2022秋アニメ 12月12日視聴分 | アニメ視聴日記

アニメ視聴日記

日々視聴しているアニメについてあれこれ

2022年秋アニメのうち、12月11日深夜に録画して12月12日に視聴した作品は以下の3タイトルでした。

 

 

機動戦士ガンダム 水星の魔女

第10話を観ました。

今回はメインはスレッタ達の学園内での株式会社ガンダムの起業活動とスレッタとミオリネの心のすれ違いなど学園内の人間模様だったのですが、このあたりはあんまり興味は無いです。起業活動の方はそもそも志のあまり無い学生のお遊戯のような起業なので、純粋に起業ドラマとして面白味に欠けます。また、私はこの作品をキャラ萌えドラマとして鑑賞する気は無いので、本筋にあまり関係ない学園内のワチャワチャした可愛い描写を見せられても興味は湧きません。とにかくエアリアルを操縦してる時以外のスレッタにあまり主人公としての魅力が無いので、学園ドラマとしては盛り上がらないですね。まぁあくまで私の感覚としてはですけど。世間的にはこの作品はキャラドラマとしてかなり盛り上がってるようなので、それは目出度いことだとは思います。まぁ私も別に嫌いじゃないんですけど、やっぱりこの作品の本題はそこじゃないと思うので。

しかし今回の話はそれでダメだったかというと、そんなことはなくて、そういう呑気なスレッタ達をよそに、なんかヤバそうな雰囲気が漂ってきたのはとても良かったと思います。やっぱり大人たちの陰謀みたいなのが描かれ出すとこの作品は一気に魅力を増しますね。また、メインキャラの中では今回はやはりそういう大人たちの世界に深く絡んだシャディクの動きが興味深かったですね。今回の裏主人公はシャディクと言ってもいいでしょう。

まずジェタークがゼネリにデリングの暗殺計画をほのめかして誘いをかけますが、ペイル社の動きなども見ると、どうやら御三家とデリングでガンダム争奪戦をやってるような構図になってきましたね。ベネリットグループでは表向きはガンダム禁止なんですけど、陰ではみんなガンダムの利権を得ようとし画策していて、ゼネリなんかはデリングもガンダムに繋がりがあるのではないかと疑っている。ミオリネに接触してきている宇宙議会連合というのはベネリットグループのそうした動きを探っている行政組織みたいですね。

そしてジェタークのデリング暗殺の誘いをゼネリは養子のシャディクの提案で受けることにして、デリング暗殺計画が動き出すのですが、ここで地球の悪ガキ軍団のテロ組織みたいなのが登場してきて、これがシャディクと繋がりがあるようで、シャディクからデリング暗殺を依頼される。しかもシャディクとのこテロ組織の仲介をしているのがニカみたいなんですよね。ニカは地球出身なんですが、このテロ組織のボスみたいな奴がニカの父親代わりみたいな感じ。ニカは喜んで協力してるようには見えませんが、なんかニカにダークな過去がありそうですね。そして、この地球のテロ組織がどういうわけかガンダムを保有してる。

また、シャディクと養父のゼネリの会話から推測するに、どうやら反デリング派も皆それぞれ思惑は違うようです。ペイル社は単にガンダムの利権が欲しいだけみたいですが、まだなんかちょっと得体の知れないところがあります。それに対して、ジェタークは息子をホルダーにした上でデリングを殺して、デリングの決めたルールに則ってベネリットグループを乗っ取りたかったみたいですが、ゼネリはスレッタがホルダーの状態でデリングが死んでベネリットグループの後継者が定まらず紛糾する状態の方が望ましいみたいです。つまりベネリットグループの解体を望んでいる。これは養子のシャディクも同じなんですが、どうもゼネリがベネリットグループ解体を望んでいるのは純粋にビジネス的な理由によるもので、シャディクの方はそうした養父の思惑をも利用した上で別の目的で動いているような気がします。

そういった様々な大人の世界のドロドロとした思惑が動き出してきて、いよいよ学校内の模擬戦じゃなくて人が死にそうな戦いが始まりそうで盛り上がってきました。しかし来週は特別番組のため放送休止で、次回は12月25日となり、その次の最終話は年を越して1月8日放送なのだそうです。ほぼ隔週放送ということで、これは世間的には盛り上がらないでしょうね。私はそういうの全然気にしないですけど、クールまたいだらもう観ないって人も結構いますからね。特にこの作品で今盛り上がってる人ってそういうライト層の人が多いから、いわゆる世間的な「覇権」という意味ではこの作品はもう終わったと言っていいでしょう。まぁ私はそういう軽薄な「覇権」という言葉は大嫌いだし、この作品は「覇権」とかそういう観点じゃなくて面白い作品だと思って評価してますので全くどうでもいいんですけど。

 

 

不滅のあなたへ シーズン2

第8話を観ました。

今回は前半パートではウラリス王国編の見事な大団円が描かれ、後半パートではノッカーとの新たな戦いの始まりが描かれ、更にノッカーの正体に迫る新たな謎が示されたお話でした。非常に美しいストーリーで、やはり物語の洗練された完成度が他の作品とは段違いですね。ただ、あまりにノッカーと観察者の謎が深すぎて、まだ何とも言えないところもあります。今回のエピソードでウラリス王国での物語は完結したようにも見えますが、そもそもこのような状態を招いた原因はベネット教にあり、そのベネット教側の結末が描かれるエピソードがまだ次回以降も続くようですから、そこを描き切って第2期の前半クールの10話分を終えるという感じでしょうか。おそらく年明け以降の後半クールの10話分では、いよいよ「前世編」のクライマックスとなる新章が描かれると思われます。これがおそらく「不滅のあなたへ」の1期と2期を通して最大の盛り上がりとなるでしょうから、SSランク評価をするならそこだろうと思い、この前半クールはどうしても抑えめの評価にしているのですが、それでも今回みたいな凄いエピソードを見せられてしまうと悩みます。前半クールの残り2話の盛り上がり次第では迷うかもしれません。

