2022秋アニメ 11月8日視聴分 | アニメ視聴日記

アニメ視聴日記

日々視聴しているアニメについてあれこれ

2022年秋アニメのうち、11月7日深夜に録画して11月8日に視聴した作品は以下の1タイトルでした。

 

 

ゴールデンカムイ(第4期)

第42話を観ました。

今回は4つのパートに分かれていて、それぞれのお話は短めなのでいずれもそんなに決定的な展開ではないのですが、どれも内容は充実していて見所がしっかりあり、満足出来るものでした。次回が鶴見たちと合流して杉元たちが樺太を離れるという大きな展開が描かれるので、その前に描いておくべき話を今回に詰め込んだという感じで、そのうち1つの話は樺太編の締めといえる話でしたが、残り3つの話はこれまでの様々なエピソードに仕込まれた伏線を承けて次の展開に繋げる意味合いのあるお話であり、いずれも非常に重要なことが描かれていました。そんな中でもしっかりギャグも入れ込むのも忘れておらず、そういう意味でもとても充実していて満足感の高いものでありました。

まず1つ目のお話は、これが今回の前半パートを占めていて、今回の4つの話の中で最も分量が多くて、今回のメインといえるお話ですが、登別での鶴見一派と土方一派の騙し合いでした。前回、樺太にいる杉元たちに月島が「鶴見中尉は登別で用事を済ませてから樺太に来る」と言っていましたが、その「用事」というのが描かれたわけです。登別といえば、39話で第七師団の菊田や有古が土方一派の都丹と闇夜の銃撃戦をして最後は有古がわざと雪崩を起こして都丹を仕留めて刺青人皮をゲットしていました。鶴見の「用事」というのは登別に出向いてその戦果を確認することでした。

だが実際はそれは表向きのことで、鶴見は有古のことを最初から疑っていたようです。おそらく最初に有古に対して疑惑を抱いたのは、有古が雪崩を起こして都丹を仕留めたという報告を受けた時でしょう。雪崩で都丹を埋めてしまうと遺体を発見出来なくなるかもしれない。そうなると都丹の刺青人皮の地図のピースを鶴見が入手出来なくなって金塊が見つけられなくなるかもしれない。だから有古が自分に忠誠を誓っているのなら雪崩で都丹を仕留めるなんていう方法を選ぶはずがない。一方で土方一派は都丹のも含めて自陣営にいる囚人の刺青人皮の写しはとってあるはずだから、都丹が雪崩に埋まっても困らない。だから「雪崩で都丹を仕留めた」という報告を聞いた時点で鶴見は有古が土方一派と通じている裏切り者なのではないかと疑惑を抱いたと思われます。土方一派は金塊を手に入れたらアイヌと連携して北海道を独立国にするつもりであり、それはアイヌに利益がある。だからアイヌである有古が土方一派と手を組む理由はあると鶴見は思ったようです。

だが、おそらく有古は都丹を仕留めた時点ではまだ鶴見を裏切ってはいない。今回描かれた39話の裏話となる回想シーンでは、雪崩で都丹に勝利して、まだ息のある都丹を雪中から発見して運び出したところで有古は土方一派に銃を突きつけられている。雪崩を起こした時点では有古は明らかに都丹に対して殺意があり、土方一派に対峙した場面では明らかに土方に対して敵意はあった。この時点では有古は裏切ってはいない。有古は単に都丹との生死を賭けた勝負に必死だっただけであり、雪崩を起こして勝利したことにも特に深い意味は無かった。ただ単に相手を殺して自分が生き残りたかっただけです。都丹がまだ生きていたのは単に都丹が強運だったからに過ぎない。だから鶴見が有古を疑ったのは深読みのしすぎだったのですが、この深読みのしすぎが結果的に鶴見にとって良い結果をもたらすことになる。何故なら有古が結局は鶴見を裏切っていたからです。

