2022秋アニメ 12月5日視聴分 | アニメ視聴日記

アニメ視聴日記

日々視聴しているアニメについてあれこれ

2022年秋アニメのうち、12月4日深夜に録画して12月5日に視聴した作品は以下の3タイトルでした。

 

 

機動戦士ガンダム 水星の魔女

第9話を観ました。

今回はミオリネとシャディクとの関係が主に描かれたエピソードで、結局、株式会社ガンダムの起業の是非や経営権を巡って両者がチーム戦で決闘することになります。まぁ確かに面白かったんですけど、正直言って今回はキャラドラマという印象で、あんまりこの作品の本筋と関係ないと思うんで、レビューは簡単に済ましたいと思います。

結局は地球寮チームが勝つことは予想がつくことだし、学校内の誰も死なない決闘だからとんでもない展開にならないことも分かってるし、地球寮が勝って予定通りに株式会社ガンダムが起業成功したということは前回ラストからストーリーは1ミリも進んでないわけだし、シャディクとミオリネのドラマは興味深いけれども、そもそもどうしてシャディクがミオリネに対して素直に好きと言えないのかについての理由が全く謎のままだし、主役のスレッタのドラマは全く描かれず、ガンダム関連の謎も全く解明が進展しておらず、なんか相変わらず思わせぶりな謎描写だけあって考察班を釣ってるだけの状態が10月から延々と続いたままだし、肝心のチーム戦の決闘アクションシーンは、確かに迫力満点だったけど、ポッと出のシャディク親衛隊の美女軍団がキャラに馴染みが無さ過ぎてコクピットでは誰が誰だか見分けがつかないしモビルスーツも同じで、地球寮チームも同じようなものだし、一体誰がいつ何をしてるのか全く分からず混乱しただけだった。他はグエルとかグエルとか細かいネタシーンばっかりで、一体これをどう高評価しろと言うのか。いや、まぁ面白いか面白くないかで言えば間違いなく面白かったんですけどね、なんか今回はジャンプ漫画原作アニメのレベルであんまり真面目にレビューする気が起きない話だったです。まぁエモくて良かったんじゃないですか。もうね今回は「不滅」と話の密度が違い過ぎて、「不滅」にカロリー全部使ってしまったんで勘弁してください。

 

 

不滅のあなたへ シーズン2

第7話を観ました。

今回はボンの物語の結末が描かれ、非常に素晴らしかった。やはり物語の力が最高クラスの作品だと実感させられました。今回は物語が濃密すぎて、ちょっと桁違いでしたね。「うたわれるもの」を除いて、ちょっと他の作品と差がありすぎました。まぁ「恋愛フロップス」も全然ベクトルは違うけど濃密でしたけど。

前回はフシとボンとトドがベネット教会によって異端として捕われ、フシは悪魔と認定されて鉄の牢獄に入れられて、灼熱の溶けた鉄を流し込まれて身体を焼かれて固められ、それによってベネット教会は悪魔フシを封印したと宣言しました。一方ボンは崖に吊るされた鉄格子の檻に入れられてしまい、隣の檻にはトドが入れられています。そして、今回ベネット教会のサイリーラは、この吊るされた檻に入れられた状態でボンの異端裁判を行うと宣言します。

ボンは前回、隣の檻にトドが入れられていることに気付きました。前回のレビューで私はボンがトドの声を聞いて昔出会った少女の幽霊がいると思ったのではないかと考察しましたが、そうではなかったようです。あくまでボンはトドの声が聞こえたのでトドが生きていることに気付いて驚いただけだったようです。ボンは自分が捕まった際にトドが兵士に剣で刺されて死んだと思い込んでいたので、トドの声を聞いて生きていることを知り、驚いて喜んだだけでした。

それにしてもベネット教会のサイリーラはどうしてボンをこんな形で閉じ込めて裁判をしようとしているのでしょうか。おそらく断崖絶壁の空中に檻を吊るしているのは脱出不可能にするためなのでしょう。審問をする時間だけ檻を上げて断崖の上のサイリーラ達と同じ目線にしますけど、審問をする時間以外は檻は下げられて横には何も無く遠くに断崖の壁があるだけとなり、遥か下には川が流れていますが飛び降りて助かる高さでもなく、しかも後で分かりますけど川には人食いワニまで放してある。だから普通の牢獄よりも脱出は難しいでしょう。そして、やはりこんな崖に吊るされた不安定な状態ではどうしても人間は不安になります。そうした不安状態の人間をその場で異端裁判にかけることで被告人の心理を自分たちの都合の良いように誘導していくというのがベネット教会の遣り口なのでしょう。異端裁判というのはとにかく「自分が間違っていた」と相手に認めさせるために行う脅迫のようなものですから、相手が不安な状態の方がやりやすいわけです。

