗は防戦一方となってしまう。これを見て南雲はハラハラするが、それでも何とか残り30秒まで耐え凌いできたので「こうなったら時間内なんとか粘り切れ!」と早苗に声援を送る。

だが、南雲の隣で早苗の戦いを観ていた未知だけは皆とは違う印象を受けた。そして、中学の頃に早苗と練習していた時に、早苗が寝技が好きだと言っていたことを想い出した。もともとは未知が早苗に教えたことなのだそうだが「立ち技はセンスに左右されるけど、寝技は努力の量と成長が比例する」のだと言って、だから早苗は寝技が好きなのだと言った。早苗は自分は未知に比べて柔道のセンスが無いと思っていたが、そんな自分でも努力すれば寝技でならば未知に勝てるのだと思って頑張っていたのです。実際、中学時代で既に早苗は寝技でならば未知に勝てるようになっていた。それは「寝技は努力したぶん強くなる」という言葉は嘘ではなかった証でした。だから、センスは無いけど未知に勝ちたい早苗にとって寝技は未知に勝つための唯一の手段であり、だから早苗は寝技が好きだったのです。中学時代の早苗の目標、柔道の原点は未知に勝つことであり、だから寝技は早苗の柔道の原点であり勝ち筋。そんな早苗が寝技勝負で勝ちを諦めるなんてことがあるはずがないと未知は気付いた。

「違う、時間稼ぎじゃない」と未知が呟くと、さすがに業を煮やして立ち上がろうとした堂本の一瞬の隙をついて早苗が飛びついて堂本を転がして押さえ込みに入る。時間稼ぎなどではなく、早苗は最初からずっと本気で堂本に寝技で一本勝ちするつもりで寝技勝負に引き込んだのです。それでも寝技でも技量の勝る堂本相手に押さえ込みに入ることも出来ず防戦一方の展開となってしまっていただけなのですが、もともと早苗が勝ちを諦めて時間稼ぎをしているのだという先入観を持っていた堂本は防戦一方の早苗を見て「やっぱり時間稼ぎであって、本気で攻めるつもりはないのだ」と甘く見てしまっていた。だから疲れて不用意に立ち上がろうとしたところを最初からずっと本気で攻めていた早苗の攻撃を喰らってしまい転がされてしまったのです。

それにしても早苗もずっと堂本の寝技に攻めまくられて疲労困憊だったはずなのに、よく一瞬の隙を突くことが出来たものですが、これはもう執念というしかない。それは堂本に寝技で勝ちたいという想いももちろんあったが、早苗を最も突き動かしていたのは、未知に一本勝ちした堂本に寝技で一本勝ちすることによって、未知に寝技で一本勝ちしたいという執念でした。高校初勝利から3人抜きでまた自分を簡単に追い越していった未知はやっぱり自分なんかよりも柔道のセンスがある。でもそんな未知に自分も勝ちたい。それが出来る唯一の手段は早苗にとって努力の量が決して裏切らない寝技でした。だから、堂本に寝技で一本勝ちすることによって、未知に寝技で勝って、そうして再び未知と一緒に並び立てるようになりたい、その一念が早苗を突き動かしていたのでした。

そうして終了30秒前に押さえ込みに入り10秒が経過し、これで技ありポイントとなり、ポイントでは早苗は堂本に追いつきました。このまま終了まで凌げば引き分けとなり、早苗も堂本も畳から降りて、次は青葉西の中堅の姫野と錦山の副将の里山の勝負となります。しかしまだ残り時間は20秒あり、押さえ込みはまだ続いていて、更にあと10秒押さえ込んだまま経過すれば早苗の一本勝ちです。当然、早苗はそのまま押さえ込んで一本勝ちをもぎ取ろうとする。だが堂本も必死で抵抗し、既に体力をかなり消耗していた早苗の押さえ込みは惜しくもあと1秒のところで解けてしまい、堂本は脱出に成功します。そして、そのまま早苗をひっくり返して、今度は堂本が早苗を押さえ込んでしまう。