有古が鶴見を裏切ったのは、この雪崩の後に土方一派に拘束された時です。ここで土方に何かを言われて有古は鶴見を裏切って土方の側についた。鶴見は「アイヌの利益になるとか言って説得されたのだろう」と軽く考えていましたが、たっだ1回の説得でそれぐらいの漠然とした理由で有古がこれまでずっと一緒にやってきた第七師団を裏切るとは考えにくい。ここで土方は有古に向かって「有古イポプテ」とアイヌ名で呼びかけており、有古がアイヌだということはもともと把握していただけでなく、その本名まで知っていたということは、有古個人について情報を収集した上でこの場に来ていたことになる。この場で有古とバッタリ出くわすことまでは土方も予想はしていなかったであろうけど、登別にやって来たのは有古は目当てだったと思われる。

そもそも39話で登別で療養中の第七師団に都丹たちが按摩として潜入して情報収集をしていたのは、有古がここにいることを確認して土方に報告するためであったのでしょう。その報告を受けて土方たちは用意を整えて登別にやって来て都丹と合流する予定だったのだが都丹が菊田たちに見つかってしまい、追撃を受ける羽目となり、都丹は土方たちとの合流地点まで逃げてきて、土方たちは追手を待ち伏せする形となったのでしょう。その追手が土方の標的である有古本人であることや、有古が雪崩を起こすことまでは土方にも想定外ではあったでしょうけど、とにかく雪崩の後で土方は有古を捕らえることに成功し、そこで鶴見を裏切って自分の側につくように説得したようです。そして、あらかじめ有古の個人情報を把握していたということは、その説得材料はアイヌの将来などという漠然としたものではなく、有古個人の何らかの事情に絡んだものだったのでしょう。

それがどういう内容であったのかは今回は明らかになっておらず、今回のエピソードではそこはあまり重要ではない。今回重要なのは有古の思惑ではなく、鶴見と土方のそれぞれの思惑だからです。とにかくまずは鶴見は最初から有古に対して疑念を抱いて登別にやって来て、有古が都丹を殺して手に入れたという都丹の刺青人皮を見て、そこで有古が裏切っていることを確信した。何故なら、鶴見は都丹の刺青人皮の模様を既に知っており、それと有古が都丹の刺青人皮だと言って差し出したものとは模様が違っていたからです。つまり有古は嘘をついており、都丹は生きており、有古は都丹と手を組んでいる。つまり土方一派と手を組んでいるということだと鶴見は見破った。

ところで、どうして鶴見が敵側にいる都丹の刺青人皮の模様を把握しているのかというと、もともと土方一派と手を組んでいた杉元が今や鶴見の陣営に入っていて、その際に杉元が持っていた都丹の刺青人皮の写しが鶴見によって押収されていたからです。それは網走監獄で杉元が尾形に撃たれた後のことであり、土方たちはその時に杉元は死んだと思っている。杉元はその後は鶴見の指示で樺太に向かっており、土方たちとはずっと会っていないから、土方は杉元は死んだと思っており、杉元が鶴見と接触したということは知らない。だから土方は鶴見が杉元経由で都丹の刺青人皮の模様を把握していることは知らないから、こうして平気で偽物の「都丹の刺青人皮」を有古に持っていかせたのです。

ちなみに、この偽物は38話で土方が殺した関谷の死体から剥いだものであり、本物の刺青人皮であることには違いないのだが、都丹の刺青人皮ではない。鶴見もそれが都丹の刺青人皮ではないことは分かったが、まだ自分が見たことがない新たな別の囚人の刺青人皮であることは分かった。そんな貴重なものをわざわざ「都丹の刺青人皮」だと偽って有古に持ってこさせて、他の鶴見の持つ刺青人皮と一緒に並べてみせたということは、おそらく土方の狙いはそうして油断させて有古に命じて全ての刺青人皮を盗み出させることなのだろうと鶴見は推測した。

この時点で鶴見は有古の裏切りを指摘して有古を殺すことも可能だった。だが鶴見はそうはせずに有古を二重スパイとして利用することにした。というより、登別に来る前、最初に有古が土方一派と通じているのではないかと疑った段階から、鶴見はそうするつもりで準備をしてから登別に乗り込んできている。「土方一派と通じている」と疑った時点で鶴見は有古や土方の狙いが鶴見陣営の持っている刺青人皮だと予想しており、その対策は打っていたのです。もともと鶴見は2期序盤で剥製職人の江戸貝に作らせていた偽物の刺青人皮5枚を登別に持参してきており、有古に見せたのはその偽物の方の刺青人皮であったのです。