今回、冒頭はボンの処刑場の場面ですが、処刑が執行されたはずなんですが、その場にいた人間が全員眠ってしまっているという奇妙な状況となっており、目覚めたベネット教の大教督のサイリーラが慌てて処刑台に昇ってボンの様子を見ます。悪魔の使いであるフシは鉄の牢獄に封印したはずですからボンを助けに来ることは出来ないはずですが、もしかしたらフシの仲間の悪魔がボンの処刑を邪魔しに来たのかもしれないと思ったのです。だが、処刑台にはボンは縛られたまま残っていて、首もギロチンでしっかり斬り落とされて転がっていました。つまりボンの処刑は無事に執行されたのであり、確かに処刑場に何かの異変は起こってはいたようですが、仮に悪魔が何かをしようとしていたとしても、その目論見は失敗に終わり、悪魔の使いであるフシの崇拝者のボン王子を処刑するというベネット教の目的は達成された。これは悪魔に対するベネット教の神の勝利なのだとサイリーラは確信し、歓喜したのでした。

その後、ウラリス王国にはボン王子が処刑されたという報せが届き、国王一家はじめ国民一同が悲しみに暮れる。そこにボンが目覚めるシーンが描かれる。幽霊のフェンとニクソンに呼びかけられて目覚めたボンは見知らぬ場所で目が覚めた。処刑台で処刑を待つだけだったはずだが、気がつけば見知らぬ場所で目覚めて、しかも傍らには死者の霊がいるのですから、普通の人間なら「処刑されて死者の国にやってきた」と思うところです。いや、さすがにボンもそう思ったようで「僕は死んだのか?」とフェン達に尋ねる。するとフェン達も「はい、王子ボンは死にました」と答えるので、ボンはやっぱり自分は死んだのだと納得する。

ところがそこにリーンが現れる。とは言っても、ボンはリーンに会ったことはないので、ボンから見れば見知らぬ女の子がいきなり現れたようなものです。だが、そのリーンは一瞬フシの姿に変身し「ここはウラリスだよ」と言うと、すぐにまたリーンの姿に変わり、トドやチャボも無事だと言う。ボンは相手がフシであることには気付くが、どうして死者の国かと思っていた此処にフシがいるのかと一瞬混乱する。いや、フシは此処がウラリスだと言った。ならば此処にフシがいるということは分かるが、分からないのはどうしてフェンやニクソンのような幽霊だけでなくフシにも死者である自分の姿が見えているのかでした。それを尋ねると、フシは「今までの君は死んだけど、今君は生きている」と言って笑う。

どうやらボンは死んではおらず、生きたまま眠った状態でウラリスに運ばれてきたようです。運んできたのはフシなのでしょう。普通の人間なら死者の霊が見えて対話も出来れば死んだ状態を連想するところですが、ボンの場合はもともと死者の霊が見えて対話も出来る能力の持ち主なので、単に寝ていて目覚めていつものようにフェンやニクソンと喋っただけだったのです。フェン達が「王子ボンは死んだ」と紛らわしいことを言うので混乱してしまいましたが、要するにフシの「今までの君は死んだ」というのと同義で、ウラリス王国のボン王子は公式には死んだということになっているという意味であったようです。

目覚めた場所はウラリスの王城内の誰も使っていない小屋の中だったようで、ボンがフシに連れられてこっそりと城内の廊下に上がり込み、城の中庭を見ると、実際に国王一家や衛兵たち、国民たちが集まって悲しみに暮れていました。ボンにしてみれば未だに状況が呑み込めていないので、どうして家族や民が泣いているのか分からない。するとフシが「君の葬式だよ」と教えてくれたので、やっぱり自分は予定通りに処刑されて死んでいるのだとボンは思う。しかしフシは、それは皆がそう思っているだけで、実際にはボンは生きていて、姿を見られてはマズいのだと言ってボンを隠れさせる。

どうやらフシがウラリス城内ではずっとリーンの姿に変身しているのも、フシの姿を目撃されないようにという配慮のようです。フシはウラリスでは一度もリーンの姿になったことはない。そもそも一切の特殊能力や戦闘力の無いリーンの姿にはフシは基本的には滅多に変身しない。だから隠密行動の時にはリーンの姿が便利なのであり、リーンの姿はフシにとって人の集団の中に紛れての隠密行動時の切り札のような形態なのでしょう。グーグーやパロナやトナリの姿は戦闘時に使うからフシの一形態だと知っている者が多いし、狼や梟の姿では人の中では逆に目立つし、ピオランやマーチや酒爺の姿では一般成人の中では違和感があるし身体能力も低い。シンの姿も隠密行動時には使うが、一般庶民に紛れる時に向いており、むしろ王城内で紛れるにはお嬢様育ちのリーンの姿が最適だといえます。

つまり、公式には封印されたことになっているフシがウラリスに居るということが目撃されるのは不都合であるし、公式には処刑されて死んだことになっているボン王子がウラリス城内でウロウロしているのが目撃されるのも都合が悪いということをフシは言っているのです。どうやらフシはボンが生きていることをまだ国王一家にも伝えていないので、国王一家は本気でボンの死を悲しんで葬儀を開いているようです。

だがボンにはまだ自分が生きているとは信じられない。国を挙げて葬儀まで開いているということは、確実に自分が処刑されて死んだということが確認されて報告が来ているということだ。もしフシが途中で処刑を邪魔して自分を救い出したのならば、ベネット教会が黙っているはずがない。自分が死んだなんていう報告がウラリスに来るはずがなく、むしろ怒ったベネット教会が軍を送ってきて今頃ウラリスでは戦争が始まっているはずだ。それはボンにとっては最も避けたい未来でした。だから、そうならないようにボンはわざと自分がベネット教会によって処刑されるように仕向け、そうして自分が処刑された後、家族や国民は自分の死を嘆き悲しむであろうけれどもウラリスの平和は保たれるという未来をボンは願った。