こうして終了10秒前の時点で堂本が早苗を押さえ込み、この時点でポイントは同点だが、このまま10秒押さえ込めば堂本は合わせ技一本で早苗に勝つことが出来ます。早苗も必死で逃れようとしますが、堂本も3年間の柔道生活の集大成として立川学園と試合する目前にこんな無名の青葉西の1年生相手に負けていられないと必死で、思いっきり押さえ込んで早苗を逃がしてくれない。両校メンバーが早苗と堂本に声援を送る中、堂本の押さえ込みが緩んだ隙をついて脱出した早苗は再び堂本を押さえ込もうとして飛び掛かるが、堂本は驚いた顔をして早苗を見て、視線を脇にやる。それにつられて早苗もそっちを見ると、審判が手を横に広げている。それは技ありの判定であり、続いて審判は「合わせて一本!」とコールする。つまり、既に押さえ込んだまま10秒経過しており堂本の勝ちで試合は終了していたのです。それで堂本は押さえ込みを緩めたのだが、無我夢中だった早苗はそれに気付かずに攻撃を続行してきたので堂本がビックリしたという場面であったのでした。

こうして早苗は堂本に敗れてしまい、堂本はこれで2人抜きを達成し、残り人数は青葉西は2人、錦山は3人となり、青葉西は不利な状況となってしまう。しかも次の試合は錦山は早苗との試合でかなり疲労したとはいえ実力十分のポイントゲッターの堂本であり、片や青葉西は半年以上のブランクを経ての復帰戦の姫野です。姫野にはプレッシャーのかからない場面で復帰戦を戦ってほしいというつもりで姫野を中堅に推したのは南雲であったが、それが裏目に出て姫野の復帰戦をものすごくプレッシャーのかかる場面にしてしまったことに南雲は焦ります。それで出来るだけ姫野のプレッシャーを軽くしようと思って「せめて引き分けにしてくれれば残り2人は氷浦がなんとかします」と声をかける。さすがに「負けていい」とは失礼だから言えないし、実際のところ相手の大将の小出の強さを知っている南雲は、いくら永遠でも堂本と戦ってから小出とも戦って勝てるかどうか分からないと思っているので、せめて姫野には堂本と引き分けてほしいというのが本音でもありました。

だが姫野は南雲に背を向けたまま、こちらに引き上げてくる早苗を出迎えながら「早苗ちゃんの試合、ちゃんと観てた?」と南雲に言う。そうしてフラフラになって悔し涙を流して引き上げてきた早苗の手にタッチして「引き分け?はぁ?勝つ以外ある?」と言って闘志を漲らせて畳に上がっていくのでした。早苗は時間稼ぎや引き分け狙いで戦って次に繋ごうなどというつもりは無かった。自分が勝とうと思って戦ったのです。その戦いを引き継いで畳に上がる自分が引き分け狙いなど出来るわけがない。勝ちに行くしかない。早苗が引き分け狙いでバトンを渡していたら、姫野も自分も引き分け狙いでもいいと思っていたかもしれない。しかし、早苗の勝ちに行く闘志が姫野の心に火を点けて、姫野もまた勝ちに行くしかないと闘志を燃やしていたのです。

そうした姫野と擦れ違って皆のもとに戻ってきた早苗は、黙って出迎えた未知に抱き留められるとポロポロと涙を流す。あんなに努力したけど、やっぱり未知には追いつけなかったと思うと悔しくてたまらなかったのでした。そんな早苗に向かって夏目先生は「滝川の見せた粘りと闘志は、孤独だったこれまでの姫野が試合前に得られなかった燃料だ」と言う。部員が他にいなくて団体戦を戦うことが出来なかった姫野は、同じチームの仲間の闘志を引き継いで畳に上がるという経験をすることが出来なかった。だから、初めて仲間の闘志に火を点けられた心で畳に上がる姫野は、きっとこれまでにない強い心で戦いに臨もうとしている。だからきっと今までの姫野よりももっと強い姫野であるはずだと夏目先生は感じており、それは早苗のお陰だと感謝している。早苗は試合には勝てなかったが、そうやってしっかりチームの勝利に貢献している。「君の頑張りがこれから戦う仲間の力になる」と言って夏目先生は早苗に、自分の戦いには意義があったのだと教えます。

