第1928回「井上道義&N響によるショスタコーヴィチ交響曲第10番」 | クラシック名盤ヒストリア@毎日投稿中!!

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 みなさんこんにちは😃本日ご紹介していくのは、井上道義&NHK交響楽団によるショスタコーヴィチの交響曲第10番です。「Exton」からはこれまで大阪フィルハーモニー交響楽団、新日本フィルハーモニー交響楽団による録音が発売されてきましたが、ついにN響とのショスタコーヴィチが登場します。今後も他の録音が登場するかはわかりませんが、今回は交響曲第10番をみていきます。


「井上道義指揮/NHK交響楽団」

ショスタコーヴィチ作曲:
交響曲第10番 ホ短調作品93



 井上さんによるショスタコーヴィチの交響曲演奏は群を抜いており、中でも交響曲全集は廃盤になってから再度復刻されるという人気となっている。その後「Exton」から何曲かCD、SACDハイブリッド盤で発売されている。今回ついにN響との交響曲第10番が発売された。Apple Music Classicalでは第2楽章しか聴くことができない分、全楽章を聴くことこそが大きな意味を持つはず。


・ショスタコーヴィチ:交響曲第10番

録音:2022年11月12〜13日(ライヴ)

 第1楽章からやや重めではあるが、後ろ向きな演奏ではないアプローチからなるサウンドが展開される。木管楽器の統一された音色、弦楽器の柔軟性や打楽器の歯切れ良さなどオーケストラ全体からなるサウンドがより厳格で非常に聴きやすい演奏を聴くことができるようになっている。なんといっても安定感が演奏から聴き取ることができるようになっているので、その世界にぴたりと入ることができるのはSACDハイブリッド盤であることも影響しているかもしれない。


 第1楽章から第2楽章へと変わり、テンポの緩急が明確に変化している今回、「緩→急」へと展開されたことによってサウンドにはよりメリハリがわかるように輪郭がハッキリとし、ダイナミック・レンジの幅広さが増していることによってダイナミクス変化がわかりやすく作り込まれている。特に弦楽器と木管楽器の旋律に関しては強烈であり、狂気的な印象を受けなくもない。そして打楽器と金管楽器の一体感は誰にも止めることはできない。


 第3楽章でもテンポの緩急は変わることなく演奏が続く。統一感のある弦楽器群もそうだが、軽快かつ明確なサウンドを奏でる木管楽器の音色も抜群に良い。N響が奏でるサウンドからは何かを訴えるかのような意志の強さが感じられ、井上さんのアプローチによってそれが形作られている。それによってメリハリのあるダイナミクス変化からなる演奏を聴くことができるようになっているのだろうか。いずれにしてもライヴの臨場感は特に味わえるようになっている。


 第4楽章では伸びやかな音を全体で奏でながらスケールをたっぷりと聴くことができるようになっている。それに合わせてテンポの緩急が加わるので、「DSCH音型」はより効果的かつ圧巻のインパクトを聴き手に与えてくれる。重心の低さからなる重圧的なサウンドが凄まじく、テンポが遅くならない状態でここまでの音圧を出すことができるのはやはりN響であるからというのは大きいかもしれない。細かいダイナミクス変化の変化も功を奏する形となっており、骨太なサウンドが強い印象を残してくれるのもあるだろう。


 2024年12月末をもって引退する井上さん。ショスタコーヴィチ以外にもマーラーの交響曲や伊福部昭作品の演奏は格別である。改めて今日までに発売された録音を聴き直すのも面白いかもしれない。そして、「Exton」からは今後も他のショスタコーヴィチ録音を発売してほしいところ。まずは情報を待ちたいと思う。


https://tower.jp/item/6327448/ショスタコーヴィチ:交響曲-第10番