今まさに目の前でそうしたボンの望んだ未来のウラリスの光景が展開されている。そしてそれはボン自身の死が大前提であるはずでした。だから、目の前の光景を見れば見るほど、その光景を自分が生きて眺めているということが有り得ないこととしかボンには思えない。だが自分が生きているかのような感覚も確かにあるし、フシも死んでいないとか言うので、ボンは混乱してくる。それでボンはカハクが言っていた「死者の魂は生前は叶えられなかった望みを叶えることが出来るのです」という話を思い出し、今の自分がまさにそういう状態なのではないかと考えた。死の直前に自分が強く願っていた未来のウラリスの光景を、死んだ後の自分の魂が見ているのだ。いや、そうした自分の望んでいた世界に自分は死んで転生したのだ。それが「死者の魂が自分の望みを叶える」ということなのではないかとボンは考えて、その仮説をフシに言うが、フシはそれならボンは自分が国王になる世界に転生するはずじゃないかと指摘する。そう言われて、ボンは確かにそうだと思う。自分が死に際しても真に望んで叶えられなかったことは国王になることであり、この今の状況はむしろ死ぬことで叶えられることでした。だからカハクの言っていたようなことが本当にあるとしたら、自分は死んで国王になる夢を叶える世界に行くはずだ。だから、これはそういうものではない。それならばやはり自分は生きているのだろうかとボンは考え込む。

そして、そこにフシが国王一家にボンが生きていることをコッソリと教えて、父母と妹のポコアと弟のトルタの4人だけがやって来て、ボンの姿を見つけると大喜びで抱きついてくる。それでボンもさすがに自分が生きているという事実を受け入れ、あの衆人監視の処刑台の上で処刑直前の自分を救い出し、しかもそれがベネット教にバレることもなく、ベネット教が自分の死を信じ込んでいるという、こういう状況を一体どうやってフシが作ったのかが全く想像がつかないので、ボンはフシに事情の説明を求めたのでした。

それによると、フシはどうやらボンと檻で別れた時点で既にボンの真意には気付いていたようです。フシ自身がもともと「自分1人が処罰されることでボン達やウラリスを救おう」と考えていたわけですから、ボンも同じことを考えているとフシが気付かないはずがない。だからフシは「ボンが処刑されることでウラリスが守られる」というボンの考え方には共感はした。だが、それでもボンを死なせることは出来ないと思った。そこで、トドやチャボの死体を作って2人の死を偽装したのと同じように、処刑時にボンとボンの偽死体をすり替えてボンが処刑されたとベネット教に信じ込ませようと考えた。

だが、衆人監視の処刑台の上で誰にもバレずにボンと偽死体をすり替えるなどフシにも不可能でした。そこでフシはカハクに相談して守護団に何かそういう知恵は無いかと尋ねたが、カハクにも良い手段が思いつかない。それでカハクがトナリの日記に何か良い方法が載っているかもしれないと提案したのでした。守護団の祖であるハヤセや初代継承者であるヒサメをも出し抜いたトナリならば守護団が思いつく以上の凄いアイディアを書き残しているかもしれないとカハクは考えたのです。これって実はカハクがトナリの日記を読んだことがないということを意味しており、以前にカハクが自慢げに「トナリの日記が最近発見されて出版されたらしい」と言っていたのはやっぱり守護団の捏造した偽書だったようですね。

まぁそれは今さら言いっこなしですが、フシ自身もこれまでトナリに変身するたびに腰にくっついて現れる「トナリの日記」をじっくり読んだことが無く、カハクの提案を受けて全部をじっくり読んでみると、中には様々な毒薬や薬物についての記述があった。トナリは生涯をかけて薬物の摂取によって体に薬物の耐性をつけていたわけですから、日記にそうした記述が多いのは当然だといえます。それらの記述の中からフシとカハクは即効性でしばらくするとすぐに効果が消える超強力な睡眠薬を見つけ出し、それを記述してあった製法に則って合成すると、フシがトナリに変身してその睡眠薬を摂取しました。トナリの身体はあらゆる毒物に耐性があるのでフシには睡眠薬は効かず、摂取したことによってフシは自在にその睡眠薬を作り出せるようになった。つまりフシは自由自在に睡眠薬を放って目の前の人間を一時的に眠らせる能力を新たに得たことになる。

あとはボンの処刑の日にフシがリガードに変身して処刑場の上空を飛びながら睡眠薬を散布して処刑会場の人間を全員眠らせ、処刑場に降り立ってトナリの姿に変身して薬の効果で眠っているボンを救い出して代わりにその場で作ったボンの偽死体を処刑台に置いたのです。前回ラストシーンで処刑会場の上にリガードっぽい鳥が旋回していたのは、そういうことだったんですね。また、トナリの姿じゃないとフシ自身も睡眠薬で眠ってしまうので、降り立った後はトナリの姿で作業をすることは必須だったといえます。トナリの薬物耐性能力があってこそ成立する救出作戦であり、トナリの薬物耐性設定がここで活きたことになります。

ただ唯一フシの計算外であったのは、睡眠薬で完全に眠ってしまう直前に処刑執行人がギロチンの刃を繋いだロープを斬ってしまったために、ボンの首目掛けてギロチンの刃が落ちてきていたことでした。これは間一髪フシはトナリに変身して直後にギロチンの下に自分の身体を投げ出してボンへの刃の落下を食い止めて事なきを得ました。この時、ギロチンの刃がフシの身体を両断してそのままボンの首に落ちてこなかったのは、フシが既に前回、鉄を溶かす超高熱を発する能力を獲得していたからです。その能力でフシがギロチンの刃を溶かしてしまったのでギロチンはボンの首を落とすことはなかった。前回の超高熱能力の獲得がしっかり伏線として効いてきたのですね。