実際、鶴見の予想通りに有古が土方から受けた指令は「鶴見の持ってきた刺青人皮を盗み出し、関谷の刺青人皮と共に回収して持ってくること」であった。有古は鶴見の見せた5枚の刺青人皮がまさか偽物とは思っておらず、夜中にそれを盗み出そうとしたところ、待ち伏せていた鶴見達に見つかって捕らわれてしまう。そして鶴見は有古をあえて殺さず、有古の家族や親族全員に危害を加えると脅迫した上で、土方陣営に二重スパイとして潜り込んで動向を報告するようにと命じて、土方の信用を得るための手土産として、関谷の刺青人皮と共に自分の持参してきた5枚の刺青人皮を有古に渡した。

有古が任務を果たせずに土方のところに戻っても土方に信用されず、役立たずとして殺されるかもしれない。そうなったら有古は二重スパイとして機能しない。だから、あえて刺青人皮を渡して有古が任務に成功したという形にすれば有古は以後も土方陣営内で重用されるであろうから二重スパイとして鶴見は利用できる。そういう意図で鶴見が自分に刺青人皮を5枚渡したのだと有古は理解した。どうせ鶴見は今回新たに見た関谷のものも含めて全ての刺青人皮の写しをとっているから、刺青人皮を土方一派に渡してしまったとしても鶴見の金塊探しに悪影響は無い。ただ土方の金塊探しが大きく前進してしまうことになるという鶴見陣営にとってのデメリットはあるが、それは有古が二重スパイとして潜り込むことで得られるメリットの方が大きいと鶴見は判断したのだろうと、有古は考えた。

だが鶴見の本音は違う。もちろん有古を二重スパイとして利用するメリットも十分に感じていたが、それは二の次だった。大事なのは5枚の刺青人皮が土方一派の手元に渡ることの方なのです。何故なら、有古は本物だと思い込んでいるが、実際はその5枚の刺青人皮は真っ赤な偽物であり、金塊探しに誤った情報を与える害悪でしかないからです。その偽物を本物と信じ込んで土方が金塊の隠し場所の暗号を解こうとしてもそれは失敗する。それによって鶴見陣営は勝利に大きく前進する。それが鶴見の真の狙いであり、だからこそ二重スパイとして自陣営に再び取り込んだ有古にもその刺青人皮が偽者であるという最重要情報は教えなかった。有古が裏切らなかったとしても、有古が真実を知っていることによって土方がそれを察知する恐れがあったからです。有古自身がそれを本物だと心から信じていれば、有古と接して土方がその刺青人皮が偽物かもしれないなどと疑うことには決してならない。何故なら、そもそも偽物の刺青人皮などという代物がこの世に存在することを知っているのは、鶴見とその取り巻きの一部だけだからです。

こうして有古は刺青人皮を上手く盗み出したという体で、刺青人皮を持たされて放逐された。そして鶴見は徹底的に土方を騙すためにわざと有古を痛めつけて、ようやく苦労して盗み出してきたという体にして、更に部下たちには事情を説明せずに本気で有古を殺すよう命じて追撃させた。それで有古を迎えに来た都丹もすっかり有古を信用して有古の逃走を助けて、2人でなんとか土方の隠れ家に辿り着いた。そうして戦利品として新たに手に入れた5枚の刺青人皮を有古は土方に差し出し、これで鶴見の作戦は見事に成功したかに思われたが、実は土方は鶴見の更に上手をいっていたのです。鶴見も化け物だが、土方はそれを上回る化け物だったのです。

まず鶴見の計算違いの1つは、土方が杉元と鶴見が接触していたことを知っていたことです。網走監獄で尾形に撃たれて死んだと思われた杉元が鶴見によって救助されたのを永倉が実は見ていた。そして永倉からそのことを聞いた土方は、杉元が持っていた自陣の刺青人皮に関する情報が鶴見陣営に漏れたことを悟った。そして、自分がそれを悟ったことを鶴見は知らないということも土方は利用できると判断していた。今回はそれを上手く使ったのです。

