これまでも「紅あずま」などを植えていたが、御船台地にある畑が鹿児島のシラス台地の地質と似ている事もあり苗を探した。しかし誰でも思いは同じとみえて苗がなかなか手に入らず、ようやく一束20本購入できた。その苗が成長したら切り取って挿し芽にする方法で増やして全部で2ウネになった。
(この文を書くにあたりインターネットで調べたら「育種登録上、鹿児島県の所有となっており、種子島だけに限定許諾された品種。そのため安納紅や種子島ゴール
ドのバイオ苗は種子島の農家しか入手できない」とあった)
からいも畑全滅
ところが十月初旬、初収穫を楽しみにカライモ畑にいったら、見るも無惨、乱暴狼藉、修羅場のような畑になってしまっていた。憎らしい事に親指ほどの小さな芋まで皮だけ残して食べ尽くされていた。しばし呆然と立ち尽くしたが、やがて激しし怒りに変わった。イノシシは何度も山から行き来しているらしく、ケモノミチは一目瞭然である。
おのれ、今に見ておれ、シシ汁にしてやるぞ、とワイヤーで輪ッパを作り、首が絞まるしかけにしてぶら下げておいた。
おまけによせばいいのに、かかったイノシシは殺さなければならないとの事で、剪定バサミのネジを外し、片方を研いで竹筒に挿して槍のようにして待ち構えていた。
ところが、それは違法だという。
例え自分の畑であろうと許可なくイノシシを獲るのは御法度だという。
私は善良な市民として、これまで法律を犯した事は一度もなく、40キロ制限の道路は後続車にどんなに迷惑をかけようと40キロで走り、ドブロクを造って飲んだこともなく、鮎のガックリ漁など考えたこともありません。
そこで自己防衛のため、狩猟免許の試験を受ける事にしたのであります。
免許は四種類
以下は狩猟免許受験記である。七十七歳にして初めて知ることも多い。
先ず、狩猟免許は四種類ある。アミ、ワナ、猟銃、空気銃である。アミや空気銃でイノシシを獲ることは
猟銃は視力が0.8以上なければならないし、山野を駆け巡る年でもない。で、ワナの免許を取得することにした。
ちなみに熊本県の免許試験は年に五回あり、私が受けた最終回の試験は12月16に県庁であった。80名の受験者のうちアミは2名、猟銃は8名位であり、残りはワナ猟であった。ワナ猟のなかには女子が数名入っていた。私が最高齢だと思って「年寄りの冷や水」と気が引けて会場に入って見廻したら私より年寄りが5~6名はいたようで安心した。
試験は先ず午前中に1次試験(ペーパーによる知識試験)がある。設問は30問で70%正解、つまり21問合格したものだけが午後の試験を受ける事ができる。
各問は三つの選択肢から正解を1つ選ぶもので例えば次のようなものである。
問 スズメはどれか
写真が4枚
問 キツネについて正しいのはどれか
1 一夫一妻である
2 一夫多妻である
3 一妻多夫である
合格者だけ二次試験
合格者は午後1時に県庁のロビーに番号が張り出されたが、所々に欠番があり何名かの不合格者があったらしい。
二次試験は技能試験で、一人ずつ呼び出されて先ず各種のワナが並べられている前でその名称と使用してよいか禁止されているかを答える。
ちなみにトラバサミ(踏んだら足をガチャンと挟むワナ)、宙づりにできるククリワナ、カスミ網などは禁止である
それから指定されたワナを実際にセットする。微妙な手加減が必要で、しかも順序が違うと外れるようになっていた。
それが済んだら、画用紙に描かれた哺乳類を、試験官が1枚ずつ次々と出す。その名前と獲ってよいか悪いかを即座に答える。これには弱った。
老化現象である
事前の熊本県猟友会主催の講習会で、狩猟できるのが8種類、禁止されているのが8種類、計16種類が予告されていたので練習を重ねたつもりであったが、とっさに名前が出てこない。
知人に会って面識はあるが名前が出てこないのと同じである。いくつか間違ったらしく試験官が妙な顔をした。
その後、視力と聴力、それに五体の運動能力のテストがあり12月の26日に熊本県知事から合格通知がきた。
この狩猟免許は全国どこでも通用する。熊本県公安委員会発行の運転免許が全国どこで通用するのと同じである。自動車の場合はこれで目出度し目出度しであるが、狩猟の場合はこれだけではシシワナが掛けられないという事を初めて知った。
ワナはかけられない
猟をするには新たに「狩猟者登録」をしなければならないという。それには狩猟税八二〇〇円 手数料一二〇〇円 それに万一の場合に備えて損害賠償保険四〇〇〇万円の保険料が必要だという。
免許証は3年間有効だが、この狩猟者登録は毎年必要だという。
これまでも免許受験料五五〇〇円、精神が正常であるとの医者の診断書三一五〇円、受験のための講習会料一〇〇〇〇円を支払ってきた。
ここへ来て改めて、「狩猟」が上流社会の極めて優雅なスポーツに起因していることを思い出した。わが国の殿様の「鷹狩り」、イギリスの貴族の「狐狩り」がそうである。
狩りは金銭など眼中にない階級の趣味であった。
しかし今やイノシシやシカ、サルの被害は甚大で、その駆除は生活防衛にもなっている。
畑を高圧電線の電気柵で囲む方法も考えたが、あれは他人の土地へイノシシを追いやるだけで、やめた。
そこで思い出したのは、隣の席で受験していた高森町の若者の話である。
「私の町では試験に合格したら受験料は町が負担する」という。
今年は残る猟期も3月15日までだし、新たに「狩猟者登録」をして当てにもならないシシ鍋を期待するより、一五〇〇〇円の「ブタシャブ」を食べたほうが得策だとも考えている。
何しろ猪を改良して人の口にあうようにしたのが豚だから。