日本刀と外国刀剣との違いは何なのか?

 

一般になされがちな誤解としては、日本刀はタタラ製鉄で作られた和鉄を折り返し鍛錬しているのが世界の中で独特であるというもの。

 

前に何度か書いた事がありますが、たたら製鉄自体はヒッタイト以来の人類最古の製鉄方法と大差のないものです。それを折り返し鍛錬して整形して刀剣を作った事も同様に世界共通だった。それが日本にも伝わっただけの話。

 

 

しかし日本の刀剣が外国の刀剣よりも優秀であるというのは古くから外国人にも知られた有名な話かと思います。日本の刀剣と外国の刀剣では何が違うのでしょうか?

 

中国では早くから鍛錬可能な鋳鉄(可鍛鋳鉄)などによる刀剣づくりが行われていて「質より量」の方向に進んだのは知っているのですが、中世のインド・中東・ヨーロッパではどうだったのか? それらの刀剣と日本の刀剣では何が違ったのか?

 

 

過去に読んだ本の中にそれについて書かれていたので全文紹介します↓

 

 

 

 

 

 

ざっくりまとめると、

 

外国鉄の原料は鉄鉱石だが日本は砂鉄製鉄。この違いがその後の製鉄・加工の違いにもつながった。そして最終生産物である刀剣の個性の違いにもつながった。こんな感じでしょうか?

 

↑ヒッタイトの製鉄炉

 

↑たたら

 

基本的にヒッタイトの製鉄炉と日本のたたらの構造は大差ありません。ヨーロッパや中東でも中世に入ってからもこれと同じようなものだったと理解して良いのでしょうか。そして日本のように「燃料が木炭・原料が砂鉄」だと出来上がる鉄の炭素量にムラができて炭素量の高い所が鋼(釼)になり低い所が錬鉄になるのでそれを組み合わせて使用した。同じような製鉄方法であっても外国のように「燃料が石炭等・原料が鉄鉱石」だと出来上がる鉄の全てが炭素の少ない錬鉄になってしまうので焼入れができない。だから浸炭によって炭素を足して鋼にした。そういう理解で良いのでしょうか。

 

原料が鉄鉱石か砂鉄かの違い。ちょっと私には難しくて「それで何がどうかわるのか?」がよくわかりません。「砂鉄・木炭」の組み合わせで作った鉄には悪影響を及ぼすリンや硫黄の含有量が極めて少ないと書かれていますが、その違いが大きいのでしょうか?

 

サーベル類:錬鉄を成形して浸炭し焼き入れする方法

日本の刀剣:釼(はがね)と錬鉄を組み合わせて成形し焼入れする方法

 

この差異も大きいと思われる

 

このようにも書かれています。

 

 

「日本刀の原料は砂鉄」と言い切ってしまうと面倒なツッコミを招きそうな気がしないでもないですが、少なくとも本書にはそう書かれています。

 

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この書籍の著者は博士号を持つ「ちゃんとした研究者」です。だから基本的に内容は信用して良いはずです。ただし著者の専門が考古学・歴史学である事には留意が必要なのかもしれません。製鉄方法や鉄器の性能とかいうのは文系ではなくて理系の学問なので著者の専門外なのではないかとも思えるからです。

 

個人的な考えとしては、砥石の問題の方が大きいのではないか?と思う部分もあります。

 

日本では良質な天然砥石が大量に産出したのに対して、外国ではそうではないと聞くからです。

 

使える砥石に制限があれば最終生産物である刀剣も異なるのではないかと思えてなりません。でも、外国の砥石とか刀剣の研磨について言及される事は稀なようで書籍の中でまだ見た事がありません。

 

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