つまり、土方は自分が有古に持たせた関谷の刺青人皮が都丹の刺青人皮ではないということは鶴見に見破られるだろうと予想していた。見破られたら有古は裏切りがバレて殺されるかもしれないが、土方は別に有古が殺されても構わないとは思っていた。ただ、おそらく鶴見は有古を殺さずに二重スパイとして利用しようとするだろうと土方は予想していた。それはどうしてかというと、鶴見は土方が自陣の刺青人皮の情報漏洩を把握していないと思っているだろうから、有古の嘘がバレず作戦が成功すると思い込んでいる土方を出し抜けると考えるはず、だからきっと鶴見はただ有古を殺して終わりにするのではなく、有古を二重スパイとして使って土方一派を騙そうとしてくるだろうと土方は予想していたのです。

だから土方は有古が生きて戻ってきた時点で有古は二重スパイになったのだと見破っていた。そして当然、土方は有古を裏切り者と知った上で殺さなかった。二重スパイというものは生かしておいて偽情報を与えることによって逆に敵側を混乱させるという有効な使い道があるので、殺してしまうのは勿体ないのです。もちろん有古のもたらす情報は全て敵である鶴見陣営を有利にするためのものだから一切信用してはいけない。だから土方は有古が鶴見のもとから盗んできたという5枚の刺青人皮も偽物だと見破っていた。そもそも鶴見が二重スパイの有古にわざわざ本物の刺青人皮を持たせるわけがないと土方は思っていた。

実はこれが鶴見の計算違いの2つ目で、土方は鶴見が偽物の刺青人皮を持っていることを知っていたのです。2期の序盤で鶴見が江戸貝に偽物の刺青人皮を作らせた後、土方は江戸貝の店に行き、そこにあった6体の人間の剥製と、隠してあった1枚の偽物の刺青人皮を発見し、おそらく鶴見が剥製職人に依頼して合計6枚の偽物の刺青人皮を作らせたのだと見破っていたのです。そして、自分が手に入れた1枚を除く残り5枚の偽物を鶴見が今も持っている可能性が高いと思っていた。

それが鶴見の手元にあり、鶴見はそのことを土方が知らないと思っているからこそ、有古にその偽物を手土産として持たせて二重スパイとして潜入させようという作戦を実行できたのだ。そして、偽物が存在することを知らない土方がそれを本物だと思い込むことで金塊探しが混乱をきたす。それを鶴見は狙っているはずだということも土方は分かっていた。だから土方は騙されない。今回入手した5枚は偽物として無視して金塊探しは続行するので鶴見の攪乱策は不発に終わります。有古が二重スパイだということも分かっているから、有古を使った鶴見の攪乱策も不発となり、むしろ土方から有古経由で鶴見に偽情報を流すことも可能になります。

だが、たったこれだけの収穫を得るためだけに土方が都丹を危険に晒し、関谷の刺青人皮の情報も鶴見に与えてしまい、有古という裏切り者をわざわざ抱え込むというリスクを払ったというのも不可解です。つまり土方の真の狙いは別にある。実は土方の真の狙いはこの5枚の偽物の刺青人皮そのものだったのです。この5枚の偽物が鶴見の手元にあると推測はしていたが、既にバラ撒かれている可能性もあった。もしバラ撒かれると厄介だと土方は思っていた。何故なら、鶴見はどの刺青人皮が偽物であるのか把握しているが、土方はどれが偽物なのか見分けることは出来ない。だから土方は刺青人皮が既にバラ撒かれているのかどうか確かめたかったし、もしまだバラ撒かれていないのなら、バラ撒かれる前に出来るだけ早く自分が確保しておきたかった。だから、そのために有古を仲間に引き入れて、わざとバレやすい計画を仕掛けて鶴見が必殺の5枚の偽物の刺青人皮という切り札を切って土方一派を騙すチャンスを作ってやったのです。それが仕掛けられたのは「土方が偽物の刺青人皮の存在を知っている」という事実を鶴見が知らないからこそです。そのアドバンテージを利用した土方の作戦は成功し、鶴見が必殺の切り札のつもりで切った5枚の偽物の刺青人皮というジョーカーは土方の手元にまんまと手に入り、以降は場から消えることになった。つまり、2期の冒頭からじっくり仕込んできた鶴見の「偽物の刺青人皮」作戦は今回をもって大失敗に終わったのです。そして、それこそが土方の真の狙いであったのです。