ただ、謎なのはどうして2つの檻を一緒に吊るしているのかです。しかもただ単に2つの檻を並べて吊るしているのではなく、2つの檻を滑車で繋いで重さのバランスをとって吊るしている。どうしてこんな奇妙な形で吊るしているのか?そしてまた奇妙なことに、このような奇妙な形の吊るし方をベネット教会側は特に異端裁判で利用しようとはしていない。おそらくこの奇妙な吊るし方には本来は何か意味があったのでしょうけど、それはいつしかあまり意識されなくなって形だけが残っているのでしょう。つまり、これはベネット教の理念に基づいた伝統的な手法なのだと思われます。

そのベネット教の理念というのが今回のボンの異端裁判の場面である程度明らかになりました。異端審問官たちはボンに「ベネットの神は飢える者には皆平等に施しを分け与える」と言います。実際、ベネット教側は檻に囚われたボンにもトドにも平等に同じ量の食事を与えてくれています。またベネット教の経典の一節をボンが朗読させられますが、そこには「ベネットから与えられし糧にて身体を満たし、心を満たされんことを感謝する」とあります。

つまりベネット教の理念は「神の前の平等」にあるといえます。神の前には全ての人間は平等なのであり、平等に施しを受けることが出来る。一見すると結構なことにように思えますが、それはベネット教の神から施しを受けることが前提での話です。檻に囚われたボンとトドが平等な扱いを受けているのは、2人に自由が無い囚人だからです。ボンとトドは檻を出て自由な立場になれば決して平等ではない。ボンが上でトドが下という格差が生まれる。だが自由を捨てて囚人である限りは平等に扱われる。つまり「ベネット教の神の囚人となれば人間は皆平等に神からの(ささやかな)施しを受けることが出来る」という「奴隷の悪平等」がベネット教の教義の本質といえます。そうして大多数の一般人を奴隷のように扱って、ごく一部の宗教思想のエリートだけが贅沢を享受するというのが、ローマカトリックからマルクス主義まで続く悪しき一神教的思想の伝統といえます。

こうした「神の支配下の奴隷の平等」を教義とするベネット教の連中から見ると、その「平等」という秩序を壊そうとする者は悪と見なされる。つまり他の者よりも優れた者、特別な力を持った者は「神の前に皆が平等である」という世界の均衡を崩す危険分子ということになる。ベネット教中枢にとっては自分達以外の全ての人間は皆同じように無力である方が都合が良いのです。誰か1人でも他人より秀でた者が現れるとそれに続こうとする者が出てきて彼らにとって都合のいい悪平等の世界が崩れてしまう。だからそうした芽はいち早く摘み取る。中世キリスト教世界で科学者が迫害されたり、共産主義国家で知識人が虐殺されたりしたのはそういう考え方によるものです。

そういうわけでベネット教は、不死身の特別な能力を持つフシを神の世界の秩序を壊す悪魔と認定し、死者の霊が見えるというボンの能力の存在を知ると、それはボンだけの特別な能力なので、そんな不平等なものをベネット教の神が与えるわけがないと言い、インチキだと言って否定します。そして、おそらくこの2つの檻を繋げて吊るす手法もベネット教のこうした理念に沿ったものなのでしょう。つまり、2つの檻が重さがそれぞれに囚人が入った状態で釣り合って均衡がとれるように調節して吊るしておいて、その上で同じ量の食事を与えていくことで均衡はずっと保たれて2つの檻の囚人は無事でいられる。だが片方の檻の囚人だけが食事を与えられ、もう片方の檻の囚人が食事を与えられないと言う不平等があれば、体重に差が生じて重さのバランスが崩れて、不平等に多く食事を貪って肥え太った方の囚人の檻が下の川に落下して人食いワニに食われて死ぬ。つまり「神から与えられた平等によって人は生かされている」のだが「神から与えられた平等を壊して不平等に何か特別なものを得た者は死ぬ」というベネット教の教義をそのまま体現したような仕掛けになっているのです。神の教えに背いた異端の囚人たちはこの恐怖の檻で身をもって神の教えを再教育されるというわけです。

まぁそういう理念の伝統的な収監方法や審問方法というものがあってこういうことをしているのでしょうけど、今となってはあまりに伝統的すぎてその真の意義なども異端審問官たちも忘れていて、特にその意義について触れたりしてボンやトドに説いたりもしていないのだと思います。ただ、この奇妙な檻の形を見ると、ベネット教の本質というものが見えてくるというだけの話であり、また今回、ボンがトドの食事を横取りしたりして普通は崩れない檻の均衡が崩れてボンの檻が落下する騒動があったり、副作用としてトドが痩せて元のアイリスの姿になった模様であるという描写があったり、最終的にはこの仕掛けによってフシがボン達を救出しようとしたり、色々と作劇に上手く使われています。