しかし早苗はチームの役に立ちたかっただけではなく、自分が強くなって勝ちたかった。そうして未知と並びたかったのです。それは結局叶わなかったことはやはり悔しくて、未知に抱きついたまま泣き続けている。しかし、そんな早苗に対して夏目先生は「目を逸らしている場合じゃない」と言って、振り返って試合場の姫野の方を見るよう促す。そして「君の戦いから力を得た彼女の戦う姿がきっとまた君に力を与え、成長させてくれる」と早苗に諭す。姫野が早苗から力を与えられたのと同様に、そうして力を得た姫野もまた早苗に力を与えてくれるはずなのです。「まだまだ強くなれるよ、滝川!」と励ます夏目先生の言葉を聞き、凛とした表情で試合に臨もうとしている姫野の姿を見て、早苗は自分が強くなるために必要なものは孤独な努力だけじゃなかったのだということに気付く。信頼できる仲間が与えてくれる力によっても自分は強くなれる。ならば、この青葉西で柔道を続けていれば、まだまだ自分には強くなれる可能性はある。未知に追いつくことだって出来るのだと早苗は希望を抱く。

実際、姫野も早苗の試合を見て心に火が点き、かつてそんな経験が自分に無かったことに気がついていた。そして、そんな自分はやっぱりダメだなと思った。そんなダメな自分がこうして強い気持ちで復帰戦に臨めているのは早苗のお陰だと思い感謝した。思えば柔道部に復帰したのも未知の技に魅了されたからであり、1年生たちのひたむきな姿に感化されて、自分ももっと柔道が好きになりたいと思ったからだった。そう思うと、自分は本当に1年生たちに色んなものを貰ってばかりで感謝してばかりだなと思えた。それにひきかえ自分はというと、先輩として胸を張れるほど大して強いわけでもなく、団体戦を戦った経験も無く、1年生たちに何も与えてやれていない。でも、そんな自分でもこのまま貰いっぱなしじゃ嫌だと思っている。自分も何か最後に1年生たちに渡してやれるものはないかと姫野は考えるようになっていた。

だが、今の自分が1年生たちのために何が出来るのかは姫野にも分からない。まず今の自分に出来ることは何なのか姫野は考える。何をするために金鷲旗大会にやって来たのか。夏目先生は「最後の大会、ゆっくり楽しめばいい」と言ってくれた。自分も勝っても負けても楽しもうと思っていた。でも、自分はただ単に最後の大会を楽しむためにわざわざ柔道に復帰してきたわけじゃないのだと姫野は思う。半年以上前に柔道を辞めた時に残した悔い「最後ぐらい気持ち良く一本取って終わりたかった」という、その後悔を乗り越えるために、わざわざこうして柔道に戻ってきて、こうして復帰戦に臨んでいたのだったという自分の本当の気持ちに姫野は気付く。ならば、まずは復帰戦を一本を取るために戦おう。相手が誰であろうが関係ない。これが最後のチャンスかもしれないのだから、この機会を逃すわけにはいかないのです。1年生に何を残すかは後で考えよう。今は雑念を捨てて、このたった一度しかないかもしれない機会に集中しようと姫野は思った。

