古いハバキに銀着せハバキというものがあります。

 

銅のハバキに薄い銀を被せたハバキです。

 

 

 

現在は手間の都合もありこの様なものが作られる事はあまりなく、銀色のハバキを作りたい時は銀無垢のハバキが普通です。

 

「強度や錆の問題で銀無垢のハバキは良くない。だから昔は銀無垢じゃなくて銀着せハバキにしたんだ」
 
というような人もいるのですが、多分ちょっと考えすぎです。
 
銀無垢ハバキがそんなにダメなものなら現代でもさほど作られないと思います。
 
江戸時代に銀着せハバキのようなものが作られたのは、単純に銀が高価だったからでしょう。
 
「金銀比価」という言葉があります。
 
これは金と銀の価格の比率です。
 
歴史的には近代まで金銀比価は概ね
「1対4」から「1対15」くらいでした。
 
ちなみに本日の相場でいうと
金価格は1g6603円
銀価格は1g69円
 
つまり金銀比価は「1対96」くらいです。
 
現代の銀価格は歴史的に見て非常に安いのです。安いと銀を節約する必要がないので抵抗なく銀無垢でハバキを作れます。ちなみに銀無垢ハバキを現在新作してもらうと3万円くらいです。
 
もし江戸時代と同じ金銀比価なら、金価格ベースの単純計算だと銀価格は現在の26倍の価格になります。
 
ね? 実用性というより金額的な問題っぽいでしょ?
 
ちなみに幕末の日本の金銀比価は「1対4」 欧米は「1対15」
 
欧米人が無理やり日本で「1対4」の比率で金と銀を交換させてボロ儲けして、日本から大量の金が失われてしまったというのは有名なお話です。
 
 
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ここからは刀とかは関係なく、金と銀の話。
 
なぜ現在、銀は金に比べて非常に安価になってしまったのでしょう。
 
簡単にいうと、通貨としての価値を失ってしまったからです。そのため需要が大幅に低下したのです。
 
かつて世界中で金と銀は貨幣として使用されてきました。
 
紙幣が発行されるようになると、その紙幣の価値を金で保証するという制度が欧米で確率されました。紙幣は金の引換証というわけです。これがいわゆる金本位制です。
 
つまり、銀では保証しないという意味です。
 
この時点で銀は通貨としての歴史を終えました。
 
実際にはコインとして銀の現物が補助通貨としてその後も長らく使われたり、金銀副本位制をとる国があったりしたのですが、最終的には1935年に中華民国が銀本位制を放棄したの辺りで銀は通貨としての価値を完全に失いました。
 
ちなみに、金は現在でも制度上は通貨の一種です。
 
1971年にアメリカが金本位制を放棄してから金価格は流動的になりましたが、IMFに加盟する国は金の保有を義務付けられています。
 
つまり、金を持っていない国の通貨は国際的には通貨として認めないという意味です。また、個人間で金で買い物はできませんが、国家間の支払いなどであれば金は決済に利用できるでしょう。
 
制度上、金は通貨なので各国の中央銀行は金を保有しています。
 
金は自国通貨以外の通貨なので、保有している金の量は「外貨準備高」の一部として計上されます。
 
同じく高価な貴金属としてプラチナがありますが、プラチナはあくまでも「商品」であって通貨としての価値はありません。
 
金は「通貨」であり「商品」であるという複雑な立場です。
 
20年近く前、金の価格が下がり続けて1g1000円くらいでした。
 
学生だった私は、銀と同じで金も通貨としての歴史を終えつつあるのかなと考えたりしていました。
 
ところがどっこい、1g1000円を底にしてその後は右肩上がり、コロナショックでついに史上最高値の更新です。
 
円やドルは気分次第でいくらでも増やせます。実際リーマンショック以後に大量に増やしています。
 
金も深く掘ればいくらでも出てはきますが、掘らないと出てこないし深く掘るにはお金がかかります。だから簡単には増えません。
 
円もドルもガンガン増えるけど金はさほど増えない。
 
この流れは今後もさほど変わらないと思うので、今後も金価格は上がり続けると思うのですがどんなもんでしょうね。