そうしたベネット教的な世界観がベースにあって、こういう重さの均衡をとった2つの檻が崖に吊るされている。ただ、この2つの檻の囚人のうち、異端裁判を受けるのはボンだけであり、トドはもう片方の檻で均衡を保つために置かれた重しのような扱いであり、ただ収監されているだけです。ただトドは太っていてボンよりも体重がだいぶ重いので、均衡を保つためにボンの檻にはもう1人の囚人が入れられていた。それはチャボというパンを盗んで捕まった少年の囚人だった。

ただ、ボンは狭い檻に一緒にいながら最初はチャボの存在に気付いていなかった。いや、正確には生きた人間だと認識していなかった。何故ならボンは生きた人間も死んだ幽霊も全く同じように見えるからです。そもそも自分以外にこの檻に入れられている人間がいるなどとボンは思っていなかったので、檻の中でも自分にくっついてきているフェンとニクソン同様に幽霊の少年がただ黙って座っているのだろうと思っていた。それでボンがお構いなしに幽霊のフェンやニクソンといつものように言い合いをしていると、チャボが不審者を見るようにボンを見て「うるさい」と言ったので、ボンはチャボがフェンやニクソンの姿が見えていないということに気付いた。それでチャボが生きた人間だということに気付くと、ボンはそれならばチャボの隣に一緒にいる女性も生きた人間なのだろうと思った。そう、ボンが「どうせ幽霊なんだろう」と思って無視していたのはチャボ1人ではなく、もう1人いたのです。チャボの隣にずっと大人の女性が座っていたのです。それでボンはその女性がチャボの母親なのだろうかと思ってチャボにその旨を質問してみると、チャボはその女性の存在を認識していないようで、母親は一緒に捕まって別々に連れていかれたのだと言う。それを聞いてボンは、チャボの隣にいる女性がその母親の幽霊なのであり、母親は残念ながら既に殺されてしまったのだろうということに気付いた。

それでボンはチャボに「お母さんはもう生きていないと思うぞ」と言うのだが、チャボは怒ってボンの言うことは信じず、母親は生きていると言って、ボンはチャボに張り飛ばされてしまう。更に隣の檻で姿は見えないながらも聞き耳を立てて会話を聞いていたトドもボンを非難する。トドはボンが幽霊を見えるなんてことは知りませんから、ボンが根拠も無く適当なことを言ってトドを悲しませていると思って呆れたのでした。実際はボンは母親の幽霊が見えているので真実を言っているのですが、それにしてもいきなり母親の死を少年に告げるなんて、もう少しやりようというものがあるだろうとも思います。だがボンはトドに非難されても平然としたもので、嘘など何の役にも立たないと言う。

見えるものだけが信じられる。見えないものに希望を見出していたらいずれ絶望することになる。それがボンの信念でした。人間は見えないものや不確かなものに希望を見出そうとしてしまう。チャボは母親が生きているか死んだのか分からないから、生きていると信じようとしている。だがボンにはチャボには見えないものが見える特別な力があり、それによってチャボの母親が死んだという事実を知っている。その事実は絶対であり変えられないのだ。だからチャボが見えない「母の生存」にいくら希望を見出していても、いずれはそれは絶望に変わってしまう。それが分かっているのに、真実を知っている自分がわざわざ嘘を言ってチャボを慰めても何の意味も無い。悲しい真実は早く知った方が良いのだとボンは思っている。

信じていた後で裏切られることの方がより悲しみが深いことをボンは実感していた。ボンも以前は見えないこと、不確かなことに希望を見出そうとしていた。父が自分を国王にしてくれると信じていたのです。だが実際は父は弟を国王に選んでいた。その時ボンは深い悲しみを覚えて、見えないものに希望を見出そうとしていたことを後悔した。だからボンはそれ以降、自分の見えないものは信じなくなった。例えば父や他人の気持ちなどです。その代わりに自分の見えるものだけを信じて、その力で国王の座を掴んでやろうと思うようになった。幸い、自分には他の人間には見えないものが見える特別な力がある。例えばこの力を使えばフシの居場所を知ることも出来る。だから、この特別な力を使って国王となるのが自分の運命なのだ。自分は特別な選ばれた人間なのだとボンは思い、それでフシと共に旅に出たのです。

そして、その結果ボンは異端裁判にかけられることのなってしまった。その審理の冒頭、審問官はボンに「最初にどうやってフシを見つけたのか」について質問する。それに対してボンは「精霊のようなものに見つけ方を教えてもらった」と答える。つまりトナリの霊にフシの見つけ方を教えてもらっていたことを言ったわけだが、それはつまりボンが死んだ者の霊が見えるということを意味している。ベネット教の審問官たちはそのような他の人間に無い特別な能力の存在を神が認めるはずがないと思っているので、それは悪魔の仕業ではないかと騒めくが、一方でその遣り取りを聞いていたトドはボンがフシを見つけた時に立ち会っていたので、思い当たるところはあった。