もちろんボンを処刑台から救い出して代わりに偽死体を置いた後はフシはギロチンの刃を複製して偽死体の首をしっかり落としてから、ボンを連れてさっさとその場を脱出し、その後にサイリーラをはじめ処刑会場の人々が目を覚ましてボンが死んでいることを確認して、処刑が無事に成し遂げられたと認識したのが冒頭のシーンとなるわけです。何か異常が起きたこと自体はサイリーラも含め全員が認識はしていましたが、もともとボンを処刑することでこの事件を終わりにしたかったのはベネット教側も同じだったのであり、ボンの処刑自体は成功したのだということでそれ以上の詮索はせず、それで一件落着としたのでした。フシが自在に人間の死体を作り出す能力があるなどとはベネット教も知らないので、まさか首を刎ねられたボンの死体が偽物だとは彼らも想像は出来ず、ボンが死んだことに疑いを挟むということはなかったのでした。

これが事の顛末でありましたが、それを説明した上でフシはボンに詫びる。結果的にボンが死んだことになってしまい、ボンを慕う多くの人たちを悲しませることになった。そしてボンはもうこれで国王になるという夢は叶えられなくなってしまった。自分がもっと上手な方法を思いついていればもっとマシな結果になったかもしれないとフシはボンに申し訳ないという想いを抱えていたのです。フシはボンが王位継承候補から外されていたことも、王位継承のためにボンがフシを利用しようとしていたことも知らないので、自分と関わったせいでボンが本来掴めるはずだった幸せを失うことになったのだと思い、迷惑をかけたと申し訳なく思っているのです。

しかしボンにとってはこの結果こそが望んでいたことでした。自分が死ぬことでウラリスの人々を戦争の惨禍から守るということが今回の一件でボンが辿り着いた答えでした。かつてのボンは自分が国王になることが最優先で、そのためには他人が犠牲になっても仕方ないと考えていた。実際、一時は自分が国王になるためにフシをベネット教に売ろうとしていたのです。しかし、そんなボンが自分が生きて国王になることで戦争の火種を作りウラリスの民を苦しめるぐらいなら、自分が国王の地位も命も捨ててウラリスの民が幸せに暮らす道の方を選べた。それが「分け与える」ということだと知ることが出来た。それはボンにとっては国王になることよりも幸せなことだったのです。そんなふうにボンが変われたのはフシに出会えたからでした。

そして、その幸せはボンは生きては味わうことが出来ないはずのものでした。だが、こうして生きてその幸せを噛みしめることが出来るのはフシが助けてくれたからでした。たとえ国王でなくても、ボンシェン王子という名を捨ててでも、その幸せは何よりボンにとって得難いものでした。だからボンはフシに「助けてくれてありがとう」と言い、それを聞いてフシも自分が役に立てたことを安堵して笑みを漏らす。

こうしてボンは公には死んだことになったので、長い髪を切り髭も剃って容貌を変えて別人として城内で暮らすことになりました。そしてフシに救い出されて城内で暮らしていたトドやチャボとも再会することになります。トドもチャボも檻の中で死んだことになっているのですが、トドは長い檻での暮らしですっかり痩せて別人のようになっていたので城内で元同僚の兵士たちに会っても正体がバレていないようです。チャボの方はそもそもウラリスにはチャボを知る者はいませんし、もともと檻の重量合わせのために入れられていたチャボのことなどベネット教も興味は持っていないので、、チャボは正体を隠すこともなく城の中で自由にしており、ひとまずトドが一緒に暮らして世話をしているようです。

トドの方はボン同様にウラリスでは殉職扱いになっていて「王子の尊厳を守るために戦い死んだ英雄」という扱いにになっていますので、生きていることがバレるとマズい。しかしすっかり痩せたトドはすっかり元の女性の姿に戻っていてアイリスと名乗っていました。まぁもともとアイリスが本名なのですが、アイリスが男性のフリをしていたので兵士たちの間では男性兵士と認識されていてトドという通り名でしか呼ばれていませんでした。だから今のアイリスを見ても誰もそれが殉職した英雄トドとは気付かない。それでアイリスはすっかり旅先で仲良くなったポコアとリーンの姿のフシと一緒に城内でお茶会などしていました。

そこを通りかかったボンが、ポコアによってボン王子の友人の「ハルマキ男爵」という通り名をつけられて、ポコアに連れられてアイリスやフシのいるテーブルにやってくる。髪を切り髭を剃ったボンの姿は子供の頃にアイリスと出会った頃と似た感じになっていたので、アイリスはすぐにそのハルマキ男爵がボンだと分かりました。もともとフシからボンが城に生還したことは聞かされていたようで、ボンが生きて目の前に現れたことには大きな驚きは無いようです。

一方でボンの方は檻の中で崖に映った影を見てトドがかつて少年時代に出会って幽霊だと思い込んでいた初恋の女の子だったのだろうということには気付いていましたが、そのことについて檻の中にいる時はトドには何も言いませんでした。確信があったわけでもないし、それに今さらそんなことを言えなかったのです。今まで男だと勘違いしてずっと酷いことを言ったり、椅子係にして腰掛けたり、肥溜めに突っ込ませたりしていたことを棚に上げて「君は僕の初恋の女性だったんじゃないか」なんて言えるわけがない。そもそもトドだってそんな昔のことはよく覚えていないだろうし、あえてそんな話をして確認する必要も無いと思ってボンは檻の中では何も言わなかった。そしてその後、ボンは命を捨てる決意をしてトドとも別れたので、再び生きてトドに会うこともないと思っていた。

ところが生きてウラリス城に戻ってくるという予期せぬ展開となり、ボンはトドと再会することになった。ボンはポコアに連れられてテーブルに来る段階で、誰にもそれがトドだとは教えられなくても、子供の頃に会った初恋の少女幽霊の面影を残す女性がフシやポコアと共にテーブルを囲んでいるのを見て、それがトドだとすぐに分かった。そしてテーブルに着く際にポコアからアイリスだと紹介されたその女性に挨拶をします。

