2020年秋アニメのA+ランクの作品は全部で6作品でした。
A+ランクの作品というのは満足度の総合点で100点満点の作品になります。
どんな作品でも何らかの欠点やマイナスポイントはありますが、それらが総合点の減点につながらない作品がA+ランクにあたります。
それだけマイナスポイントが小さいか、あるいはそれを相殺するほど大きなプラスポイントがあるかなどが理由となります。
一方でA-ランクの作品においてはマイナスポイントが総合点の減点につながるぐらいには大きいので総合点は100点未満になります。
例えばA-ランク最高位の「ストライクウイッチーズ」は便宜上、満足度の総合点は95点というところでしょうか。
対照的にA+ランクの作品は総合評価としては100点満点、悪いところは無い作品で、完全に満足できる作品ということになります。
だがA+ランク作品もマイナスポイントは微細ではあるが存在するので、あえて順位をつけるとするならそこに注目していくことになります。
まぁこれらの指標はあくまでも私の主観的なもので曖昧なものなのですが、一応そういう気持ちで順位やランクをつけているわけです。
要するに私にとってA+ランク作品はとても楽しめた大満足な作品であって、欠点は順位をつけるために便宜上挙げるものであって
作品の総合評価に直結するものではないということを前置きしておきたかっただけのことです。
そういうわけで以下の3作品は大満足100点満点のA+ランクの中でもややマイナスポイントが多めに意識できた作品ということになります。
13位 いわかける! Sport Climbing Girls
この作品は競技スポーツクライミング部の女子高生たちの奮闘を描いたスポ根アニメで、WEB漫画が原作です。
まずこの作品の最も素晴らしいところはクライミングというマイナースポーツの魅力を見事に伝えていることです。
野球やサッカーなどメジャーなスポーツのアニメで名作は数多くありますが、そのスポーツそのものは既知のもので新鮮味には欠けます。
それでもそうしたメジャースポーツが題材とされることが多いのはやはりそのほうがコケるリスクが低いからです。
マイナースポーツは確かに新鮮味はありますがそれを題材とした場合はフォーマットが確立されていないので失敗する可能性が高い。
そこをあえてチャレンジして成功し、知的好奇心を刺激するに十分な新たな情報を視聴者にもたらしてくれているだけで称賛に値します。
もちろんまずは原作漫画がチャレンジに成功しているのですが、アニメ化に際してクライミングを魅せる工夫が成功しているのも事実です。
ただ、そういう設定上の成功作というのはしばしば出オチに終わり前半は勢いはあるが後半には新鮮味が薄れて飽きてしまいがちです。
この作品の場合はそのようにならず後半になっても勢いが持続、いやむしろ加速しているのには設定の新鮮さ以外の別の要素があります。
それはこの作品がマイナー競技を扱いながらもそのストーリーはスポ根の古典的な王道展開を最初から最後まで貫いているからです。
その王道とは「個人競技における団体戦」というもので、例えば柔道やボクシングの団体戦のような感じです。
クライミングは究極の個人競技でありながら団体戦でもあり、この作品では主人公たちは最初から団体戦での頂点を目標に掲げます。
個々の才能に左右される個人競技なので孤独に戦わねばならず、そこに団体戦の強みは一切無く、主人公たちは挫折もしたりもする。
そうしてチームは一旦はバラバラになったりもするが個々が自力で自分を乗り越えて集結し、再び団体戦の頂点を目指す展開は熱いです。
キャラが互いに依存せず自立し成長を遂げ、最後は絶対王者に対して個人戦で負けて団体戦で勝利する場面で綺麗に物語は終わります。
とにかくストーリー展開が早く、主人公たちのクライミング部が全国一になるまでの濃厚な物語を12話に上手く詰め込んだ構成は見事です。
可愛らしいキャラデザで作画もそんなに良いわけでもなく、ライバルキャラなどは極端にアニメ的に描かれギャグなどはシュール過ぎるなど
気になる点は多々ある作品ではありましたが、それらを全てスポ根王道ストーリー展開の熱量で押し切ってしまった快作だといえます。
12位 おちこぼれフルーツタルト