こうして姫野と堂本の試合開始となるが、闘志に火が点いたといっても姫野はガムシャラに攻めたりはせず、かなり頭脳的な柔道を展開する。このあたりは性格的なものもあるであろうし、大して強くないという自覚があるから色々と工夫するクセもついているのだろう。まず真っ向から奥襟を掴んできた堂本に対して、飛びつき腕十字という奇襲技から寝技に引き込もうとする。2連勝に気を良くして堂本が気持ちよく柔道するのを阻止しようという心理戦の側面もある。さっき危うく負けそうになった寝技は堂本にとって悪いイメージがあるのを分かった上での嫌がらせです。これを堂本は力任せに返すが、これで姫野は堂本の2連勝の勢いは削ぐことが出来た。

姫野も堂本もお互い3年生でこの金鷲旗大会が最後の大会であり、最後の大会に賭ける想いは強い。その意地と意地がぶつかり合う熱い攻防で始まったが、やはり実力差は歴然であり、堂本が押し込む展開となる。柔道につぎ込んできた努力の量では、3年間

仲間に揉まれながら柔道に打ち込んできた堂本の方が上であろう。一方で姫野は部員が1人でロクに練習も出来なかった上に半年以上も柔道を辞めていて復帰してきたばかりです。実力で姫野が堂本を上回れるはずはないのです。だから姫野も真っ向勝負で堂本に勝てるとは思っていない。勝機が来るまでとにかく粘る戦法となる。なかなか良い組手を取らせてもらえないのは実力差があるので当たり前と割り切って、悪い組手になってピンチになりそうと思ったらわざと場外に誘って組手からリセットするという作戦をとる。あまり目立つと指導を貰うリスクもあり、1回指導を貰ってしまうが、3回指導が貯まる前に勝機を引き寄せようと姫野は虎視眈々とチャンスを狙っている。

実はさっきの飛びつき腕十字も、この場外リセット戦法も、姫野が出稽古で他の学校で学んだテクニックなのだと夏目先生は未知たちに説明する。姫野が夏目先生と2人で練習していた時期、夏目先生も柔道の経験不足なのであまり大した技術を教えることが出来なかった。それでよく他の学校に出稽古に出向いていたのだという。そのために夏目先生があちこちの学校に頭を下げて回っていた。そうして参加して他校での練習では姫野も肩身の狭い想いもたくさんした。夏目先生に申し訳ないという想いも大きかった。技術を学んだといっても、親切丁寧に教えてくれるばかりではない。飛びつき腕十字だって場外リセット戦法だって、姫野が自分が相手にやられて身体で学んだものばかりであり、屈辱的な想いによって学び取ったものばかりだった。

そうした辛いことばかりで、結局姫野は一旦柔道を辞めてしまった。でもこうして戻ってきた。努力の量は確かに十分ではないかもしれないが、辛さに耐えてきた中で培ったものは確かにある。夏目先生の努力に報いたいという想いも誰よりも強い。そうした自分と夏目先生の二人三脚の日々で培ったものの全てを姫野はこの試合に注ぎ込んでいる。そうして、わざわざ戻ってきた柔道の復帰戦の舞台、このたった一度のラストチャンスを一本勝ちでリベンジしようとしている。片や3年間欠かさず積み上げてきた努力の集大成をこの有終の美の大会で飾ろうとして臨んでいる堂本の意地、この意地と意地のぶつかり合いとなり、遂に終了30秒前に堂本が意地の技ありを取る。

これで状況は圧倒的に姫野が不利となるが、さすがに堂本もこれが3試合目で、特にさっきの早苗との試合はかなりの消耗戦となったため、ここにきて疲労の色が明らかとなってきた。それを見て姫野は、試合前の練習時に南雲が未知に堂本の情報を伝えていた時の会話内容を想い出した。堂本は試合の終盤、疲れてくると巻き込み系の技を多用しがちだという話でした。それは南雲が未知に対しての雑談のような話であり、姫野に向かって言っていた言葉ではないのですが、姫野は近くでその会話に耳を傾けていた。姫野は南雲が夜遅くまで他校の情報を懸命に集めてまとめていたのを知っていたので、南雲の情報は価値のあるものだと思うようになり、自分に向けられたものでなくても、ついつい気になって聞いてしまうようになっていたのでした。そうやってたまたま聞いて頭に残っていた堂本の情報がここで思い出され、姫野は堂本がここで巻き込み技を繰り出してくると読んだ。そして、自分の体格ならば、来ると分かっている巻き込み技ならば耐えて返すことが可能だと思い、巻き込み技が来るという予想の一点張りで待つという賭けに出た。

