クルト・マズアはライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団とベートーヴェンの交響曲全集。1972〜1974年にかけて行っており、これに関してはSACDハイブリッド盤も発売された。後に1987〜1992年にかけて2回目の交響曲全集を完成させている。今回の「第九」はその中間に属するライヴとなっている。
・ベートーヴェン:交響曲第9番「合唱付き」
録音:1981年10月8日
第1楽章・・・スマートであり、ストレートな演奏から第1楽章は始まる。オーケストラ全体における音色は奥深い豊かな音色となっており、しつこさがあまりなく絶妙なバランスが保たれている印象である。ダイナミック・レンジの幅広さが増していることが功を奏する形となっているのは間違いなく、細かいダイナミクス変化によって盛り上がっていく瞬間は何度聴いても鳥肌が立つ。14:50〜15:10における演奏は特に聴きどころのポイントとなっている。
第2楽章・・・推進力からなるエネルギーと、細かく変化するダイナミクスなどがよくわかるようになっている第2楽章だが、そこまで大きくテンポが速くなったり荒々しく演奏されているわけではない。ダイナミック・レンジの幅広さが増している分、細部まで細かく各楽器の音色を聴き込むことができるようになっているため、楽器ごとの熱量や軽快さなどを明確かつ明瞭にわかるようになっている。特に弦楽器と金管楽器、打楽器の存在感は押し寄せる波のような音圧からなる危機迫る感覚を覚えることだろう。
第3楽章・・・2023年最新マスタリングによるダイナミック・レンジの幅広さが功を奏する形となっていることもあり、弦楽器や木管楽器を中心に展開される伸びやかで美しい音色からなるスケールは、聴いているだけで鳥肌が立つ上に感動的なスケールであると言える。10:40あたりの金管楽器による咆哮も存在感としては充分な演奏となっており、特徴的な音色と共に奏でられる圧倒的な演奏は大きな衝撃を与えてくれる演奏であると言えるだろう。特にトランペットの音色が独特ながら聴き入ってしまう。
第4楽章・・・第4楽章が始まった瞬間は基本としてやや速めのテンポから勢いのある演奏を聴くことができるようになっているが、13:25における全合唱とオーケストラによる「歓喜」の主題が奏でられた瞬間はずっしりと重々しいテンポとなる。以降テンポの緩急に関しては繰り返し変化していくのだが、それが中々聴いていて面白い。同時期におけるベートーヴェン演奏で考えても類を見ない「第九」となっているのではないか?と感じてしまう。合唱や歌手の歌声に関しても濃厚かつ幅広い豊かで伸びやかさのある声を聴くことができるようになっているため、オーケストラともまとまりが良く聴きやすい感覚を強く覚える。
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