あの時、ボンは何の手がかりも無いのに人相書きとは全く別人のフシを見つけ出すことが出来た。それがトドにはずっと不思議だったのですが、あの時ボンは街の上を鳥が飛んでいるなどと言って、確かに他人には理解できない独自の探し方を知っているようだった。また、ボンは頻繁に大声で独り言を言ったり暴れまわったりして、それは一種の発作のようなものと周囲では片付けられていたが、ボンには他人には見えない霊的なものが見えているのだとすれば、それも説明がつくとトドは思った。それでトドはボンが死んだ人間の霊が見えるのだという話はおそらく事実なのだと理解した。そして、隣の檻のボンに向かって「あなたは死んだ人間の霊が見えるんですね」と声をかけ、その直後にそれを後悔した。

ボンが死んだ人間の霊が見える能力持ちであり、チャボの隣に誰かの姿を見て、その後でチャボに母親が生きていないと言ったということは、おそらくボンがチャボの母親の霊を見たからだということに気付いたからです。それでトドはチャボの母親の死を確信し、ボンが根拠なく適当なことを言っていたわけではなく真実を言っていたのだということを知った。それなのにボンを非難したりして申し訳ないことをしたと思いつつ、そして、ボンの言っていたことが真実だったからこそ、それはチャボの母親の死を確定してしまうため、チャボのいる場でこの会話はしてはいけないと思い、以降はこのボンの能力についての話題はトドは封印することにした。

審理が一旦終わると囚人用の食事として3人に同じ量のパンが差し入れられたが、十分な量ではない。それでボンがチャボのパンを欲しがったりしたのでトドは呆れて懐に入れていた裁縫用の糸に自分のパンを半分くくりつけて隣の檻に投げてボンに与えてチャボのパンが奪われないようにしてあげた。そうして毎日、トドは自分のパンの半分をボンに分けて与える生活を送るようになりったのだが、チャボの方も自分のパンの半分を分けて母親用にと言って貯め続けた。

そんなチャボの行為を見てボンは何も言わない。「母親はどうせ死んでいるのだから無意味だ」などと言いそうなものだが、そういうことはボンは言わない。ボンはチャボの目の前で「自分は死んだ人間の霊が見える」ということを異端審問の遣り取りの中でバラしてしまっていますから、「だから自分はお前の母親の霊を見たのだ」と言ってやってもよさそうなものですが、ボンはチャボに向かっては自分の能力の話はあえてしないようにしている。そこはトドと気持ちは同じであるようです。トドに非難された時は「見えるものだけが信じられる」と嘯いたボンでしたが、やはりトドに非難されたことで、あえてチャボを傷つけるようなことを言うのは遠慮しているようです。

そもそもチャボだって異端審問の遣り取りを聞いて、ボンが自分の母親の霊を見たのかもしれないとは思っている。だが、それでもボンはあれから何も母親の話はしないし、チャボとしても僅かでも母親の生存の可能性を信じて、切ない願掛けのような想いで母親用のパンを貯め込んでいっているのです。そのチャボの心情が分かるだけに、ボンもそれに水を差すようなことを言う気は無く、ただチャボが十分な量のパンを食べられずやせ細っていくのを見ている。ならばボンは自分のパンをチャボに分けてやれば良さそうなものですが、それはボンはやらない。自分はどうしても生き残って国王にならなければならないからだ。自分はそういう特別な人間なのだ。だから特別な能力が与えられている。だから自分はどうしても死ぬわけにはいかないのだ。トドが分けてくれたパンだって、トドがそんな特別な自分に国王になってもらいたくて与えてくれているものなのだ。だからチャボに分けてやるわけにはいかないのだとボンは思っている。

だが、ある日の審理の際に、ボンのその特別な能力が論点となり、審問官たちはベネット教の神が特定の人間に特別な能力を与えるはずがないという前提で、ボンに対して「どうして自分だけがそのような能力を与えられたのか説明をしてみせろ」と迫る。それは審問官たちとしては、あくまで「ベネット教の教義と矛盾せずに説明してみせろ」という意味で質問しているのであり、それが出来なければボンの能力はインチキか異端ということになり、どちらにせよ悔い改める対象となるという無理ゲーみたいな質問なのですが、ボンはそういうことは深くは考えず、子供の頃にトナリの霊に言われた言葉を思い出し、半ば忘れかけていた言葉であったが「僕が皆にその力を分け与えることが出来るから・・・?」と呟く。確かに子供の頃、寝かしつけ役の幽霊にそんなふうに言われた記憶がある。あれは一体どういう意味だったのだろうと考えるボンであったが、審問官はお構いなしに同じ質問を繰り返す。それに対して今度は「僕は国王になるからだ」と言いかけてボンは口ごもる。この能力は自分が国王になる特別な人間だから与えられたと思っていたが、果たして本当にそうだったのだろうかという疑問がボンの中で湧いてきたからです。この力は自分が国王になるために使うものではなく、皆に分け与えるための力ではなかったか。そう考えるボンであったが、しかしどうすれば何を分け与えられるのかも分からない。今まで自分は国王になる特別な存在だと思っていたので「分け与える」という概念自体がピンとこないのです。現にパンすら分け与えることが出来ていない。