このように金塊争奪戦は実際は土方一派と鶴見陣営が依然として拮抗した形なのですが、鶴見陣営は自陣が有利になったと思い込んでいる。そこにこそ土方一派の付けこむところがある。だが、鶴見陣営にも慢心は無い。とにかくいくら刺青人皮を集めても、その解読方法が分からなければ金塊は見つけられない。その解読方法を知っていると見られるのがアシリパであり、鶴見陣営は土方一派よりも早くアシリパを確保せねばならない。そのために鶴見は登別を出発して樺太に向かう。

後半パートはその樺太における杉元一行のエピソードが3つ描かれます。まずは樺太でずっと道案内をしてくれていたエノノカとの別れの場面で、結局、天涯孤独だったチカパシがエノノカと新しい家族を作るために樺太に残る決断をして、家族のように慕っていた谷垣と涙の別れをすることとなる。ここでチカパシとインカラマッと一緒に疑似家族を作っていた谷垣が涙を流しながらチカパシに「自分の本当の家族を作りなさい」と別れを告げる。そして二瓶鉄造から受け継いだ村田銃をチカパシに託す。ちなみに二瓶の愛犬だったリュウともチカパシと共にここで別れることとなる。そして谷垣に村田銃を撃つのはチカパシが1人で立てる大人になった時だと言われたチカパシは「これも勃起だね」と応える。そして谷垣も「そうだ!勃起だ!」と言って別れる。また「勃起」とか下ネタ言ってるクセにこんな感動出来るというのが凄い。これにて二瓶鉄造の物語も完結したといえます。

続いて、鶴見が鯉登の父の指揮する軍艦で迎えに来る大泊の港に到着した杉元一行の中で、鯉登と月島の遣り取りの場面となります。ここでは40話で描かれた鯉登と鶴見の出会いの過去話に絡んだお話となります。3期の最後での尾形との遣り取り、そこから思い出された40話で描かれた鶴見との出会いや誘拐事件の時のことを思い出した鯉登は、月島に自分の中に芽生えた鶴見に対する疑念について話す。ここはだいたい40話の際に色々と考察した内容と同じだが、目新しい情報としては、鶴見が日本軍の満州進出に強く拘っていて、それに反対していた第七師団長の花沢中将、つまり尾形の父を殺したのではないかと鯉登が疑っていたことです。どうして鯉登がそう疑ったのかというと、尾形がそれを示唆することを言っていたからであり、鯉登はそれを「尾形が自分の父を鶴見に殺されたと知って裏切ったのではないか」と解釈したようですが、実際は花沢を殺したのは尾形であり、この鯉登の推測は見当違いで、あまりにお人好しのお坊ちゃん的発想といえます。尾形はそんな素直な人間ではなく、尾形が鶴見を裏切った理由はもっと闇深い何かであるようです。ただ尾形をそそのかして花沢を殺させたのは鶴見であり、鶴見が満州進出に強く拘っていて花沢を邪魔者だと思っていたことは事実です。だから尾形のことに関してはともかく、鯉登の鶴見に対して抱いた疑念は大筋では見当違いではない。鶴見が花沢や尾形を駒のように利用していたのと同じように、自分と父も鶴見に騙されて利用されていたのではないのかと鯉登は疑念を月島にぶつける。ここでどうして鯉登がその疑念を月島にぶつけているのかというと、鯉登は月島のことも疑っているからです。函館の誘拐事件の時に犯人に化けていた1人が尾形だとするなら、もう1人は月島だったのではないかと鯉登は月島を問い詰める。