アイリスの方はそのハルマキ男爵と紹介された男性がボンだということはすぐに分かったが「初めまして」と挨拶します。アイリスの方も今までさんざん男のフリをして傍に仕えて結構言いたい放題だったトドが自分だったとは今さら言い出しづらく、だいぶ容姿が変わったのをいいことに別人のフリで通そうとしているようです。それでボンは一瞬戸惑います。それはアイリスがトドではないかもしれないという戸惑いではなく、自分がボンとは認識されず完全に初対面の別人だと思われているのかもしれないという戸惑いであった。だが、アイリスはこのポコアとフシしかいない場ではハルマキ男爵がボンであるということは隠さなくてもいいのだと了解してチャボの話をする。但し自分がトドだとはバレないように「あの少年ならキッチンに行ってますから後で会ってあげてください」と、単にボンの事情を知る親切な第三者のような感じでチャボを気遣う姿勢を示す。

これを聞いてボンは自分がちゃんとボンだと認識されていることに安堵します。そして、ボンはアイリスが自分がトドであることを隠そうとしていることには気付かず、あくまで相手をトドだと認識した状態でボンとして話をし始める。それでボンは檻の中でトドが何か刺繍をしていて自分に好きな花とか好きな模様とかを聞いていたことを思い出し、何か作っていたのなら出来上がったものを見せてほしいと言い出します。だが、それはあくまでトドの話であり、今はトドであることを隠したいアイリスは返答に困ってしまい「何の話でしょう?」としらばっくれる。しかしフシが会話の流れを全く読まずに相手がトドだという前提でアイリスにハンカチの話とか糸を買った話を振ってくるもので、アイリスはもうトドではないフリをすることが出来なくなってしまう。そうしてアイリスは観念して檻の中で刺繍していたハンカチをボンに差し出す。それはあの時ボンが好きだと言っていた桃の花や剣や王冠をあしらったものだった。

それを見てボンはその刺繍が上手なことに感心し、更にトドに預けていた自分のお気に入りの赤い花の刺繍のハンカチのことを思い出し、それも返してくれるよう頼む。それでアイリスが赤い花の刺繍のハンカチを返すと、それを受け取ったボンは、その赤い花の刺繍とさっきアイリスから受け取った桃の花や王冠の刺繍が同じタッチであることに気付き、あの初恋の幽霊少女とアイリス、つまりトドが完全に同一人物だと確信してしまう。おそらくそうではないかとは思っていたのだが、いざ確信してしまうと、ボンは恥ずかしくていたたまれなくなってしまう。大切に想っていた初恋の少女を幽霊だと思い込んでいた上に、再会していたことにも気付かずに男だと勘違いして椅子にして座ったり、酷いことを言って罵倒してきた。それがあまりに恥ずかしくてボンはアイリスを直視出来なくなり、その場を逃げるように立ち去り、寝室に戻ってベッドに倒れ伏してしまいます。アイリスはそうしたボンの心情は知りませんから、ハンカチを渡したらいきなりボンが立ち去ってしまうのでビックリします。

そうしてボンの様子がおかしいので寝室までついてきたチャボが声をかけるが、ボンは落ち込んだまま。そこにフシとアイリスが追いかけてきて、アイリスは自分が何かボンに失礼なことをしたのかと心配します。そこでボンはこの際、アイリスに自分と子供の頃に城で出会ったことがあるか確認します。するとアイリスもそのことは覚えていて、やはりあの初恋の少女はアイリスだとボンは了解した。そしてボンはあの時どうやって自分の寝室にハンカチを持ってこれたのか質問する。王子の寝室にそこらの少女が侵入するなど普通は不可能なので、それでボンはあの少女が幽霊だと勘違いしたのです。すると、なんとアイリスは壁をよじ登ってきたのだと答える。それはボンには予想外の回答でした。ボンの想い出の中の初恋の少女はそんなお転婆なイメージではなかったからです。

それでボンは更にどうしても聞くに聞けなかった質問も思い切って切り出す。どうしてあんなに太ったのかという質問です。どうせロクな答えが返ってこないような気がして質問するのを避けていたのですが、この際思い切って「その後、だいぶ太ったよね」と言ってみる。するとアイリスは嬉しそうに、近所に美味しいスイーツ屋が出来たので食べ過ぎたと答える。これを聞いてますますボンの中に抱いていた初恋の少女のイメージにヒビが入ってしまう。ボンの想い出の中の初恋の少女のイメージは壁をよじ登ったりスイーツをバカ喰いするようなのではなかった。もっと清楚で可憐であったのです。それでボンはついカッとなってしまい、アイリスを罵倒してしまう。

ボンは初恋の想い出を愚弄されたような気がしてついカッとなってしまっただけなのだが、アイリスは自分がボンの初恋の相手だなどとは知らないので、いきなり意味も分からずボンが怒りだしたように感じてビックリして逃げ出してしまう。そして、きっとボンが太った男性だったトドを好んでいたので自分が痩せた女性になったことが不快なのだろうと勘違いして悲しくなった。せっかく女性としてボンと仲良くなれるかもしれないと少し期待していただけにアイリスは悔しくなり、ヤケ喰いして太って男性のトドに戻ろうとします。するとそこにボンがやって来て制止する。

ボンは思わずキレて罵倒してしまいアイリスが寝室から飛び出していってしまった後、チャボに相変わらず王子の時のまんまワガママで最低だと指摘されて反省した。もう今の自分は王子ではない。素直な気持ちで相手に向き合わねばならなかった。そう思いアイリスを追いかけてきて、ボンはアイリスの手をとって、もうアイリスはトドには戻れないのだと説く。王子ボンが死んだのと同様、英雄トドも死んだのです。王子の尊厳を守るために勇敢に戦ってくれたのです。だからもしボン王子が生きていたらきっとこう言うだろうと言って、ボンは「僕を助けてくれてありがとう」と、アイリスに対する素直な気持ちを口にする。

そこに城の上空に花火が上がり、明日から始まるボンへの感謝祭の前夜祭なのだという。フシはボンとアイリスに一緒に城の上で花火を観ようと誘い、皆で上に行くとそこにはアイリスの父がいて、フシが親子の再会のために呼んでいたらしい。そこでアイリスは父と再会を喜び合い、今後の身の振り方の話となる。城に残るか、家に戻るかという話になり、アイリスは返答に困る。もうトドとして城で仕事をすることは出来ないのだから実家に戻るのが順当だが、そうなるとボンとはお別れになってしまう。しかしそもそも自分はボンの婚約者でも何でもないのだから、ボンと別れたくないから城に残るなんて言える立場でもない。それでもボンとこのままお別れというのは抵抗があるのでした。

