第16話
ヨガマットの続きの前に・・・
少し話が変わります。
メルボルンで音楽活動をしていた息子は、
環境を変えるために
アメリカかヨーロッパへの移動を
しばらく前から考えていたようでした。
色々と考えた末、
突然東京で生活することを決めました。
父が病気になる前のことです。
父が調子悪くなってから、
じいちゃんが大好きな息子に
余分な心配をかけたくなくて、
治療が落ち着くまで伝えずにいました。
でも潰瘍性大腸炎の治療が
始まってしばらくしてから、
ようやく状況を説明しました。
奇しくも、
息子が日本に向けて出発した日が、
父の病棟移動日と重なっていました。
もともと私の滞在は6月上旬に
帰国する予定でしたが、延期したことで、
息子は少し日程をずらして
6月4日の夜に来ることになりました。
最寄りの駅まで迎えに行き、
二人でゆっくり外食。
久しぶりに息子と会えた私の心は、
まるで恋する乙女のような気分でした。
翌5日、午前中は二人でお出かけした後に
午後から母も一緒に3人で病院へ。
息子には事前に精神科病棟に移動したことや
当時の父の状況を説明してありました。
この頃には躁状態もピークを過ぎて
少し落ち着いていたので、
大丈夫だろうと思っていました。
でも実際に会ってみた息子のショックは、
想像をはるかに超えるものでした。
病室にいる間は気丈に振る舞っていた息子。
でも病院を出た瞬間から無口になり、
車に乗ると必死に
感情を押さえようとしていました。
それでも涙は止められなかったようです。
漏れてくる息の音だけで、
彼の苦しさが伝わってきました。
声をかけることができませんでした。
母と私は毎日父の経過を見てきたので、
その日の父はむしろ落ち着いている方でした。
でも病気になってから初めて会った息子にとっては、
全く想定外だったのでしょう。
私の胸も張り裂けそうでした。
感性と直感力の鋭い息子のことです。
きっと言葉にできないものまで、
色々と感じ取ってしまったのだと思います。
ひとりの時間が必要だったのでしょう。
病院の後は母を家まで送り届けてから、
息子と二人で楽器店に立ち寄り、
その後急遽息子が予約した
ホテルまで連れて行きました。
第17話に続く…
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