ブラームスのヴァイオリン・ソナタ集自体聴くのは今回が初めてであり、諏訪内さんのヴァイオリン演奏を聴くのも今回が初となる。2年半前に発売されたバッハの「無伴奏ヴァイオリン・ソナタ&パルティータ」も手元にあるがまだ聴けていないのが現状である。ただ、こうして高音質盤をいくつか同時に発売するという時点で大きな話題となることは間違いないし、美しい演奏を高音質で聴くことができるというのだから誰にしても嬉しいと言えるだろう。
・ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ第1番
録音:2023年10月
未だかつてここまで甘さたっぷりに聴き手を魅了するような演奏は聴いたことがないと、心の底から感動した名盤と言っても良いだろう。多くの作曲家によるヴァイオリン協奏曲はよく聴くが、ヴァイオリン・ソナタはまだまだ開拓の余地がある。その中でも今回諏訪内さんのブラームスヴァイオリン・ソナタ第1番には、テンポの緩急もそうだが濃厚かつたっぷりと演奏されていることによる第1楽章、第2楽章のスケール感が非常に素晴らしい。第3楽章では「緩→急」へとテンポが変化したことによって、柔軟性の高い演奏を展開しているとも言える。ピアノとのバランスが良いのも特徴的である。
・ヴァイオリン・ソナタ第2番
録音:2023年10月
第1番と比べてみると華やかさや音の広がりが加わった印象が強く、伸びやかで非常に聴きやすい音色と響きを合わせ持つ演奏となっている。ピアノとの掛け合いも美しく描かれており、ダイナミック・レンジの幅広さが増したことによる情景的な美しさが功を奏し、濃厚だった第1番とは違う面白さと美しさを聴くことができるだろう。
・ヴァイオリン・ソナタ第3番
録音:2023年10月
全4楽章からなる作品で、一つの交響曲を聴いているかのような重厚感と一貫性のある構成を演奏から楽しむことができるようになっている。テンポの緩急からなるダイナミクス変化もそうだが、この変幻自在に各楽章ごとに美しいヴァイオリンの音色と響きを味わえるというのも聴いていて面白いと感じることのできる大きなポイントと言えるだろうか。第1番、第2番と聴いていて最終的には絶妙なバランスによってまとめられているヴァイオリン・ソナタとなっているため、重厚さも重なって聴きやすい演奏となっている。
![](https://ssl-stat.amebame.com/pub/content/9477400408/amebapick/item/picktag_autoAd_301.png)