ボンの方ももう自分は王子ではないしアイリスももう臣下のトドでもない以上、アイリスを引き留める立場でもなく、アイリス親子の会話に口を挟むことも出来ない。すると、そこにチャボがボンの袖を引っ張って、アイリスが実家に戻ってしまったら自分はまた1人ぼっちになってしまうのかと質問してくる。それに対してボンがそんなはことはないと言い、アイリスも慌てて駆け寄って「私たちが面倒を見る」と約束する。確かにもう王子と臣下の関係は無くなってもチャボに対する責任はボンにもアイリスにも等しくあるのです。そんな2人の姿を見てチャボは「なんだか家族みたい」と言う。

それを聞いて2人は照れて、アイリスは「家族なんて!私はこの人に嫌われてるから」と否定する。それに対してボンが「嫌いとかそういうことじゃない」と反論すると、アイリスは「じゃあどういうことなんです?」と突っかかる。先ほど、ボンは確かにアイリスに感謝の言葉を伝えたが、あれはあくまでボン王子とトドの間の素直な気持ちであり、現状のハルマキ男爵としてのボンとアイリスの間ではまだ素直な気持ちを言い合えてはいない。どうしてさっきボンが怒鳴ったりしたのかについての釈明がまだ為されていないのです。それでボンは「君の本性が思ってたのと違うからああいう言い方になった」と釈明します。しかしアイリスには意味が分からない。どうして自分の本性をボンが気にして怒ったりするのかが分からない。それを説明しようとするとアイリスがボンの初恋の相手だと言わなければならなくなるので、ボンは困ってしまって「もういいや」と話を切り上げようとしてしまうが、思いとどまる。やはり正直な気持ちをちゃんと言おう。そう思い直したボンは「酷いことを言って悪かったよ。これからもずっと城に居てほしい」とアイリスに向かって言う。それはプロポーズの言葉であると気付いたアイリスはハッとして「はい」と返事をする。そうしてボンはアイリスとチャボと一緒に城の中の一軒家で暮らし始めたのでした。

ここまでが今回の前半パートであり、非常に上質なラブコメディという趣でしたが、この後の後半パートになると物語は一変して、非常に謎めいた展開となっていく。内容自体が謎だらけなのだが、展開も謎めいている。まずフシがウラリス王国を去る日がやってくる。フシが長居をするとノッカーが襲ってくるし、そうしてウラリスでフシが戦ったりすると、ウラリスがまたベネット教に目をつけられて迷惑をかけるかもしれない。だからひとまずフシはウラリスを去って何処かに旅に出ることになる。一方ボンはハルマキ男爵としてウラリスに残り、ノッカーから民を守る活動自体は続けるつもりだという。そういうわけでここでフシとボンはお別れとなる。それに際してボンはフシに約束していた「褒美」を与えると言い出します。

この「褒美」というのは、ボンがフシに「死んだ人間を生き返らせる能力がある」ということを教えることです。もともとボンがフシにこの能力のことをワザと教えていなかった理由は、フシが自分のもとから去っていくのを恐れていたからでした。だからこうしてフシとボンが別行動することになった以上、ボンは気前よくフシにこの能力のことを教えてもいいはずです。また、ボンはフシとの出会いの結果、豊かな心を得ることが出来た。人々に分け与える精神を得て、妻や息子も得ることが出来た。だからボンはフシへの感謝の気持ちとして、フシに「褒美」を与えたかったのです。

ところがボンはここで「少し慎重でいたい」と言っている。そしてフシに「もし君が出会ってきた仲間が不死身だったら嬉しいかい?」と質問している。この質問への回答次第で能力のことを教えるか教えないか決めたいみたいです。この遣り取り自体はフシがこの質問への回答を言う前にアクシデントがあって中断してしまう。そしてアクシデントの後、改めてフシが示した回答はボンにとって満足できるもの、つまり合格でした。しかし、それでもボンはフシに能力のことを教えなかった。これに関しては、おそらく途中で起きたアクシデントが深く関係しているのだと思う。アクシデントさえ無ければボンはフシに能力のことを教える流れだったのだが、アクシデントのせいで状況が変わったのでしょう。同時にフシがノッカーとの戦いに急遽向かうことになり、どうやらボンもそれを追うことになったようで、一旦は別行動となっていたフシとボンは再び一緒に戦うことになりそうで、これもアクシデントのせいで状況が変わったのだと思われる。

ただ、ボンが「少し慎重でいたい」と言ってフシに質問をしたのはアクシデントの起きるよりも前のことだったので、ボンが慎重になった理由はアクシデントとは無関係だと思われます。ではボンが慎重になった理由は何かというと、それはおそらくそれに先立って描かれた、ボンが1人で喋っている場面に起因しているのでしょう。もちろんこれはボンが本当に1人で喋っているわけではなく、ボンが誰か死者の霊と会話をしている場面です。その相手が誰なのか、その会話内容がどういうものであるのかはこの場面を見る限りサッパリ分からない。だが、おそらくフシに関係のある死者の霊だと思う。しかもどうやら相手は複数であるようだった。そうなると例えばトナリとか、グーグーとかマーチが連想されます。それらの霊とボンがフシの「死者を生き返らせる能力」について話をしたのかどうかは分からない。あるいは別の話をして何かを見極めただけなのかもしれない。とにかく、この結果、ボンはフシに「もし君が出会ってきた仲間が不死身だったら嬉しいかい?」と問うている。それは「フシの意思を確認する」ということであり、おそらくボンはまず生き返らされる側の霊たちの意思を確認しようとして、霊たちはおそらく「自分たちはフシの気持ちを尊重する」「だからフシの意思を確認してほしい」と答えたのではないかと思う。