そうして黙り込むボンを見て審問官たちはボンが自分の能力をベネット教の教義に矛盾なく説明することが出来なくて黙り込んでしまったと思って嘲笑して、神がそのような能力を与えるはずがないと言い、本当に死んだ人間の霊を見えるのか証明してみせろと迫る。すると、それまでは黙ってチャボに寄り添っているだけだった母親の霊がボンに近づき何か耳打ちする。それを承けてボンは審問官と一緒にいる兵士を指さして、母親の霊の服装や身体の特徴などを事細かに述べた上で「それがお前がこの少年から引き剥がして殺した母親の姿だ」と言い放つ。それを聞いて兵士は思い当たる節があるのか真っ青になる。

つまり、これによってボンは自分が確かに死んだ人間の霊を見ることが出来て、その声を聞くことも出来るのだということを証明してみせたわけだが、実はそんなことはボンにとってはどうでもいいことだった。ボンの能力が真実の能力だと知って恐れおののいたのは、ボンの傍に自分が殺した女の幽霊が立っているのだと確信して恐怖した兵士1人だけであり、他の審問官たちは多少は動揺はしたものの、それだけでは何の証拠にもならないと言って無視してしまったからであり、ボン自身もどうせそういう扱いを受けることは予想していました。それでもあえてボンがそんなことを言ったのは、母親の霊に頼み込まれたからです。

そもそも、どうして母親の霊はボンにそんなことを言わせたのか?実際のところ、ボンの言葉を聞いて最もショックを受けたのは母親を殺害した兵士ではなく、むしろ後ろでボンの言葉を聞いていたチャボの方だったのです。ボンはこれまでずっと母親の霊の話はチャボの前ではしないようにしていた。それはチャボを傷つけたくなかったからです。それなのに母親の霊はそんなボンにあえて頼み込んで自分が死んだということを確定的にするような内容の話をチャボに告げさせた。おかげでチャボは母親が死んだという事実を確信してしまい絶望して膝から崩れ落ちてしまっている。どうして母親がわざわざ息子を傷つけるようなことをしたのか。その理由は最初はボンにも分からなかったが、その答えはすぐに明解になった。悲しみに打ちひしがれながら、チャボはもはや不要となった母親のために残してあった大量のパンを食べ始めたのです。つまり母親の霊は自分の生存を信じたいという気持ちが強すぎるために痩せ衰えていく息子の身を案じて、ボンの言葉によって自分の死を息子に伝えたのです。その結果、母親は死して自分のパンを息子に分け与えて、息子のチャボは生き永らえることが出来た。自分は死んでもいいから、大切な人に生きてほしい。そんな母親の霊の姿を見て、これが「分け与える」ということなのだとボンは初めて知ったのでした。

その上でボンは自分がどうしてあんなに国王になりたいと思っていたのだろうかと考える。自分に特別な力があるのは国王になる運命の特別な人間だからであり、だからこの力を使って国王になるのは当然のことだと思っていた。だから能力を使ってフシを見つけて、フシを利用して国王になろうとした。それがボンがこの能力で見えていた世界の全てでした。だが、実際はこの能力はこうやって皆に「分け与える」ために使うべきものだったのかもしれない。それが自分の見えていなかったものだとボンは気付いた。思えば弟は民のために自分のものを「分け与える」ことが出来ており、それを父も認めたからこそ弟を国王にすべきだと思ったのだ。それも自分には見えていなかったのだ。それが見えたことによってハッキリ分かったことは、国王とは弟のように「分け与える」者だということです。そんなことも今まで分かっていなかったのに国王になりたいと思っていた今までの自分というのは、そもそも国王になって何をしようとしていたのか。よくよく考えたら大した目的など持っていなかった。では、どうして自分はあんなに国王になることに拘っていたのかとボンは考える。