月島はひたすらしらばっくれますが、遂に鯉登がキレて、父の前で鶴見に直接問い詰めると言い出すと、さすがに面倒なことになると思い、観念して鯉登の疑念が正しいことを認めます。ただ、この場面は鯉登が主役ではない。主役は月島なのです。月島は鶴見が鯉登を騙して利用していたことを認めつつ、それを全く悪びれず、「別にいいんじゃないですか」と言い放つ。そして自分も鶴見に騙されて利用されてきたのだと告白する。それは2期で描かれた月島の過去話のことだが、あそこでは鶴見がまんまと月島を騙した様子が描写されていました。しかし、本当は月島は自分が騙されていたことに気付いていたことが今回明らかとなったのです。その上で月島は言う、確かに鶴見は甘い嘘で人々を騙して利用するのだが、そうやって鶴見が目指す道の途中には騙された人々の求めるものがある。だから鶴見に騙されることによって騙された人々は救われる。それでいいんじゃないかと月島は言うのです。例えば鯉登親子は鶴見に騙された結果、親子の絆を取り戻した。例えば尾形は鶴見の計画に乗ることで憎くて仕方ない父親を自分の手で殺すことが出来た。第七師団の地位向上や日本の満州進出で恩恵を受ける人だって大勢いる。そんな人たちは鶴見に騙されても幸せになれるのだからそれでいいでしょうと月島は嘯く。

ただ、ここで重要なのは、この月島の半ば論理破綻した厭世的な言い分のほうではなく、この定義に肝心の月島本人が該当していないことの方です。月島自身は鶴見に騙され利用されたことによって何も救われてはいない。そのことに鯉登も気づき、「お前はどうして?」と問いかける。どうして何も救われていないのに自分を騙して利用した鶴見にそこまで心酔して服従するのか。そんな月島を鯉登は理解できない。すると月島は「何かとんでもないことをなしとげられるのはああいう人でしょ?私は鶴見劇場をかぶりつきで観たいんですよ、最後までね」と言い放つ。つまり、多くの人々を騙して利用した挙句に鶴見が目指すものは何かとんでもないものであるはずであり、それを自分は最後まで見届けたいのだと月島は言っている。自分を騙した鶴見のやり遂げることを自分は最後まで見届ける権利があると月島は思っているのです。それは言い換えると、「自分を騙して利用した以上はハンパなことをして終わりでは赦さない。それを最後まで監視してやる」ということになる。つまり月島が鶴見の傍に居続ける理由は、鶴見のやろうとしていることが自分を騙して利用するに値することであったか見極めるためであり、もしそれが月島のお眼鏡に叶うものでなかった場合は、月島は鶴見を決して赦さないつもりなのでしょう。月島は鶴見がきっと崇高なことをやり遂げると信じている。いや、そうでなくてはいけないと思っている。そうでなければ鶴見に利用されて台無しにされた自分の人生は一体何だったのかということになってしまう。だから、月島はそれを最後まで見届けるつもりだし、自分にはその資格があるはずだと思っているのです。

これはなんとも恐ろしい話だと私は思いましたが、この月島の話を聞いた鯉登は月島の真意にまでは考えが及ばなかったようで、月島が鶴見のことを「とんでもなことをなしとげられるのはああいう人」と言ったところに反応して、やはり鶴見は偉大な人なのだと思い、そんな偉大な人にあそこまで手の込んだ仕掛けをして仲間になることを求められたということに心の底から喜びを感じてしまい、いつもの忠犬モードになってしまい、雪の上を転がり回るというオチとなりました。なんかもう、相変わらずシリアスとギャグの温度差が凄いですね。結局、鯉登は月島もまた自分と同じ鶴見の信奉者なのだと理解したのです。実際は月島は鶴見の監視者であり信奉者ではないのですが、それは鯉登には理解出来なかったようです。

そして最後に、これから鶴見に会って金塊の地図の暗号の解き方を教えることに不安を訴えるアシリパに対して、杉元がなんかやたらと楽観的なことを言って説き伏せようとしているのを見て白石が杉元に不満をぶちまける場面が描かれます。ついでにゲロもぶちまけてオナラもしていましたけど。

