ジョージ・セルによるブルックナーの交響曲録音は、第3番が3種類、今回取り上げる第7番が2種類、第8番が2種類残されている。当盤はその中でも晩年におけるウィーン・フィルとのザルツブルク音楽祭にて演奏された1968年8月21日のライヴ録音である。
・ブルックナー:交響曲第7番
録音:1968年8月21日(ライヴ)
第1楽章では、厳格にすら思えるくらいの重量感を聴くことのできる弦楽器群の重みを味わえる演奏となっており、ややテンポに関しても遅めな印象を受けなくはない。ただ、名一杯重々しく演奏しているわけではない。むしろ重量感が多少感じられることによって金管楽器の圧倒的な音圧がたっぷりと感じられるえんそうとなっており、ウィーン・フィルでもこのような攻撃的にも思えるサウンドが奏でられるのかと驚いた。
ライヴの臨場感も加わって壮大なスケール感を味わえる演奏となった第2楽章。弦楽器と木管楽器による美しい演奏だけではなく、金管楽器の決めどころを逃すことのない咆哮に近いサウンドも功を奏する形となっている。ワグナーチューバの演奏に関しても豊かで奥行きをたっぷりと感じることができるため、聴きごたえとしても十二分に楽しめる演奏となっている。
第3楽章では「急→緩」や「緩→急」といった音楽の流れにおいて、明確に差が出来上がっている。スケルツォ部分では推進力からなる勢いの良さと固めにパワフルに奏でられる金管楽器と弦楽器のサウンドが素晴らしく、中間部においてはたっぷりと演奏が行われているため非常に濃厚で聴きやすい印象を受ける。ややトランペットの音が場所によっては緩いように感じられるかもしれないが、オーケストラ全体としての完成度は申し分ない仕上がりとなっている。
金管楽器と弦楽器がそれぞれ先導する形で演奏が進められていく第4楽章。その圧倒的な音響からなるダイナミクス変化は凄まじいものとなっており、トランペットとトロンボーン、ホルンの咆哮は全ての楽器を超越するかのような威力となっていて時によってはうるさく感じるかもしれない。しかしそれも普段あまり見ることのないブルックナー交響曲第7番の姿になるのではないだろうか?と自問自答する形となった。ライヴの臨場感もプラスになった結果なのだろう。
セルによるブルックナーの交響曲録音は久しぶりに聴いたが、リヒャルト・シュトラウスやマーラーの録音を聴いているような感覚に近いものを感じる名演だった。ライヴ録音では他にも多少録音が残されているので、引き続き探していきたいところである。
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