するとその時、夕陽が差してボン達の収監された檻の影が長く伸びて断崖の壁面に映し出されているのがボンの目に留まり、そこに隣の檻にいるトドの姿も映し出される。トドはずっと食事を僅かしか摂っていなかったため痩せており、昔のボンと初めて出会った頃の痩せた少女の姿に戻っているようだった。それで、その影を見たボンはトドが自分の子供の頃の初恋の少女の幽霊の正体だったのだと気付き、自分がいかに真理が見えていなかったか痛感しつつ、互いの影を見て心を通わせる2人の囚人を描いて見た目に惑わされない真実の気持ちの大切さを表現した例の小説のことを思い出した。そして虚飾を剥いだ自分の真実の姿がただ単に国王になりたいという夢を抱いていた平凡な男であったことに思い至る。特別な人間なんかじゃない。平凡な男がただ単に夢を失いたくなくて足掻いていただけだったという自分のこれまでの真実に気付いたボンは、自分に相応しい自分の能力の使い方について考え始める。

そんなふうにして数週間が経ったわけだが、トドがボンにずっとパンを半分分けていたせいで痩せてしまい、そのおかげでボンが自分の真実の姿に気付くことが出来たのだが、同時にトドが痩せて軽くなったせいで2つの檻の重さの均衡が崩れてしまい、ある日、遂にボンの檻の方が川に向かって落下を始めてしまう。ボンは2つの檻がそんな仕掛けになっていることは知らなかったので慌てふためき、しかも川には人食いワニがいることにも気付き、大いに焦る。

だが恐怖に震えてしがみついてくるチャボを見て、ボンは死してなおチャボを生かそうと努めたチャボの母親の霊を思い出し、チャボの命を何としても助けなければいけないと決意し、檻の板を必死で剥がして檻を軽くして、なんとか川に落ちる寸前で檻の落下は止まり、再び檻は上昇していき、ボンとチャボは命拾いします。そしてボンは今のようにトドのパンを自分が貰う生活を続けていては再び檻が落下してしまうということに気付き、トドからパンを貰うのはやめて、トドにしっかり食事をとらせて自分の食事量を減らすことにした。そして、何よりもこんな危険な檻にトドやチャボをこれ以上居させてはいけないと考え、異端裁判に関係ないトドとチャボだけでも檻から出すことは出来ないかとサイリーラに要請する。また体調の悪化したチャボのために薬を寄越してほしいとも頼んだ。これまでは自分を最優先にしか考えてこなかったボンがずいぶん変わったものだが、それでもサイリーラはボンの要請を悉く無視する。サイリーラは「貴方が神の御加護に与っていると証明出来れば」と条件をつけるのみです。結局、トドもチャボも単なる重しではなく、ボンを脅すための人質という役目もあるのです。かつてのボンであれば人質の命など自分の命と天秤にかけて軽んじたであろうが、心を入れ替えた今のボンには人質が大きな効果を発揮してしまうようになったのは皮肉なことといえます。

そうして更にボン達の苦しい日々が続いたが、遂に鉄の牢獄に封印されたフシが脱出に成功する。灼熱の溶けた鉄の中に閉じ込められた影響でフシは鉄をも溶かす高熱を発する新たな能力を獲得し、鉄の牢獄から外に出て、そこに鉄の像と化した自身の抜け殻を残して密かにリガードに変身して逃げ去り、密かに見張りの兵士たちを眠らせてボンの檻にやって来て、鉄格子を溶かして川に檻を落下させ、人食いワニたちを眠らせてボートでボン達を連れて脱出しようとする。ボンは脱走してもベネット教会はしつこく追いかけてくるだけだと言って脱走を拒むが、フシは問題無いと言う。

フシはわざと鉄の牢獄に自分の抜け殻が封印から脱出するのに失敗したかのように見せて残してきたので、ベネット教は「悪魔フシの封印に成功したまま」だと思い込んでいるはずであり、ここでボン達の身体をフシが生成して死体に見せかけて残しておいて密かに全員で脱走して行方をくらましてしまえばベネット教はこれで全て終わったと見なしてもうフシやボンを探そうとはしないはずだという算段です。死んだと偽装するわけですから、もうボンやトドはウラリスにも戻れないしボンは国王になることも諦めざるを得ない。それでも命を失うよりはマシだというのがフシの考え方です。

だがボンは自分はやはり脱走はしないと言う。国王になりたいからではない。このまま自分が死んだということになってもベネット教はフシを信じる者達やウラリス王国への攻撃を止めることはないだろうからというのがボンの言い分です。ボンはサイリーラが「貴方が神の御加護に与っていると証明出来れば」と言っていたのは、要するに何が何でも自分に罪を認めさせてフシを否定させてベネット教の正しさを認めさせたいという意味なのだと気付いていた。それは、フシという神にも等しい特別な能力を持つ異分子が神以外に存在するという事実がベネット教にとって非常に不都合だからです。何故ならフシがベネット教の神に代わる新たな信仰対象になりかねないからです。たとえフシを封印したとしても、フシが悪魔として全否定されていない状態ではフシへの信仰というものは残る。だからフシの支持者であるボンの口からフシを悪魔として否定させる必要がベネット教にはどうしてもあるのです。そのためにこうして異端裁判を延々とやっているのであり、ボンが音を上げてフシを否定して自分の罪を懺悔するまでは裁判を止めるつもりはないのです。