そしてフシは「嬉しいに決まっている」と回答し、それはボンにとって満足な回答だった。つまり、本来はそれで能力のことを教えるはずだったのです。ところがそうはならなかった。むしろ、フシがそう回答したからこそ、ボンは能力のことをフシに教えるのをひとまず止めたみたいなのです。それはおそらくこの質問と回答の間に起こったアクシデントのせいです。だからアクシデントの内容が今回は非常に重要となってくる。

そのアクシデントというのが、カハクが左腕のノッカーを殺そうとして失敗し、それがきっかけで左腕のノッカーがカハクの腕を動かして文字を書き、意思表示を始めたということです。そもそもどうしてカハクが守護団継承者の証である大事な左腕のノッカーを殺そうとしたのかというと、フシがベネット教によって悪魔と認定されてしまった結果、守護団は活動が難しくなり解体するしかない状況、今回もフシに同行することも出来ない状況、しかもカハク自身がフシが変身したパロナに振られてしまい妻としたい女性もいなくなり子孫も作れそうにない。そうなるともう守護団も自分の代を終わりだろうと、まぁそういう風に色々と行き詰ってしまい、酒に逃避した挙句、酔っぱらった勢いでヤケクソ気味にもう不要となった左腕のノッカーを殺そうとしてしまった衝動的事件でありました。

だから、カハクの自傷事件そのものは別に大したことはない。問題はそうして殺されかけたノッカーが慌ててカハクの腕を動かして地面に文字を書き、「殺さないで」と命乞いをしてきたことの方です。ノッカーが言葉を使えるようになったことに驚くフシでしたが、この際ノッカーから情報を得ようと思い「殺されたくなければノッカーの目的を教えろ」と尋ねると、ノッカーは「みんなを助けるため」と答える。ノッカーとそこに現れた観察者の説明によれば、ノッカーの正体はファイ、つまり生き物の身体を動かす魂のような存在であり、ノッカーはファイを生き物の身体に永遠に閉じ込めようとする観察者やフシの行為を許せないのだという。死ねば重くて痛くて苦しい身体から解放されて自由になる。少しでも多くのファイを救うためにノッカーは人々を殺しているのだといいます。

ただ、フシが永遠に生き物の魂を身体に閉じ込めるといっても、現状のフシがやっていることは生き物の身体を作ることだけであり、死んだ生き物の命を長らえることは出来ていない。だからノッカーの言っていることはおかしいとカハクやフシは思う。だがノッカーはそうではないのだと何かを説明しようとするが、ボンがそれを遮ってノッカーの説明を中断させます。ボンだけはフシが死んだ者を生き返らせること、つまり生き物の魂を永遠に身体に閉じ込めることが出来ることを知っている。それが知られることが不都合だと感じたようですが、それはフシに知られることを不都合と感じたわけではなさそうです。もともとフシにはほとんど教えるつもりだったからです。では誰に知られることを不都合と感じたのかというと、それはノッカーです。

ボンはカハクの左腕のノッカーに「今の会話はお前の仲間に見られているのか?」と質問する。ノッカー同士の意識は共有している可能性が高い。といっても全てのノッカーが繋がり合っているというわけでもなさそうで、ずっと守護団継承者の身体に寄生し続けているこの特殊なノッカーもそうであるのかは分からない。ノッカー自身もそのあたりよく分かっていないようだ。ただ、おそらくフシが死人を生き返らせることが出来ることにカハクの左腕のノッカーが気付いたのは、例のアンナ姫の一件の時だろう。それはつまり本質は身体を持たない魂であるノッカーがボン同様に死者の霊が見えるからだ。ただ、それとは別にノッカー全体の共通認識として「観察者の目的は生き物の生命を永遠とすること」であり、それは生き物の魂を永遠に肉体の苦しみに閉じ込めることであり許せないと思っているようです。だから、おそらくボンはフシが死人を生き返らせる能力を持っていることをノッカーの本隊に知られることを恐れたのでしょう。そして、観察者がフシにこの能力のことを教えていなかった理由もそれと同じだということにもボンは気付いた。

実際のところ、この短い遣り取りだけでは断定は出来ないが、会話の流れ的にはそうなのではないかと推測される。フシが自分が死者を生き返らせることが出来ると知れば、その能力を使ってマーチやグーグーなどを生き返らせるであろうし、今後も他の死者もどんどん生き返らせていくかもしれない。だが、それがノッカーにとっては絶対に許せない行為だとするなら、その場合ノッカーのフシに対する攻撃は熾烈なものになるかもしれない。そのためにより多くの人々が危険に晒されるかもしれない。今聞いたノッカーの話によれば、どっちにしてもノッカーの目的は全ての生き物を殺して死の解放を与えることみたいだが、現状ノッカーにはそこまでの力は無いのも事実だ。だがフシがその能力に覚醒することでよりノッカーを狂暴化させる危険はあるし、そうなるとフシの身も心配になってくる。だからボンはとりあえずフシの耳にその話を入れないように、ノッカーの話を遮り、ボン自身ももともと教えるつもりだった「死人を生き返らせる能力」についてフシに教えることは一旦保留としたのではないでしょうか。

そして最後にフシがカハクの左腕のノッカーに、次にノッカーがどこを襲うのか質問する。ノッカー同士の意識が繋がっているのなら、このノッカーにもそれが分かるはずだということに気付いたのです。するとノッカーはその場所は「ベネット教の総本山」だと答える。おそらくフシが最も戦いづらい場所を選んだのだろう。ベネット教から悪魔と認定されて、封印されたと信じ込まれているフシはベネット教の総本山では大っぴらに活動出来ない。それがノッカー達の狙いのようです。