そして予想通りに堂本が巻き込み技に来たところを受けた姫野は踏ん張って耐え、返し技を繰り出す。そうして2人は組み合ったままもつれて、堂本は3年間の努力を無駄に出来ないという意地、姫野は最後に気持ちよく勝つために復帰してきたという意地、この2つの意地がぶつかり合い、互いに技をかけあうのだが、姫野の技が一瞬早く決まって、姫野が豪快な一本勝ちを決めます。姫野は柔道に復帰したあの日に夢見た最高の一本を遂に決めることが出来たのでした。そして姫野の勝利の瞬間、普段は冷静な夏目先生が思わず右腕を高々と上げてガッツポーズをとり、姫野は真っ先に振り向いて夏目先生に笑顔を向ける。2人のこれまでの苦闘が報われた瞬間でした。

この時、技を繰り出す瞬間、姫野は「絶対に勝つ!」と心の中で叫び、堂本は「絶対に負けん!」と心の中で叫びました。姫野の場合はこの復帰戦で一本勝ちするために柔道に戻ってきたのであり、だからどうしても勝ちたいという想いが強かった。一方で堂本にとっての3年間の集大成はこの試合ではなく、おそらく次の立川学園との試合だった。だから立川学園と戦うためにこの試合には負けられないという気持ちの方が強かった。姫野はこの試合に期するものが大きく、絶対に勝ちたいという想いが強かったが、堂本はこの試合にどうしても勝ちたいという想いでは姫野には僅かに及ばなかったと思う。努力の量では間違いなく堂本の方が上だったが、勝敗は才能や努力の量だけでは決まらず、その1つの試合に賭ける想いの強さに左右されることもあるということです。姫野の想いの強さには、たった一度かもしれない復帰戦に賭ける想いの強さもあったが、辛い時期を共に耐えてきた夏目先生への想いもあり、自分を柔道に引き戻してくれた後輩に何かを返したいという想い、そして早苗や南雲の頑張りに報いたいという想いもあった。それらが全部合わさっても、もし堂本がこの試合に全てを賭ける想いで臨んでいれば、それでも堂本の方が上回っていたであろう。しかし堂本はこの試合を自分の集大成と見なすことが出来なかった。一方で姫野はこの試合を自分の柔道人生の集大成と見なして戦った。その差が姫野の「勝つ!」と堂本の「負けん!」の差となり、勝敗を分ける僅かな差となったのだといえます。

こうして姫野が堂本に勝利して、これで両チームとも残りは2人ずつとなり、更に姫野は堂本とのあれだけの熱戦の後の2試合目となる相手の副将の里山との試合でも大健闘して引き分けに持ち込む。これで両チームとも1人ずつが残るだけとなります。そうしてようやく仲間たちのもとに引き上げてきて永遠とタッチを交わして試合に送り出した姫野を未知たち1年生は大喜びで迎え入れる。姫野が「柔道やってると髪が抜けるのが嫌だ」と言って柔道を辞めた後にオシャレするために伸ばしたという茶色く染めた髪の毛も激闘でボサボサになっているのが印象的です。それを出迎える早苗は夏目先生の言った通り、自分が頑張っても勝てなかった堂本に一本勝ちしてしまった姫野を見て大いに学ぶところがあったようです。そうして「カッコよかった」とか言って感激して褒めてくれる早苗と南雲を見て、姫野はこれで少しは自分も1年生たちに何かを返せたのかもしれないと思いつつ、2人を抱きしめて「頼れる後輩たちのお陰」と言う。早苗の勝ちにいく強い想いが姫野の心に火を点けてくれただけでなく、早苗が粘って堂本を疲れさせてくれたこと、南雲が堂本のクセを調べてくれていたこと、このどれかが欠けていればきっと勝てなかっただろうと姫野は本心から思っていた。