だから、ここでボンがフシを否定する言葉を吐かないまま脱走したり死んだりしたらベネット教としては困るのです。その場合、ベネット教は別のフシ支持者、例えばボンの家族や部下などを捕らえて同じような異端裁判にかけて延々と苦しめるであろうし、その過程でウラリス王国を攻め滅ぼすかもしれない。そんなことにならないように、自分はここに残って裁判をしっかり終えてから外に出るしかないのだとボンはフシに説明する。そして、自分が生きてここから出るためにフシを悪魔だと認めることを許してほしいとボンはフシに頼み込む。つまり自分が助かるためにフシを悪者扱いするということなのだが、フシは「俺は何時だって生きることに賛成だ」と言って快諾してくれる。

そうしてフシはボンだけを残してトドとチャボを連れて脱出し、トドとチャボの死体に見せかけた生成した身体も檻の中に置いてボートで去っていった。そして翌朝、2つの檻の鉄格子が破壊され、トドとチャボが無傷のまま死体となって転がっているという状況に審問官たちは困惑し、ただ1人生き残っていたボンに事情を聞いた。するとボンは恐ろしい姿をした悪魔がやって来てベネット教会への伝言をするように言ってきたのだと答える。自分がそれを拒絶すると、悪魔は見せしめにトドとチャボの魂を抜き去っていったのだという。審問官たちはそんなバカなことがあるものかと思ったが、実際に人知を超えた力で鉄格子が破壊されて2人の人間が傷一つ無い状態で死んでいるのだ。しかも悪魔と会話をしたと言っているボンは確かに人知を超えた存在との会話が出来る者のようなのである。そうなると、確かにここに悪魔がやって来たと考えるしかない。それで悪魔の伝言はどういう内容なのかとボンに問うと、ボンの言うには「よくも俺の仲間の悪魔を鉄の箱に固めてくれたな。今後俺たちに興味を持ったらお前たちを殺す」という内容だったという。つまり、鉄の牢獄に封印された悪魔フシの仲間の悪魔がやって来て、今後、悪魔に興味を持つだけでも殺すぞと脅迫をしたということです。これを聞いて審問官たちは震え上がりました。

もちろん、これらは全てボンの口からの出まかせです。悪魔の存在を信じるベネット教の審問官たちなら、このように言えばきっと悪魔に殺されることに怯えてフシに関係するウラリス王国などには手出ししなくなるだろうと見越しての言葉でした。また、これによって確かにフシ自体は封印に成功したのだと思い込ませることが出来る。また、鉄格子が壊れていることも、トドとチャボの不自然な死体が転がっていることにも説明がつく。そして「フシが悪魔である」ということの証拠ともなり、ベネット教会を「悪魔フシを我々が封印した」と満足させることも出来る。あとはボンにフシが悪魔であることを認めさせて懺悔させればベネット教の完全勝利です。そのお膳立てをボンはしてあげたのです。

そうして審問官たちはボンに「フシを悪魔と認めるか?」と問い、ボンは「ああ」と認める。そして更に審問官たちが「ならば過ちを認めてベネット教への忠誠を誓うか?」と問う。当然、命乞いのために懺悔に応じるかと思われるところであるが、ボンは「いいや」と否定する。そしてニヤリと笑って「僕はフシが大好きさ」と言い放つ。

フシを悪魔と認めた後でこんなことを言えば、自ら悪魔の手先と宣言するようなものであり、死罪は避けられない。ボンは自ら命の救われる道を放棄したように見える。だが、そうではない。ボンはこうなったらベネット教が決して自分を生かしておくことはないだろうということは最初から分かっていたのです。このボンの書いたシナリオでは最終的にベネット教は悪魔の脅しに屈してフシ派への追及を止めることになってしまう。それならばベネット教は今回は完全勝利の形で綺麗に終わらせるしかなくなる。そのためにはフシの封印と共にその最大の支持者であるボンの処刑という形で幕を閉じるしかない。ボンは自分のシナリオ通りに事が進めば最後は自分の処刑に至ることは分かっていたのです。分かっていてフシには生き残る意志があるかのように嘘をついて、フシにトドとチャボだけを連れて行かせたのです。ボンが生き残るためにはあの時フシと一緒に逃げるしか道は無かったのに、ボンはウラリス王国やフシ支持者たちに危害が及ばないように自分1人の命で事件を終わらせる道を選んだのです。ベネット教会としてはフシを悪魔と認めさせた上でボンを処刑して完全勝利で終えるつもりで、もしボンが改心したと言って命乞いしてきても屁理屈をつけて処刑してしまうつもりだった。だからボンの開き直った態度を見て、その手間が省けたと会心の笑みを浮かべたのでした。だがボンは最初から覚悟の上の死であり、シナリオ通りに事態が進んでいることと、フシが大好きだという本音をベネット教の嫌味な連中にぶちまけてやったという会心の笑みであったのです。

