そもそも日本刀ってなに? と聞かれた場合に何と答えたら良いのでしょう。
 
この記事では「日本刀の定義」について考えてみたいと思います。
 
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日本で作られた刀ならすべて日本刀なのかというと、そういうわけではありません。
 
一般的には「鎬造湾刀(しのぎづくりわんとう)」の登場をもって日本刀誕生とされる事が多いです。鎬造湾刀とは、鎬造りで作られた反りのある刀という意味です。

 

 

他にも

「折り返し鍛錬で作る」

「茎に目釘穴をあけて目釘で柄を取り付ける」

 

というのも日本刀の特徴です。

 

 

日本刀誕生初期の名刀、童子切安綱。

この刀が日本刀であるという事に異論を唱える人はいないはずです。

 

形が鎬造りの湾刀で、

折り返し鍛錬で作刀され、

茎に目釘穴が開いています。

 

 

 

じゃあ、これはどうでしょう? 鎬造りではなく平造りです。

 

でも、これが「日本刀」である事に異議を唱える人はいないでしょう。

 

鎬造りである事は日本刀の必須条件には当たらないようです。

 

 

 

ではこの刀はどうでしょう? 反りがありません。

 

でも、これが日本刀である事に異議を唱える人もいないでしょう。

 

昔から仕込み杖の刀身には無反の刀身が使用されています。

 

反りの有無も日本刀の定義からは外れるようです。

 

 

 

では、これはどうでしょう?

 

平安時代中期の毛抜形太刀(の写し)です。

 

鎬造りで反りのある湾刀ですが、茎の形が普通の刀と大きく異なります。

 

多くの場合、この毛抜形太刀は「日本刀の原型になった刀」といわれます。つまり、この刀は「日本刀ではない」と考えられているという事です。

 

拵をつけると後の時代の太刀と毛抜形太刀は外見上ほとんど変わらないようにも見えますが、毛抜形太刀は茎の一部が柄と一体になっているので、刀で斬った時の衝撃が柄に直接振動として伝わるはずです。これは実用上あまり好ましくありません。だから、長くは使われず目釘で止める形式に変化したものと考えられます。

 

「茎に目釘穴があり目釘で柄を装着する」

というのは、結構大切な日本刀の要件なのかもしれません。

 

 

ちなみに、これは上古の直刀(の写し)。

 

ちゃんと折り返し鍛錬で作られていますが、通常これを日本刀とは呼ばないでしょう。ちなみに、古代の直刀写しの現代刀は、たまに売りに出ています。写真の直刀は約80万円。注文打ちでも作ってもらえるんじゃないかな。

 

反りが無くても鎬造りじゃなくても日本刀といわれるのに、この直刀を日本刀とは呼ばない。目釘穴がないのでどうやって柄を装着するのかわからないけど、目釘穴をあけて目釘で柄をつけてもこの刀を日本刀とは呼ばない気がします。

 

 

ちなみに歴史的にみると、古代東北の蝦夷が馬上で使っていた「蕨手刀」が日本刀のルーツといわれ、それに上古の直刀の技術が合わさりながら発展し、日本刀(太刀)になっていったようです。

 

 

 

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「日本刀とは何なのか」

 

という事を定義してみようと思ったのですが、どうもはっきりとした定義が決まっているわけではないようです。皆が「これは日本刀だ」と納得する刀が日本刀なのかもしれません。

 

最後に、外国で日本刀と全く同じ方法で作刀した刀は何と呼ぶのでしょう?

 

どこかのサイトで、日本の刀匠に弟子入りした韓国人の話を見たのですが、もし彼が帰国して作刀した場合その刀を何と呼ぶのでしょう?

 

ちなみに、「日本酒」という名前は外国で作った酒は名乗れないようです。これは法律があるからです。たぶん「日本刀」にはこんな法律はないとは思うのですが。