この作品は三流芸能プロ所属の落ちこぼれアイドルユニットの奮闘を描いたギャグアニメです。
とにかくこの作品は可愛さに満ちています。キャラデザがまず可愛いですが、表面的なところだけじゃなくて設定全体が可愛いのです。
もともとアイドル志望ですらない芸能界の落ちこぼれ達が住処である寮を守るために仕方なく東小金井のローカルアイドルになるのですが
本人達もマネージャーも頼りないのでバカな失敗を繰り返しつつ少しずつ地元の人たちにも愛されるようになりアイドルとして成長していく。
メインストーリーはそういうささやかで可愛らしいもので、アイドルの頂点を目指すような大袈裟な物語はなく、とにかくひたすら可愛い。
こういう可愛らしい世界観を膨らませていくのが日常系アニメというもので、そういう作品は他に多くあります。
実際私も放映前はなんだかんだ言って結構良い話になるのだろうとか思っており、まさかあんなことになるとは予想していませんでした。
この作品はそういう良い話系の方向性の作品ではなく、最初に作り上げた究極の可愛さに甘えてムチャクチャなことをやっていきます。
登場するキャラは全員おかしな性癖の持ち主ばかりで、ノーマルな人間はドン引きするような異常な行動を繰り返します。
下着、オッパイ、オシッコ、ストーキングに絡んだ話が異常に多く、過激な下ネタとシュールギャグは笑っていいのか戸惑うレベルです。
ストーリー展開も無意味なエピソードが続いたかと思えば急に真面目にアイドルしたり超展開になったり、不思議なペースで進んでいきます。
一歩間違えれば駄作になりそうな危うい橋を渡っているのですが、これらの無茶無謀が可愛さゆえに全て許せてしまうのがこの作品です。
それどころか変な展開や過激な下ネタに振り回されてしまうのがクセになり、視聴しているうちに頭と性癖がおかしくなってしまいそうになる。
究極の可愛さというストロングポイントを最大限に生かして危うい均衡の上に唯一無二なアブノーマルギャグ作品を成り立たせているのです。
粗を探したら山のように見つけることが出来る作品ですが、それらがほとんど可愛さで打ち消されて結果的に満点評価になっています。
11位 進撃の巨人 The Finai Season
この作品はあまりに有名な超人気漫画のアニメ化シリーズの第4期であり、本来ならA+ランクではなく間違いなくSランク以上になります。
それがA+ランクになっている理由は単純明快で、この作品がこの2020年の秋クールでは4話分しか放映していないからです。
この作品は他の秋アニメと比べて2か月遅れての放映開始であり、12月初旬から12月末までの間に1話から4話が放映されていて
続きの5話から16話は年明け2021年1月以降の冬クールで放映、つまり実質的に2021年冬アニメであり、先行し4話だけ秋にやったのです。
16話分まとめて2021年冬アニメとして扱ってもよかったのですが、他にも変則的スケジュールのアニメもあるのでここで4話分だけ扱います。
たとえば30分アニメの4話分というと15分アニメに換算したら8話分で、それでも1クール12話分には少し足りません。
私は15分アニメの場合12話どんなに面白くても最高評価はA+ランクまでにしますから、15分8話の分量なら本来はA-ランク以下でしょう。
しかしA+ランクになっているのはこの「進撃の巨人」という作品の持つ桁違いの面白さももちろん大きな理由ではありますが
それに加えてこの1話から4話というのが「進撃の巨人」第4期の中で前奏曲のような扱いで綺麗にまとまっていて完成度が高いからです。
第1期から第3期まで長々と主人公サイドの視点で物語を紡いできた後、第4期では主人公サイドと敵サイドの2つの視点で話が進み
最終的にはこの2つの視点が融合していくことになるのですが、第4期冒頭の1話から4話では今まで描かれなかった敵側の視点が描かれ
敵側に感情移入するよう視聴者を誘導し、4話で本来の主人公エレンを登場させて敵側主人公のライナーと遭遇させ5話以降に繋ぎます。
この構成が見事であり、1話から4話は1つの作品として完成していて第4期の前奏曲として素晴らしい機能を果たしているのです。
そういうわけでこの作品は2020年秋クールにおいては4話分でありながらA+ランクの真ん中あたりに置くのが適切と判断したのでした。