そして何より、「死んだ人間の霊が見える」というだけの能力を持った平凡な人間である自分にとって、その能力を生かして自分の命を捨てて大切な人たちが生きる道を残すという、まるであのチャボの母親のように「命を分け与える」という最良の選択が出来たという満足感があった。自分が命を捨ててベネット教を満足させることで、ウラリスの家族も領民も、フシを愛する民衆たちも、そしてフシも、みんな幸せに生きていける。それが自分が特別な力をもって生まれてきた意味だったのだと納得してボンは処刑台に昇った。そうしてギロチンが落下するところで今回は終わりとなり、これでボンは死んだと思われるラストとなりましたが、この時上空にはリガードのような鳥が飛んでおり、これはフシの登場も予感させるもののようにも思われ、また単なるボンのフシへの想いのシンボル的な描写とも解釈可能であり、ちょっと次回を観るまで分からないですね。

 

 

夫婦以上、恋人未満。

第9話を観ました。

今回は夏休みに海辺のカフェでの夏季泊まり込みバイトに薬院と桜坂も一緒に参加することになり薬院が楽しみにしていたら、渡辺が家で新しく買った凄い際どい水着の試着をしていて薬院に見せてくる。相変わらずありえないシーンの連続で観ていて恥ずかしさで死にそうになってくるのだが、これがもう最近はクセになってきた。もうどんどんバカやってくれて構わない。何故そこまでこの作品に対して寛容になれるのかというと、ラブコメ部分がかなりハイレベルだからです。芯の部分がしっかりしてると、細かいところはかなりバカやっても許せます。まぁこの作品の場合かなり太い部分でもバカやってますけど。

それで、渡辺も海の近くのカフェで泊まり込みの短期バイトに行くという話が出てきて、「おいもういい加減にしろよ」と思わずツッコミを入れてしまいました。そんなもん同じバイト先に決まってるだろと。なんちゅうベタなことやってくれてんだと。もういいから早く話を進めろよと思ったんだが、これがずっと薬院と渡辺でボケ続けていつまで経ってもネタバラシしない。もう早くしろよ。しないと殺すぞとまで思ってしまったけど、このやたら無意味に焦らす展開の中でもしっかりカップルのイチャイチャの良いシーンを入れてくるんですよね。すごいエロいし。何ですかコイツら。観てるだけで恥ずかしさで耐えられなくなるんですけど、これももう完全にクセになってます。

この水着が好きかとしつこく渡辺が聞いてきて、薬院が好きだと言うと、じゃあ薬院専用水着にするとか言って渡辺がエロい水着は封印してバイト先にはワンピース水着で来てるのとか、可愛すぎてマジで彼女にしたいレベルです。なんかね、渡辺がメンドくさいけど凄い良い子なんですよね。

それで結局は渡辺も同じバイト先だとやっと分かって2人して「えー!?」とか言ってて、ベタベタすぎてホントこいつら殺したい。で、後半パートは結局みんなして海辺のカフェに泊まり込みバイト開始で、しかも天神の店だし。まぁ天神はどうでもいいけど。ここからは主に薬院と桜坂のターンですが、厨房で桜坂が謎の積極モードに入ってきて、薬院と一緒にクリーム乗せの練習を開始し、セリフはあからさまに作為的にエロくて、もう完全にセリフを考えた人(たぶん原作者)の頭がおかしい。「次郎くん、初めてなんでしょ?」「大丈夫、ゆっくり優しく挿れてみて」「そう、縁に沿わせる感じでゆっくりそうっと挿れて」「慌てないで、ゆっくりでいいから」「うん、入った」「そう、そのままゆっくり動かして」とか、こんなセリフを厨房でクリーム乗せしながら喋る女がいるわけないだろ。正気かコイツ。

そして、桜坂のオッパイに肘が触れて慌てて薬院が失敗して飛び散ったクリームが桜坂の顔にかかって、まるで顔射した後みたいになってるし、完全にイカレてるわこの作品。いや、桜坂ってそんなキャラじゃないはずだろ?何やってくれてんのこの作品。そして最後はみんなで水着で海に行って、何故か桜坂が薬院と加茂をラブホテルに誘うという謎エンド。まぁでもこんなのでも許せてしまえるんだけど、今回はさすがにトバシ過ぎで、ラブコメの良い感じのシーンは後半は少なめでしたね。それでも終始エロかったし、このまま海辺バイト編で今期はクライマックスとなって終わりなのかもしれないですね。