講談社文庫
¥800(税別)
「この世には不思議なことなど何もないのだよ、関口君」
初めての日記は京極夏彦さんのデビュー作、姑獲鳥の夏です。
一部では百鬼夜行シリーズなどと言われているシリーズ物。文士・関口巽と陰陽師・中禅寺秋彦(京極堂)、探偵・榎木津礼二郎が奇怪な事件の真相を解き明かすーー?
このシリーズは読み手を選ぶというような話をよく目にしますが、確かにそうだと思いました。
何たって主人公である京極堂のうんちくが長いこと長いこと。きちんと理解しようとして読むと思いの外時間がかかります。
ですがどんなに無駄に思えるような話でも全て事件の真相に関わっていて、物語の終盤であの話はここに繋がるのか、と気づけた時は嬉しいです。
それに大胆というか随分突飛な事件の真相も、京極堂のそれまでのうんちくと説明を読んでいると何となく納得出来るような気がしてしまうのが何とも恐ろしいところです。
また京極堂の話が一段落ついた時に出てくる「りん、と風鈴が鳴った。」という文。
この風鈴がなる度にほっと一息ついてしまうのは私だけでしょうか?
とても良い表現だなあ思います(アニメの風鈴はちりんちりん鳴りすぎだったと思いますけれど)
さらにこの風鈴は他にも思わぬ役目を果たしています。
そして私がこの小説で一番惹かれたのは、恐らく関口巽というキャラクターなのでしょう。
彼はシャーロック・ホームズで言う所のワトスン……なのですが。今回は彼の致命的な見落としこそが読者を混乱に陥れるのです。むしろ彼が語りでなかったらこの事件に解決というゴールはなかったのだと思います。
その常に彼岸に片足を突っ込んでいる鬱病の気があって赤面症で失語症で多汗症の彼が、ふらふらと奮闘する姿が私はとても好きです。
彼が彼自身も思い出せない記憶に引っ張られて行動しているのを読んでいると何ともハラハラしてしまいます。
それにもちろん、京極堂と榎木津も大層魅力的です。それはまた次の機会に。
最後に事件の真相が暴きだされ、これで物語も幕引きーーかと思った後の息をつかせぬ展開。
関口は彼女を救えたのです。そしてきっと彼女の呪いも関口によって解かれたでしょう。
私も関口にこう言いたいです。お疲れ様、と。
長いですがあっという間に読めてしまいます。是非読んでみて下さい!
