第1834回「ムラヴィンスキーによるベートーヴェンとモーツァルトの交響曲をSACDで聴く」 | クラシック名盤ヒストリア@毎日投稿中!!

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 みなさんこんにちは😃本日ご紹介していくのは、昨年2023年がムラヴィンスキーの生誕120年だったことによるタワーレコードの記念企画として復刻された第1回発売のベートーヴェン&モーツァルトの交響曲集です。ベートーヴェンの交響曲は第1番、第3番、第5番、第6番、第7番が、モーツァルトの交響曲は第33番、第39番がそれぞれ収録されています。一部モノラル録音がありますが、2023年最新マスタリングが施された素晴らしいムラヴィンスキーとレニングラード・フィルの歴史をみていきましょう。


「エフゲニー・ムラヴィンスキー指揮/レニングラード・フィルハーモニー管弦楽団」


[Disc 1]
ベートーヴェン作曲:
交響曲第1番 ハ長調作品21

モーツァルト作曲:
交響曲第33番 変ロ長調 K.319

交響曲第39番 変ホ長調 K.543


[Disc 2]
ベートーヴェン作曲:
交響曲第5番 ハ短調作品67

交響曲第3番 変ホ長調作品55「英雄」


[Disc 3]
ベートーヴェン作曲:
交響曲第6番 ヘ長調作品68「田園」

交響曲第7番 イ長調作品92



 レニングラード放送局のテープ倉庫に眠っていたムラヴィンスキーの専属エンジニアシュガル秘蔵のマスター・テープから製品化されたのが1989年のこと。このシリーズは2023年に迎えたムラヴィンスキー生誕120年記念企画としてマスター音源を使用してビクターが誇る「K2」の技術を用いてK2HDマスタリングが施されたSACDハイブリッド盤となっている。以前ブラームスの交響曲第2番とシューベルトの「未完成」、ウェーバーの「オベロン」序曲を取り上げた際と同じシリーズに当たる名演である。


[Disc 1]

・ベートーヴェン:交響曲第1番

録音:1982年1月28日(ライヴ)
 聴き始めた瞬間に意外に感じてしまった演奏の一つで、想像していたムラヴィンスキーとレニングラード・フィルによる演奏とは大分違うスマートで透き通るような透明感と明瞭さを兼ね備えたベートーヴェンの交響曲第1番だった。2023年最新マスタリングが施されたことによるダイナミック・レンジの幅広さとバランスが整われたことも影響しているのだろうが、特徴的な金管楽器の音色よりも木管楽器や弦楽器の統一されたアンサンブルとスッキリとした後味の良い演奏が功を奏している。個人的には数あるムラヴィンスキーの録音中でも聴きやすい演奏なのではないか?と感じている。

・モーツァルト:交響曲第33番
録音:1983年12月24日(ライヴ)
 研ぎ澄まされた感覚を味わうことのできる卓越されたアンサンブルと統一された弦楽器のやや鋭めなサウンドが、聴いていてこれぞレニングラード・フィルによる演奏だと個人的に思うところがある。ダイナミック・レンジの幅広さはそこまでなく、ややシャープでストイックにも聴こえるかもしれないがムラヴィンスキーとレニングラード・フィルらしい寸分の狂いもない冷酷さを感じるようなインパクトのある音色からなるモーツァルト演奏と言える。音の広がりもあるが、特徴的な伸び方をするので聴き手に大きな印象を残すことは間違いない。

・モーツァルト:交響曲第39番
録音:1972年5月6日(ライヴ)
 モノラル録音となっている交響曲第39番。モノラル録音だったとしても統一されたレニングラード・フィルの弦楽器群の演奏からなる強靭なアンサンブルによる演奏は、聴き手に対して大きなインパクトを残してくれる演奏となっているのは間違いない。バランスの良いダイナミクス変化と各楽章ごとに細かい音楽の流れが展開されていることによって、ややコンパクトであるが近年演奏されているようなモーツァルト演奏とはまた違うスタイルの俊敏なモーツァルトを聴くことができる。弦楽器を中心として木管楽器、金管楽器とそれぞれの楽器群における特徴を捉えた明確な演奏である。


[Disc 2]
・ベートーヴェン:交響曲第5番
録音:1974年9月15日(ライヴ)
 モノラル録音ながらまとまりあるサウンドからなる圧倒的な厚みのある演奏となっており、特に弦楽器群の中でも低弦に凄まじいエネルギーからなる音圧を確かに感じ取ることができるようになっている。やや速めのテンポで演奏されていることもあって推進力もあり、最初から最後まで濃厚なベートーヴェンを聴くことができる。2023年最新マスタリングが施されたことによる音質の改善もあり、パワーからなるダイナミクス変化が格段に上がっただけでなく研ぎ澄まされた感覚を感じることのできる音色も聴きやすいようにまろやかな形に統一されている。

・ベートーヴェン:交響曲第3番「英雄」
録音:1968年10月31日(ライヴ)
 各楽章ごとによってテンポの緩急が明確に分けられた状態で演奏されており、分厚い重厚感からなる圧倒的な音圧が功を奏する形となっている。テンポも比較的に速さがあるため、勢いの良さを体感できるようになっている。特に第3楽章や第4楽章における演奏では俊敏な弦楽器群の音色が非常に聴きごたえのあるエネルギッシュな演奏を期待して良いだろう。モノラル録音であるとはいえ強烈なサウンドからなる圧倒的な演奏を楽しめるようになっているのは間違いなく、細部まで細かく演奏されるダイナミクス変化が個人的には大分好みな演奏だったと聴き終えた今は感じている。

[Disc 3]
・ベートーヴェン:交響曲第6番「田園」
録音:1982年10月17日(ライヴ)
 再びステレオ・デジタル録音となる。木管楽器を筆頭として牧歌的な演奏が展開されていく演奏であることは間違いないが、非常に自由性の高い演奏となっていることもあって一部の楽器が若干暴走気味になっている点も何箇所か見受けられる。しかしそれもライヴならではと言えるだろう。ダイナミック・レンジの幅広さが功を奏しているため、透き通る音色でありながらも鋭さが見え隠れすることもあり明瞭さからなるクールな美しさがさえ渡る「田園」となっている。

・ベートーヴェン:交響曲第7番
録音:1964年9月19日(ライヴ)
 モノラル録音ではあるが、疾走感からなるテンポの速さや細部にわたって細かく演奏していることによって明確さが充分に伝わってくる感覚を余すことなく味わえる演奏となっている。各楽器ごとに芯のある音によって奏でられる太めなサウンドによって展開される濃厚なベートーヴェンは現代では中々聴くことのできないまた新しいベートーヴェン像であるとも言えるだろう。

 普段聴き慣れたムラヴィンスキー&レニングラード・フィルによるチャイコフスキーやショスタコーヴィチ作品ではなく、ベートーヴェンとモーツァルトの交響曲という部分に大きく注目したい。今考えても非常に貴重な録音であることは間違いなく、やや手に入れづらい代物がSACDハイブリッド盤の高音質盤となって復刻されるというのは、多くのクラシックファンにとっても非常に嬉しいのではないだろうか?このシリーズで復刻されたSACDハイブリッド盤はまだまだ存在しているのでこれから少しずつ取り上げていきたいところである。

https://tower.jp/item/6201025/ベートーヴェン:-交響曲集(第1,3,5-7番)、モーツァルト:-交響曲曲第33,39番(2023年K2HDマスタリング)<タワーレコード限定>