最近、お気に入りのアニメ『恋は雨あがりのように』こういうストーリー嫌いじゃない。『めぞん一刻』の次にだけど。
プチ物語
『かわりばえのない君に』
僕は年賀状って滅多に書かない。友達も書くタイプじゃないから届かない。新年の挨拶はデコメールで済ませるタイプ。でも、ここ数年は高校の頃に片想いしてた女子から毎年、年賀状が来ていた。
でも、今年の年賀状が届くことはなかった。
彼女から年賀状が届くようになったきっかけは十数年ぶりくらいに開かれた高校の同窓会だった。同窓会の連絡は彼女からだったから驚いた。
真夏の同窓会は駅前の居酒屋。
彼女は相変わらずキュートで気配り屋さんだ。今も率先して注文したり、空いた皆のグラスを片付けたりしている。
そんな彼女も、あの頃と違ってわずかに翳りがあった。痩せた気もする。
彼女とたまに連絡を取っていた同級生♀から彼女のプライベートな話を少し聞いていた。早くに結婚したこと、旦那の女癖が悪かったこと、子供には恵まれなかったこと、離婚したこと、その後、幾人かと付き合ったけれどうまくいかなかったこと。
遠目で彼女を見ていたら、視線が合った。
『お酒、あまり飲んでないね』
彼女が僕の隣に座る。わずかに肌と肌が触れあいドキッとした。
『あっ…お酒あまり飲めなくて』
『ウーロン茶でも頼む?』
『うん、そうだね』
『すみませーん!ウーロン茶2つお願いします』
『水嶋もウーロン茶??』
僕は思わずそう訊ねてしまった。昔、彼女がやんちゃしていたこと、高校生の頃からお酒を飲んでいて、けっこう大酒飲みだと知っていたからだ。無論、このことは同級生でも数人しか知らない。
『私もいい歳だから身体をケアしないと』
『今もかなり飲むの?』
『昔程はもう飲まないよー』
彼女が困惑の表情を浮かべる。
『幸人君、あの頃もよく私に言ってたよねー』
何か思い出したように彼女がフフッと軽い笑みを漏らす。
『えっ?!何か言ってた?』
『タバコなんか吸っちゃダメだ!お酒なんてまだ早い!子供できなくなっちゃうぞー』って。
彼女の話を聞いて、僕は思い出した。
夜学の高校に通っていた頃に、彼氏でもないのにああだこうだと口煩く電話やメールしていたことを。余計なお世話だとは思っていたけれど、あの頃の僕はただただ彼女の身体が心配だった。
事情があった彼女は一人暮らしをしていたし、バイトを2つ掛け持ちしていた。
電話をすると、バイト先の先輩と飲み会をしているからと電話を切られることもあった。そのたびにいたたまれない気持ちになったものだ。
『思い出した…本当、彼氏でもないのにさ』僕はそう言って苦笑いをするしかなかった。
そう、高校二年の夏、僕はなけなしの勇気をふしぼって彼女に告白した。
でも、想いは叶わなかった。
『今は恋愛とか考えられない。だからまだ幸人君とは友達でいたい』それが彼女の答えだった。
でも、2ヶ月後…彼女は別な高校の三年生と付き合い始めた。彼氏のバイクの後部座席に跨がり、颯爽と通り過ぎていく彼女を偶然に見た。瞳があった瞬間、ばつが悪そうに彼女は目を逸らした。
その一件から僕らはあまり話さなくなった。話しても何かよそよそしい感じだった。
今にして思えば僕の告白に対する彼女の答は優しさだったと思う。あの頃の僕はバカがつくほどの真面目だった。彼女のタイプじゃないのは明白だったのだから。
『…違うの』
彼女がやや熱ぽい瞳をこちらに向ける。
『違う??』
僕はその意味がわからず問い返した。
『…私がばかだっただけ』
彼女はグラスに視線を落とした。それから軽く回してカラカラと氷を鳴らす。
何か言いたげな感じではあったが、彼女は黙ったままであった。
『若すぎた二人に…乾杯!』
そう言って僕は無理矢理に彼女のグラスと自分のグラスを重ねた。
『…そうだね』
少しだけ寂しそうな笑みを浮かべて彼女がそれに応じる。
二人は半分ほどウーロン茶を飲み干した。
彼女:『…苦いね、ウーロン茶』
幸人:『そう?氷入ってるから薄いくらいだよ?』
彼女:『ううん、やっぱり苦いよ私のウーロン茶』
END