そんな姫野に向かって、夏目先生は「それだけじゃない」「二連戦を戦い抜けたのは姫野自身の力だよ」と声をかける。確かに堂本に勝てたのは姫野の実力のお陰だけではないとは夏目先生も分かっていた。だが、早苗や南雲のアシストも、姫野が堂本との試合を戦い通せなければ全て無駄になっていただろう。姫野が堂本との厳しい闘いを耐え抜いてチャンスを掴むことが出来たこと、そして更にもう1試合も引き分けに持ち込んで青葉西に大きく勝機を手繰り寄せることが出来たのは、姫野が柔道を辞めていた期間もずっと走り込みを続けて維持していた体力にお陰なのだということを夏目先生は指摘したのです。

それを聞いて、姫野は柔道部を辞めて夏目先生をガッカリさせてしまったという過去の心の傷が癒されていくように思えた。自分が柔道部を辞めた後も夏目先生はそれ以前と変わらずずっと自分を見守っていてくれたのだと思うと胸が熱くなった。それで姫野は「先生との出稽古の成果も!」と言って、共に苦しい日々を耐えてくれた夏目先生の苦労に感謝の意を示します。それに対して夏目先生は笑顔で「ああ、みんなの合わせ技だ!」と応じて、全員一丸の総力戦でもぎ取った勝利なのだということを強調するのでした。それを聞いて姫野は、本当にみんなの力を貸してもらって自分はあの半年以上前の一旦は柔道を辞めようと決めた試合の後に感じた後悔を解消することが出来る気持ちの良い一本勝ちを決めることが出来たのだなと実感したのでした。

ただ、まだ試合は終わったわけではない。まだ永遠と小出の大将戦が残っている。まぁ永遠は副将なのだが青葉西は大将がいない4人チームなので永遠が実質大将のようなものです。この試合に勝った方が勝利チームとなるという、まさに互いに全員が畳に上がるという総力戦となったわけですが、錦山の大将の小出は何やらオドオドしていて弱そうに見える。だが、何故か堂本はじめ錦山の面々はみんな「これで勝った」みたいな顔をしており未知たちが不思議がると、ここで南雲は初めて、実は小出が錦山のもう1人のエースなのだということを未知たちに教える。小出は普段はオドオドしているが試合が始まると性格が豹変して強くなるらしく、ものすごく動きも素早くなるようです。何だか永遠と似た感じですね。

そうして試合が始まり、急に動きの速くなった小出の猛攻に永遠は驚き防戦一方となります。永遠も小出が強いという情報は聞かされていなかったのでちょっとビックリしてしまったようです。未知はどうしてそんな大事なことを早く教えてくれなかったのかと南雲を責めますが、南雲は皆を堂本に集中させるためだったのだと説明し、それに永遠なら大丈夫だろうと言う。たとえ前もって小出の強さを知らなかったとしても、疲労もしたいない万全の状態の永遠ならばすぐに対応して勝ってくれるはず。それぐらい永遠は強いのだと南雲は永遠のことを深く信頼しているのです。その期待に応えるように、永遠は小出の猛攻を受け流すとあっという間に一本勝ちを決めてしまう。

こうして総力戦の末に青葉西は錦山に勝利して3回戦に進出し、次の相手は優勝候補の東京都の立川学園ということになります。いよいよ最強の敵との戦いということになり、残り3話、ますます盛り上がっていきそうで楽しみです。

 

 

トモちゃんは女の子!