杉元も決して鶴見に好意を持っているわけではないのですが、とにかく金塊争奪戦や金塊を使ってのアイヌの独立の戦いなどからアシリパを遠ざけたい杉元にとっては「鶴見に暗号の解き方を教えて金塊を与える」というのがベターな結論なのです。アシリパ自身が金塊を手に入れたらウイルクやキロランケの遺志を受け継いでアイヌのために戦いに身を投じかねないし、土方一派が金塊を手に入れたらアイヌを巻き込んで北海道独立の戦いが始まり、そうなるとアシリパも戦いに巻き込まれる可能性が高くなる。鶴見が金塊を手に入れて第七師団主導で北海道を独立国にするシナリオならばアイヌが戦いに巻き込まれる可能性が一番低く、アシリパにも危険が及ばないと杉元は考えていました。

ただ、アシリパは鶴見が支配する独立国でアイヌの扱いがどうなるのか気になる様子です。それに対して杉元は「たぶん鶴見は自国民となるアイヌを敵に回したくないから冷遇はしないんじゃないかな」とか楽観的なことを言います。しかし、これはアシリパの危惧の方が正しい。独立を勝ち取るために戦うのは第七師団であり、アイヌは戦わずして独立の恩恵を得るということはない。戦った者と戦わなかった者が対等な扱いになるということは現実にはありえない。戦って独立を勝ち取ろうという気概の無い者は必ず戦った者によって排斥・迫害される。自らの立場を自らの力で守ろうとしなかった者たちがどういう末路を辿ってきたのか、アシリパはそれをロシア支配下の樺太で嫌というほど見てきた。キロランケがそれを見せるためにわざわざアシリパを樺太に連れていったのです。

それを杉元は「アシリパを戦いに巻き込むための企み」だと解釈するかもしれないが、キロランケの意思はそれだけではなかったことは一緒に旅をした白石は知っている。キロランケは本心からロシア支配下の少数民族の現状を憂えて、アイヌの将来も心配して、自ら戦わない者が滅びていくというどうしようもない「現実」をアシリパに知らせたくて樺太に連れていったのです。それはただ単にどうにもならない現実であり、その現実を知ってどう決断するのかはアシリパの自由だ。結局は戦わない道を選択してもいいのです。ただ、最初から「戦わない」という結論ありきで「現実」から目を背けるのは間違っているとキロランケは思い、そうしたキロランケの想いを白石も理解していた。そして、そうしてキロランケに現実を見せられたことによってアシリパが成長して色々なことを考えるようになったことも白石は理解していた。

だが一緒に樺太を旅していなかった杉元はそれを理解出来ず、アシリパの成長を認めず、いつまでも子供扱いして、適当な嘘をついてアシリパが現実を見ようとするのを邪魔しようとする。それが白石には我慢がならない。白石の知っている杉元はそんな小狡い男ではなかったはず。そんなアシリパを見下して不誠実な態度をとる男ではなかったはず。鶴見のような男に尻尾を振るような男ではなかったはずなのです。そんな男に成り下がった杉元は今の成長したアシリパの相棒となる資格は無い。そういう白石の不満をぶちまけられた杉元は自分を省みて困惑する。そうして、そういう状況の大泊に遂に鶴見陣営が到着したところで今回は終わり、次回に続きます。これは次回はますます盛り上がりそうですね。

 

いや、さっきニュースで知ったけど、次回以降の放送中止らしいですね。すいません、チェックしてなくて。そして制作スタッフの皆さん、どなたが亡くなられたのか存じませんがお悔やみ申し上げます。何時になるか分かりませんが続きを見れる日を待っております。今期現状では一番面白かった作品だけにこれは残念です。

公式サイトを見たところ、今期は年末まで第37話から第42話までの再放送みたいですから、実質今期は6話分だけということになったようですね。残り6話分をいつ放送するのか、どういう形態で放送するのかによって今後この4期をどういう扱いにするのか変わってくるかもしれませんけど、とりあえず暫定措置として、この4期は6話分の作品として扱うことにします。つまり15分アニメが全12話放送されたのと同じ扱いとし、現状の順位からちょうど1ランク分下げたところを最終評価とします。現状この作品はSランクの1位なので、今期の最終評価はA+ランクの最上位ということにします。