しかし、こうなると緊急に対処するしかない。フシは先にベネット教の総本山に向かうから、カハクも守護団と共に後を追うようボンとフシはカハクに言う。守護団を解体などしている場合ではないのです。そしてフシにとってやはりカハクは必要なのです。共に戦う仲間としても必要であるし、こうしてカハクの左腕のノッカーと意思の疎通が出来るようになったという状況の変化も大きな要素です。観察者はノッカーの動きを事前に予測することは出来ないが、このカハクの左腕のノッカーを使えばそれも可能になる。今後はノッカーの動向を探るためにはカハクは不可欠の存在となり、長い目で見れば守護団継承者としてのカハクの子孫たちの存在も重要となってくる。だから守護団は存続せなばならず、カハクもフシと共に戦わねばならない。フシはカハクに「お前も変化を楽しめ」と言って、リガードに変身してベネット教総本山に向かって飛び去っていく。

フシも状況の変化を前向きにとらえていたのです。カハクの左腕のノッカーの話によれば、要するにノッカーはフシが抵抗しなくなってもお構いなしに人を殺し続けるということになります。これまではいっそ自分が全てを差し出せばノッカーの殺戮は止まるんじゃないかという淡い期待と迷いはフシにもあったのですが、今回の話を聞いてその迷いも無くなった。やはりノッカーを殺しつくさねば人々が殺されていくのを止めることは出来ないようだと分かって、フシはノッカーととことん戦うことに迷いが無くなってスッキリした。

そうしてベネット教の総本山に向かったフシをボンも追いかけるようです。もともとはウラリスに残ってノッカーと戦う活動を続ける予定だったボンにも状況の変化が生じたということなのでしょう。フシが「重くて痛くて苦しい身体」よりも仲間と会えなくなることの方が苦しいと言って、仲間が永遠の命を得ることを嬉しいと言ったこと、それゆえにボンはあえてフシに死人を生き返らせる能力のことを教えるのを一旦保留とした。だが一旦保留だから、それは更に何かフシについて見極めようとしているということではないかと思う。それを見極めること、それが世界の命運にとって重要な意味があるということに、おそらくボンはカハクの左腕のノッカーの話を聞いて気付いたのではないかと思う。それで、ボンはボンで重大な決意をもって、共に暮らし始めたばかりのアイリスとチャボと一旦離れて、再びフシと共に戦う道を選んだのでしょう。こうしてフシもボンもカハクもベネット教の総本山で新たな気持ちで臨むノッカーとの戦いが次回描かれることになりそうで、ベネット教側がどう対応するかも含めて次回の展開が楽しみです。

 

 

夫婦以上、恋人未満。

第10話を観ました。

今回も海の泊まり込みバイト編の続きで、相変わらず観ていて恥ずかしくなるようなおバカでエロい展開の連発でしたけど、それでもやっぱりこの作品に惹きこまれるのは、登場人物の、特に女性の心理描写がやたら細かいところなんですよね。男の方は割とステレオタイプで大雑把なところもあるんですが、女性キャラは可愛らしさはもちろん、メンド臭くてウザいところも含めて、やたら細かく作り込まれていて、非現実的でぶっ飛んだ設定の中でそれが描かれるので、なんか他の作品では見られない奇妙な感覚がクセになるのかもしれません。

まずは浜辺で砂のお城を作ってる場面でトンネルに手を入れながらまた桜坂がエロいセリフを言わされてて笑った。海の家に薬院と渡辺で買い出しに行ったら、薬院の彼氏らしくないヘラヘラした態度に渡辺が文句をつけてウザく絡んでくる場面も観ていてちょっとイラッとして良い感じ。その後、渡辺がナンパされるんですけど、このナンパ男たちの薬院への絡み方がまた凄くウザくて、こういうところがこの作品はなんかジワジワ来て良いんですよね。そして、その後の渡辺の拗ね方がむっちゃ可愛いんですよね。普段が常にメンド臭くてウザいから、こういうメンド臭く拗ねながら照れるのが映える。こういうのホントは今期は「宇崎ちゃん」に期待してたんですけど、この作品の方が断然上ですね。

その後の女風呂でのギャル軍団の会話がかなり下品で笑ったが、急にマジメな恋愛話になったり、桜坂と渡辺が仲良くなったりするけど、ここは基本的にサービスシーンですね。その後、風呂場の外で薬院にイチャイチャしはじめる渡辺。ほとんど発情期のサルみたいになってますね。これ男女逆なら逮捕ですね。それで他人の前だからちゃんと苗字呼びしたのに渡辺にキレられて呼び出される薬院が不憫すぎて笑えた。結局、夜の浜辺に呼び出されて説教された挙句に、わざわざ際どい方の水着(薬院専用)を着てきた渡辺が服を脱いで水着姿を薬院に見せつけるという展開になる。繰り返しますけど、これ男女逆なら逮捕ですからね。

結局、皆で泊まり込みしてるせいでいつもみたいに2人でイチャイチャする時間が不足して変な禁断症状でハイになってるだけみたいにも見える渡辺ですけど、他の女と一緒にいたり、他の人の目を気にしてる薬院に嫉妬していたりムカついていたりするようです。それで寂しくてもっと自分を見ろと言って際どい水着姿で至近距離でオッパイがブルンブルンしてるのが可笑しい。夫婦実習の偽物夫婦なのに、家の外で夫婦じゃないのが寂しいとか、もう支離滅裂なことを言いだす渡辺が、自分は嫉妬してるんじゃなくてムカつくだけだとか言ってますが、やっぱり実習が終わったら夫婦じゃなくなるのが不安なんでしょうね。

そして、そこに桜坂がやって来たので慌てて狭いところに隠れて密着する薬院と渡辺という、ラブコメの古典的パターンですが、桜坂にバレたくなくて自分を隠そうとしてる薬院にムカついてしまう自分が嫌になるという渡辺の思考がリアルで良い。しまいにはワザと桜坂に見つかってもいいような感じになってしまう渡辺のシーンも緊迫感があって良かったですね。結局、桜坂は物音を幽霊だと思ってビビって去っていき、その後は薬院が密着しすぎたせいで勃起してしまい渡辺がちょっと嬉しく思いながら拒否するが薬院がハアハアいってたのは熱中症だったというオチ。いや、今回も何だかんだ充実してましたね。