第11話を観ました。

今回はトモが淳一郎の誕生日にプレゼントを買いたいが金が足りないというのでバイトすることになり、田辺の家のラーメン屋でみすずもキャロルも一緒に接客係のバイトすることになるのだが、もうこれだけでムチャクチャ面白いのだから、これはもう一流のギャグアニメと認定していいだろう。とにかくこの3人がラーメン屋でバイトするというだけで死ぬほど笑える。トモとキャロルは壊滅的に接客が出来ないし、みすずは接客はソツなくこなすが田辺への塩対応が面白すぎる。

そこに常連客だという淳一郎がやって来るのだが、淳一郎が前回ラストからトモのことを女性として見ようとし始めているので、どうも淳一郎の様子がいつもと違ってみすずもトモも戸惑う。結局、ラーメン屋は大繁盛してバイト代も弾んでもらい、トモは淳一郎に腕時計をプレゼントして、自分の分も買ってペアウォッチにして淳一郎も喜ぶ。ペアウォッチのつもりが「同じチームだ」などと無邪気に喜ぶ淳一郎を見て、最近ちょっと変だと思っていた淳一郎がやっぱり前と同じだと思って安心するトモでしたが、誕生日パーティーをするのに家で2人きりになるのを避けようとする淳一郎を見て、やっぱりどうも変だと思うトモでした。

そして後半パートは、淳一郎に女として見てもらうためにどうしたらいいかとトモがみすずに相談するところから始まる。既に淳一郎はトモを女として見始めているのだがトモはそれに気付いていない。みすずも気付いていない。それでみすずが淳一郎を階段から突き落としてトモが受け止めるというバカみたいな作戦を実行し、トモを避けた淳一郎がキャロルの胸を触ってしまうという結果となり、淳一郎がトモにぶちのめされるというオチとなる。

これでみすずは自分が実はトモと淳一郎が付き合ってほしくなくて邪魔ばかりしているのではないかと思い悩むようになり、翌日風邪で学校を休む。それでみすずは3日学校を休むが、本当は風邪ではなくてトモと顔を合わせづらいので休んでいて、トモは心配になってみすずの家に行き、文化祭のクラスの劇でシンデレラをやることになり、シンデレラ役がキャロルの推薦でみすずに決まったことを告げる。ちなみにトモは女なのに王子役で、キャロルが意地悪な継母役で、淳一郎は木の役です。

ここからは劇の練習シーンでギャグ連発で笑わせてくれますが、その中でみすずがトモに「女の子らしくしなければ淳一郎とは付き合えない」という呪いをかけてしまったせいでトモがいつまでも自分は淳一郎と付き合えないと思い込んでしまっていることを反省していて、自分がその呪いを解かなければいけないと思っていることが描かれます。これがつまり、みすずが実はトモと淳一郎が付き合うのを邪魔しようとしているということと関係があるのかもしれません。そうやって無意識にトモの恋路の邪魔をしちたという自覚があるのでしょうか。その背景にはみすずのトモへの複雑な想いがあるのかもしれません。それが次回の文化祭でのシンデレラの舞台でどうなるのか、次回が楽しみです。残りは2話ですが、次回は文化祭編でトモとみすずの山場の予感がしていて、そして最終話ではトモと淳一郎の決着が描かれて綺麗に終わってほしいものですね。

 

 

転生王女と天才令嬢の魔法革命

第11話を観ました。

今回は最終話の1つ前の話になります。アニスは王位継承権を復活させたいという話を保守派の貴族たちにしますが、魔学を捨てることや、魔力に優れた男性と結婚して早く魔法の使える子供を産むことを要求されてしまい、モノのように扱われることに吐き気を催すほどウンザリしてしまいますが、それでもその王族としての使命を受け入れようとする。

そうしているとユフィリアが自分が精霊契約をして王位継承の資格を得て王家の養女となり王位を継ぎたいと申し出る。だが精霊契約者のリュミの話によると、精霊契約するといずれ精霊になってしまうとのことで、記憶も失われて人間らしい感情も失われるとのこと。そんな悲しい運命を受け入れてでもユフィリアが王位を欲するのは、アニスを王位につけたくないからだと言う。それはユフィリアがアニスの魔学の研究を価値あるものと認めて、アニスに自由に魔学の研究をしてほしいというのが真意なのだが、アニスは魔法を使えないことで王族としての自分が否定されたと感じて、傷心で逃げ出してしまう。

そうしてアニスを探し出したユフィリアから真意を聞いて、アニスは自分のこれまでの想いが報われたと感じて心が救われて、今なら王族の資格への執着を捨てられると思うのだが、そう思わせてくれた大事な人であるユフィリアに不幸になってほしくないという想いで、やはりユフィリアに王位を継がせるわけにはいかないと思う。やはり自分が王位を引き受けるしかないと思い、ユフィリアと王位を賭けて勝負しようと申し出る。次回は2人の勝負の決着で最終話となるのでしょう。

ちょっと今回はアニスが王族としての自分に拘りが強すぎたのは意外で、それが本音だったということなんでしょうけど、序盤の破天荒キャラが魅力的だっただけに、キャラ描写としてはイマイチでした。基本的には私はキャラドラマよりもシナリオで魅せるドラマの方が好きなんですけど、この作品はシナリオドラマとしてはそんなに高く評価していたわけじゃないので、むしろキャラの魅力で勝負してほしかった気がする。今回は完全にシナリオで魅せようとしていて、これがバッチリ決まってればアニスのキャラ崩壊も全然許せてしまうんですが、ちょっとシナリオがバッチリ決まってないのでキャラの違和感だけが目立ってしまいましたかな。決してシナリオ破綻まではしていなくて、それなりに良い話なんですけどね。しかし最後の「勝負しよう」はちょっと唐突で意味が分からなかった感はあります。

 

 

ツルネ ーつながりの一射ー

第11話を観ました。

今回は全国大会がいよいよ始まります。風舞は桐先とも辻峰とも同じ宿舎となり、大会が始まり3校とも順調に決勝トーナメントに勝ち進み、偶然にも3校とも同じブロックで早めに対戦することになり、まずは風舞と辻峰が対戦することになる。辻峰の二階堂は自分の弓道は戦いだとあくまで言い張り、それに対して風舞主将の静弥はここで終わりだと決めている者と続きを見ている者なら後者の方が強いと言い、二階堂にも新しい弓道の道を見てほしいという想いを伝えます。

だが二階堂が勝ちにこだわる想いは、確かに最初は伯父の弓道の正しさを証明するためであったが、いつしか辻峰の5人で勝ちたいという想いに変わっていて、既に二階堂の道は新しい道に変わっていた。だが始まりが利己的な理由だったために二階堂は自分の気持ちに素直になれないだけであった。だが風舞との対戦を経て、仲間たちとの絆を想い出して、勝負には敗れたものの、二階堂は素直になり、来年も頑張ってほしいという先輩の言葉を受けて、弓道を続けることを決める。

一方で風舞は湊の指の怪我で静弥の射が乱れ、それによって調子を崩すが、湊が作ったリズムに皆が乗ることで持ち直して勝利を掴む。弓は5人で流れを作っていく団体競技であり、1人のリズムに他の4人が救われることもあるのだと滝川は言い、それが息合いだと言う。こうして次は風舞は桐先と対戦することになります。残りは2話で、全国大会の桐先との決着、そして最後は前フリもあった神事の奉納弓矢で締めとなるのでしょうかね。

ただまぁちょっと今回は微妙でしたかね。風舞と辻峰の試合の描写が淡白で、もっとバチバチやってほしかった感はあった。辻峰のドラマも良いんだけど、もっとアツいのが欲しかった。それから相変わらず息合いの説明がフワッとしてるのも少し残念。桐先との試合で綺麗に締めるのでしょうけど、それは1期で描いたからあまり新鮮味は無いですね。やっぱこの第2期はもっと辻峰のドラマをガッツリ描いてほしかった。まぁそれなりに描いてあったんですけど、桐先よりも辻峰をもっと描いてほしかったところですね。